非課税所得とされる損害賠償金等(1)

 

 

 

 所得税更正処分取消等請求事件、名古屋地方裁判所判決/平成19年(行ウ)第94号、判決  平成21年9月30日、判例時報2117号148頁

 

 

 

【判示事項】

 

 商品先物取引に関し商品取引員から不法行為に基づく損害賠償金として受け取った和解金が,平成22年法律第6号による改正前の所得税法9条1項16号,平成22年政令第50号による改正前の所得税法施行令30条2号の非課税所得に当たるとされた事例

 

 

 

 

 

 

主   文

 

 

1 処分行政庁が原告に対し平成18年2月10日付けでした平成15年分の所得税に係る更正処分のうち納付すべき税額84万4100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

 

2 訴訟費用は,被告の負担とする。

 

       

 

 

事実及び理由

 

 

第1 請求

 主文第1項と同旨。

 

第2 事案の概要

 本件は,原告が,商品取引員であるA商事株式会社(以下「A商事」という。)に委託して行った商品先物取引に関しA商事から受け取った和解金457万0455円(以下「本件和解金」という。)を所得に計上せずに平成15年分の所得税の確定申告を行ったところ,処分行政庁から平成18年2月10日付けで本件和解金を雑所得として計上することなどを内容とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)及びこれに伴う過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)を受けたことから,本件更正処分のうち納付すべき税額84万4100円(本件和解金に係る雑所得を除いて算出した税額)を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求める事案である。

 本件で引用する所得税法及び所得税法施行令の主な条項は,別紙1記載のとおりである。

 

 

1 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)

 (1) 原告がA商事に委託して行った商品先物取引

 原告は,平成13年4月23日から平成14年7月2日までの間,A商事に委託して商品先物取引を継続的に行い,1281万5795円の損失を被った(以下,この商品先物取引を「本件先物取引」という。)。なお,A商事は,本件先物取引の委託手数料として1425万7900円を得た。

 (2) 原告とA商事との和解契約

 ア 原告は,平成15年2月25日,A商事との間で,本件先物取引に関し,要旨次の(ア)ないし(エ)のとおりの和解契約(以下「本件和解契約」という。)を締結した。

 (ア) A商事は,本件先物取引において,原告とA商事との間に意思疎通を欠いた取引があったことを認め,本件和解金457万0455円の支払義務があることを認める(第1条)。

 (イ) A商事は,本件和解金として原告に対して支払う457万0455円のうち,7万0455円を帳尻損金に充当し,450万円を平成15年3月14日限り,原告の指定する口座に送金して支払う(第2条①)。

 (ウ) 原告は,A商事が第2条の債務を履行したときは,A商事及びその従業員に対する民事上の請求並びに行政上の一切の不服申立権を放棄する(第3条)。

 (エ) 原告とA商事は,本件先物取引に関し,本件和解契約の各条項に定めるもののほか,相互に債権債務のないことを確認する(第4条)。

 イ A商事は,平成15年3月14日,本件和解金の支払として,7万0455円を原告の帳尻損金に充当するとともに,450万円を原告が指定したB銀行勝川支店の原告名義の普通預金口座に振り込んだ。

 なお,原告は,同年2月22日,浅井岩根法律事務所に対し,本件先物取引に係る法律相談料として1万円を支払った。

 (3) 課税の経緯等

 課税の経緯等は,次に記載するほか,別表1記載のとおりである。

 ア 原告は,平成16年3月12日,処分行政庁に対し,平成15年分の所得税について,不動産所得を225万4252円,給与所得を214万4000円,一時所得を415万7651円,総所得金額を855万5903円,納付すべき税額を79万9200円とする確定申告書を提出した。

 原告は,上記の確定申告において,本件和解金を所得に計上しなかった。

 イ 処分行政庁は,平成18年2月10日,原告に対し,平成15年分の所得税について,不動産所得を200万0181円,給与所得を214万4000円,雑所得を457万0455円,一時所得を415万7651円,総所得金額を1287万2287円,納付すべき税額を184万1400円とする本件更正処分をするとともに,過少申告加算税11万4000円を賦課する本件賦課決定処分をした。

 処分行政庁が雑所得として計上した457万0455円は,本件和解金に係るものである。

 

 

2 被告が主張する税額の計算根拠

 被告は,原告の平成15年分の所得税として納付すべき税額は別紙2のとおり194万5300円であり(なお,雑所得は,本件和解金から法律相談料1万円を控除した456万0455円としている。),過少申告加算税は11万4000円であると主張しており,本件更正処分による納付すべき税額は上記の金額を超えるものではなく,本件賦課決定処分は上記の金額と同額であるから,いずれも適法であると主張している。

 原告は,本件更正処分のうち,本件和解金を雑所得(本件更正処分では457万0455円,本件訴訟における被告の主張額は456万0455円)として計上したことを争っており,他の項目については争っていない。

 なお,本件和解金が非課税所得に当たるとした場合に,原告の平成15年分の所得税として納付すべき税額が84万4100円,過少申告加算税が0円となること(税額の算出過程につき別表1の「雑所得がゼロの場合」欄参照)は,当事者間に争いがない。

 

 

 

 

3 争点

 (1) 本件和解金がA商事の不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否か

 (2) 本件和解金が所得税の課税対象となるか否か

 

 

 

4 争点に関する当事者の主張

 (1) 争点(1)(本件和解金がA商事の不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否か)について

 (被告の主張)

 ア A商事に不法行為責任が認められないこと

 (ア) 適合性の原則違反がないこと

 a 原告は,平成元年12月6日,C証券株式会社(現D証券株式会社。以下「C証券」という。)に口座を開設して証券取引を開始し,投資信託や株式取引を継続して実施し,E建設株式会社(以下「E建設」という。)の株式取引により200万円以上の含み損を,F株式会社の株式取引により270万円以上の含み損を,投資信託「太陽Wブル・ストック・オープン」により470万円以上の含み損を,投資信託「パートナーズダブル・トレンドオープン」により1190万円以上の含み損を被った。また,原告は,平成12年6月26日,当時のG株式会社に口座開設を申し込み,同年7月14日から平成13年3月16日までの間,外国為替証拠金取引を行い,約40万円の損失を受けた。

