役務提供の内外判定

 

 

更正処分取消等請求事件

 

 

【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成20年(行ウ)第730号

 

【判決日付】 平成22年10月13日

 

【判示事項】 本件は,カーレースへの参戦及びその企画運営を行う有限会社である原告が,平成15年から17年にわたる各課税期間の消費税及び地方消費税について更正処分を受けたことから,税務署長の異議決定,国税不服審判長の裁決を経て一部取り消された後の上記更正処分の一部及びこれらに係る過少申告加算税賦課金決定処分の取消しを求め,原告と各スポンサー企業との間のスポンサー契約における役務提供地が国外であり,国外売上げであって課税対象とならない(不課税取引)と主張したが,認められなかった事例

 

【掲載誌】  税務訴訟資料260号順号11533

 

 

について検討します。

 

 

主   文

 

 1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       

 

事実及び理由

 

第1 請求

 1 処分行政庁が原告に対し,平成19年2月26日付けでした平成15年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成15年12月課税期間」という。)の消費税の更正処分のうち納付すべき税額565万8800円を超える部分及び同課税期間分の地方消費税の更正処分のうち納付すべき譲渡割額141万4700円を超える部分並びにこれらに対する過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,いずれも平成19年7月19日付けの処分行政庁の異議決定及び平成20年6月16日付けの国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。

 2 処分行政庁が原告に対し,平成19年2月26日付けでした平成16年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成16年12月課税期間」という。)の消費税の更正処分のうち納付すべき税額562万1300円を超える部分及び同課税期間分の地方消費税の更正処分のうち納付すべき譲渡割額140万5300円を超える部分並びにこれらに対する過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,いずれも平成19年7月19日付けの処分行政庁の異議決定により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。

 3 処分行政庁が原告に対し,平成19年2月26日付けでした平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成17年12月課税期間」という。)の消費税の更正処分のうち納付すべき税額1067万3400円を超える部分及び同課税期間分の地方消費税の更正処分のうち納付すべき譲渡割額266万8300円を超える部分並びにこれらに対する過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし,いずれも平成19年7月19日付けの処分行政庁の異議決定により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。

 

 

第2 事案の概要

  本件は,カーレースへの参戦及びその企画運営を行う有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「会社法整備法」という。)1条3号の規定による廃止前の有限会社法の規定による有限会社であって,会社法整備法2条1項に基づき会社法の規定による株式会社として存続するもの)である原告が,平成15年から平成17年にわたる各課税期間(これらの課税期間を総称して「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について,麻布税務署長から,平成19年2月26日付けで,国外売上げであって課税対象となる売上げに当たらないとした売上げが課税対象となるとし,課税控除の対象となるとした国外仕入に係る仕入金額が課税仕入に係る支払対価の金額に該当しないことを理由として,それぞれ更正処分を受けたことから,上記課税仕入に係る支払対価の金額については争わず,各スポンサー企業との間のスポンサー契約(以下「本件各スポンサー契約」という。)における役務提供地が国外であり,同契約の契約金が国外売上げであって課税対象となる売上げに該当しないこと(不課税取引)を理由として,麻布税務署長の異議決定,国税不服審判所長の裁決を経て一部取り消された後の上記各更正処分の一部及びこれらに係る過少申告加算税賦課決定処分の各取消しを求めている事案である。

 

 

 

 1 関係法令等の定め

   略

  

 

 

 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

 

  (1) 原告とインディーレーシングリーグ

   ア(ア) 原告は,本件各課税期間当時,東京都港区α×番16号に本店事務所を置き,①国内外におけるカーレースへの参戦をするためのカーレースチームの企画,運営,②広告の制作とその取扱業,③映画,テレビ,ラジオ,写真,広告,新聞,雑誌,書籍等への筆稿,出演,掲載等のマネージメント,④経営コンサルタント業等を行う法人(有限会社)である。(乙4)

    (イ) 原告は,本店事務所のほか,カート事務所を設けている。また,原告は静岡県御殿場市内に工場(以下「P1工場」という。)を有している。(乙5ないし8)

   イ(ア) インディーレーシングリーグ

      インディーレーシングリーグ(以下「インディー」という。)は,アメリカ合衆国(以下「アメリカ」という。)を中心として開催されている自動車レースであり,1年間に一定数のレースを開催し,レースごとの成績に応じてドライバー,チームに付与されるポイントを通算し,ドライバーチャンピオン,チームチャンピオン等が決定されている。(甲9)

    (イ)a 原告は,P2株式会社(以下「P2」という。)との間で,平成14年12月10日,IRLスポンサーシップ契約を締結した(以下「P2との平成15年スポンサー契約」という。)。また,ほぼ同様の内容で,平成15年12月25日,平成16年12月22日にもIRLスポンサーシップ契約(以下,それぞれ,「P2との平成16年スポンサー契約」,「P2との平成17年スポンサー契約」といい,平成15年ないし平成17年にわたり締結された上記の各契約を総称して「P2とのスポンサー契約」という。)を締結した。(甲1の1ないし3,甲9)

     b 原告は,P3株式会社(以下「P3」という。)との間で,平成15年2月1日,IRLスポンサー契約(以下「P3とのスポンサー契約」という。)を締結した。(甲2,甲9)

     c 原告は,株式会社P4(以下「P4」という。)との間で,平成15年1月21日,IndyRacingLeague-IndyCarシリーズスポンサー契約(以下「P4とのスポンサー契約」という。)を締結した。(甲3,甲9)

     d 原告は,P5株式会社(以下「P5」という。)との間で,P5の代理人である株式会社P6(以下「P6」という。)を介し,平成15年3月20日,IRLスポンサー契約(以下「P5とのスポンサー契約という。」)を締結した。(甲4,甲9)

    (ウ) インディーは,平成15年には,3月2日から10月12日まで,合計16レースが開催され(うち1レースが栃木県内において4月13日に開催されている。),平成16年には,2月29日から10月17日まで,合計16レースが開催され(うち1レースは栃木県内において4月17日に開催されている。),平成17年には,3月6日から10月16日まで17レースが開催(うち1レースが栃木県内において4月30日に開催されている。)された。

      そして,原告は,P7社との間において締結したレーシングオペレーション契約(以下「本件オペレーション契約」という。)に基づき,P8の名称の下に,上記各シーズンにおけるインディーに参戦した。なお,実際にレースに参戦するまでに,インディーカーレース参戦用の車両(シャーシー)及び必要な部品を調達し,P7社が有しているアメリカのインディアナポリスの工場において,レース参戦用車両の調整及びテストを行い,車両を各レースが行われるサーキットに搬送し,サーキットにおいて再調整及びテストを行った上,レースに参戦している。

                 (以上につき,甲1,甲5,甲9,乙25)

  (2) 本件訴訟に至るまでの経過

   ア 原告の確定申告

     原告は,本件各課税期間の消費税等について,各確定申告書に別表Ⅰ1ないし3の各「確定申告欄」のとおり記載して,それぞれ,平成16年3月1日,平成17年2月28日及び平成18年2月28日に,麻布税務署長に提出した。(甲5,甲6,乙1ないし3)

   イ 麻布税務署長の更正処分

     麻布税務署長は,平成19年2月26日,原告の上記の確定申告に基づき,本件各課税期間について,別表Ⅰ1ないし3の各「更正決定」欄のとおりの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下において,各課税期間における更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を併せて「更正処分等」といい,本件各課税期間における各更正処分等をそれぞれ「平成15年12月課税期間更正処分等」,「平成16年12月課税期間更正処分等」及び「平成17年12月課税期間更正処分等」という。)をした。(甲5,甲6)

   ウ 異議申立て

     原告は,上記各更正処分等について,平成19年4月20日,異議の申立てをしたところ,麻布税務署長は,同年7月19日付けで別表Ⅰ1ないし3の各「異議決定」欄のとおり,麻布税務署長の本件各課税期間における各更正処分等について,それぞれその一部を取り消し,その余を却下する旨の異議決定をした。(甲5,甲6)

   エ 審査請求

     原告は,本件各課税期間についての異議決定を経た後の各更正処分等について,平成19年7月27日に国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成20年6月16日付けをもって,別表Ⅰ1ないし3各「審査裁決」欄のとおり,麻布税務署長の平成15年12月課税期間更正処分等(上記異議決定において一部取り消された後のもの)の一部をそれぞれ取り消し,その余を棄却する旨の裁決をした。(甲5)

     なお,本件訴訟において被告が主張する原告の本件各課税期間の消費税等に係る課税標準額及び納付すべき税額等は別表Ⅱ1ないし3のとおりであり,その根拠及び計算に関する被告の主張は別紙1「課税の根拠及び計算」のとおりである。

   オ 本件訴訟の提起

     原告は,平成20年12月16日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)

 3 争点

   本件各スポンサー契約に基づいて原告がした役務の提供の不課税取引該当性(消費税法4条3項2号,消費税法施行令6条2項7号の適用の有無)

 4 争点に関する当事者の主張の要旨

  (原告の主張の要旨)

  (1) 本件各スポンサー契約は,以下のとおり,国外レースへの参戦を目的として締結され,原告の役務提供は国外で行われることが契約において予定されていると認められるというべきであるから,本件各スポンサー契約における契約金は,国外での役務提供の対価であり,消費税の課税対象とならない。

