売上原価の見積計上と虚偽申告(2)

 

 

 

法人税法違反被告事件

 

 

 

【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成11年(う)第1196号

 

【判決日付】 平成12年10月20日

 

【判示事項】

 

1 宅地開発を行うに当たり負担することとなった公共工事の負担金を売上原価として計上するための条件

      

2 地続きではなく、形状及び利用状況等が異なる2個の土地を一括購入した後、その内の1個の土地を売却した場合の取得原価の算定方法

 

 

 

【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成12年110頁

 

 

について検討します。

 

 

 

 

 

理   由

 

 

1 本件の前提となる事実関係をみると,その概要は,以下のとおりであると認められる。

 

(1)被告会社Xは,昭和55年ないし56年ころから刈谷東物件の宅地開発の準備に取りかかった。そのころ,牛久町では,原判決挙示の都市計画法開発行為公共施設基準(昭和58年にこれに代わるものとして定められた開発行為指導要綱の関係部分も同旨)等に基づき,宅地開発に当たっては,開発区域の内外を問わず,流末排水路を開発業者に整備させるとの行政指導を行い,業者がその指導に従わない場合には,都市計画法に基づく公共施設の管理者としての同意を与えず,開発許可申請を茨城県知事に申達しない(同法29条,32条参照)という方針で臨んでおり,牛久町の当時の下水道課長のAらは,被告会社Xの上記宅地開発に当たっても,刈谷東物件内から排出された雨水が流下することになる開発区域外の排水路(同物件の北端に接する地点とすでに排水路の整備が完了している地点との間を結ぶ約400メートルの農業用水路。以下「本件雨水排水路」という。)を改修し,また,その排水路部分に通学用道路を設置するという内容の改修工事を行うことを求める指導を行った。被告人Yらは,Aらの上記指導を受けて検討した結果,Aらの求める工事を実施した場合,当初予定の開発規模では採算がとれない見込みであったため,開発面積を3倍に拡大することを条件に,この指導を受け入れることにし,Aらも上記の条件を了承した。なお,Aらと被告会社xは,この段階では,この改修工事の内容として,回収後の排水路は直径2メートルのヒューム管による暗きよとし,ヒューム管を埋設した上部に通学用道路を造るという方法によることを考え,被告会社Xでは,上記工事を実施する場合,同社が甲野建設株式会社に発注して施工させることを考えていた。もっとも,被告会社Xと牛久町は,昭和58年4月1日付けで,刈谷東物件の開発行為に関する協定書を締結したが,この協定書には,通学路や雨水排水路の施工についても規定されているものの,その具体的工事場所等については特段の規定が置かれておらず,開発区域の外にある本件雨水排水路についても被告会社Xが工事を行うこととするという趣旨を表す規定は特に設けられてはいない。なお,牛久町は,同日,被告会社Xから提出された刈谷東物件における開発行為の許可申請書を受け付けて,茨城県知事に申達する取り扱いをし,同年6月23日,同県知事が右申請を許可した。

 

(2)被告人Yは,Aらの前記行政指導が始められて間がない昭和56年,将来本件雨水排水路の改修を行うことになることを慮って,被告会社Xないしその関係会社に,本件雨水排水路に沿った土地を購入させ,昭和58年以降,同様の配慮から,本件雨水排水路周辺の地盤改良工事を行わせたり,同排水路のしゅんせつ工事を行わせるなどの準備をした。

 

(3)被告会社Xは,前記(1)のAらとの協議結果に基づき,刈谷東物件の開発面積を拡張する趣旨の開発行為変更許可申請書を提出して,昭和60年3月7日牛久町に受け付けられ,この申請は,同月27日,茨城県知事によって許可された。また,被告会社Xと牛久町は,右変更申請に伴い,同月7日付けで新たに刈谷東物件の開発行為に関する協定書を締結したが,この協定書にも,本件雨水排水路の改修(ないし

  これに伴う通学路の設置)について,特に具体的な規定は設けられていない。

 