 なお,原告は,本件先物取引を開始した後の平成14年2月15日,G株式会社に対し,口座開設を申し込み,商品先物取引を開始している(以下「別件先物取引」という。)。

 このように,原告は,株式取引,投資信託,外国為替証拠金取引,商品先物取引を経験し,投資ないし投機的取引に係る十分な経験を重ねており,複数の取引を重ねる中で,一定の損失を経験しつつ,それでも取引を継続し,あるいは,従前の取引に比べてより複雑かつ投機的な取引を選択している。

 b 原告は,愛知県春日井市に自宅用の土地建物を,宮崎県日向市の自己所有土地に共同住宅(アパート)を新築して現在に至るまで保有し,共同住宅を1室月額約5万円で賃貸し,不動産収入を得ている。

 また,原告は,本件先物取引に係る口座開設申込書において資産を1000万円以上と申告し,別件先物取引に係る取引口座申込書において保有金融資産を2000万円以上と申告しているように,生活に余裕のある範囲で運用できる資産を有していた。

 c 原告の以上のような取引経験,財産の状況等に照らせば,商品先物取引に係る原告の適合性に問題があったとは認められない。

 (イ) 説明義務違反がないこと

 原告は,本件先物取引の開始に際して,A商事の営業担当者から,「商品先物取引委託のガイド」(乙12。以下「本件ガイド」という。)及び受託契約準則を受領し,事前交付書面等に基づきそのリスク等についての説明を受け,その説明をおおむね理解できた旨表明し,先物取引のリスクを了知した上で,取引の委託に際しては,受託契約準則の規定に従って,自己の判断と責任において取引を行うことを承諾した。そして,原告は,平成13年4月17日付けで,約諾書(乙3)及び口座開設申込書(乙5)にそれぞれ署名押印してA商事に提出し,同口座開設申込書記載の「事前交付書面(委託のガイド等)の受領について」の欄には,いわば盲目的に「説明を受け十分理解できた」に○印を付けるのではなく,「説明を受けおおむね理解できた」に自分が当たる旨を主体的に判断して○印を付けた。

 上記(ア)のとおり原告は投資ないし投機的取引に係る十分な経験を有していたものであるから,本件先物取引の契約締結に至る上記の事実経過を踏まえれば,取引の説明をした書面は郵送されたものであるとの原告の供述を前提としても,これにより原告の理解が不十分であったとか,A商事の営業担当者が原告に対する説明義務を尽くしていなかったということはできない。

 (ウ) 新規委託者保護義務違反がないこと

 A商事は,平成13年当時,受託業務管理規則(平成12年6月15日改定,同日から平成13年7月31日まで施行。以下「本件管理規則」という。)を定め,委託者の保護育成措置として,11条において,商品先物取引の経験がない委託者について,3か月を限度とする習熟期間を設け,保護育成措置として,別に定める「相応の建玉枚数の範囲」内において受託を行うこととし,習熟期間中は,その建玉枚数の範囲を超えないこととする旨が定められている(別紙3参照)。そして,A商事は,上記の「相応の建玉枚数の範囲」について,別紙4のとおり管理部内規(以下「本件内規」という。)を定め,「(1)年収500万円以上,有価証券・預貯金合計が500万円以上と推定されること,(2)商品取引に関する知識・理解度が深いこと」を基準とする審査に適合する者(第1分類に該当する者)に対しては,50枚を超え100枚までと定めている。

 A商事は,原告が本件内規の第1分類に該当すると判断したことに基づき,原告の習熟期間中は,建玉枚数を100枚までの範囲に限定するようにしていたのであって,その取引は本件管理規則に違反するものではない。

 (エ) 断定的判断の提供がないこと

 断定的判断が与えられたというためには,投資ないし投機行動に踏み切る旨を決断するだけの相応の根拠が認められたり,外務員の具体的な専門性や知識等に裏打ちされていなければならないところ,原告が断定的判断として主張する各説明は,その文言自体,いずれも必ずもうかる旨の表示になっていないことは明らかであり,A商事の外務員が原告に対し断定的判断を提供して本件先物取引に勧誘したとは認められない。

 (オ) 無断売買,実質的一任売買による違法がないこと

 原告の投資ないし投機的取引経験に照らせば,本件先物取引における取引数量及び金額の増加についても過当という評価は当たらないし,むしろ,取引の拡大が,商品先物取引による利益獲得の拡大に対して強烈な意欲を有する原告の取引目的に合致するものであって,原告自身の判断に基づくものであることは明白であり,こうした取引による損失がA商事の違法行為によるものと評価することはできない。

 このことは,原告が,合計1686万1750円の差引損金を出した平成13年9月20日以降も,別件先物取引を新たに開始して商品先物取引の委託先を増やすという,取引の簡素化,収束化を望む者の行動とは全く相容れない行動をしていることからも明らかである。

 (カ) 両建て等の特定売買に関する原告の主張が失当であること

 両建てを含め,いわゆる特定売買は,一般投資家であっても,目先の相場変動を狙って,利益を追求するために(又はリスクを回避するために)日常的に行う取引手法であって,特定売買ができないとなれば,投資家は,自由な取引の機会を奪われることになる。

 なお,原告は,昭和63年12月26日付けで「商品取引員の受託業務の適正な運営の一層の確保について」(同日付け第63-5995号農林水産省食品流通局商業課長,通商産業省産業政策局商務室長共同通達)が,同月27日付けで「委託者売買状況チェックシステムについて」(同日付け63食流第6050号農林水産省食品流通局商業課長通達)が,平成元年1月23日付けで「売買状況に関するミニマムモニタリング(MMT)について」(同日付け通商産業省産業政策局商務室長通達)がそれぞれ発出され(以下,これらの通達によるチェックシステムを「特定売買監視システム」という。),特定売買監視システムにより特定売買の比率を全体の20%以下にとどめる旨の指導があった旨を主張する。しかし,特定売買監視システムに係る通達は平成11年4月1日に廃止されている上,原告がその根拠とする記事は,特定売買監視システムに関する通達が発せられる前に記載された予測記事にすぎないし,記事の内容も,それ自体,特定売買監視システムが監視ないし指導に係るひとつの目安として機能する旨を説明するにとどまるものにすぎず,取引を上記範囲内に制限する旨の規定は存在しない。