   ア 本件各スポンサー契約について

    (ア) P2とのスポンサー契約について

      P2とのスポンサー契約においては,P2がインディーへの参戦をすることについて契約金を支払うとされ(第1条),原告がP7社と協力して,インディーの平成15年及び平成16年の全16戦及び平成17年の全17戦の各レースに参戦するチームを運営し(第2条),原告が各インディーへ参戦することが義務付けられており,その対価として契約金が規定されている。そして,上記レースに参戦する義務に付随して各種の付随義務を負担することが規定されているから,原告の役務提供がインディーへの参戦にあることは明らかである。

      本件各インディーの開催地は,契約時において,各年とも1戦のみが本邦国内であり,その他はアメリカ国内であることが確定していたのであって,その役務提供地は具体的に特定しており,年間16ないし17戦の各レース開催地が役務の提供地となる。

    (イ) P3とのスポンサー契約

      P3とのスポンサー契約においては,原告のインディーへの参戦が義務付けられ(第1条),参戦義務に基づいて複数の義務が課せられており(第2条),その対価として契約金が規定され(この点,レース数の減少に伴う金額の調整に関する規定(第4条)が設けられ,対価額の規定(第3条)が各年度のインディーのレース数を16戦として規定されていることからも明らかである。),その他の付随的義務は,いずれもインディーへの参戦義務に付随するものであるといえるから,その役務提供の場所は,上記(ア)と同様,特定されていたといえる。

    (ウ) P4とのスポンサー契約

      P4とのスポンサー契約においては,原告はインディー全戦に参戦し(第1条),その対価として契約金が支払われ(第2条),その余の当該レース参戦義務に付帯して原告が求められる事項については対価を要せず,これらの義務はインディーのレギュレーションに抵触しない範囲内を限度とすること(第3条)が定められているから,その役務提供の内容がレース参戦にあることは明らかであり,その役務提供の場所は,上記(ア)と同様,特定されていたといえる。

    (エ) P5とのスポンサー契約

      P5とのスポンサー契約は,原告にインディーへの参戦が義務付けており(第1条),その参戦への義務に基づいて複数の義務が定められ(第2条),この義務の対価として契約金が定められており(この点,レース数の減少に伴う金額の調整に関する規定(第4条)が設けられ,対価額の規定(第3条)が平成15年のインディーのレース数を15戦として規定されていることからも明らかである。),各役務提供がレース参戦に付随するものであることが明らかであることからすれば,その役務提供の場所は,上記(ア)と同様,特定されているものといえる。

   イ 本件各スポンサー契約における義務の内容

    (ア) 原告の具体的な事業は,原告がレースに参戦するため,レーシングチームをコーディネイトして,その参戦費用を各企業に拠出してもらい,又は,レースに参戦したいとする企業の依頼に基づいて,レースチームをコーディネイトして,当該企業のためにレースに参戦することにある。

      原告と契約する企業は,商号・商品名・ロゴマークをチーム名に付したり,そのステッカーをレーシングカーやドライバースーツ等に貼付し,当該レーシングカーやドライバーがレースに参戦することによってメディアを通じて広告をすることができるのであり,原告は,各企業の広告宣伝のためレースに参戦し,その対価として契約金を受領する。

      したがって,原告においては,レースに参戦するという役務が本来的役務であり,レーシングチーム関係者のイベントへの参加やチーム全員の肖像権の使用許諾等を通じて当該企業の広告宣伝活動等に協力する義務は上記本来的役務に付随するものにすぎず,役務提供に対する対価を生じることはない。

    (イ) そして,上記(ア)のとおり,本件各スポンサー契約における契約金は,原告において,レース参戦に必要な費用の見積りをした上でこれを基礎に算定したものであるから,レース数を基礎に合理的に区分することができ,本件各スポンサー契約の契約書においてもレース数の増減に伴う契約金の調整について定めた条項が存在することに照らしても,国内で実施されるレース数と国外において実施されるレース数の割合で区分することができる。したがって,少なくとも平成15年及び平成16年の本件各スポンサー契約における契約金の16分の15,平成17年の本件各スポンサー契約における契約金の17分の16については,国外における役務提供の対価とされるものである。

  (2) 本件における役務の提供に係る事務所は日本国内に存しないこと

    原告がP7社との間で締結した本件オペレーション契約において,原告のインディー参戦に際しては,P7社のインディアナポリスに所在する工場をチームの固定的施設として使用し,レース期間中レース地との往復作業を行う旨が取り決められている。原告は,かかる工場及び年間16又は17レースの各レース場において各レースチームに割り当てられている,いわゆるガレージエリア,ピットエリア及びパーキングエリア等を役務提供の拠点としている。また,各レースにおいては,原告の担当職員をインディアナポリス又は各レース場に派遣するなどして事務を行わせていた。

    したがって,インディーに関する各スポンサーとの間の契約の役務提供に係る「事務所等」はアメリカのインディアナポリス及び各レース場に存した以上,本邦において開催された毎年の1レース分を除き,その役務の提供は国外で行われていたものとなる。

  (被告の主張の要旨)

  (1) 本件各スポンサー契約に基づいて原告が行う役務の提供は,消費税等の課税の対象となること

   ア 本件各スポンサー契約の各契約書の記載によれば,原告は各種の義務を負っているところ,これらに基づいて原告が行う役務の提供場所は,国内と国外の双方と認められ,対価の額について,国内対応分と国外対応分とに区別されていない。そうすると,「同一の者に対して行われる役務の提供で役務の提供場所が国内と国外の双方で行われるもののうち,その対価の額が合理的に区別されていないもの」(消費税法基本通達5-7-15後段)に該当する。

     したがって,これら原告が行う役務の提供は,「国内において事業者が行った資産の譲渡等」(消費税法4条1項)に該当し,消費税等の課税の対象となる。

     なお,原告は,対価性が認められる原告の役務の提供がレース参戦のみであったとするが,本件各スポンサー契約において,役務の提供に係る対価の額は一括して定められており,国内対応分と国外対応分とを合理的に区別することはできないし,原告の業務量と各スポンサーにとっての広告効果が異なることは明らかであるから,合理的とはいえない。

   イ レースへの参戦以外の役務はそれに付随するものにすぎず,消費税等の課税対象とはならないとする原告の主張が失当であること

    (ア) P2とのスポンサー契約(甲1の1ないし3)に基づく原告の役務の提供に対価性があること

      P2とのスポンサー契約の各契約書には,原告がインディーに参戦することのみならず,各種の義務を履行することを条件にP2が契約金を支払う旨規定した条項があるから,本件各契約書に記載された原告の義務それぞれに対価性があることは明らかである。

    (イ) P3とのスポンサー契約(甲2)に基づく原告の役務の提供に対価性が認められること

      P3とのスポンサー契約の契約書には,原告がインディーに参戦することのみならず,販売促進活動への協力,レーシングカーの無償貸出し,チーム写真の広報用途への無償使用等の役務の提供が明記されている(第2条。なお第3条参照)から,P3が原告に対して支払う契約金が,P3が指定するロゴマークを貼付してインディーに出走するのみならず,P3の広告宣伝活動等の役務の提供の対価であることは明らかである。

      他方,原告がレースごとに独立性の根拠とする本件契約書第4条は,当初取り決められたレース数について,予定よりも実際のレースが増減した場合の取決めにすぎず,原告が提供する役務の内容を決する条項ではない。

    (ウ) P4とのスポンサー契約(甲3)に基づく原告の役務の提供に対価性が認められること

      P4とのスポンサー契約の契約書の第3条2項は,P4指定のロゴマークの貼付に関する事項について,レースシリーズのレギュレーションに抵触しない範囲を限度とする旨規定しているにすぎず,レース参戦以外の役務の提供に対価性がないことの根拠となるものではない。

      また,P4は,P4が本件契約書に基づいて原告に対して支払う契約金が,本件契約書に基づいて原告が行う役務の提供の対価であると判断していた。

    (エ) P5とのスポンサー契約(甲4)に基づく原告の役務の提供に対価性が認められること

      P5とのスポンサー契約の契約書には,第2条に原告の義務として,原告がインディーに参戦することのみならず,P5の広告宣伝活動及び販売促進活動に協力すること等の役務の提供が明記されているから,P5が原告に対して支払う契約金が,P5が指定するロゴマークを貼付してインディーに参戦するほか,P5の広告宣伝活動等の役務の提供の対価であることは明らかである。

      本件契約書第4条は,単にレース数の増減があった場合の規定にすぎない。

  (2) 本件における原告の役務の提供に係る事務所等がインディアナポリスに所在するP7社の工場であるとは認められないこと

    原告が事業を行うに当たって使用している施設は,本店事務所,カート事務所及びP1工場であり,いずれも国内に所在している。

    本件オペレーション契約(乙25)に記載されたP7社が履行すべき業務(3項A・D)によれば,P7社のインディアナポリスに所在するとされる工場は,P7社が本件オペレーション契約に基づいて原告から委託された業務を行う施設であるにすぎず,原告に係る「事務所等」(消費税法施行令6条2項7号)に該当するものではない。したがって,原告の役務の提供に係る事務所等は国内にしか存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3 当裁判所の判断

 

 1 消費税法4条1項は,国内において事業者が行った役務の提供を含む資産の譲渡等に消費税を課するとし,

 

同条3項2項は,資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定について,

 

「役務の提供」は当該役務の提供が行われた場所が国内にあるかどうかにより行うとした上で,

 

