譲渡の意義(3)

 

 

 

 

 課税処分取消請求事件、最高裁判所第3小法廷判決/昭和62年(行ツ)第142号、判決 昭和63年7月19日、最高裁判所裁判集民事154号443頁について検討します。

 

 

 

 

 

 

【判示事項】 所得税法60条1項1号にいう「贈与」と負担付贈与

 

 

 

 

 

 

主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       

 

 

理   由

 

 上告代理人渋田幹雄の上告理由について

 

 上告人らに訴外宮城俊介の合計二六〇〇万円の債務の履行を引き受けさせた本件土地所有権(共有持分)移転契約は負担付贈与契約に当たるところ、

 

所得税法六〇条一項一号にいう「贈与」には贈与者に経済的な利益を生じさせる負担付贈与を含まないと解するのを相当とし、

 

かつ、

 

右土地所有権(共有持分)移転契約は同項二号の譲渡に当たらないから、

 

上告人らの昭和五二年分の譲渡所得については、同項が適用されず、

 

結局、租税特別措置法(昭和五五年法律第九号による改正前のもの)三二条所定の短期譲渡所得の課税の特例が適用されるとして、

 

本件更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に違法はないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及び説示に照らし、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張も失当である。論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

 

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

 (裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己)