人道配慮により在留許可を行った事例(1)

 

 

 

 

 申請者は,本国において,養父母に育てられたところ,15歳の頃から養父に強姦されていたこと,養父の指示により,来日して養父の友人宅に居住していたものの,同宅から逃亡したことから,帰国した場合,養父の愛人としての生活を強いられるほか,本国警察の高官である養父の知人に捕まり迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。

 

 

 

 

 

 申請者が主張する迫害主体は,養父及び本国警察の高官である養父の知人であるところ,申請者はこれまで本国政府関係者から被害を受けたことはなく,本国政府から迫害を受けるおそれはない旨述べていることから,本国政府から迫害を受けるおそれがあるとは認められないこと,

 

 本国情勢に係る客観的情報によれば,本国では,性的暴力を違法とする法律が制定され,性的暴力に対する罰則が強化されたことが認められるなど,本国政府当局が性的暴力を含む違法行為を放置,助長するような特別な事情があるとは認められないことから,条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」とされた。

 

 

 しかしながら,申請者には養父母の他に頼れる親族がいないところ,

 

 就労の経験がなく,生計維持能力を有していないことから,

 

 帰国した場合,申請者を育てた養父母に頼って生活せざるをえず,

 

 養父から再び強姦の被害を受ける可能性が高いものと認められることから,

 

 こうした状況が改善されるまで,人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。