当該役務の提供が運輸,通信その他国内及び国内以外の地域にわたって行われるものである場合等については政令で定めるとする。

 

そして,これを受けた消費税法施行令6条2項7号は,1号ないし6号において列挙された役務の提供以外のもので国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明らかでないものについては,

 

役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより判断するものとしている。

 

 

   消費税法施行令6条2項7号の趣旨は,消費税法上の原則的な扱いとしては役務の提供が行われた場所を管轄の基準とするが,

 

個々の役務の提供が国内及び国内以外の地域にわたって行われる場合には,

 

役務の提供場所の把握が事実上極めて困難であることにかんがみ,

 

国内に事務所等の物理的な存在のある事業者についてのみ課税を行うことで課税上の便宜及び明確化を計ったものと解される(乙28)。

 

そうすると,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供であっても,当該役務の現実的な提供場所が国内と国内以外の地域とに区分することができ,

 

かつ,これら役務の提供に係る対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区分されるものは,

 

国内の役務に対応する対価の額をもって消費税等の課税標準を定めることが可能である

 

(消費税法28条1項参照)から,

 

同号にいう「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供」には当たらないものと解される。

 

一方,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供のうち,役務の提供に係る対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区分されていないものについては,

 

当該役務の現実的な提供場所が国内と国内以外の地域とに区分することができたとしても,

 

対価の額に対応する役務の提供場所の特定ができないから,同号の趣旨が当てはまるものといえる。

 

 

   したがって,同号における「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」とは,

 

役務の提供が国内と国外との間で連続して行われるもののほか,同一の者に対して行われる役務の提供で役務の提供場所が国内及び国内以外の地域にわたって行われるもののうち,

 

その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されていないものをいうと解するべきである(消費税法基本通達5-7-15後段参照)。

 

 

   以下,上記の観点から本件各スポンサー契約において原告が提供する役務が消費税法施行令6条2項7号に該当するか検討する。

 

 

 

 

 

 

 2 P2とのスポンサー契約について

  (1)ア P2とのスポンサー契約において原告が提供する役務が「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たるかを判断するためには,スポンサー契約において原告が負担する役務の内容を明らかにする必要があるところ,前記前提事実,証拠(甲1の1ないし3,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。

    (ア) インディーは,アメリカを中心として開催されている自動車レースであり,1年間に一定数のレースを開催し,レースごとの成績に応じて付与されるポイントを通算し,ドライバーチャンピオン,チームチャンピオン等が決定されている。

      平成15年中のインディーは,同年3月2日から同年10月12日まで,アメリカ国内において15レース,栃木県内において1レース(同年4月13日開催)の合計16レースが開催され,平成16年中のインディーは,同年2月29日から同年10月17日まで,アメリカ国内において15レース,栃木県内において1レース(同年4月17日開催)の合計16レースが開催され,平成17年中のインディーは,同年3月6日から同年10月16日まで,アメリカ国内において16レース,栃木県内において1レース(同年4月30日開催)の合計17レースが開催されており,原告はP7社と協力して結成したチームによりこれらに参戦をしている。

                           (以上につき,甲9)

    (イ) 平成14年12月10日,原告は,P2との間で,P2との平成15年スポンサー契約を締結しているところ,その概要は,以下のとおりである(甲1の1)。

     a 原告は,平成15年インディー全16戦(以下,当該契約については「本レース」という。平成15年3月2日から同年10月12日まで開催され,日本国内において開催される1レースを含む合計16戦)において,十分な競争力を保って競技するため,原告が選定しP2が承諾した米国インディアナ州P7社と本レースへの参戦について本件オペレーション契約を締結し,相互に協力して本レースに参戦するチームを運営する。(2条)

     b 原告は,本レースへの参戦につき,① 原告が選定しP2が承認したドライバー(以下「ドライバー」という。)との間で,P2の指示及び了解を得て下記cに定める業務を行わせるために必要な契約を締結し,ドライバーの管理及びマネジメント業務を行う。(3条1項)

     c 原告は,本レースへの参戦につき,チームをして,① P2が指定するレーシングスクール又はドライビングスクールの参加者に対して運転技術の指導を行うこと,② P2が推進するオーバルコースを活用したレース及びそのレース車両の開発に協力すること,③ P2及びP2の関係会社が国内外で開催する講演,デモンストレーション走行,その他プロモーションイベントに協力すること,④ P2が指定する映画,テレビ番組及びラジオ番組へ出演すること,⑤ P2が指定する新聞,雑誌その他の出版物へのコメント及び声明を発表すること,⑥ P2及びP2の関係会社の広告宣伝及び販売促進活動に協力すること,などを遵守させる(3条2項)。

     d P2は,契約金として総額470万米ドル及びこれに係る消費税等相当額を分割(平成14年12月27日から平成15年8月25日まで,22万米ドルから100万米ドルまでの不均等額による9回の分割払。)して銀行振込の方法により原告に支払う。(4条)

     e 本レースにおいて決勝が行われたレースの回数が16回より増減した場合には,契約金の総額から1レース当たり9.8万米ドルを増額又は減額する。原告又はP7社の責めに帰すべき事由によりドライバーが本レースに出走できなかった場合には,契約金の総額から1レース当たり9.8万米ドルを減額する。(5条1項,2項)

     f 原告は,本レースにおいて使用されるレーシングカー,ドライバースーツ,ヘルメットその他P2の指定する物のP2が指示する場所にP2指定のステッカー又はワッペンを合計5か所以上貼付する。(6条1項)

     g P2は,ドライバー,チームスタッフ及びレーシングカーをP2又はP2の指定する者が撮影した写真,映画,ビデオその他の著作物を予めその使用方法を原告に通知し,承認を得た上でP2の販売促進及び宣伝のために使用し又はP2若しくはP2の関係会社の製品を販売する者に全世界において無償で使用させることができる。(7条1項)

     h 本契約の有効期間は,平成14年12月10日から平成15年12月31日までとする。(13条本文)

    (ウ) 上記契約金470万米ドルは,原告とP2において,インディーへの参戦費用が,年間720万米ドル必要であるとの見積りがされ,この金額から他のスポンサー企業からの契約金を差し引いた額をP2が負担するという条件を提示し,P3が250万米ドルを負担することになったことから,その残額(470万米ドル)として決められた。

    (エ) 平成15年12月25日,原告は,P2との間で,P2との平成16年スポンサー契約を締結した(甲1の2)。その内容は,P2との平成15年スポンサー契約とほぼ同様であり,日本国内における開催レースを含む全16戦(平成16年2月29日から同年10月17日まで),契約金470万米ドル(同年1月25日から同年9月25日まで,22万米ドルから100万米ドルまでの不均等額による9回の分割払。)とされていた。そして,P2との平成16年スポンサー契約の有効期間は,同年1月1日から同年12月31日までとされていた(13条)。

    (オ) 平成16年12月22日,原告は,P2との間で,P2との平成17年スポンサー契約を締結した(甲1の3)。その内容は,レース数及び契約金額を除き,P2との平成16年スポンサー契約とほぼ同様であり,日本国内における開催レースを含む全17戦(平成17年3月6日から同年10月16日まで),契約金493万0500米ドル(同年1月25日から同年9月25日まで,20万米ドルから113万0500米ドルまでの不均等額による9回の分割払。)とされていた。そして,P2との平成17年スポンサー契約の有効期間は,同年1月1日から同年12月31日までとされていた(13条)。

 

 

 

   イ 以上の事実によれば,インディーは,開催レースごとに順位が付されるものの,

 

その一方で,1年間に行われた各レースの成績を通算し,ドライバーやチームの成績が決められる仕組みとされており,

 

ドライバーやチームのスポンサーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣伝効果を期待することができる(乙34参照)。

 

 

そして,P2とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,年間全16戦ないし17戦行われる各レースへの参戦のみならず,

 

P7社と本件オペレーション契約を締結してレースに参戦するチームを運営すること,

 

ドライバーの管理及びマネジメント業務やドライバー等の肖像権をP2が無償で使用することの許諾等が明記され,

 

これら義務が約1年間(各レースが行われていないシーズン前後の各2か月(計4か月)も含まれている。)にわたって継続する内容とされており,

 

出資者が期待を寄せる宣伝効果がより高くかつレース参戦時以外においても持続するような義務内容とされており,

 

原告が負担する役務の内容も年16回ないし17回の個々のレースへの参戦に尽きるとはいい難いものとなっている

 

(その意味において,P2とのスポンサー契約3条において原告が負担する各種の役務について,格別対価に関する定めが設けられていない点についても,契約当事者の合理的意思としては,契約金において評価されており,別途対価を徴収しない趣旨と理解できる(乙34参照)。)。

 

 

     他方,P2とのスポンサー契約において原告が負担する役務の対価としてP2が支出する契約金は,平成15年分及び平成16年分には各470万米ドル,平成17年分には493万0500米ドルとされているところ,いずれも総額が記されるにとどまり,個々のレース参戦に応じた契約金・支払とはされていない上,その支払方法はいずれの年度も不均等額による9回払とされており,年間のレース数やスケジュールとの個別的な対応を見いだすことはできない(なお,平成15年及び平成16年と平成17年では,上記契約金額を開催レース数で割る方法により算出した1レース当たりの金額も異なる上,個々のレース参加に要する費用もレースの開催場所等にかかわらず同額とは解されない。)。そして,上記のとおりP2とのスポンサー契約は,毎年,12月31日までの約1年間の有効期間(ただし,平成15年分は平成14年12月10日から平成15年12月31日まで)が設けられ,契約金もその期間を前提として定められている。加えて,契約の更新についても,前年の6月から10月までの間にP2が申し出ることによって翌年の1年間の契約の更新がされる内容とされている。