 また,原告の主張する手数料化率は,損失合計に対する手数料合計の割合であって,これによると,手数料が同じであれば損失が多いほど,手数料化率が低くなるという不合理な数値であり(その不合理性は,顧客に利益が存在するがゆえに手数料化率として100%を超える数値を示す本件において顕著である。),違法性の判断に当たり,このような数値を基準とすることには合理性がない。

 (キ) まとめ

 以上のとおり,A商事は,本件先物取引において,商品取引員として果たすべき注意義務を欠く違法があったとはいえず,不法行為責任を負うものとは認められない。なお,付言すれば,原告が問題とする損失は,平成13年9月20日の取引によって生じたものであるから,同取引とは関連のない取引等を含む本件先物取引全体を違法と評価すべきではない。

 イ 過失相殺

 仮に本件先物取引においてA商事に不法行為責任が認められる場合には,上記で述べた本件先物取引に係る原告の落ち度にかんがみ,相当の過失相殺がされるべきである。

 ウ 本件和解金が損害賠償金ではないこと

 上記アのとおり,A商事は本件先物取引に関し不法行為責任を負うものではない。本件和解契約が締結される過程において,原告がA商事に対し本件訴訟代理人の浅井岩根弁護士(以下「浅井弁護士」という。)の名前を示したところ50万円の増額がされたなどの事情があることからすれば,A商事が原告に本件和解金を支払った趣旨は,本件先物取引に係る原告の苦情を円満に解決することにあったものであり,その性質は,一種の紛争解決金にすぎないものであって,不法行為に基づく損害賠償金ではないというべきである。

 

 

 

(原告の主張)

 ア A商事の不法行為責任

 (ア) 適合性の原則違反

 a 収入,財産に対して不適合(過大)な取引を勧誘,受託していたこと

 原告は,本件先物取引を開始した当時,投機取引の原資として投入し得る正味の資産として,90万円程度の現金及びE建設の株式1000株のみを保有するにとどまり,本件先物取引当初に原告が預託したのは,これらの資産のほか,借入金(農協から借り入れたアパート建築用資金)を流用した100万円であった。

 A商事の外務員H(以下「H」という。)は,原告が当初より投機不適格資金であることが明らかな借入金を取引原資としていたことを了知しながら,白金18枚という過量な初回建玉を勧誘して受託し,その後も,一貫して取引の拡大を勧め,取引開始後1か月強の建玉枚数が45枚,約1か月半後の建玉枚数が62枚,約3か月後の建玉枚数が90枚,約3か月半後の建玉枚数が190枚まで膨れあがっていた。

 そして,原告は,これらの取引に要する委託本証拠金や追証拠金として,別表2の「預託金」欄記載のとおり資金を預託させられているところ,これらの入金はいずれも借金によって調達したものであった。さらに,平成13年8月2日に入金した450万円に至っては,自宅を担保にI株式会社から借り入れて調達したものであったが,Hは,I株式会社からの借入れを迷っていた原告に対し,借入れによる資金調達を勧めた。このように,Hは,明らかに投機原資としては不適格な資金であることを承知の上で,原告に対し,借入れを勧めてまで,取引のより一層の拡大,継続を企図していた。

 以上のような取引状況及び資金状況に照らせば,本件先物取引は原告の上記のような資産状況に照らし明らかに過大なものといわざるを得ず,これを承知で,かつ,借入れを勧めてまで,かかる過大取引を勧誘,受託したHの行為は強度の違法性を有する。

 b 経験,知識に照らして不適合(過大)な取引を勧誘,受託していたこと

 原告は,公社債,現物株及び投資信託の証券取引の経験を有してはいたが,信用取引はしていなかった。

 なお,原告は,本件先物取引以前に,約8か月にわたり,G株式会社との間で外国為替証拠金取引を行っていたが,取引開始に当たっても,取引中においても,G株式会社の担当者とは一切面談しておらず,資料等は送付されてきたのみであり,かつ,取引口座開設申込書も電話による担当者からの指示に従って記入したものにすぎないなど,取引の仕組みやリスクについて何ら具体的な説明を受けてはいなかった。実際の取引内容及び取引結果も,450万円を投入して約40万円の損失を被ったという程度であり,金融デリバティブ取引としての高リスク性を実感するにはほど遠いものであった。そのため,原告は,外国為替証拠金取引について,当時は,そのレバレッジ性や,現物株あるいは投資信託より危険なものであるとの認識を持つには至っていなかった。

 このような原告の投資経験及びその理解程度に照らせば,商品先物取引について,その仕組みやリスク内容を具体的かつ的確に理解,判断することは困難である。

 しかるに,HをはじめとするA商事の従業員らは,原告に対し,当初,喫茶店にて「小一時間ほど」面談説明したのみで,本件ガイドなどの説明書は送付したもののこれに基づき具体的な取引の仕組みやリスクを面談説明することもなく取引を開始させ,前記aのとおり,短期間に取引規模を拡大させた。

 このようなHらの取引勧誘,受託行為は,原告の知識,経験に照らして,明らかに過大,不適合な取引を勧めるものであって,適合性原則に違反する違法行為であることは明らかである。

