難民と認定しなかった事例(9)

 

 

 

 

 申請者は,結婚前の女性が割礼(女性器切除)を受ける慣習を有するA族の女性であるところ,本国において,父親から,申請者の結婚相手が決まったため,結婚前に割礼を行うと言われたことから,帰国した場合,親族から割礼を受けることを強制され,家族が決めた高齢の男性と強制的に結婚させられるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 申請者が主張する迫害主体は,本国政府ではなく,申請者の親族であるところ,

 

 本国情勢に係る客観的情報によれば,割礼は本国の刑法で犯罪とされており,割礼を実施した者に有罪判決を言い渡した事例が認められること,

 

 憲法で女性の権利が保障され,強制結婚を禁止していることから,

 

 本国政府当局が割礼の慣習や強制結婚を含む私人による違法行為を放置,助長するような特別な事情があるとは認められず,条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」とされた。

 

 

 しかしながら,本国情勢に係る客観的情報によれば

 

 本国の一部の地域においては,依然として割礼が実施されていることが認められること,

 

 本国の隣国であるB国において,A族が割礼の慣習を維持しているとの報告があるところ,

 

 B国との国境付近に位置する申請者の居住地において,A族による割礼の慣習が絶えているとはいえず,申請者が帰国した場合,何らかの不利益な取扱いを受ける可能性が否定できないことから

 

 こうした状況が改善されるまで,人道上の配慮から我が国での在留を認める必要があると判断された。