不当利得返還請求権と収益計上時期(2)

 

 

 

更正処分等取消請求控訴事件

 

 

 

【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成2年(行コ)第97号

 

【判決日付】 平成3年5月29日

 

【判示事項】

 

(1) 法人税法二二条四項(各事業年度の所得の金額の計算)の公正処理基準による収益計上時期(原審判決引用)

      

(2) 電気料金等の過払いについて電力会社から返還を受けた場合に、その電気料金等を収益として計上すべき事業年度は、当該電気料金等の返還請求権が確定した日の属する事業年度であるとされた事例(原審判決引用)

      

(3) 電気料金等の過払いについて、その返還請求権が確定した日は、電力会社と原告会社との間で合意があった日、すなわち、具体的金額が明らかにされて原告会社がこれに同意し、電力会社は本店の決裁を受けるなどして、最終的に精算を終了する旨の合意がなされた時であるとされた事例(原審判決引用)

      

(4) 電気料金等の過払いについて電力会社から返還を受けることとなった場合に、税法上、過年度の損金額の修正によって処理することの適否(原審判決引用)

      

(5) 青色申告書に係る法人税の更正通知書に理由付記を要することとした趣旨(原審判決引用)

 

 

【掲載誌】  税務訴訟資料183号856頁

 

 

について検討します。

 

 

 

主   文

 

 

 本件控訴を棄却する。

 控訴費用は、控訴人の負担とする。

 

       

 

事   実

 

第一 当事者の求めた裁判

 一 控訴の趣旨

  1 原判決を取り消す。

  2 被控訴人が昭和六一年六月二五日付けでした控訴人の昭和六〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度分の法人税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

  3 訴訟費用は、第一、第二審とも、被控訴人の負担とする。

 二 控訴の趣旨に対する答弁

   主文同旨

第二 当事者の主張

   当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

第三 証拠

   証拠関係は、原審及び当審記録の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

 

       

 

理   由

 

 一 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、次のとおり訂正又は付加するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

 

  1 原判決一八(ママ)目表九行目及び同二三枚目表七行目に各「以前」とあるのをいずれも「前」と改める。

 

  2 原判決二六枚目裏五行目に「明らかである。」とある次に

 

また、さきに認定したところによれば、昭和五五年一月から昭和五九年一〇月までの丙期については各月の過収電気料金等の実額を計算することが可能であり、したがって、その返戻額も客観的に算出することが可能であったことは明らかであるが、

 

前記認定のように、本件では右期間を含む昭和四七年四月から昭和五九年一〇月までの期間の過収電気料金等について一括してその返戻額が交渉・合意の対象とされているのであるから、

 

丙期の過収電気料金等のみを取り上げてその返戻額が客観的に算出可能であったかどうかを論ずるのは意味がないというべきである。」を加える。

 

 

 二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

 

    東京高等裁判所第五民事部

        裁判長裁判官  川上正俊

           裁判官  石井健吾

           裁判官  橋本昌純