(4)被告会社Xは,甲野建設に請け負わせて刈谷東物件の宅地造成を進め,昭和61年3月ころ,その工事の完成をみて,同年7月3日付けで,茨城県知事から,都市計画法29条所定の開発許可の内容に適合している旨の検査済証を交付された。そして,被告会社Xは,昭和62年6月9日,乙山住宅株式会社に対し同物件を8億2,733万3,900円で売却する旨の売買契約を締結した。

 

(5)被告会社Xでは,前記(2)のような準備はしたものの,それ以上,本件雨水排水路の改修のための具体的な工事には着手しないまま推移していたが,被告人Yは,前記(4)のとおり,刈谷東物件を乙山住宅に対して売却できたため,昭和62年7月ころ,改めて牛久市の下水道課長Bらに対して右工事に関する牛久市の意向を確認し,被告会社XとBらとの間でまた上記工事に関する協議が行われることになった。この協議において,Bらは,本件雨水排水路周辺の水田耕作者の要望等を踏まえて,従前のAらの方針を変更し,本件雨水排水路はボックスカルバートによる開きよの方式とし,その横にメンテナンス道路兼通学路を設置することにしたいと提案し,これに対し,被告人Yは,Bらの提案するような工事をすると,従前検討されていたヒユーム管による方式に比べ工費が約3倍かかることになると考え,同工事を全面的に被告会社Xの負担で行うことはできないという趣旨を回答した。Bらも,被告人Yの回答を受けて更に検討した結果,前記提案に係るような工事を全面的に被告会社Xに行わせるのには無理があると考え,被告人Yの意向を基本的に受け入れる形で対処することにして,結局,本件雨水排水路の改修はボックスカルバートによる開きよの方式で行うが,被告会社Xは本件雨水排水路の改修をヒューム管による暗きよの方式で行ったとした場合に要するであろう工費の限度で施行できる範囲内の工事をして,その完成部分を牛久市側に引き渡し,残部の工事を牛久市が公共工事として実施するという方法を考えて,同年8月ころ,その趣旨を被告会社Xに提案し,そのころ被告人Yら被告会社X側もこの提案を受け入れるに至った。そして,被告会社Xは,Bらとの上記協議の結果を受けて,甲野建設に対し,本件雨水排水路についてヒューム管による工事を施工した場合に要する工費の見積もりをさせ,甲野建設は,同年9月ころ,上記工費の見積額を1億4,668万円とする見積書を被告会社Xに提出し,同社では,そのころ上記の見積額を牛久市の下水道課に知らせた。なお,被告会社Xでは,本件雨水排水路の改修工事のうち,自社が施行を引き受ける部分については甲野建設に請け負わせて施行させるつもりであったが,前記のように見積書を作成させたほかには,契約書等の書面を同社との間で交わしたことはなかったし,そもそも,被告会社XとBら牛久市下水道課の担当者との間では,当時前記の程度の話し合いがされていたとはいうものの,実際に被告会社Xが工事をする場合,本件雨水排水路のうち具体的にどの部分を同社が施行するかといった点を含め,同社が行うべき工事方法等について,前記の程度以上に更に具体的な検討が行われるには至っていなかった。

 

   前記のとおり,本件は,被告会社Xの昭和62年9月期における法人税のほ脱を問題にするものであるところ,同期の期末までの時期における本件雨水排水路改修工事をめぐる状況は,おおむね以上のようなものであった。

 

 

