後発的事由による更正の請求

 

 

処分取消請求事件

 

 

【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/平成13年(行ヒ)第230号

 

【判決日付】 平成15年4月25日

 

【判示事項】 相続税申告の基礎となった遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したことが国税通則法二三条二項一号に該当することを理由として更正の請求をすることはできないとされた事例

 

 

【参照条文】 国税通則法23-1

       国税通則法23-2

       民法94

       民法907-1

 

【掲載誌】  訟務月報50巻7号2221頁

 

 

について検討します。

 

 

 

 

主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       

 

理   由

 

 

 上告代理人河津和明、同鹿瀬島正剛の上告受理申立て理由について

 

 1 本件は、上告人が、亡父の相続に関して遺産分割協議に基づき相続税の申告をした後、他の相続人から遺産分割協議無効確認の訴えを提起され、同訴訟において、上記遺産分割協議が通謀虚偽表示により無効である旨の判決が確定したのを受けて、国税通則法(以下「法」という。)二三条二項一号に基づき更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため、被上告人に対し、本件処分の取消しを求めている事案である。

 

 

 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

 

  (1) 昭和六〇年一〇月二六日に死亡した亡甲野次郎の相続人は、その妻及びその子である上告人外三人である(以下、これらの相続人五人を一括して「本件相続人ら」といい、上告人以外の相続人を「他の相続人ら」という。)。

 

  (2) 本件相続人らの間において、昭和六一年四月二一日ころ、亡次郎の遺産について遺産分割協議(以下「本件遺産分割協議」という。)が成立した。

 

  (3) 上告人は、被上告人に対し、法定申告期限内である昭和六一年四月二五日、本件遺産分割協議に基づき、課税価格を三億六八三八万五〇〇〇円、納付すべき税額を一億六七六一万三五〇〇円とする相続税の申告をし、さらに、同年七月三日、課税価格を三億六八三八万五〇〇〇円、納付すべき税額を一億六七九六万二七〇〇円とする修正申告をした(以下、併せて「本件申告」という。)。

 

  (4) 他の相続人らは、昭和六二年九月四日、本件遺産分割協議が通謀虚偽表示により無効であると主張し、上告人に対し本件遺産分割協議の無効確認を請求する訴訟(以下「別件訴訟」という。)を提起した。別件訴訟について、控訴審は、平成八年一〇月二四日、本件相続人らは、上告人の主導の下に、配偶者に対する相続税額軽減規定の適用による利益を最大限に受けるべく、相続税の申告期限内に遺産分割が成立したことにするために、通謀の上、仮装の合意として本件遺産分割協議を成立させたと認定して、他の相続人らの請求を認容する判決をし、同九年三月一三日、これが確定した。

 

  (5) 上告人は、平成九年四月一四日、被上告人に対し、別件訴訟の判決確定により亡次郎の遺産は未分割の状態にあり、法定相続分により計算した相続税を超える額について、本件申告に係る課税価格及び納付すべき税額が過大になったとして、法二三条二項一号に基づき、課税価格を九七五一万六〇〇〇円、納付すべき税額を四四一五万四三〇〇円とする更正の請求をした。これに対し、被上告人は、同年六月三〇日付けで、本件処分をした。

 

 3 上記事実関係によれば、上告人は、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により本件遺産分割協議が成立した外形を作出し、これに基づいて本件申告を行った後、本件遺産分割協議の無効を確認する判決が確定したとして更正の請求をしたというのである。

 

そうすると、上告人が、法二三条一項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから、

 

同条二項一号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。したがって、本件処分は適法というべきであり、これと同旨の原審の判断は是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

 (裁判長裁判官・梶谷 玄、裁判官・福田 博、裁判官・北川弘治、裁判官・亀山継夫、裁判官・滝井繁男