 (イ) 説明義務違反

 原告の本件先物取引開始以前の投資取引経験が,商品先物取引の具体的リスクを覚知,理解させるに足るものではなかったことは前記(ア)のとおりであり,そうであればこそ,A商事の従業員らは,本件先物取引勧誘に際して,原告に対し,商品先物取引の具体的な仕組みやこれに内在する具体的なリスク(① 預託する証拠金は総約定代金の約5%ないし10%にすぎないこと,② 値動きが約定値段から予想に反して2.5%ないし5%変動すると追証拠金が必要となること,③ 預託した証拠金以上の損失が発生する危険があること,④ 相場における損益の平均的な確率を前提にすれば,取引を反復継続することで,手数料の累積により遅かれ早かれ必然的に元本の欠損を生ずること,⑤ 顧客と取引員との間に意図的な向かい玉のみならず,偶発的な利害相反もあり得ること)及びこれらを踏まえた資金投下のあり方や適切な取引仕法などにつき,資料等を示すことはもちろん,口頭においても,具体的かつ原告が理解できる程度に十分な説明を行うことが要求されていたものである。

 しかるに,原告がA商事の従業員らから受けた説明は,自宅近くの喫茶店にて「小一時間くらい」面談にて説明を受けたというものにすぎず,法定交付書面たる本件ガイドは,取引口座開設申込書(乙5)等と一緒に郵送されてきたのであって,これに基づいて具体的な面談説明は一切受けていなかった。この程度の説明では,上記のような属性を有する原告に先物取引の仕組みや具体的リスクを十分に理解させることがほぼ不可能であることは明らかである。むしろ,Hは,原告に対し「私はプラチナが得意です。江戸時代に開発されたテクニックで売り買いをして利益を出します。」などと述べており,過度に利益を強調するばかりで,損失発生のリスクについては何ら具体性のない抽象的な説明しか行わなかったことは容易に推測できる。

 しかも,本件先物取引においては,投入した資金及び取引によって生じた利益のほぼ全額を証拠金に充当して,常時限度一杯の建玉がされており(いわゆる満玉),かかる取引手法は,ひとたび相場が反転した場合には,余剰資金がないため,直ちに破綻の危機に直面する極めて危うい手法である一方,業者にとっては,顧客の相場変動に対する耐性を弱化させ,誘導に対する抵抗力を低減させる点及び相場反転をきっかけに追証ないしは両建に要する証拠金名目でさらに顧客から資金を引き出す機会を増大させるという点で利益となる。原告が,かかる危険な手法を無自覚に,かつ,その意味を理解することなく行っていること自体が,商品先物取引の具体的リスクについて全く理解していない何よりの証左である。

 以上からすれば,Hらの説明義務違反は明らかである。

 (ウ) 新規委託者保護義務違反

 原告は,本件先物取引以前において,商品先物取引の経験を有していなかったのであり,A商事の本件管理規則においても,かかる新規委託者に対しては,取引開始から3か月間は保護育成措置として,余裕資金を保持した取引を励行させるとともに,当該委託者の資質,資力等を考慮のうえ,相応の建玉枚数に制限する旨が規定されていた。

 しかるに,本件先物取引の取引開始から3か月間の取引の実態を見るに,当初建玉は白金18枚で開始され,取引開始後1か月強の建玉枚数は45枚,約1か月半後の建玉枚数は62枚,約3か月後の建玉枚数は90枚に達していた。

 さらに,Hは,原告が当初より借入金を取引原資に充てていることを承知の上で,原告の入金額及び取引による利益のほぼ全額を委託証拠金に振り替えて,その限度一杯の建玉を恒常的に行わせていたのであって,余裕資金の保持については何らの考慮も払われていなかった。

 以上のとおり,A商事の新規委託者保護義務違反は明らかである。

 (エ) 断定的判断の提供

 Hは,原告に対し,各商品を勧誘するに際し,「プラチナに詳しいんですよ。江戸時代に開始された,そういう手法があってね,そういうのでやって割りと当たるんですよ。」,「(プラチナの値動きについて)下がるんじゃないか。」,「今コーンが底値です。」,「ガソリンは,上司で非常に石油製品に詳しい人がおるから,この人の言うのは間違いない。」,「(年明けの小豆の値動きについて)需要が多くなるから絶対値上がりする。年明けると,天皇陛下のお祝い事があるで絶対需要がある。」などと勧誘した。

 原告は,これらHの説明の真偽については,確認する知識も情報も持ち合わせておらず,その結果,Hの勧める商品取引を断ったことはなかった。

 このようなる経緯に照らせば,Hの上記各勧誘文言は,原告にとって,「確かだ」と誤認させるに足りるものであったことは明らかであって,断定的判断提供に該当する違法な勧誘行為であったことは明白である。

 (オ) 無断売買,実質的一任売買

 本件先物取引は,そもそも3取引所で7商品もの多品種取引である上,建落の頻度も頻繁であり,素人顧客では建玉状況,損益状況を正確に把握することすら困難な状況であった。

 原告は,先物取引の経験はなく,A商事からは先物取引について十分な説明を受けておらず,相場の動きなどについては独自の情報源を持っていなかったから,A商事の従業員からの一方的な電話連絡,指示に従わざるを得ず,実質的な投資判断を行っていたのはA商事の従業員であったことは明らかであり,本件先物取引は,そのほとんどが無断売買ないしは押付け売買であって,その実態は,実質的一任売買と評価されるべきものというべきである。

 (カ) 両建て等の特定売買

 a 以下の取引は,その性質上,委託者に売買委託手数料の負担を生じさせるばかりで,委託者の利益につながらない不合理な取引方法であるため,委託者保護の見地から望ましくない取引方法として,特定売買監視システムの対象とされ,この特定売買の比率を全体の20%以下にするよう指導がされている。

 (a) 直し 既存建玉を仕切るとともに,同一日内で新規に売り直し又は買い直しを行っているもの(異限月を含む。)

 (b) 途転 既存建玉を仕切るとともに,同一日内で新規に反対の建玉を行っているもの(異限月を含む。)

 (c) 日計り 新規に建玉し,同一日内に手仕舞いを行っているもの

 (d) 両建て 既存建玉に対応させて反対建玉を行っているもの

 (e) 手数料不抜け 売買取引による利益が発生したものの,当該利益が委託手数料より少なく,差引損となっているもの

 b 本件先物取引においては,別表3のとおり特定売買が行われ,全取引中の特定売買の占める割合は45.8%になり,特定売買を全取引の20%以下にするという基準をはるかに超えている。

