出入国管理及び難民認定法違反被告事件、前橋地方裁判所判決/平成29年(わ)第117号、判決 平成29年4月24日、LLI/DB 判例秘書登載について検討します。
主 文
被告人を懲役2年及び罰金150万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 Aと共謀の上,平成28年11月中旬ころから同年12月2日までの間,群馬県渋川市(以下略)所在のスナック「◇◇◇」において,いずれも短期滞在の在留資格で本邦に在留し,法務大臣の資格外活動の許可を受けていないカンボジア王国の国籍を有する外国人であるB,C,D,E及びFを,同店の従業員として稼働させて報酬を受ける活動に従事させ,
第2 Gと共謀の上,同年11月中旬ころから同年12月2日までの間,同県沼田市(以下略)所在のスナック「△△△」において,いずれも短期滞在の在留資格で本邦に在留し,法務大臣の資格外活動の許可を受けていないカンボジア王国の国籍を有する外国人であるH及びIを,同店の従業員として稼働させて報酬を受ける活動に従事させ,
もって事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた。
(証拠の標目)(括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードの検察官請求証拠の番号を示す。)
判示事実全部について
・ 被告人の公判供述
・ Fの検察官調書(甲8)
判示第1の事実について
・ B(甲4),E(甲5),D(甲6),F(甲7)の各検察官調書
・ 検証調書謄本(甲1,2)
・ 東京入国管理局長J作成の「出入(帰)国及び外国人登録記録等に関する照会について(回答)」と題する書面(謄本)(甲18ないし22)
判示第2の事実について
・ H(甲9),I(甲10)の各検察官調書
・ 検証調書謄本(甲3)
・ 東京入国管理局長J作成の「出入(帰)国及び外国人登録記録等に関する照会について(回答)」と題する書面(謄本)(甲23,24)
(法令の適用)
罰条
判示第1の行為について B,C,D,E及びFに対する各行為について,いずれも刑法60条,出入国管理及び難民認定法73条の2第1項1号
判示第2の行為について H及びIに対する各行為について,いずれも刑法60条,出入国管理及び難民認定法73条の2第1項1号
刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑を選択
併合罪加重 刑法45条前段,懲役刑につき同法47条本文,10条(各被害者の間に犯情の差異は認められない),罰金刑につき同法48条2項(各罪の罰金の多額を合計)
労役場留置 刑法18条(金1万円を1日に換算)
刑の執行猶予 懲役刑につき刑法25条1項
(量刑の理由)
本件は,被告人が,共犯者らと共謀の上,カンボジア人女性7名をスナックのホステスなどとして稼働させたという不法就労助長の事案である。
被告人は,カンボジア人女性らに対し,月額約30万円の給料でホステスとして働くという条件を提示して,前記女性らを日本に入国させたにもかかわらず,実際には約束どおりの給料を払わず,かつ,前記女性らは客相手に売春をすることとなった。
かかる被告人の手口は,詐欺的なものであり,犯行態様は悪質というべきである。
また,前記女性らは,前述のとおり,約束どおりの給料を受け取ることができず,さらには,客相手に売春までさせられる結果となったものであり,
前記女性らが被った肉体的,精神的,経済的な苦痛は相当に大きいものといえる。
加えて,被告人は,本件不法就労に関して,主導的な役割を果たしていたものといえることなどの事情も併せ考慮すれば,被告人の刑事責任は相当に重い。
他方,本件不法就労は,前記女性らが大使館に助けを求めたことなどもあり,
結果として,1か月に満たない短期間のうちに終了していること,
そのように短期間のうちに終了したこともあり,被告人は,本件不法就労によって,さほど大きな利益を得ていないこと,
被告人は,事実を認め一応反省する態度を示していること,被告人には前科2犯があるものの,いずれも20年以上前のものであることなど被告人のために酌むべき事情も認められる。
そこで,これらの事情一切を総合考慮し,被告人を主文の刑に処するのが相当と判断する。
(検察官 黒澤葉子,私選弁護人 神保琢夫(主任),佐々木弘道各出席)
(求刑 懲役3年及び罰金250万円)
平成29年4月24日
前橋地方裁判所刑事第2部
裁判官 中野哲美