 

     加えて,原告とP2との間において,P2とのスポンサー契約が締結されるまでには,インディーに参戦すること及び年間を通じて必要とされる参戦費が決められ,後記P3が負担する額を控除した残額をP2が負担するものとされて契約金が決められたという経緯があり,各年における個々のレース参戦における原告の役務内容やそれに対するP2の経済的評価等の存在をうかがうことはできない。レースの回数が増減した場合に,契約金の総額から1レース当たり9.8万米ドルを増額し又は減額する旨の約定はあるが,そのことによって個々のレースごとに役務提供の対価が定められているということができないことは,後記6(1)において説示するとおりである。

 

     そうであるとすれば,P2とのスポンサー契約において原告が負担した役務の提供は各年の個々のレース参戦に限定されていると評価することは到底できず,上記のとおりドライバーの管理及びマネジメント業務やドライバー等の肖像権のP2による無償使用等にわたるものと解するべきであり,各年における16戦ないし17戦のレース参戦と上記のその余の役務提供に対し,一括して470万米ドル又は493万0500米ドルの契約金が定められたものといえ,もとより,これら原告が受領する対価が,国内を提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価とに合理的に区別できるとも解されない。

 

     したがって,原告がP2とのスポンサー契約において負担した上記役務の提供は,その全体が各年の契約金を対価としているものと認められ,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみるとしても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行われるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはいえない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。

 

 

  (2) そうすると,原告とP2とのスポンサー契約において原告の役務の提供に係る事務所等の所在地(消費税法施行令6条2項7号)が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断される。

 

そして,同号にいう「事務所等」とは,役務の提供に直接関連する事業活動を行う施設をいうものと解され,その所在地をもって,役務の提供場所に代わる課税対象となるか否かの管轄の基準としている趣旨からすれば,当該役務の提供の管理・支配を行うことを前提とした事務所等がこれに当たると解されるというべきである。

 

    しかるに,上記(1)のとおり,P2とのスポンサー契約において原告が負担した役務の提供はレース参戦に尽きるものではなく,ドライバーの管理及びマネジメント業務,ドライバー等の肖像権の無償使用等にわたるものであるところ,

 

原告は,前記前提事実(1)アのとおり,国内に本店事務所,カート事務所及びP1工場を有する一方,レースについてはアメリカのP7社とのレースオペレーション契約(乙25)に基づいて専ら同社により行われていることから,原告の上記役務の提供に係る事務所等に当たるのは原告の本店事務所であると認められる(なお,原告はアメリカのインディアナポリスに所在するP7社の工場内に原告の役務の提供に係る事務所が存在する旨主張するが,当該主張を採用することができないことは後記6(4)に説示する。)。

 

したがって,原告がP2とのスポンサー契約よって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は日本国内であると認められる。

 

 

  (3) 小括

    よって,原告とP2との間に締結されたスポンサー契約において原告が負担する役務の提供であるインディー参戦等は,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当たり,その役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は,いずれも日本国内に存在すると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。

 

 

 

 

 3 P3とのスポンサー契約について

  (1)ア 前記前提事実,証拠(甲2の1,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,前記2(1)ア(ア)の事実の外,原告とP3とのスポンサー契約に関して,以下の事実を認めることができる。

    (ア) 平成15年2月1日,原告は,P3との間で,P3とのスポンサー契約を締結しているところ,その概要は,以下のとおりである(甲2)。

     a 原告は,平成15年から平成17年のインディーに「P8」(以下,本契約において「チーム」という。)として参戦し,チームとしてレーシングカー1台とレーシングドライバー1人でインディーのレースの全戦に参戦するほか,以下の義務を負う。(1条,2条1項)

      (a) 平成15年のインディーのレースは16戦(平成15年3月2日から同年10月12日まで開催され,日本国内において開催される1レースを含む合計16戦)とする。(2条2項)

      (b) 原告はチームが使用するレーシングカー並びにレーシングスーツ及びヘルメットに,P3指定のロゴマークを所定の場所に貼付する。(2条4項,5項)

      (c) 原告は,インディーにおける又はそれを利用したP3の販売促進活動に,インディーのレースに支障を来さない範囲においてできる限り協力する。(以下略)(13項)

      (d) 原告は,上記(c)に伴い,P3が日本国内において,原告が展示用として保持しているレーシングカーを必要とする場合には,これを無償で貸し出すものとする。(以下略)(14項)

      (e) 上記(c)に伴い,P3がチーム責任者であるP9若しくはレーシングドライバー又はチーム員の参加を求めた場合には,原告はインディーのレース活動に支障を来さない範囲において,それに協力しなければならない。(以下略)(15項)

      (f) 原告はインディーのチームのレース活動の写真をP3の広報用としての用途に限り無償で提供する。(以下略)(17項)

      (g) 原告はチームのレーシングドライバー,チーム員(P9を含む),レーシングカーの肖像権を無償にて提供する。(以下略)(18項)

     b P3は,上記aの原告の義務の対価として,毎年250万米ドル(消費税別)を支払う。(3条)

       なお,平成15年は,平成15年2月28日に31万2500米ドル,同年4月30日に218万7500米ドルを,平成16年は,平成16年2月27日に31万2500米ドル,同年4月30日に218万7500米ドルを,平成17年は,同年2月28日に31万2500米ドル,同年4月28日に218万7500米ドルを,それぞれ支払う。

     c インディーのレース数が16戦を上回るか下回る場合には,1戦当たり5万2000米ドル(消費税別途)を前条規定の対価から増減するものとする。原告の過失に基づく事由によりチームが,インディーのレースに参戦できなかった場合には,P3はペナルティとして15万6000米ドル(消費税別途)を請求することができる。(以下略)(4条,10条)

     d 本契約の有効期間は平成15年2月1日から平成17年12月31日までとする。(以下略)(5条)

    (イ) なお,上記契約金250万米ドルは,インディーへの参戦費用が,年間720万米ドル必要であるとの見積りがされ,この金額から他のスポンサー企業からの契約金を差し引いた額をP2が負担するという条件を提示されたことを受け,まず,P3が250万米ドルを負担することとし,その残額である470万米ドルがP2の契約金とされた。

   イ 前記2イのとおり,インディーは,開催レースごとに順位が付されるものの,その一方で,1年間の各レースの成績を通算し,ドライバーやチームの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチームのスポンサーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,上記事実によれば,P3とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,P7社と共にチームとしてインディー全戦に参戦すること,その使用するレーシングカー等にロゴマーク等を貼付すること,展示用レーシングカーの無償貸出し,ドライバー等の肖像権のP3による無償使用の許諾等が明記され,これらの義務が約3年間(各レースが行われていないシーズンも含む。)にわたって継続する内容とされており,出資者が期待を寄せる宣伝効果がより高くかつレース参戦時以外においても持続するような義務内容とされていることに加え,本契約締結時においては,平成15年中の個々のレースの開催場所は既に決まっていたものの,平成16年以降のレースの開催場所・開催数は明確になっていなかったことを考慮すると,契約当事者としても個々のレースへの参戦のみに着目して契約を締結したとみることはできず,P3とのスポンサー契約において原告が負担する役務の内容も年16回ないし17回の個々のレースへの参戦に尽きるとは到底認められないものとなっている(その意味において,P3とのスポンサー契約2条14項,17項及び18項における「無償」との記載についても,契約当事者の合理的意思としては,契約金において評価されており,別途対価を徴収しない趣旨と理解できる(乙34参照)。)。

 

     他方,P3とのスポンサー契約において原告が負担する債務の対価としてP3が支出する契約金は,平成15年から平成17年にかけて毎年250万米ドルとされているところ,いずれも1年分の総額が記されるにとどまり,個々のレース参戦に応じた契約金・支払とはされていない上,その支払方法は年度も2月及び4月の不均等額による2回払とされており,年間のレース数やスケジュールとの個別的な対応を見いだすことはできない。そして,上記のとおりP3とのスポンサー契約は約3年間の有効期間が設けられており,契約金もその期間を前提として定められている。さらに,上記のとおりP3とのスポンサー契約締結時点において,平成16年以降のレースの開催場所等が明確にされていなかった(現に,平成17年には17レースとされている。)にもかかわらず,高額な対価の支払が約されていることに照らせば,契約当事者において,各シーズンにおける個々のレースへの参戦というよりは,シーズンを通じてのレース参戦・宣伝効果を念頭におき,それを前提として契約を締結したものと解される。

 

     加えて,原告とP3との間において,P3とのスポンサー契約が締結されるまでには,ひとまず原告とP2との間においてインディーに参戦すること及び年間を通じて必要とされる参戦費を決めた上で,P3が負担する額を控除した残額をP2が負担するものとして各契約金が決められたという経緯があり,各年における個々のレース参戦における原告の役務内容やそれに対するP3の経済的評価等の存在をうかがうことはできない。レースの回数が増減した場合に,契約金の総額から1レース当たり5万2000米ドルを増額し又は減額する旨の約定はあるが,そのことによって個々のレースごとに役務提供の対価が定められているということができないことは,後記6(1)において説示するとおりである。

