不相当に高額な部分(2)

 

 

法人税更正処分取消等請求上告事件

 

 

【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成7年(行ツ)第110号

 

【判決日付】 平成9年3月25日

 

【判示事項】 法人税法施行令六九条一項(過大な役員報酬の額)が規定する内容からは、相当と認められる金額の予測が不可能であるから、法人税法三四条一項(過大な役員報酬の損金不算入)は憲法八四条に違反するとの上告人会社の主張が、右施行令が定めている当該役員の職務の内容、当該法人の収益及び使用人に対する給料の支給の状況という判断基準は上告人会社自身において把握している事柄であり、同業種・類似規模の法人の役員報酬の支給状況についても入手可能な資料からある程度予測ができるものであることなどから、相当であると認められる金額を超える部分であるか否かは、申告時において上告人会社においても判断可能であるとして排斥された事例

 

【掲載誌】  税務訴訟資料222号1226頁

 

 

について検討します。

 

 

 

主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       

 

理   由

 

 上告代理人田中健一、同上田和孝、同中村成人の上告理由第一点及び第二点について

 

 法人税法三四条一項の規定の趣旨、目的及び法人税法施行令六九条一号の規定内容に照らせば、法人税法三四条一項所定の「不相当に高額な部分の金額」の概念が、不明確で漠然としているということはできないから、所論違憲の主張及び同項を限定して解釈すべきであるとする主張は、その前提を欠く、原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

 

 その余の上告理由について

 

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。趣旨は、独自の見解に基づき若しくは原判決を正解しないで右判決における法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 

 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

    高等裁判所第三小法廷

        裁判長裁判官  千種秀夫

           裁判官  園部逸夫

           裁判官  大野正男

           裁判官  尾崎行信