みなし贈与(5)

 

 

贈与不当課税処分取消請求事件

 

 

【事件番号】 最高裁判所第3小法廷/昭和37年(オ)第1007号

 

【判決日付】 昭和38年12月24日

 

【判示事項】

 

一、資産内容の極めて良い合資会社が資をするに当り従来の出資割合と異なる割合の出資割当がなされた場合において低い割当を受けた者から高い割当を受けた者に対する関係で相続税法第九条のみなし贈与が行われたと認定された事例

      

ニ、国税庁長官基本通達の性質

 

 

【掲載誌】  訟務月報10巻2号381頁

 

 

について検討します。

 

 

主   文

 

  本件上告を棄却する。

  上告費用は上告人らの負担とする。

 

       

 

理   由

 

 上告代理人弁護士岩本健一郎の上告理由第一点について。

 

 論旨は、原判決の法令違背を主張する。

 

 しかしながら、原判決が上告人らの得た利益は相続税法九条により、贈与によって取得したものとみなさるべきものであり、また、所論国税庁長官の基本通達は、下級政機関の権限の行使についての指揮であって、国民に対し効力を有する法令ではないとした判断は、正当である。

 

したがって原判決に所論の如き相続税法違反はなく、また、通達違背は民訴法三九四条にいう法令の違背にあたらない。

 

 なお、論旨中、税理士は国家行政組織法上の法機関であるとの主張は、独自の見解というよりほかはなく、また、通達の内容が事実たる慣習であるとの主張も原判決の認めていないところである。

 

 論旨は、結局、独自の見解に立ち或は原判決の認定しない事実を主張して原判決を非難するものであって、採用できない。

 

 同第ニ点について。

 

 論旨は、本件のような処分は租税法律主義に反し、これを是認することは憲法三○条八四条に違反すると主張する。

 

 しかしながら、本件処分の適否は相続税法九条の解釈問題であって、同条の解釈として、本件のような場合に、前敘の如く、贈与税納付義務があると解釈される以上、本件処分は法律に基くものであって、所論違憲の主張は、その前提において既に理由がない。

 

 よって、民訴四○一条、九五条、八九条、九三条に従い、官全員の一致で主文のとおり判決する。

 

 (裁判官 石坂修一 河村又介 横田正俊)

 

 

 

 

 

 

 

 

○参 考

 

 一、第二審判決は、「当裁判所も控訴人等案件請求を理由がないものと判断するのであってその理由は原判決理由中の記載と同一である」として控訴を棄却した。

 

 二、第一審判休原告中川真晤外二名、被告長崎税引署長外一名)

 

      

主  文

  原告らの請求は、いずれもこれを棄却する。

   訴訟費用は、原告らの連帯負担とする。

      

事  実

 

 原告ら訴訟代理人は、「被告長崎税務署長が、いずれも昭和三四年七月一六日付でした、(1)原告中川真晤に対する税額一、○○一、五一○円の贈与ならびに加算税(2)原告中川マチヱに対する税額二、一四八、一○○円の贈与税ならびに加算税、(3)原告中川安明に対する税額八四六、四七○円の贈与税ならびに加算税の各賦課決定は、いずれもこれを取り消す。被告国は、(1)原告中川填晤に対し、一、○○一、五一○円に、(2)原告中川チヱに対し、二、一四八、一○○円に、(3)原告中川安明に対し、八四六、四七○円に、それぞれ昭和三五年二月ニ九日から右各支払いずみに至るまで、年五分の割合による金員を附加して支払え。訴訟費用は、被告らの連帯負担とする。」旨の判決ならびに右金員支払を命ずる部分につき仮執行の宣言を求め、その請求の原因としてい

つぎのとおり陳述した。

 

一、原貨は、いずれも訴外文明堂合更会社の社員であるが、昭和三ニ年四月二六日および同年一一月三○日に、右日付の順に従い原告真晤は、九六五、○○○円および一、○○○、○○○円、原告マチヱは、四八二、,六○○円および一.五○○、○○○円、原告安明は、九六三、○○○円および一、○○○、○○○円をそれぞれ出資し、各出資額をいずれも二、○○○、○○○円に変更し、右各年月日にその全額を履行した。