 

     そうであるとすれば,P3とのスポンサー契約において原告が負担した役務の提供は各年における個々のレース参戦に限定されていると評価することは到底できず,上記のとおりドライバー等の肖像権のP3による無償使用等にわたるものと解すべきであり,各年における16戦ないし17戦のレース参戦と上記役務提供に対し,一括して250万米ドルの契約金が定められたものといえ,もとより,これら原告が受領する対価が,国内を提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価とに合理的に区別できるとも解されない。

 

     したがって,

 

P3とのスポンサー契約において原告が負担する上記役務の提供は,その全体が各年の契約金を対価としているものと認められ,

 

その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されていない

 

(仮にレース参戦の点だけからみるとしても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行われるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはいえない。)から,

 

「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。

 

  (2) そうすると,P3とのスポンサー契約により原告が提供する役務に係る事務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断されるところ,前記2(2)のとおり,原告は,本店事務所,カート事務所及びP1工場を有するも,それらの他に上記(1)において認定した役務の提供の管理・支配を行うことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告がP3とのスポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は日本国内であると認められる。

 

  (3) 小括

    よって,P3との間に締結されたスポンサー契約において原告が負担する役務の提供は,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当たり,その役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は日本国内に存在すると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。

 

 4 P4とのスポンサー契約について

  (1)ア 前記前提事実,証拠(甲3,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,前記2(1)ア(ア)の事実の外,原告とP4とのスポンサー契約に関して,以下の事実を認めることができる。

     平成15年1月21日,原告は,P4との間で,P4とのスポンサー契約を締結しているところ,その概要は,以下のとおりである(甲3)。

    (ア) 原告は,以下の体制をもって,インディーに参戦する。(1条)

    (イ) P4は,上記(ア)のレース活動に対するスポンサーとなり,1年当たり3000万円(消費税額含)を毎年2月末日までに半額,9月末日までに残額(半額)を銀行振込の方法により支払う。(2条)

    (ウ) 原告は,P4の広告宣伝・販促への協力として,レース車両・レーシングスーツ等へのP4指定ロゴマークの貼付等を実施し,これらについて特別の定めがある場合を除いて特別の対価は不要とする。(3条)

    (エ) P4は,レースドライバーその他のチームスタッフ,及びレース車両・展示用模擬車両を用いて制作した広告宣伝・販促物を,国内・海外を問わず無償で,P4及びP4のグループ会社(販売店等を含む。)の広告宣伝・販促活動に自由に使用することができるものとし,原告は,これに支障のないよう,関係者から肖像等の利用について許諾を得ておくものとする。(4条)

    (オ) 本契約の有効期間は平成15年1月1日から平成17年12月31日までの3年間とする。(5条)

    (カ) 原告が正当な理由なしにインディー全戦に参戦しないときなど,P4は催告その他何らの手続なしに直ちに本契約を解約することができる。(以下略)(6条)

   イ 前記2イのとおり,インディーは,開催レースごとに順位が付されるものの,その一方で,1年間の各レースの成績を通算し,ドライバーやチームの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチームのスポンサーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,上記事実によれば,P4とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,チームとしてインディー全戦に参戦すること,その使用するレーシングカー等にロゴマーク等を貼付すること,展示用のレーシングカーの無償貸出し,ドライバー等の肖像権のP4による無償使用の許諾等が明記され,これら義務が3年間(各レースが開催されていない期間を含む。)にわたって継続する内容とされており,出資者が期待を寄せる宣伝効果がより高くかつ継続する内容とされていることに加え,本契約締結時においては,平成15年中の個々のレースの開催場所は既に決まっていたものの,平成16年以降のレースの開催場所・開催数は明確になっていなかったことを考慮すると,契約当事者としても個々のレースへの参戦のみに着目して契約を締結したとみることはできず,P4とのスポンサー契約において原告が負担する役務の内容も年16回ないし17回の個々のレースへの参戦に尽きるとは到底認められないものとなっている。(その意味において,P4とのスポンサー契約4条における「無償」との記載についても,契約当事者の合理的意思としては,契約金において評価されており,別途対価を徴収しない趣旨と理解できる(乙34参照)。)

     他方,P4とのスポンサー契約において原告が負担する債務の対価としてP4が支出する契約金は,平成15年から平成17年にかけて毎年3000万円とされているところ,いずれも1年の総額が記されるにとどまり,個々のレース参戦に応じた契約金・支払とはされていない上,その支払方法はいずれの年も2月末日及び9月末日の2回払とされており,上記レース数やスケジュールとの個別的な対応を見いだすことはできない。そして,上記のとおりP4とのスポンサー契約は約3年間の有効期間が設けられており,契約金もその期間を前提として定められている。さらに,P4とのスポンサー契約締結時点において,平成16年以降のレースの開催場所等が明確にされていなかった(現に,平成17年は17レースとされている。)にもかかわらず,高額な対価の支払が約されていることに照らせば,契約当事者において,各シーズンにおける個々のレースへの参戦というよりは,シーズンを通じてのレース参戦・宣伝効果を念頭におき,それを前提としていたものと解される。

     加えて,P4とのスポンサー契約は,3シーズン・3年度分の契約が一括して行われているところ,P4とのスポンサー契約は,P4において,原告が正当な理由なしにシリーズレースの全戦に参戦しないときに解約することが認められているのであって,各シーズンにおける個々のレース参戦の積算という契約構造とみることはできない。

     そうであるとすれば,P4とのスポンサー契約において原告が負担した役務の提供は各年における個々のレース参戦に限定されていると評価することは到底できず,その負担する役務の提供は年間を通じてされるものであって,これに対する契約金についても1年分を一括して3000万円と定められたものといえ,もとより,原告が受領する上記対価が,国内を提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価とに合理的に区別できるとも解されない。

     したがって,P4とのスポンサー契約において原告が負担する上記役務の提供は,その全体が各年の契約金を対価としているものと認められ,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみるとしても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行われるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはいえない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。

  (2) そうすると,P4とのスポンサー契約において原告が提供する役務に係る事務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断されるところ,前記2(2)のとおり,原告は,本店事務所,カート事務所及びP1工場を有するも,それらの他に上記(1)において認定した役務の提供の管理・支配を行うことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告がP4とのスポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は日本国内であると認められる。

 

  (3) 小括

    よって,P4とのスポンサー契約において原告が負担する役務の提供は,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当たり,その役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は,いずれも日本国内に存在すると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。

 

 5 P5とのスポンサー契約について

  (1)ア 前記前提事実,証拠(甲4,甲9)及び弁論の全趣旨を総合すると,前記2(1)ア(ア)の事実の外,原告とP5とのスポンサー契約に関して,以下の事実を認めることができる。

     平成15年3月20日,原告は,P5(P5の代理人P6)との間で,P5とのスポンサー契約を締結しているところ,その概要は,以下のとおりである(甲4)。

    (ア) 原告は平成15年のインディーにチームとして参戦し,以下の義務を負う。(1条,2条)

     a 原告はチームとしてレーシングカー1台とレーシングドライバー1人でインディーのレースの全戦に参戦する。(1項)

     b 平成15年のインディーのレースは15戦(既に開催されている1レースを除く,平成15年3月23日から同年10月12日まで開催され,本邦国内において開催される1レースを含む合計15戦)とする。(2項)

     c 原告はチームが使用するレーシングカー並びにレーシングスーツ及びヘルメットに,P5指定のロゴマークを所定の場所に貼付する。(4項)

     d 原告は,インディーにおける若しくはそれを利用したP5の広告宣伝活動及び販売促進活動に,インディーのレースに支障を来さない範囲において最大限協力する。(以下略)(7項)

     e 原告は上記(d)に伴い,P5が日本国内において,原告が展示用として保持しているレーシングカーを必要とする場合には,これを無償で貸し出すものとする。(以下略)(8項)

     f 上記dに伴い,P5若しくはP6がレーシングドライバー又はチーム員の参加を求めた場合には,原告はインディーのレース活動に支障を来さない範囲において,それに協力しなければならない。(以下略)(9項)

     g 原告はインディーのチームのレース活動の写真をP5の広報用(中略)としての用途に限り無償で提供する。(以下略)(11項)

     h 原告はチームのレーシングドライバー,チーム員,レーシングカーの肖像権を無償にて提供する。(以下略)(12項)

    (イ) 上記原告の義務の対価として,P5は5000万円(P6の本契約の業務管理費1000万円を含む。消費税別途)を平成15年5月30日までに支払う。(3条)

    (ウ) 上記(イ)は平成15年のインディーのレース数を15戦として規定したものであり,主宰者の事情によりインディーのレース数が第1戦マイアミを除くシリーズ15戦を下回る場合には,P5,P6及び原告は上記(イ)の対価の扱いに関して別途協議の上処理するものとする。(4条)

    (エ) 本契約の有効期間は平成15年3月1日から同年12月31日までとする。また本契約の更新に関しては同年8月末日までに,原告はP6を通じP5に対して書面による更新提案を行い同年10月末日までにP5,P6及び原告による協議の上書面により確認決定する。(5条)

    (オ) 原告の過失に基づく事由によりチームが,インディーのレースに参戦できなかった場合には,P5はペナルティとして1レースにつき270万円(消費税別途)の返還を請求することができる。(以下略)(10条)