(6) ところが,その後の昭和62年10月ころ,Bは,牛久市財政課から本件雨水排水路の一部のみを開発業者に発注して施工させる方法は好ましくないという趣旨の異論が述べられたため,改修工事の全部を牛久市が施工することとする旨,更に方針を変更し,同月下旬ころ,その趣旨を被告人Yらに伝えた。そして,そのころ,Bら同市下水道課の担当者と被告人Yらは更に協議をして,本件雨水排水路の全区間を牛久市が公共工事として発注,施工し,被告会社Xは実際にはその工事を行わないで,その工事費のうち,前記(5)の協議の際同社が担当することとされた部分の工事にかかる工費として予定されていた金額を負担金として支払うという趣旨の合意をするに至り,その金額は前記見積書記載の金額である1億4,668万円とされた。そこで,牛久市では,右協議結果を受けて,昭和63年度から3年計画で本件雨水排水路の改修工事を実施し,被告会社Xから初年度及び次年度に各5000万円の,最終年度に4,668万円の,各負担金の支払いを受けるという方針で,内部でも検討を進め,同市の昭和63年度一般会計予算案の作成に当たっては,歳出の部に都市下水路費として初年度公費8000万円を,歳人の部に被告会社Xによる都市下水路(刈谷川)整備負担分として5000万円をそれぞれ計上する内容の予算案を作成し,これが,昭和63年3月に,市議会の議決を経て,予算として成立した。

 

(7)その間の昭和62年11月30H,被告人Yは,被告会社Xの昭和62年9月期の法人税確定申告書を提出したが,その中で,同期の損金に当たる刈谷東物件の造成費として前記見積書記載の金額である1億4,668万円を計上した。

 

(8) もつとも,牛久市では,本件雨水排水路の下流に計画されていたポンプ場の建設をめぐって,周辺住民から反対運動が起こつたなどの事情があって,本件雨水排水路の改修工事を行うことを当面見合わせることとし,平成元年3月に成立した補正予算で,いったん予算に計上されていた本件雨水排水路に関係する前記歳出,歳入部分を削除する措置を講じた。その後,本件雨水排水路の改修については,その工事が実施されないまま推移している状況にある。

 

 

 

2 以上の事実関係に照らすと,確かに,被告会社Xでは,本件刈谷東物件の開発に着手した当初の段階から,牛久町ないし牛久市の下水道課の担当者らによって,本件雨水排水路の改修について種々の働きかけを受け,これが前記1(1)の行政指導としての性格を持つこと等にもかんがみ,将来本件雨水排水路の改修に関して同社が相応の関与をしなければならない事態になることを予想して,牛久町ないし牛久市の担当者らに対してもその趣旨の対応をすると共に,前記1(2)のような種々の準備をも行っていたことが認められる。

 

しかしながら,論旨指摘の負担金を売上原価に計上することができるためには,その支払いが債務として確定していたこと,すなわち,その義務内容が客観的,一義的に明白で,費用を見積もることができる程度に特定されていたことを要すると考えられる

 

(売上原価を計上するためには,その金額自体が確定していることは必ずしも必要ではないが,金額自体が確定していない場合には,これを見積もる必要があるところ,その見積もりが可能であるためには,上記の程度に債務が確定していることを要するものと解するのが相当である。)

 

 

ところ,以上の事実関係に照らすと,本件においては,所論指摘の負担金の支払いについて,上記の意義における債務の確定を認めることはできないといわざるを得ない。

 

3(1)関係証拠によると,被告会社丙川産業は,CからハイツZ物件と駐車場物件を取得したが,平成元年1月,このうちハイツZ物件のみを代金4億8,187万円で植木に売却したことが明らかである。ところが,被告人Yは,被告会社丙川産業の平成元年3月期の法人税確定申告の際,ハイツZ物件の売却に係る売上げを計上するに当たり,ハイツZ物件の取得原価として,駐車場物件の取得原価も含めた金額を計上するという原価の過大計上をしたことが認められる。すなわち,被告会社丙川産業では,ハイツZ物件と駐車場物件の取引の関係でCに支出した2億7,000万円のうち,5000万をハイツZ物件の建物の仕入価格として,2億2,000万円を同物件の土地と駐車場物件の仕入価格として経理処理していた(この2億2,000万円を両土地にどのように割り振るかについては,取引当事者間にも特段の合意がされなかったし,被告会社丙川産業の経理上も特に両者を区別する取り扱いをしていなかったことがうかがわれる。)が,被告人Yは,被告会社丙川産業の同年度の確定申告に当たり,Cを支払先とするハイツZ物件の土地の取得原価として2億2,000万円全額を計上したことが認められる(なお,被告人Yは,同土地の取得原価としてその他の費用も計上したが,その中には,実体がない架空のものもあったことが認められる。)。そうすると,駐車場物件の取得原価に相当する金額がハイツZ物件の土地の取得原価として過大に計上されたことが明らかであって,所論もこの点は争っていない。