 また,本件先物取引の差引損益1281万5795円に対し,A商事が得た委託手数料は1425万7900円であり(手数料化率は111.25%),取引による売買損益自体では215万5000円の利益が出ていたにもかかわらず,無意味かつ頻繁な取引によって生じた膨大な手数料の負担が生じたために,原告が多額の損失を被る結果となったことを意味する。

 このように,A商事において,原告の利益を犠牲にして(少なくともその利益に何ら顧慮することなく),自らの利益を図るという違法な業務遂行がされていたことは明らかである。

 (キ) まとめ

 以上のとおり,A商事の従業員らは,本件先物取引において違法な勧誘,取引を行ったものであるから,A商事は,これによって被った原告の損失につき,民法715条の不法行為責任を負うものというべきである。

 イ 過失相殺が許されないこと

 原告がA商事の従業員から先物取引のリスクについて十分な説明を受けておらず,そのリスクを十分に認識していなかったことは既に述べたとおりであり,仮に原告に不注意が認められるとしても「単純な落ち度」にすぎないし,原告は自宅を担保に供して消費者金融から借り入れた資金も本件先物取引の原資にしており,最低限その資金分を確保しなければ取引を終えることができない状態に追い込まれていたものであり,原告をこのような状態に追い込んだのは,A商事の従業員が説明責任を果たさなかったことによるものであるから,A商事の違法行為を過失相殺によって減責するというのは,公平の法理に著しく反するものというべきである。

 ウ 本件和解金が損害賠償金に当たること

 以上のとおり,A商事は原告に対し不法行為に基づき1281万5795円の損害賠償債務を負っており,本件和解金は,かかる不法行為に基づく損害賠償金として原告に交付されたものというべきである。

 なお,被告は,原告がA商事に対し浅井弁護士の名前を示したところ50万円の増額がなされたことなどをもって,本件和解金は一種の紛争解決金であって損害賠償たる性質を有しないと主張するが,損害賠償の示談交渉において,交渉中に金額が上下することやその際に様々な要素が考慮されて金額決定に至ることは当然のことであって,こうした事情は,本件和解金が損害賠償たる性質を有しないことの根拠とはなり得ない。

 

 

 

(2) 争点(2)(本件和解金が所得税の課税対象となるか否か)について

 

 

(被告の主張)

 ア 本件和解金が雑所得に当たること

 所得税法(以下「法」という。)は,譲渡所得,山林所得,一時所得等の所得類型を設けて,一時的,偶発的利得を一般的に課税の対象とする一方,雑所得という類型を設けて,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得に含まれない所得をすべて雑所得として課税の対象とする旨定めていることから明らかなように,人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成するという包括的所得概念を採用しているところ,損害賠償金についても人の担税力を増加させると捉えることが可能であるから,課税の対象としているものと解するのが相当である。

 このことは,法9条1項16号,所得税法施行令(以下「施行令」という。)30条が,損害賠償金であっても課税所得とされる場合があることを定めていることからも明らかである。

 本件和解金は,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないから,雑所得に当たる。

 イ 本件和解金が法9条1項16号を受けて定められた施行令30条2号の「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当たらないこと

 (ア) 法9条1項16号は,「損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で,心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」を非課税所得とし,これを受けて定められた施行令30条は,① 身体の傷害又は心身に加えられた損害について支払を受けるもの(同条1号),② 不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について支払を受けるもの(同条2号)について非課税とする旨定めている。

 損害賠償金が非課税とされるのは,その一般的性格を一種の財産的穴埋めとして捉え,そのような賠償行為からは何らの利得も生じてこない以上,課税しないのは当然であるとの発想に基づくものと解されるから,損害賠償金が本当の意味での「損害の償い(穴埋め)」であって,法令が予定する非課税の取扱いに値する損害賠償金に該当する場合のみ非課税とするのが相当であり,損害賠償金が非課税所得に当たるか否かについては,単なる当事者間の支払名目によってではなく,法の趣旨から,支払われた損害賠償金の実体に即して判断する必要がある。

 (イ) そして,法9条1項16号を受けて定められた施行令30条各号の規定は,損害賠償金を損害を加えられた対象が心身であるか資産であるかによって大きく2つに分け,被害対象が心身の場合には,計上される必要経費の賠償金を除き,ほとんど全面的に非課税所得としているのに対し,被害対象が資産の場合には,「不法行為その他突発的な事故によるもの」だけに限定した上,計上される必要経費の賠償金はもちろん,施行令94条に該当するものも除くとして,非課税所得の範囲を大きく限定していることからすると,被害対象が資産の場合には,不法行為に基づく損害賠償金が非課税所得に該当するか否かは,当該損害賠償金が「突発事故,つまり相手の合意をえない予想されない災害」による損害と同視できる事情に基因して得られたものか否かという点を基準として判断するのが相当である。

 このことは,補償金,損害賠償金等に関する税制改正がされた昭和37年12月7日付け税制調査会答申(乙29。以下「税制調査会答申」という。)において,「課税所得を構成するか,あるいは非課税所得とすべきかという点の判断の基準は,その損害の発生が不可抗力ないし不可避的なものであったかどうかということよりも,むしろそれが突発事故,つまり相手の合意をえない予想されない災害であったかどうかというところに基準を置くほうが,常識的に妥当と思われる。」という方針が示されていたこと,法9条1項16号が「突発的な事故により資産に加えられた損害に起因して取得するものその他の政令で定めるもの」と規定しているが,「その他の」の文言の法令上の用いられ方は,その前の字句が,その後にある字句の例示として,その一部を成している場合に用いられるとされていることに照らしても明らかである。

 そうすると,施行令30条2号が「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害」と規定する「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不法行為,すなわち,相手方との合意に基づかない突発的で予想することができない不法行為を意味するものと解するのが相当である。