   イ 前記2イのとおり,インディーは,開催レースごとに順位が付されるものの,その一方で,1年間の各レースの成績を通算し,ドライバーやチームの成績が決められる仕組みとされており,ドライバーやチームのスポンサーとしては,個々のレースの成績のみならず,その通算成績に応じた宣伝効果を期待することができる(乙34参照)。そして,上記事実によれば,P5とのスポンサー契約においては,原告の義務内容として,チームとしてインディー全戦に参戦すること,その使用するレーシングカー等にロゴマーク等を貼付すること,展示用のレーシングカーの無償貸出し,ドライバー等の肖像権のP5による無償使用の許諾等が明記され,これら義務がレース終了後の平成15年末まで継続する内容とされており,出資者が期待を寄せる宣伝効果がより高くかつ継続する内容とされている(更新をする場合には,前年の8月末日までに原告から書面による更新提案をし,10月末日までに確認決定するとされ,レースごとに更新する旨の記載はない。)といえ,P5とのスポンサー契約において原告が負担する役務の内容は年16回(15回)の個々のレースへの参戦に尽きるとはいい難いものとなっている。

     他方,P5とのスポンサー契約において原告が負担する債務の対価としてP5が支出する契約金は,平成15年分として5000万円(P6の本契約の業務管理費1000万円(消費税別途)を含む。)とされているところ,総額が記されるにとどまり,個々のレース参戦に応じた契約金・支払とはされていない。そして,上記のとおりP5とのスポンサー契約は8か月間の有効期間が設けられていることに照らせば,契約金もその期間を前提として決められていると解され,契約当事者において,個々のレースへの参戦というよりは,シーズンを通じてのレース参戦・宣伝効果を念頭におき,それを前提としていたものと解される。

     そして,P5とのスポンサー契約は1シーズン(ただし,1回目のレースを除いた15レース分)・8か月の有効期間を有する契約であるところ,原告の過失に基づく事由により,チームがインディーの個々のレースに参戦できなかった場合には,P5はペナルティとして各1レースにつき270万円(消費税別途)の返還を請求することができるとされてはいるものの,レース数の増減については,これが直ちに契約金額に反映するものではなく,契約関係者の協議で定めるものとされているのであって,P5とのスポンサー契約は,個々のレースへの参戦の積算という契約構造とはなっていない。

     そうであるとすれば,P5とのスポンサー契約において原告が負担した役務の提供は個々のレース参戦に限定されていると評価することはできないし,その負担する役務の提供は契約期間を通じてされるものであって,これに対する契約金も契約期間を一括して5000万円と定められたものといえ,もとより,原告が受領する上記対価が,国内を提供場所とする役務の対価と国内以外の場所を提供場所とする役務の対価とに合理的に区別できるとも解されない。

     したがって,P5とのスポンサー契約において原告が負担する上記役務の提供は,その全体が契約金全額を対価としているものと認められ,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されていない(仮にレース参戦の点だけからみるとしても,その役務の提供自体が国内及び国内以外の地域にわたって行われるものであるだけでなく,その対価の額が国内の役務に対応するものと国内以外の地域の役務に対応するものとに合理的に区別されているとはいえない。)から,「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」(消費税法施行令6条2項7号)に当たる。

  (2) そうすると,P5とのスポンサー契約において原告の提供する役務に係る事務所等の所在地が国内にあるか否かにより課税対象該当性の有無が判断されることとなるが,原告は,前記2(2)のとおり,本店事務所,カート事務所及びP1工場を有するも,それらの他に上記(1)において認定した役務の提供の管理・支配を行うことを前提とした事務所等を有してはいないから,原告がP5とのスポンサー契約によって行った役務の提供に係る事務所等の所在地は日本国内であると認められる。

  (3) 小括

    よって,P5とのスポンサー契約において原告が負担する役務の提供は,国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供に当たり,その役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等は,いずれも日本国内に存在すると認められるから,上記役務の提供は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に当たり,消費税の課税対象となる。

 

 

 

 

 

 6 原告の主張について

  (1) 以上に対し,原告は,前記第2の4のとおり,① 本件各スポンサー契約の条項によれば,個々のレース参戦はそれぞれ独立した役務であり,その対価も個々のレースごとに合理的に区別されることは明らかである,② 本件各スポンサー契約において規定されているレース参戦以外の原告の義務は原告のレース参戦義務の付随義務であるから対価を観念することができない,③ 原告は,アメリカ国内インディアナポリスに所在するP7社の工場内に事務所を有している旨主張するので,これらの点について検討する。

 

  (2) ①について

    確かに,本件各スポンサー契約においては,レース数の増減等の場合に対応するため,増減したレース数に応じて契約金を増減する条項や欠場したレース数に対応する返還額を定める条項が存在する。

 

 

    しかし,本件各スポンサー契約においては,個々のレースの開催場所に応じてレース参戦に要する費用が均一であることをうかがわせる事情が存在しないにもかかわらず

 

(原告において,実際の費用を把握し得ない事情もうかがわれない。),

 

年間の契約金の総額のみが定められ,個々のレースにおける価格(費用)についての定めは存在しない上,

 

例えば,P2とのスポンサー契約においては,開催レース数の増減及び原告(及びP7社)の責めに帰すべき事由によりドライバーが出走できなかった場合についての条項が存するが,

 

増減額はレースの開催場所等を問わず一律に1レース9.8万米ドルと定められている

 

(しかも,その額は年間契約金額を予定レース数で除した額とも異なる。)。

 

(なお,これに対して,乙23においては,P4が指定するタイヤを装着した競技用車両を用いてのレース出場に関する契約書であるところ,所定の競技車両及びドライバーを用いて平成16年1月1日から同年12月31日までの間に開催される所定のレースに参戦し,勝利を収めるよう努力することなどの原告の役務(義務)に対し,P4が支払う対価として,広告・宣伝協力費とタイヤ使用料が区別して計上され,タイヤ使用料は第1戦分から第7戦分まで区別され,それぞれ支払期が定められている。)

 

 

    したがって,本件各スポンサー契約においては,個々のレースごとに役務提供の対価が合理的に区別されているとはいえず,原告の主張①を採用することはできない。

 

 

  (3) ②について

    確かに,本件各スポンサー契約の中には,レース参戦以外の原告の義務を明記した上で原告がその対価を請求することができない旨を明記したものも存在する(肖像権等の無償使用等)。

 

    しかし,原告が付随的義務として主張する内容は,本件各スポンサー契約において内容に幅があり,ドライバーの管理及びマネジメント業務,レーシングカーへのロゴの貼付等から,レーシングドライバー等の肖像権に関する事項まで多岐に及ぶ(甲1の1ないし甲4)ところ,

 

これらの義務の内容をみるに,いずれも経済的評価が可能であり,

 

本件各スポンサー契約の相手方当事者であるP2等において上記経済的評価をおよそ考慮していなかったという事情をうかがうことはできない

 

(乙34及び乙35各参照)上,

 

前記のとおり本件各スポンサー契約において,原告は,個々のレースが終了した後もその有効期間内においてレース参戦以外の義務を引き続き負担しており,

 

前記2(1)イ,同3(1)イ,同4(1)イ及び同5(1)イのとおり契約金の算定に当たりこれらの義務が考慮されていると解される

 

(本件各スポンサー契約における対価を請求することができない旨を定めた各条項も,契約金において考慮済みであるから,これに重複する形で別途対価を請求することができないことを明記したものと解される。)。

 

 

したがって,(仮に対価を請求することができない旨明記された義務については,契約金(対価)に対応する役務の提供を観念することができないと解するとした場合を含め,)

 

本件各スポンサー契約におけるレース参戦以外の義務のすべてをして単なる付随義務にすぎずその対価を考慮することができないとする原告の主張は失当といわざるを得ない

 

(もっとも,本件各スポンサー契約に基づいて原告が負担する役務の提供のうちレース参戦に関するものだけに着目したとしても,個々のレースについての役務の提供ごとの対価が合理的に区別されていないことは前記2(1)イ,同3(1)イ,同4(1)イ及び同5(1)イにそれぞれ説示したとおりである。)。

 

 

 

    したがって,原告の主張②を採用することはできない。

 

 

 

 

  (4) ③について

    確かに,レース参戦までに実際に行われるレーシングカーに関する作業等としては,インディー参戦用の車両(シャーシー)及び必要な部品を調達し,P7社が有しているアメリカのインディアナポリスの工場において,レース参戦用車両の調整及びテストを行い,さらに各レースが行われる場所に搬送して再調整等を行った上でレースに参戦しており,また,原告の上記③の主張に沿う内容の陳述書(甲8。P7社の工場内に原告の事務所を構え,担当職員がレース期間中以外は常駐していたなどとするもの。)も存在する。

 

    しかし,消費税法施行令6条2項7号にいう「事務所等」とは,前記2(2)のとおり当該役務の役務の管理・支配を行うことを前提とするものであることを要するところ,本件各スポンサー契約において原告が負担する役務の提供は,前記2(1)イ,同3(1)イ,同4(1)イ及び同5(1)イにそれぞれ説示したとおり

 

レース参戦にとどまるものではないことに加え,本件各スポンサー契約においても,契約金の額と併せてこれに係る消費税等についての定めが設けられ

 