 

ニ、被告長崎税務署長は、原告らの右出資額の増加が相続税法第九条(贈与または遺贈により利益を取得したものとみなされる場合)上該当するとして、原告らに贈与税の納付義務ありと認定し、いずれも昭和三四年七月一六日付で、請求の趣旨記載のとおり、贈与税ならびに加算税額を決定し、その各決定は、いずれも同月一八日に原告らに送達された。

 

三、そこで、原告らは、昭和三四年八月五日、訴外川原陸蔵を代理人として、被告長崎税務署長に対し、前記納税義務のないことを理由に再調査の請求をし、同月二一日、右再調査請求を相続法第四五条第三項の規定により、審査請求として取り扱うことに同意した。

 

四、前項の審査請求は、昭和三五年三月三一日付で、福岡国税局長により、理由なしとして棄却されたが、その間、被告長崎税務署長は原告らの前記贈与税等の滞納を理由として、原告らの財産を差し押えたので、原告らは、やむを得ず同非二月二九日までに、前記贈与税等の全額を分割納付した。

 

五、しかしながら、被告長崎税務署長の前記贈与税等の各賦課決定は、いずれもつぎのような理由により違法である。

 

 (1)相続税法の運用と取扱いついては、特に「相続税法基本通達」が定められているが、昭和三四年一月二八日直資第一○号をもって、国税庁長官より国税局長に対しなされた「相続税法基本通達の全部改正について」と題する通達によれば、「昭和三ニ年一二月三一日以前に相続もしくは遺贈または贈与により取得した財産にかかる相続税または贈与税については、従前の通達により取り扱われたい。」とされており、右従前の通達とは、昭和三二年三月一日直資第二二号をもって、国税庁長官より国税局長に対しなされた「相続税法基本通達」を指すのである。

 

  したがって、昭和三ニ年一二月三一日以前の相続、遺贈または贈与により取得した財産にかかる相続税または贈与税については、前記昭和三四年一月二八日付通達(以下新通達という)を適用することができないのである。せ(2)しかして、被告長崎税務署長が賦課決定をした本件贈与税の課税原因たる事実は、前記のとおり、いずれも昭和三ニ年一二月三日以前に発生しているのであるから、右事実については、当時なお効力を有していた前記昭和三ニ年三月一日付通達(以下単に旧通達という。)が適用さるベきところ、右通達によれば、也の第四七条において、相続税法第九条のいう「利益を受けた」の意義を説明し、第四八条ないし第五四条において、右「利益を受けた」に該当する事項を列挙しているけれども、本件のような合資会社の出資増加の場合についてはなんらの規定もない。

 

  ところで、新通達によれば、その第六一条第ニ項に、「前項の規定(新株引受権を贈与により取得したものとして取り扱われる場合の規定)は、有限会社および合資会社の出資引受権について準用する」旨明記されている。以上の各事実よりすれば、旧通達の下においては、本件のような合資会社の出資増加の場合は、相続税法第九条に定める課税の対象とならないとされていたことが窺知され証明されるのである。

(3)なお、現行の税務行政においては、税法、施行規則・施行細則をもって大綱とし、その取扱を基本通達をもって規定しているのであり、しかも現実における税金の賦課減免の取扱は、もっぱら基本通達を例規として行われ、会計検査院における税金の賦課減免の適否検査も、基本通達により判定されているのである。また、知らしめて納税せしめることを本質とする現行申告納税制度の趣旨に照らしても、公表された基本通達は、厳格に解釈することを要し、課税者の一方的、主観的な拡張解釈は許されず、これに違反する取扱は、違法といわざるを得ない。

 

  (4)以上を要するに、被告長崎税務署長は、原告らの前記出資に対しては、前記旧通達を適用しながら、これを一方的に拡張釈し、旧通達に規定のない事順を理由として、原告らに対し、前記各贈与税等の賦課決定をしたものであること明らかであるから、右各決定は、いずれも違法として取消を免れないものである。