 (ウ) これを本件先物取引についてみると,原告は,投機利益の獲得を企図して積極的にリスクの高い先物取引に関与したものであり,いわば自らの意思で危険に近づき損失を被ったにすぎないこと,しかも,原告は,平成13年9月20日及び平成14年3月1日の2度にわたり,多額の損失を被り,差引損益額の累計額が一挙にマイナスになる事態を認識し,本件先物取引が多大な損害を生じさせるリスクの高いものであることを痛感していたにもかかわらず,A商事の従業員に対し,本件先物取引の手仕舞いを申し出ることなく,更に多額の利益を獲得することを期待して,本件先物取引を継続したことなどの取引経緯に照らすと,仮に,本件先物取引においてA商事に違法性がある旨の判断がされたとしても,当該「違法性」及び原告に発生した「損失」は,法9条が非課税所得として予定する突発的な事故と同様の「不法行為」とは大きく異なるから,本件和解金は,施行令30条2号の「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」には当たらないというべきである。

 ウ 仮に前記イの主張が認められないとしても,次のとおり,本件和解金は非課税所得とはならない。

 (ア) 本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とはならないこと

 本件和解金が不法行為に基づく損害賠償金であるとしても,その内訳として,本件先物取引によって生じた売買差損,委託手数料,取引所税及び消費税の累計額,弁護士費用及び遅延損害金が考えられるところ,本件先物取引においては売買差損は生じておらず(むしろ,売買差益が生じている。),原告は損害賠償請求訴訟を提起することなく和解金を得ているため弁護士費用相当額の損害が発生しているものではないから,本件で損害として考えられるものとしては,委託手数料,取引所税及び消費税の累計額及び遅延損害金が考えられる。

 そして,委託手数料,取引所税及び消費税についての損害賠償金は,施行令30条柱書きの括弧書きの「所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額」に該当し,非課税所得にはならないと解すべきである。

 また,本件和解金のうち遅延損害金に相当するものがあるとしても,その法的性質は実質的には利息と異ならないものであり,利息について非課税所得とする旨の規定はないし,また,遅延利息は元本債権に附帯するものであり,従たるものとして元本と同じ性格を有するから,元本に当たる委託手数料,取引所税及び消費税が前記のとおり非課税所得に当たらない以上,附帯する遅延損害金に相当する部分も非課税所得には当たらないというべきである。

 (イ) 本件和解金が施行令94条1項2号に当たり,施行令30条2号括弧書きにより非課税所得から除外されること

 施行令94条1項2号は,「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」と規定するが,「その他の事由」とは,必ずしも業務の休止等に限定されないと解すべきであり,また,収益補償として取得する補償金にとどまらず,「その他これに類するもの」としてさらに広い範囲を予定しているから,同号は,営業活動に限らず,所得稼得活動から生じた経済的な価値の流入を全般的に含めて理解すべきである。

 そして,本件先物取引は,その性質上極めて投機的性格が高いものの,原告は,当該所得の発生を期待して取引を行っていた上,現に大幅な利益を発生させていたから,同号の「当該業務」に当たるというべきであり,また,同項柱書きにいう「収入金額に代わる性質を有するもの」とは,「本来収入となるべきもの」あるいは「収入を補てんするもの」であれば足り,「本来所得となるべきもの」あるいは「得べかりし利益の喪失を補てんするもの」などと限定的に解する根拠はないから,本件和解金のような所得稼得活動たる業務から得られる経済的な価値の流入は,同項柱書きにいう「収入金額に代わる性質を有するもの」に当たるというべきである。

 したがって,本件和解金については全額が施行令94条1項2号に当たり,施行令30条2号括弧書きにより非課税所得から除外されるというべきである。

 

 

(原告の主張)

 ア 本件和解金が所得に当たらないこと

 本件和解金は,生じた損害を原状に回復する損害賠償金であって,担税力を増加させるものではないから,収入といえども,純資産の増加という意味での所得にならないことは明らかである。

 イ 本件和解金は法9条1項16号を受けて定められた施行令30条2号の「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当たること

 (ア) 被告は,施行令30条2号が「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害」と規定する「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不法行為,すなわち相手方との合意に基づかない損害など突発的で予想することができない不法行為に基づく損害に対する損害賠償金に限定する趣旨であると主張する。

 しかし,施行令30条2号は「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害」と規定しているだけで,「不法行為」を突発的な事故によるものだけとは限定していない。この規定からは,不法行為が「突発的な事故」の一類型であるといい得るだけで,「突発的な事故」以外の不法行為が存在するのは明らかであるのに,それらを除外していると解する文理上の根拠はない。「不法行為その他」との文言は,「不法行為その他の」との文言と対比しても,「不法行為」と「突発的な事故」が,いわば並列的なものと理解する方が文理にも整合していることは明らかである。したがって,施行令が,「取引的不法行為」を特に除外していると解する根拠はないというべきである。

 被告の主張は「取引的不法行為」が「突発的な事故」に当たらないことを前提とするものであるが,取引的不法行為によって損害を発生させることが現にあるのであるから,これを本号から除外して解するなら相当の合理的理由がなければならないところ,これが,不法行為による損害であり,それを賠償することにおいて,他の突発的事故における損害及びそれに対する補填又は賠償の関係と同質である以上,取引的不法行為だけを除外するに足りる理由はないというべきである。

 被告は,法9条1項16号の「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」という規定中に「その他の」という文言が用いられていることを上記主張の理由としているが,同号の規定は,損害賠償金が非課税である基本を確認しているものにすぎず,「その他の政令に定めるもの」とは,具体的に非課税所得となる損害賠償金等を政令で改めて規定することを明確にしたものであることは文理上明らかである。また,被告は,税制調査会答申の内容を上記主張の理由としているが,税制調査会答申の内容は,損害賠償金を非課税とする不法行為の範囲を限定する趣旨のものではない。

 (イ) 以上のとおり,施行令30条2号が「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害」と規定する「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不法行為に限定されるものではないというべきであるから,不法行為の損害賠償金として受領した本件和解金は,同号の「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当たる。