(前記2(1)ア(イ)d等,同3(1)ア(ア)b,同4(1)ア(イ)及び同5(1)ア(イ)各参照),

 

レース参戦の個々の役務の提供が行われる場所が必ずしも日本国内に存在しないにもかかわらず,本件各スポンサー契約に基づく役務の提供が消費税の課税対象となることを前提とする内容とされていることに照らせば,

 

本件各スポンサー契約を締結した原告においても,その役務の提供に係る事務所等の所在地が日本国内に存するとの理解をしていたものとうかがわれる。

 

 

さらに,P7社の工場に設けられていた原告の事務所は平成15年には存在せず,同年中はレースごとに担当職員が渡米して業務を行っていたと述べていること(甲8)に加え,レース期間中には職員が常駐せず,レース参戦の実質が後記のとおりP7社に委託されていたことを考慮すれば,本件各スポンサー契約に基づいて行う原告の役務の提供を管理・支配していたのは日本国内における本店事務所等というべきであって,

 

少なくともインディアナポリスに所在するP7社の工場において上記役務の提供を管理・支配していたとみることはできないから,P7社の工場内の事務所をして原告の役務の提供に係る「事務所等」に該当すると解することはできない。

 

 

    仮にレース参戦についてのみに着目したとしても,P7社の工場は,原告とP7社との間の本件オペレーション契約(乙25)によってP7社が原告から委託を受けた業務(インディーに出走するための2台のレーシングカーを取得し,整備及び改良を行う(3項A))を行う場であり,P7社において,レーシングカーを整備,維持及び出場させるための費用及び経費を全額支払わなければならず,チームのメンバーは,原告との協議に基づき,P7の従業員,契約社員及びその他の関係者の中から選定されること(乙25)に照らせば,

 

上記工場はP7社が本件オペレーション契約に基づいて委託された業務を行う施設にすぎないというべきである。

 

加えて,原告の職員が上記工場内に設けられた事務所において行っていた業務内容は,原告の広報,日本と米国との連絡,ドライバーのスケジュール管理等の現地事務であり(甲8),

 

広報や連絡等に関する現地事務等が中心であって,当該職員においても平成15年はレースごとに渡米して業務を行っていたと述べていることに照らしても,

 

レースの参戦という役務に実質的にかかわるものということはできない

 

(むしろ,レース参戦の管理事務等が日本国内において行われていたからこそ現地(P7社の工場等)との連絡担当職員が必要であったことの証左ともうかがわれる。)。

 

そうであるとすれば,P7社の工場が本件各スポンサー契約に基づいて原告が行うレース参戦という役務の提供を管理・支配する「事務所等」に当たるということはできない。

 

    したがって,原告の主張③を採用することはできない。

 

 7 以上より,本件各スポンサー契約に基づいて原告が提供した役務は,課税対象該当性が認められるから,以下これを前提として原告の本件各課税期間について検討する。

 

 

 

  (1) 平成15年12月課税期間分

    原告の平成15年12月課税期間についてみると,被告が本訴において主張する別紙1「課税の根拠及び計算」の第1の1(1)記載の本件更正処分の根拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて計算した原告の納付すべき税額は,同別紙の第1の2記載のとおりであると認められ,別表Ⅰ1の「平成15年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載の平成15年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定及び国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)における原告の納付すべき税額と一致するから,平成15年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定及び国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)は適法というべきである。

    そして,平成15年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定及び国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)が適法である場合に賦課すべき過少申告加算税の額は,別紙1「課税の根拠及び計算」の第2記載のとおりであるところ,原告は,消費税等税について,別表Ⅰ1「平成15年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載のとおり,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,かつ,過少に申告していたことについて国税通則法(以下「通則法」という。)65条4項に規定する正当な理由の存在をうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はないことから,同課税期間分の過少申告加算税としてこれと同額の税額を課した平成15年12月課税期間賦課決定処分も適法というべきである。

  (2) 平成16年12月期分

    原告の平成16年12月課税期間についてみると,被告が本訴において主張する別紙1「課税の根拠及び計算」の第1の1(2)記載の本件更正処分の根拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて計算した原告の納付すべき税額は,同別紙の第1の2記載のとおりであると認められ,別表Ⅰ2の「平成16年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載の平成16年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のもの)における原告の納付すべき税額と一致するから,平成16年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のもの)は適法というべきである。

    そして,平成16年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のもの)が適法である場合に賦課すべき過少申告加算税の額は,別紙1「課税の根拠及び計算」の第2記載のとおりであるところ,原告は,消費税等税について,別表Ⅰ2「平成16年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載のとおり,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,かつ,過少に申告していたことについて通則法65条4項に規定する正当な理由の存在をうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はないことから,同課税期間分の過少申告加算税としてこれと同額の税額を課した平成16年12月課税期間賦課決定処分も適法というべきである。

  (3) 平成17年12月期分

    原告の平成17年12月課税期間についてみると,被告が本訴において主張する別紙1「課税の根拠及び計算」の第1の1(3)記載の本件更正処分の根拠はいずれも相当であり,かつ,その根拠に基づいて計算した原告の納付すべき税額は,同別紙の第1の2記載のとおりであると認められ,別表Ⅰ3の「平成17年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載の平成17年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のもの)における原告の納付すべき税額と一致するから,平成17年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のもの)は適法というべきである。

    そして,平成17年12月課税期間更正処分(麻布税務署長の異議決定により一部取り消された後のもの)が適法である場合に賦課すべき過少申告加算税の額は,別紙1「課税の根拠及び計算」の第2記載のとおりであるところ,原告は,消費税等税について,別表Ⅰ3「平成17年12月課税期間の消費税等に関する経緯」記載のとおり,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,かつ,過少に申告していたことについて通則法65条4項に規定する正当な理由の存在をうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はないことから,同課税期間分の過少申告加算税としてこれと同額の税額を課した平成17年12月課税期間賦課決定処分も適法というべきである。

 8 よって,原告の請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

    東京地方裁判所民事第2部

        裁判長裁判官  川神 裕

           裁判官  林 史高

           裁判官  新宮智之

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(別紙1)

       課税の根拠及び計算

第1 本件各更正処分

 1 本件各更正処分の根拠

   被告が本訴において主張する原告の本件各課税期の消費税等に係る課税標準額及び納付すべき税額は,以下のとおりである。

  (1) 平成15年12月課税期間

    平成15年12月課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税額は,以下のとおりである。

   ア 課税標準額(別表Ⅱ1①欄)  14億7028万1000円

     上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額(国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定に基づき千円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。

    (ア) 確定申告における課税標準額  17億6457万5393円

      上記金額は,原告が平成16年3月1日に麻布税務署長に提出した平成15年12月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「平成15年12月課税期間消費税等確定申告書」という。乙1。)に記載された課税標準額(千円未満の端数金額を切り捨てる前のもの。)である。

    (イ) 課税標準額から減額すべき金額  2億9429万4031円

      上記金額は,前記(ア)の確定申告における課税標準額に含まれていた次のaないしcの合計金額であり,課税標準額から減額すべき金額である。

     a 平成15年12月課税期間更正処分で課税標準額から減額された金額  2609万7467円

       上記金額は,原告がP7社から受け取ったインディーに係る賞金の額2740万2341円から当該金額の105分の5に相当する金額を控除した金額であり(消費税法28条1項本文括弧書き参照。以下同じ。),当該賞金に係る役務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

     b 異議決定で課税標準額から減額された金額  549万0948円

       上記金額は,株式会社P10に対する業務に係る役務の提供の対価の額576万5496円から当該金額の105分の5に相当する金額を控除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である(甲6,異議決定書別紙「異議決定の理由」3(1)ホ・別紙の3枚目参照)。

     c 裁決で課税標準額から減額された金額  2億6270万5616円

       上記金額は,株式会社P11に対する業務に係る役務の提供の対価の額2億7584万0897円から当該金額の105分の5に相当する金額を控除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である(甲5,裁決書3(3)ロ及びハ・25及び26ページ参照)。

   イ 課税標準額に対する消費税額(別表Ⅱ1②欄)  5881万1240円

     上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に税率100分の4を乗じて算出した金額である。

   ウ 控除対象仕入税額(別表Ⅱ1③欄)  2361万7128円

     上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額であり,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額6億1994万9616円(課税仕入に係る支払対価の額)に105分の4を乗じて算出した金額である。

    (ア) 平成15年12月課税期間消費税等確定申告書に記載された課税仕入に係る支払対価の額  17億0425万9169円

      上記金額は,平成15年12月課税期間消費税等確定申告書(乙1)の付表2の「課税仕入に係る支払対価の額(税込み)欄」に記載された金額である。

    (イ) 課税仕入に係る支払対価の額の過大額  10億8430万9553円

      上記金額は,上記(ア)の金額のうち次のa及びbの国外の企業に対する外注費の額の合計金額であり,課税仕入に係る支払対価の額に該当しない金額である。

     a P7社に対する外注費の額  7億7068万1256円

       上記金額は,P7社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

     b P12社(P12 GmbH)に対する外注費の額  3億1362万8297円

       上記金額は,P12社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

   エ 差引税額(別表Ⅱ1④欄)  3519万4100円

     上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した金額(通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。

   オ 地方消費税の課税標準額(別表Ⅱ1⑤欄)  3519万4100円

     上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び72条の82の規定に基づくものである。

   カ 譲渡割額(別表Ⅱ1⑥欄)  879万8500円

     上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記オの金額に税率100分の25を乗じて算出した金額(ただし,地方税法20条の4の2第3項により100円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。