六、つぎに、被告国は、前記のとおり贈与税ならびに加算税として、原告真晤から一、○○一、五一○円、同マチヱから二、一四八、一○○円、同安明から八四六、四七○円をそれぞれ受領しているのであるが、その受領の原因たる被告長崎税務署長の前記各賦課決定が違法を欠くこととなる。したがって、被告国は、法律上の原因として取り消される以上、被告国の右受領は、法律上の原因なくして、原告らから前記各金額を受領して利得し、原告らに対し、各同額の損失を与えており、しかも、被告国の事務担当者たる被告長崎税務署長は、前記各決定が違法であることを知悉して、長告らから右各金員を受領したものであるから、被告国は、民法第七○四条にいわゆる悪意の受益者である。よって、被告国は、原告らに対し、請求の趣旨に記載した各金額およびこれに対する右最終の受領日たる昭和三五年二月二九日から支払いずみに至るまで、民法の定める年五分の割合による利息を附加して支私うべき義務がある。

 

七、以上の次第であるから、請求の趣旨記載どおりの判決を求める。なお、原告ら訴訟代理人は、被告らの主張事実につき、かりに原告らが相続税法第九条により、本件贈与税ならびに加算税を納付すべき義務があったとした場合、原告らの納付すべき各税額が被告ら主張のとおりであることは、これを争うものではないと補述した。

 

 

 

 被告ら指定代理人は、主文第一項と同旨ならびに 「訴訟費用は、原告ら荀負担とする。」との判決ならびに被告国敗訴の場合における担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求め、答弁として、つぎのとおり陳述した。

一、原告主張の請求原因事実のうち、一、ないし四、の各事実は、すべてこれを認めるが、五、および六、の各事実中、右

 一、ないし四、の各事実と一致する部分を除き、その余の事実は、すべてこれを争う。

ニ、被告長崎税務署長が原告ら主張のような課税をした理由は、つぎのとおりである。

 (1)訴外文明堂合資会士は、社員訴外中川安五郎、その養子原告真晤、同マチヱならびに孫原告安明をもって構成される同族会社(法人税法第七条の二第一項)であるが、昭和三二年四月二六日、従来の出資金一五四、四○○円を、三、○○○、○○○円に、同年一一月三〇日、さらに六、五○○、○○○円に増加した。各社員の出資の増加、増資合計額を各社員が増資前の出資の割合に応じて分担すべき金額ならびに右金額と現実に分担した金額との増差額(△印は、不足額を示す。)は、つぎの表のとおりである。

  (イ)四月二六日の増資の場合

 (ロ) 一一月三○日の増資の場合

(2)ところで、前記訴外会社は、その資産内容および業績極めて良好であって、所定の評価方法により算出すれば、前記第一回増出資前の出資(一○○円あたり)の評価額は、一七、八二二円であった。このように含み資産を有する会社が増資をすれば、旧資価値は、増資額その割合に応じて減少するのであるが、右訴外会社の場合について、各増資後の出資(一○○円あたり)の評価額を算出すれば、各回の増資割合は、一八、四三倍、一、一六倍であるから、つぎのとおりとなる。

 (イ)第一回増資後の出資の評価額一、○一二円

  (計算内容)

    17,822+100円×18・43=1,012円

        1+18・43

 (ロ)第二回増資後の出資の評価額五二二円

  (計算内容)

    1,012円+100×1.16

        1+1.16

(3)右のはうに、訴外会社の各増資によって、旧出資価値は、その都度減少したのであるが、他方、新出資価値は、逆に増加したのである。

  そして、その際、増資前の出資の割合に応じて新出資の引受がされたとすれば、旧出資の価値の減少は、新出資の価値の増加により補われ、社員間に財産の移動は生じないのであるが、(1)に記載のとおり、訴外会社の二回にわたる増資においては、いずれも各?社員の従前の出資の割合に応じて新出資の引受がされたのではなく、第一回増資においては、原告ら三名が、第二回増資においては、原告マチヱが、それぞれ増資前の出資の割合に応ずる額を超えて新出資を引き受けているのである。この場合には、製合額に応ずる新出資の全部または一部の引受をしなかった者(第一回増資においては、訴外中川安五郎、第二回増資においては、同安五郎、原告真晤、同安明)の財産は、旧出資の価値の減少に伴い減少する