 なお,仮に施行令30条2号の「不法行為」が「突発的な事故」と同様の不法行為に限定されるとしても,先物取引を行い商品取引員の不法行為により損害を被った場合には「突発的な事故」に当たるというべきであるから,本件先物取引に係る不法行為の損害賠償金として受領した本件和解金は,同号所定の損害賠償金に当たるものである。

 ウ 本件和解金について,施行令30条柱書きの括弧書き又は施行令94条1項2号の適用はないこと

 (ア) 被告は,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とはならないと主張する。

 しかしながら,施行令30条柱書きの括弧書きは,非課税とされた収益の補償金に対する規定であって,本件和解金のように収益の補償金でない損害賠償金とは関係がない規定である。

 したがって,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とはならないとの被告の主張は理由がない。

 (イ) また,被告は,本件和解金が施行令94条1項2号に当たり,施行令30条2号括弧書きにより非課税所得から除外されると主張する。

 しかしながら,施行令94条1項柱書きの「収入金額に代わる性質を有するもの」とは,「本来収入となるべきもの」あるいは「収入を補てんするもの」であって,原状回復にすぎない非課税たる損害賠償金までをこれに含めて解釈することはできないというべきであるから,不法行為により客観的に純資産を減らした損失を埋めるための補てん金(原状回復たる損害賠償金)である本件和解金は「収入金額に代わる性質を有するもの」には当たらない。さらに,上記の性格を有する本件和解金は,同項2号の「収益の補償として取得する補償金」にも当たらないし,同号の「その他これに類するもの」にも当たらない。

 したがって,本件和解金が施行令94条1項2号に当たるとの被告の主張は理由がない。

 エ まとめ

 以上によれば,本件和解金は,法9条1項16号,施行令30条2号の非課税所得に当たるから,所得税の課税対象となるものではない。

 

 

 

 

 

 

第3 争点に対する判断

 

1 争点(1)(本件和解金がA商事の不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否か)について

 

(1) 証拠(甲10,11,乙2,3,5,7~9,12~15,17~25,39~43《枝番号を含む。》,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

 

ア 原告の経歴,資産及び投資経験

 

(ア) 原告(昭和20年2月生)は,昭和35年3月,中学校を卒業した後,愛知県瀬戸市にある会社に入社して陶器玩具の製造等の仕事をし,昭和37年1月,同社を退社して,愛知県春日井市にあるJ株式会社に入社し,ホーロー加工の仕事をしたり,子会社に移籍して人工大理石等の製造をしたりし,平成17年2月,定年退職になったが,その後も嘱託として大手電器メーカーの下請けの仕事を担当し,平成18年11月,J株式会社を退社した。原告は,平成19年2月,建設業の仮設機材をレンタルする会社に入社し,レンタル機材の清掃の仕事をしている。

 原告には,妻と3人の子があるが,子らはいずれも成人して原告と離れて生活している。

 原告は,肩書地に土地及び昭和50年12月3日建築の居宅を所有するほか,宮崎県日向市a町b丁目c番に土地及び平成13年3月25日建築のアパートを所有している。原告は,本件先物取引開始時点において,このほか約90万円の現金を保有していた。

 なお,原告は,上記アパートの新築のため,その土地,建物に根抵当権を設定し,K農業協同組合から4800万円を借り入れて,その中から建築資金4600万円を支払っており,同アパートの居室8室を1室当たり月額約5万円で賃貸し,賃料収入を得ていた,

 原告は,平成14年当時,上記アパートの賃料収入から必要経費を控除した不動産所得と,J株式会社からの給与があり,これらの合計は約500万円であった。

 

(イ) 原告は,平成元年12月6日,C証券に口座を開設して証券取引を開始し,投資信託やE建設及びF株式会社の株式の現物取引を行った。

 このうち,E建設の株式取引の経緯をみると,平成2年6月19日に同株式1000株を265万円(1株2650円)で購入し,平成4年9月3日にこれを185万円(1株1850円)で売却し,平成6年6月10日に同株式2000株を264万円(1株1320円)で購入した。本件先物取引開始直前の平成13年3月末には,同株式2000株は時価52万2000円(1株261円)に下落していた。

 また,原告は,同月末の時点で,F株式会社の株式取引により270万円以上の含み損を,投資信託「太陽Wブル・ストック・オープン」により470万円以上の含み損を,投資信託「パートナーズダブル・トレンドオープン」により1190万円以上の含み損を被っていた。

 

(ウ) 原告は,平成12年6月26日,G株式会社に対して口座開設を申し込み,同年7月14日,300万円を入金して外国為替証拠金取引を開始し,平成13年3月16日までの間,150万円の追加入金を含め合計450万円を入金して同取引を行い,これにより約40万円の損失を受けた。

 

 

 

イ 本件先物取引の経緯

 

(ア) 原告は,平成13年2月ころ,A商事の営業担当者から数回にわたり電話を受けて先物取引を勧誘された上,自宅近くまで来ているので是非会いたいとの電話連絡を受け,営業担当者と面会して,先物取引の勧誘を受けた。

 その後,原告は,Hから電話を受け,先物取引により利益が得られるとの説明を聞いて,先物取引をすることにし,同年4月17日,約諾書(乙3)及び口座開設申込書(乙5)に署名押印して,A商事との間で委託契約を締結した。なお,原告は,上記口座開設申込書において,「税込年収」欄の「500万円以上」,「資産」欄の「1000万円以上」,「商品先物取引のご経験」欄の「無」に○印を記載し,証券取引について「証券取引のご経験」欄の「有」,「お取引商品」欄の「現物取引」,「お取引期間」欄の「5年以上」,「ご投下資金」欄の「1000万円以上」に○印を記載し,「事前交付書面(委託のガイド等)の受領について」の欄の「説明を受けおおむね理解できた」に○印を記載した。原告は,このころ,A商事から本件ガイドを受け取った。

 

(イ) 原告は,平成13年4月18日にE建設の株式1000株を,同月19日に90万円,同月23日に100万円を預託して,本件先物取引を開始した。原告は,手持ちの現金90万円と宮崎県日向市のアパートを建築する際に借り入れた借入金の一部から,上記預託金190万円を支出した。

