無償の資金供与か

 

 

法人税更正処分等取消請求控訴事件

 

 

【事件番号】 福岡高等裁判所判決/平成14年(行コ)第12号

 

【判決日付】 平成14年12月20日

 

【判示事項】

(1) 法人税法37条(寄附金の損金不算入)にいう寄附金の意義(原審判決引用)

      

(2) 法人税法37条(寄附金の損金不算入)に該当する支出か否かの判断の単位(原審判決引用)

      

(3) 控訴人会社の関連会社である訴外会社が業務委託契約に基づき韓国における健康食品等の市場動向及び国民の需要度を調査した形跡はなく、同社による報告書等の提出及び広告宣伝活動も業務委託契約に基づき行われたものではなく、訴外会社自身の事業活動の一環として行われたものであって、結局、控訴人会社の訴外会社に対する本件支出は、訴外会社が行った役務の対価ではなく、経営状態の悪かった訴外会社を維持存続させるための無償の資金供与であったものであり、法人税法37条6項の寄附金に該当するとされた事例(原審判決引用)

      

(4) 控訴人会社が訴外関連会社に支払った寄附金たる本件支出額は、訴外会社が、控訴人会社の子会社である外国法人であり、租税特別措置法66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例)第1項の国外関連者に該当するから、同条3項により、控訴人会社の損金の額に算入することはできないとされた事例(原審判決引用)

      

(5) 韓国子会社に対する支出が控訴人会社と韓国子会社(控訴人会社が全額出資して設立された外国法人)との業務委託契約に基づき、韓国子会社の控訴人会社に対する役務の提供の対価として支払われたものであるから、必要経費に算入されるべきであるとの控訴人会社の主張が、韓国子会社が業務委託契約に基づく諸調査をした形跡はなく、また、控訴人会社主張の報告書等の提出や広告宣伝活動は、韓国子会社自身の事業活動の一環として行われたものと認められることに加えて、同契約書がその作成日付の日に作成されたものであることにも疑問が残ること、平成9年6月25日当時においても、同契約書の契約条項等が確定していなかった疑いがあること、控訴人会社は、当初、仮払金、短期貸付金として計上していたことを考え併せると、子会社に対する支出は、控訴人会社が韓国子会社を援助するためだけの資金として供与された可能性が高いというべきであるとして排斥された事例

 

【掲載誌】  税務訴訟資料252号順号9251

 

について検討します。

 

 

主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

 

       

事実及び理由

 

 

第1 控訴の趣旨

  1 原判決を取り消す。

  2 被控訴人が平成11年7月9日付けで控訴人の平成9年10月1日から平成10年9月30日までの事業年度の法人税についてした更正のうち所得金額9462万3250円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

  3 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

 

第2 当事者の主張

   事案の概要及び当事者の主張は、原判決の「事実及び理由」、「第2事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

 

 

第3 当裁判所の判断

   当裁判所の判断は、次のとおり付加及び訂正するほかは、原判決の「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

  1 原判決13頁8行目の次に行を改めて

    「(2) 

 

控訴人は、控訴人とBとの間で、平成9年6月12日に本件業務委託契約が締結されたと主張する。

 

しかしながら、前記認定した事実によると、控訴人が韓国における市場開拓のために設立したBは、

 

その収益を上げることができなかったが、

 

Bを維持存続させるために、毎月金員の支給を行うこととし、

 

Bとの間で、本件契約書を取り交わしたことが認められるけれども、

 

 

前記認定した事実に丙作成の平成9年6月17日付け及び同月25日付け各連絡書(甲13の61及び65)の各記載に加えて、

 

控訴人は、平成10年9月期及び平成9年9月期の各事業年度の法人税の確定申告を行うに当たって、

 

Bに対して仮払金、短期貸付金、開発費等として送金した勘定科目分について、

 

これらを後目業務委託費に振り替えるなどした上で、

 

本件における確定申告書(乙4及び5)を提出したこと、

 

 

また、控訴人とBの代表取締役は、いずれも同一人であることなどの事実を併せかんがみると、

 

少なくとも、

 

平成9年6月25日当時、本件業務委託契約に関する具体的な契約条項等が控訴人とBとの間で合意され、

 

確定するに至っていたと認めることは困難であるといわざるを得ない。」

 

 

    を加え、同9行目の「(2)」を「(3)また、」と改め、同18行目の次に行を改めて

 

 

 

 

「(4) 

 

控訴人は、本件支出は、控訴人とBとの業務委託契約に基づき、

 

Bの控訴人に対する役務提供の対価として支払われたものであるから、

 

必要な経費として損金に算入されるべきである旨縷々主張するけれども、

 

前示のとおり、

 

Bが本件業務委託契約に基づく諸調査をした形跡はなく、

 

また、控訴人主張の報告書等の提出や広告宣伝活動は、B自身の事業活動の一環として行われたものと認められることに加えて、

 

控訴人が本件契約書である甲5を作成するために参照したと主張する甲13の56は、

 

その1枚目(平成9年5月21日付)と2、3枚目とが一体の文書であるか疑わしく、

 

ひいて、本件契約書がその作成日付の日に作成されたものであることにも疑問が残ること、

 

前記のとおりに同年6月25日当時においても、本件契約書の契約条項等が確定していなかった疑いがあること、

 

前記認定のとおり、控訴人は、当初、本件支出を仮払金、短期貸付金として計上していたことを考え併せると、

 

本件支出は、控訴人がBを援助するためだけの資金として供与された可能性が高いというべきである。

 

 

したがって、控訴人の上記主張は、採用できない。

 

 

    (なお、控訴人の弁論再開申立書添付資料のうち、

 

1、2は、甲18中の展示会や雑誌への広告同様、

 

Bの営業活動の資料とみられること、

 

3、4は、単なるBの伝票で、これだけでは、その支出が控訴人の本件委託業務の一環としてなされたことを証するには足りないこと、

 

5は、そもそも控訴人の平成10年9月期の業務とは無関係であることがそれぞれ指摘されるから、前記判断々覆すものではない。)」

 

    を、同23行目の次に行を改めて

 

    「(5) 控訴人は、本件課税処分が違法であるとして、その他縷々主張するが、いずれも独自の見解に立つもので、採用することができない。」

 

    をそれぞれ加える。

 

 

第4 結論

   よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

    福岡高等裁判所第4民事部

        裁判長裁判官  星野雅紀

           裁判官  土肥章大

           裁判官  近下秀明