一方、割合額以上の新出資の引受をした前記の者の財産は、逆にそれだけ増加することとなるのである。そこで、右財産の増加額を各原告について計算すれば次のとおりとなる。

(イ)原告真晤の増加額ニ、九一七、九四四円(第一回増資分)

 (計算内容)

            319,950円

  (1,012円-100円)×100円=2,917,944円

(ロ)原告マチヱの増加額五、三五九、○九二円(第一、二回増資分)

 (計算内容)

 (1,012円-100円)×、161,918円

             100円   =1,476,692円

           920,000円

 (522円-100円=3822400円

  1,476,692円+3,882,400円=5,359,092円

(ハ)原告安明の増加額二、五六三、五四0円 (第一回増資分)

 (計算内容)

                281090円

   (1,012円-100円)×100円=2,563,540円=281090円

(4)以上のとおり、原告三名は、その超過出資の九、一二倍

 (第一回増資2,917,944円(真晤)=1,476,692円319,950円       161,918円 (マチエ)=

 2,563,540円(安明=9・12)または四、ニニ倍(第二回増資)

  281,090円

 3,882,400円(マチエ=4.22)の利益を享受しているのであ

  920,000円るがこれはいずれも増資前の出資の割合に応ずる額未満の出資をした者からの贈与とみなすべきものである(相続税法第九条一)。

 したがって、被告長崎税務署長は、同法第九条に則り、所定の計算方法により、原告ら三名に対する各贈与税ならびに無申告加算税をつぎの表のとおりに算出決定したのである。

三、原告らは、本件増資後相続税法基本通達が改正され、新通達によってはじめて合資会社の出資引受権について規定されたのであるから、本件各賦課決定は、違法であると主張する。なるほど、右基本通達の改正があったことは、原告ら主張のとおりであるけれぞも、いうまでもなく、税法の基本通達は・税務行政の便宜、統一をはかるため行政解釈を税務職員に示すとともに、併せて納税者の申告についての指針として公表されたものに過ぎず、法的効力を有するものではないから、相続税法第九条関係の基本通達に明記されていなくても、右法条の解釈として許される事項であるかぎり、それを理由として課税することは、なんら違法ではないのである。なお、前記基本通達の改正は、従来からの解釈、実務上の取扱を明記したものに過ぎず、相続税法第九条の解釈を変更したものではない。証拠として、原告ら訴訟代理人は、甲第一ないし第八号証一第六および第八号証は各一ないし三)ならびに第九号証の一ないし七を提出し(証人川原陸蔵の証言を援用し、被告ら指定代理人は、甲号各証の成立をすべて認めた。

      

 

理  由

 

一、原告ら主張の請求原因事実のうち、一、ないし四、の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

 

  本件における争点は、要するに、右請求原因一、の事実に基き、原告らが相続税法第九条により「贈与により利益を取得した」とみなされるかどうかという点につきる。よって、以下この点について考察する。

 

二、被告ら主張の前記二、の(1)ないし(3)の各事実は、いずれも原告らにおいて明らかに争わないところである。

 

してみれば、前記訴外会社の第一回増資において、

 

原告真晤は、三、二三七、八九四円に相当する出資を三一九、九五○円で、同マチヱは、一、六三八、六一○円に相当する出資を一六一、九一八円で、同安明は、二、八四四、六三○円に相当する出資を二八一、、○九○円でそれぞれ引き受け、

 

その差額に相当する利益を前記訴外中川安五郎から取得し、

 

前記第二回増資において、原告マチヱは、四、八○二、四○○円に相当する出資を九二○、○○○円で引き受け、その差額に相当する利益を右訴外安五郎、原告真晤および同安明から取得したことが明らかであり、

 

また、右各出資の引受が著しく低い対価でなされたことは、以上の事実により肯認できるので、以上のような原告らの利益は、いずれも相続税法第九条により、当該利益を取得させた右の者らから贈与によって取得したものとみなされると解するを相当とする。

 

三、ところで、原告らは、本件各増資は、いずれも昭和三ニ年中に行われたのであるから、前記旧通達が適用さるべきところ、同通達によれば、その第四七条において、相続税法第九条のいう「利益を受けた」の意義を説明し、第四八条ないし第五四条において、右「利益を受けた」に該当する事項を列挙しているけれども、

