所得税法にいう「配偶者」の意義(2)

 

 

 

所得税更正処分取消等請求控訴事件

 

 

 

【事件番号】 名古屋高等裁判所判決/平成7年(行コ)第21号

 

【判決日付】 平成7年12月26日

 

【判示事項】

 

(1) 配偶者控除及び配偶者特別控除に規定する配偶者の意義(原審判決引用)

      

(2) 配偶者の所得に対する貢献などを考慮して創設された配偶者控除及び配偶者特別控除は、事実上の婚姻関係にある者に対しても適用すべきであるとの納税者の主張が、所得税法上の配偶者は、基準日(各年の一二月三一日)において婚姻の届出を提出した者に限られるとして排斥された事例

      

(3) 所得税法上の扶養控除に規定する親族の意義(原審判決引用)

      

(4) 所得税法上の扶養親族と民法七八四条(認知の遡及効)の関係(原審判決引用)

      

(5) 子の認知は出生の時に遡るから、認知前の年分についても扶養控除を認めるべきであるとの納税者の主張が、認知があったとしても所得税法上は遡及的に扶養親族に該当することはないとして排斥された事例(原審判決引用)

      

(6) 医療費控除及び社会保険料控除の所得税法上の配偶者は民法上の婚姻の届出をした者であるとされた事例(原審判決引用)

      

(7) 納税者と事実上婚姻関係にあった者の医療費及び社会保険料は、納税者の所得控除とすることはできないとされた事例(原審判決引用)

      

(8) 内縁の配偶者及び未認知の子に係る所得控除の不適用と国際人権規約(B規約)二三条一項(原審判決引用)

      

(9) 内縁の配偶者及び未認知の子に係る所得控除の不適用と憲法一四条(平等原則)及び同二五条(生存権・国の社会的使命)

 

【掲載誌】  税務訴訟資料214号1048頁

 

 

について検討します。

 

 

 

 

主   文

 

 一 本件控訴を棄却する。

 二 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       

 

 

事実及び理由

 

 

第一 申立て

 一 控訴人

  1 原判決を取り消す。

  2 被控訴人が平成五年一一月二六日付けでした控訴人の平成二年分ないし平成四年分の所得税の各更正のうち申告額を超える部分及び各過少申告加算税賦課決定(平成二年分については、いずれも異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。

  3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

 二 被控訴人

   主文と同旨

 

 

第二 事案の概要

   原判決一二頁四行目から同九行目までを削除し、同一〇行目「②」を「①」に、同一三頁四行目「③」を「②」に改めるほか、原判決「事実及び理由」欄第二の記載と同一であるから、これを引用する。

 

 

第三 証拠

   本件記録中の原審における証拠に関する目録の記載を引用する。

 

 

第四 当裁判所の判断

   当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきであると判断する。その理由は、以下のように付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」欄第四の記載と同一であるから、これを引用する。

 一 原判決二〇頁五行目から同末行までを削除する。

 二 同二一頁初行から同七行目までを次のとおり改める。

 

 

  「(一) 

 

憲法一四条は、不合理な差別を禁止する旨の規定であるところ、

 

 

民法が婚姻の方式として届出を要するとすることは、

 

 

要件の欠けた婚姻の発生を防止するとともに婚姻の成立を公示するための制度として、

 

十分に合理性を有するものであって

 

所得税法がこれを前提として、婚姻の届出をした配偶者やその者との間の子を有する者について配偶者や子に関する所得控除を認め、

 

婚姻の届出をしていない事実上の配偶者やその者との間の子を有する者に右所得控除を認めないとしても、

 

 

そのことは右のような婚姻の方式に届出を要する制度をとった以上やむを得ないところであるから、

 

これをもって不合理な差別とし、憲法一四条に違反するものということはできない。」

 

 三 同二二頁五行目「(三)」を「(二)」に改める。

 

第五 総括

 

   よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

 

    名古屋高等裁判所民事第一部

        裁判長裁判官  水野祐一

           裁判官  熊田士朗

           裁判官  岩田好二