  (2) 平成16年12月課税期間

    平成16年12月課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税額は,以下のとおりである。

   ア 課税標準額(別表Ⅱ2①欄)  15億6372万7000円

     上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額である。

    (ア) 確定申告における課税標準額  16億1422万2495円

      上記金額は,原告が平成17年2月28日に麻布税務署長に提出した平成16年12月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「平成16年12月課税期間消費税等確定申告書」という。乙2。)に記載された課税標準額(千円未満の端数金額を切り捨てる前の金額のもの。)である。

    (イ) 課税標準額から減額すべき金額  5049万4848円

      上記金額は,前記(ア)の確定申告における課税標準額に含まれていた次のa及びbの合計金額であり,課税標準額から減額すべき金額である。

     a 平成16年12月課税期間更正処分で課税標準額から減額された金額  4673万2299円

       上記金額は,原告がP7社から受け取ったインディーに係る賞金の額4906万8914円から当該金額の105分の5に相当する金額を控除した金額であり,当該賞金に係る役務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

     b 異議決定で課税標準額から減額された金額  376万2549円

       上記金額は,課税標準額に含まれていた株式会社P10に対する業務に係る役務の提供の対価の額395万0677円から当該金額の105分の5に相当する金額を控除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である(甲6・異議決定書別紙「異議決定の理由」3(1)ホ・別紙の3枚目参照)。

   イ 課税標準額に対する消費税額(別表Ⅱ2②欄)  6254万9080円

     上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に税率100分の4を乗じて算出した金額である。

   ウ 控除対象仕入税額(別表Ⅱ2③欄)  2819万7416円

     上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額であり,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額7億4018万2185円(課税仕入に係る支払対価の額)に105分の4を乗じて算出した金額である。

    (ア) 平成16年12月課税期間消費税等確定申告書に記載された課税仕入に係る支払対価の額  15億4737万1901円

      上記金額は,平成16年12月課税期間消費税等確定申告書(乙2)の付表2の「課税仕入に係る支払対価の額(税込み)欄」に記載された金額と同額である。

    (イ) 課税仕入に係る支払対価の額の過大額  8億0718万9716円

      上記金額は,上記(ア)の金額のうちP7社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

   エ 差引税額(別表Ⅱ2④欄)  3435万1600円

     上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した金額である。

   オ 地方消費税の課税標準額(別表Ⅱ2⑤欄)  3435万1600円

     上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び72条の82の規定に基づくものである。

   カ 譲渡割額(別表Ⅱ2⑥欄)  858万7900円

     上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記オの金額に税率100分の25を乗じて算出した金額である。

  (3) 平成17年12月課税期間

    平成17年12月課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付すべき税額は,以下のとおりである。

   ア 課税標準額(別表Ⅱ3①欄)  17億6245万2000円

     上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額である。

    (ア) 確定申告における課税標準額  17億6857万6329円

      上記金額は,原告が平成18年2月28日に麻布税務署長に提出した平成17年12月課税期間の消費税等の確定申告書(以下「平成17年12月課税期間消費税等確定申告書」という。乙3。)に記載された課税標準額(千円未満の端数金額を切り捨てる前のもの。)である。

    (イ) 異議決定で課税標準額から減額された金額  612万4065円

      上記金額は,株式会社P10に対する業務に係る役務の提供の対価の額643万0269円から当該金額の105分の5に相当する金額を控除した金額であり,当該業務に係る役務の提供が行われた場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である(甲6・異議決定書別紙「異議決定の理由」3(1)ホ・別紙の3枚目参照)。

   イ 課税標準額に対する消費税額(別表Ⅱ3②欄)  7049万8080円

     上記金額は,消費税法29条の規定により,前記アの金額に,税率100分の4を乗じて算出した金額である。

   ウ 控除対象仕入税額(別表Ⅱ3③欄)  2831万6947円

     上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額で,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額7億4331万9862円(課税仕入に係る支払対価の額)に105分の4を乗じて算出した金額である。

    (ア) 平成17年12月課税期間消費税等確定申告書に記載された課税仕入に係る支払対価の額  16億7741万7231円

      上記金額は,平成17年12月課税期間消費税等確定申告書(乙3)の付表2の「課税仕入に係る支払対価の額(税込み)欄」に記載された金額である。

    (イ) 課税仕入に係る支払対価の額の過大額  9億3409万7369円

      上記金額は,上記(ア)の金額のうち次のa及びbの国外の企業に対する外注費の額の合計金額であり,課税仕入に係る支払対価の額に該当しない金額である。

     a P7社に対する外注費の額  1億6298万3332円

       上記金額は,P7社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

     b P13社(P13 AG)に対する外注費の額  7億7111万4037円

       上記金額は,P13社に対する外注費の額であり,当該外注費に係る役務の提供の場所が国外であることから,消費税等の課税対象外である。

   エ 差引税額(別表Ⅱ3④欄)  4218万1100円

     上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を控除した金額である。

   オ 地方消費税の課税標準額(別表Ⅱ3⑤欄)  4218万1100円

     上記金額は,前記エの金額であり,地方税法72条の77第2号及び72条の82の規定に基づくものである。

   カ 譲渡割額(別表Ⅱ3⑥欄)  1054万5200円

     上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記オの金額に税率100分の25を乗じて算出した金額である。

 2 本件各更正処分

   上記1のとおり,被告が本訴において主張する原告の本件各課税期間における納付すべき消費税等は,① 平成15年12月課税期間については,納付すべき消費税額3519万4100円(前記1(1)エ),納付すべき地方消費税額879万8500円(前記1(1)カ),納付すべき消費税等の合算額4399万2600円,② 平成16年12月課税期間については,納付すべき消費税額3435万1600円(前記1(2)エ),納付すべき地方消費税額858万7900円(前記1(2)カ),納付すべき消費税等の合算額4293万9500円,③ 平成17年12月課税期間については,納付すべき消費税額4218万1100円(前記1(3)エ),納付すべき地方消費税額1054万5200円(前記1(3)カ),納付すべき消費税等の合算額5272万6300円である。

   これらの金額は,平成15年12月課税期間更正処分(異議決定及び裁決により取り消された後のもの。),平成16年12月課税期間更正処分(異議決定により取り消された後のもの。)及び平成17年12月課税期間更正処分(異議決定により取り消された後のもの。)における納付すべき税額とそれぞれ同額であるから,本件各更正処分(いずれも異議決定ないし裁決により取り消された後のもの。以下同じ。)はいずれも適法である。

第2 本件各賦課決定処分

   前記第1の2のとおり,本件各更正処分はいずれも適法であるところ,原告は,本件各課税期間の消費税等について,納付すべき税額を過少に申告していたものであり,納付すべき税額を過少に申告していたことについて,通則法65条4項に規定する「正当な理由」は存在しないことから,本件各更正処分に伴って課されるべき過少申告加算税の額は,それぞれ以下のとおりである。

 1 平成15年12月課税期間賦課決定処分  518万3000円

   上記金額は,通則法65条1項及び2項並びに地方税法附則9条の4第2項及び9条の9に基づき,平成15年12月課税期間更正処分によって新たに納付すべき消費税等の合算額(納付すべき消費税等の合算額4399万2600円のうち期限内申告税額の合算額707万3500円を超える部分)3691万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額369万1000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の合算額3691万9100円のうち期限内申告税額の合算額707万3500円を超える部分に相当する税額2984万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の5の割合を乗じて計算した金額149万2000円との合計額である。

 2 平成16年12月課税期間賦課決定処分  503万5000円

   上記金額は,通則法65条1項及び2項並びに地方税法附則9条の4第2項及び9条の9に基づき,平成16年12月課税期間更正処分によって新たに納付すべき消費税等の合算額(納付すべき消費税等の合算額4293万9500円のうち期限内申告税額の合算額702万6600円を超える部分)3591万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額359万1000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の合算額3591万2900円のうち期限内申告税額の合算額702万6600円を超える部分に相当する税額2888万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の5の割合を乗じて計算した金額144万4000円との合計額である。

 3 平成17年12月課税期間賦課決定処分  619万8000円

   上記金額は,通則法65条1項及び2項並びに地方税法附則9条の4第2項及び9条の9に基づき,平成17年12月課税期間更正処分によって新たに納付すべき消費税等の合算額(納付すべき消費税等の合算額5272万6300円のうち期限内申告税額の合算額855万1700円を超える部分)4417万円(ただし,通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の10の割合を乗じて算出した金額441万7000円と,1万円未満の端数金額を切り捨てる前の新たに納付すべき消費税等の合算額4417万4600円のうち期限内申告税額の合算額855万1700円を超える部分に相当する税額3562万円(ただし,同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。)に100分の5の割合を乗じて計算した金額178万1000円との合計額である。

 4 本件各賦課決定処分

   被告が本訴において主張する本件各課税期間の過少申告加算税の額は,それぞれ,平成15年12月課税期間518万3000円,平成16年課税期間503万5000円及び平成17年12月課税期間619万8000円であるところ,本件各賦課決定処分(いずれも異議決定ないし裁決により取り消された後のもの。以下同じ。)における過少申告加算税の額は,上記の各金額と同額であるから,本件各賦課決定処分は適法である。

                               以上