 

本件のような合資会社の出資増加の場合についてはなんらの規定もなく、前記新通達により、右出資増加の場合が新たに右列挙事項に加えられたのであるから、旧通達の下においては、右出資増加の場合は、相続税法第九条に定める課税の対象とならないと解すべきでみる旨主張し、

 

いずれも成立に争のない甲第二および第四号証によれば、右新旧通達の発付時期および内容は、原告ら主張のとおりであることが認められるけれども、

 

そもそも通達は、上級行政庁の下級行政庁等に対する示達の形式であって(国家行政組織法第一四条第二項参照)、行政の取扱の基準を示し法令の解釈を統一する等の目的をもって発せられるもので、元来は、法規としての性質を有するものではなく、

 

このことは、国税庁長官から発せられる税務通達についても同様であるということができる。

 

ただ、これらの通達が発せられると、下級行政庁等は、これに従って事務を処理することとなり、長期にわたってこれを繰り返していく場合には、この事実上の取扱が一般の法的確信を得て慣習法たる行政先例法として認めらるべき場合もあり得るのであるが、

 

本件においては、旧通達に基く税務官庁の事実上の取扱に、右慣習法たる効力を認めるべき特段の事情の存在を肯認し得る証拠はない。

 

 

 したがって、相続税法第九条の解釈に関する旧通達は、一応の行政解釈として、裁判所の解釈の参考とはなり得ても、

 

それ以上に裁判所を拘束す番ものではないばかりでなく、

 

旧通達第四八条には、同族会社の株式または出資の価額増加の場合につき、株主または社員が右増加価額に相当する金額を同条の当該、各号に掲げる者から増与によって取得したものとして取り扱うと槻定していながら、

 

同通達第四九条には、同族会社の新株引受権の割当の場合につき、それが同条の当該各号に掲げる事由に該当するならば、当該株主は右各号に掲げる者から新株引受権を贈与によって取得したものとして取り扱うと規定し、

 

増資による出資引受権の割当につきなんら規定するところがないけれども、

 

後者の場合に前者と異り特に株式と出資を異別に取り扱うべき合理的な根拠は、これを見出すことがでがないので、

 

新通達第六一条第二項は、右新株引受権の割当と出資引受権の割当を同一に取り扱う趣旨を明らかにするため、

 

有限会社および合資会社の出資引受権につき新株引受権の規定を準用する旨を規定したものと解し得る余地がないわけではない。

 

なお、かりに被告長崎税務署長の本件各贈与税賦課決定が前記旧通達に違反してされたとしても、前記のとおり右通達自体またはこれに基く事実上の取扱に法的効力を認め得ないのであるから、

 

それだけの理由にはり、右各決定が違法となることはあり得ないのである。

 

よって、この点に関する原告らの主張は、これを採用することができない。

 

 

四、以上説明したとおり、原告らは、いずれも前記訴外会社の増資に際し利益を得、その利益は相続税法第九条により、贈与に よって取得したものとみなさるべきであるので、

 

法定額の贈与税納付義務を負担したことが明らかであり、しかも法定の期間内に、右取得利益につき所定の申告書が被告長崎税務署長に提出されなかったことは、当事者間に争いがなく、右申告書不提出につき特に宥恕すべき事由があったことを認め得る証拠のない本件においては、

 

原告らは、右各贈与税のほかに、相続税法第五三条第二項第三号により、法定額の各無申告加算税を納付すべき義務を免れなかったといわなければならない。

 

  しかして、各原告の納付すべき右贈与税ならびに無申告加算税の合計額が、原告真晤につき一、○○一、五一○円、同マチヱにつき二、一四八、一○○円、同安明につき八四八、四七○円であることは、いずれも当事者間に争いがないのであるから、被告長崎税務署長の本件各贈与税等賦課決定には、原告ら主張のような違法の点はなく、右各決定は、いずれも適法といわなければならない。

 

よって、右各決定の取消を求める原告らの本件請求ならびに右取消を前提とする原告らの被告国に対する不当利得返還請求は、いずれも失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項ただし書を適用して、

 

主文のとおり判袂する。

 

 (裁判官 高次三吉 粕谷俊治 谷水央)