(2) ここでの問題は,ハイツZ物件の取得原価の中に過大計上されたことになる駐車場物件の取得原価の金額をいかに算定するかの点にあるところ,原判決は,ハイツZ物件の土地と駐車場物件の仕入価格の合計である前記2億2,000万円に,その他の取得費用として証拠上肯認できるものを加えた2億2,520万円を,両土地の面積比により案分し,駐車場物件の取得原価を7,990万1,128万円と算出していることがうかがわれる。

 

   これに対し,所論は,駐車場物件には,裁判上の和解により5年間にわたり売却が事実上凍結されていることを始めとして,ハイツZ物件の土地には存在しない減価要因があるのに,原判決がこの点を考慮せず,面積比に基づく案分計算によって駐車場物件の取得原価を算出したのは不合理であって誤りであると主張する。なお,原審で弁護人の申請により取り調べられた不動産鑑定士D作成の鑑定評価書には,昭和62年6月6日での価格として,両土地の1平方メートル当たりの価格は,ハイツZ物件の土地が15万190円,駐車場物件が10万3,596円と評価するのが相当であり,結局,駐車場物件の価格は6,050万円となるという趣旨が 已載されているところ,所論は,前記D鑑定の方に合理性があるという趣旨を主張するものと解される。

4(1)そこで,更に原審記録を調査して検討すると,ハイツZ物件の土地と駐車場物件とは,地続きではないが,茨城県つくば市吾妻3丁目の中の近傍の位置にあり,原判決も指摘するように,形状,間口の広さ等において若干の差異があるとしても,自然的要因,公法上の規制,地域的要因等の多くの点において,ほとんど同様に評価できる状況にあることが認められる。

 

   また,原判決も指摘するように,被告会社丙川産業は,丁原商事やその他関係者との間で,ハイツZ物件を含め,Cに関係する各物件を売却処分した後,その利益分配を行うことを予定していたところ,被告人Yは,その利益分配の計算の前提として,ハイツZ物件と駐車場物件の取得原価を算定するに当たり,ハイツZ物件の土地と駐車場物件の各面積により案分して各取得原価を算定するなど,両土地の個性の相異等には特段留意していなかったことがうかがえる。なお,「つくば市吾妻原価表」は,実体のない経費も計上するなど,その記載の費目や金額自体には信用性を認め難い点が多いが,被告人Yが本件各土地の個性に特段着目せず,面積比によりその取得原価の割合を把握していたことをうかがわせる資料として,相応の価値があることは否定し難い。所論中には,この点を争う趣旨を主張する部分もあるが,首肯することができない。

 

(2)以上(1)の事実関係に照らすと,ハイツZ物件の土地と駐車場物件の面積比によってその各取得原価を案分計算して駐車場物件の取得原価を算出した原判決の認定の方法は,他に特段の事情がない限りは,その合理性を肯定することができると考えられる。

 

(3)そこで,上記特段の事情の存在を疑わせる事情が認められるかという観点から,所論の指摘について検討する。前記のように,原審弁護人は,所論と同旨の主張の根拠として,前記Dの鑑定評価書を提出し,所論も,この鑑定評価書をその主張の重要な根拠としていると解されるのであるが,この鑑定評価書は,後記のとおりその内容に疑問とすべき点が多く,所論がいうような証拠価値を持つものではないと考えざるを得ない。

 

 すなわち,Dは,駐車場物件について後記のような減価要因の存在を認めながら,ハイツZ物件の土地については,特に増減価を要する個別的要因はないとしている。しかしながら,ハイツZの物件の土地には,前記のように建物(アパート)が存在しているのに,Dがこの点について全く触れずに,更地と同様の基準によって同土地の価格の評価を行っているように解されるのは,後記のように駐車場物件については「賃借権による期間利益の喪失」を理由に大幅な減価を認めていること等とも対比して,その合理性に疑問があると考えざる得ない。

 他方,Dは,駐車場物件については,「間口・奥行及び規模」の点で10パーセントの減価要因があるとしているが,右鑑定評価書の記載を精査しても,その評価の理由自体が明確とはいえず,本件の両土地の実際の形状等にも照らすと,上記の点を根拠として駐車場物件にのみ10パーセントもの減価を認めるべき合理性は認め難いというべきである。

 

 また,Dは,駐車場物件について,「賃借権による期間利益の喪失」として,17パーセントの減価要因の存在を認めている。この点に関する事実関係をみると,原審記録によれば,駐車場物件(公簿上の面積584平方メートル)はかねて駐車場として利用されているが,隣地にマンションを所有する戊田工業株式会社が,同物件上の境界に近い一箇所に直径約30センチメートル,高さ約6メートルの広告塔を設置するとともに,境界に沿った約15平方メートルの土地部分に自転車置き場の工作物を設置し,また同物件の地下に排水溝等の埋設物を設けていたため,被告会社丙川産業がその撤去等を求めて係争中であったこと,平成元年2月,上記の係争について裁判上の和解が成立し,被告会社丙川産業は,戊田工業に対し,上記広告塔及び自転車置き場の工作物の撤去を平成4年2月末日まで,上記排水溝等の埋設物の撤去を平成6年2月末日までそれぞれ猶予し,戊田工業は,これらの期日限り,それぞれの物件を撤去することを約するに至ったことなどの事実関係を認めることができる。Dは,戊田工業駐車場物件に「一時使用の借地権と同等ないしはそれに近似している」権利を有しており,上記権利の存在のために被告会社丙川産業の使用・収益・処分が阻害される期間は,同人の鑑定評価時点である昭和62年6月から平成6年2月までの6年9箇月(81箇月)間であるとする前提に立ち,他方,一般の借地権存続期間を20年(240箇月),本件駐車場物件所在地域の借地権割合を50パーセントとした上で,この50パーセントに81/240を乗じた割合である17パーセントが上記「借地権による期間利益の喪失」による減価率に当たると算定している。しかしながら,昭和62年6月から平成6年2月までの間の阻害期間を前提にするDのこの鑑定は,平成元年3月期における駐車場物件の取得原価を算定するに当たり,そのままでは根拠にならないというべきであるが,この点はひとまずおいても,Dの上記鑑定方法は,平成6年2月までの期間,本件駐車場物件の占有,使用等は,Dのいう「一時使用の借地権と同等ないしはそれに近似している」権利に基づいて,戊田工業が行っていたという前提に立っているものと解されるところ,前認定の事実関係に照らすと,Dのこの前提は失当であって,Dは,戊田工業の前記工作物設置や前記の和解等により駐車場物件の所有権に加えられた制約を過大に評価しているといわざるを得ない。すなわち,この点を理由として駐車場物件につき17パーセントの減価要因の存在を認めたDの鑑定評価は,その合理性を認め難いと考えられる。

 

 以上の検討結果に照らすと,Dの鑑定評価は,その合理性に種々疑問とすべき点があり,必ずしも所論の根拠となるものではないし,前記(2)の特段の事情の存在を裏付けるものでもないというべきである。

 

   また,その他,関係証拠を精査検討しても,本件で前記特段の事情の存在をうかがわせるような点があるとは認められない。

 

(4)以上の次第であるから,原判決がハイツZ物件の土地と駐車場物件の面積比によってその各取得減価を案分計算して,駐車場物件の取得原価を7,990万1,128円と認定した点に,所論の誤りがあるとは認められない。論旨は理由がない。