 原告は,Hの勧めに従って,同月23日,白金18枚を売建てし,同年5月11日にコーン5枚を買建てし,同月22日,100万円を追加入金し,同月25日,白金20枚を売建てし,同月28日,灯油3枚を買建てし,同月30日,灯油3枚の買玉を仕切って,灯油2枚を売建てし,取引開始後1か月強の建玉枚数は45枚(平成13年5月30日現在)となった。

 その後,約1か月半後の建玉枚数は62枚(同年6月7日現在),約3か月後の建玉枚数は90枚(同年7月27日現在),約3か月半後の建玉枚数は190枚(同年8月17日現在)に増え,原告はこれら取引に要する委託証拠金として,同年8月2日までの間に,別表2の「預託金」欄記載のとおり,合計910万円及びE建設の株式1000株を預託した。なお,原告がA商事に預託した現金は,そのほとんどがI株式会社等の金融機関から借り入れて調達したものであり,平成13年8月2日に450万円を預託した際には,I株式会社から資金を借り入れるために自宅の土地,建物に根抵当権を設定した。Hは,原告が先物取引の預託金を上記のように金融機関からの借入れにより調達していたことを知っていた。

 

(ウ) 原告は,Hの勧めに従って,平成13年8月6日から同年9月14日にかけて,粗糖,白金,ガソリンについて,連日頻繁に取引を繰り返したが,この間は,利益が上がり,同年8月21日から同年9月10日までの間,別表2の「返戻金」欄記載のとおり合計310万円の返戻金を受領した。

 

(エ) 原告は,平成13年9月20日ころ,Hから,粗糖の値が下がり,白金の値が上がっており,いずれも損が出ているとの連絡を受けたが,どうしたらよいか全く見当がつかなかったため,Hにうまく処理してほしいと依頼した。Hは,粗糖買い建玉120枚,白金売り建玉75枚を仕切り,粗糖で約1252万円,白金で約434万円の損失が生じた。

 

(オ) 原告は,平成13年9月25日以降,Hから,損が膨らんでおりそれを防ぐために取引を行う必要があると言われたり,他の商品で利益を出して損失を挽回することを勧められたり,追証拠金が発生したので至急追加入金をするように言われたりし,同月26日から同年12月4日までの間,金融機関から借り入れて,別表2の「預託金」欄記載のとおり合計470万円を預託した。

 

(カ) 原告は,平成14年4月ころ,Hから担当者が替わったと連絡を受け,新しい担当者から,損失を挽回するために必要であると勧められて,同月8日から同月16日までの間,金融機関や親族から借り入れて,別表2の「預託金」欄記載のとおり,合計250万円を預託した。

 

(キ) 平成14年6月ころ,原告の担当者がA商事の営業部長に替わり,営業部長から,継続して取引をすることを勧められたが,損失は膨らんでいき,同年7月2日ころ,追証拠金が工面できないまま強制決済され,本件先物取引は終了した。

 

(ク) 原告は,本件先物取引により,215万5000円の売買差益を得ているが,その一方で,委託手数料1425万7900円並びに消費税及び取引税合計71万2895円を支払っており,これらを差引きすると,結果的に1281万5795円の損失を被った。

 

 本件先物取引においては,東京工業品取引所,東京穀物商品取引所及び関西商品取引所の3取引所において7商品について取引が行われ,このうち特定売買がされた回数は,別紙特定売買一覧表のとおりである。

 

 

ウ 本件和解契約に至る経緯

 

(ア) 原告は,本件先物取引終了後,A商事の営業部長や管理部副部長に会い,言われたとおりに取引したにすぎないこと,I株式会社や親族から本件先物取引のために金銭を借りたこと,食事を満足にとれないこと,家族から相手にされなくなってしまったことなどを伝え,何とかしてほしいと訴えたところ,平成14年9月中旬ころ,管理部副部長から400万円なら支払うとの連絡を受けた。原告は,管理部副部長に対し,I株式会社と親族から借りた分の約1000万円の返還を要求したが,話はつかなかった。

 

(イ) 原告は,信仰している宗教団体の法律相談を担当する弁護士から,実践先物取引被害救済の手引きという本をもらい,これを読んだところ,適合性原則違反,無断売買,一任売買,手数料稼ぎなどのことが書いてあり,これらは本件先物取引に当てはまるから損害賠償を請求できると思うようになった。原告は,A商事に電話を架け,本を読んで得た知識を基に,本件先物取引は違法であるから金員を返還するように求め,その後,3,4回面会して話をしたが,従前の提示額(400万円)が増額されることはなかった。

 

(ウ) 原告は,上記の本に連絡先が書いてあった浅井弁護士に連絡して相談したところ,浅井弁護士から,訴訟を提起して勝てる可能性はあるが,それには時間がかかると言われ,長期間訴訟を追行することは難しいと考えた。また,弁護士費用や訴訟費用を負担する目処も立たなかった。なお,原告は,浅井岩根法律事務所に対し,法律相談料として1万円を支払った。

 

(エ) 原告は,再度自分で交渉することとし,A商事の管理部長に電話を架け,浅井弁護士に面談したことや浅井弁護士から聞いた話を伝えたところ,管理部長から,「浅井弁護士とは面識がある。会社に言ってもう50万円出してもらう。会社が出さなければ私が50万円出す。」と言われたので,浅井弁護士に電話をして相談した上,450万円の返還を受けることで了承することにした。

 

(オ) 原告は,平成15年2月25日,A商事との間で,本件和解金457万0455円の支払を受ける旨の本件和解契約を締結し,その後,A商事は,本件和解金の支払として,7万0455円を原告の帳尻損金に充当するとともに,450万円をB銀行勝川支店の原告名義の普通預金口座に振り込んだ。

 

(2) 以上の事実関係を基に,A商事に不法行為が成立するか否かを検討する。

 

ア 適合性の原則違反,説明義務違反に関する違法性について

 

(ア) 原告は,本件先物取引開始当時56歳であり,自宅と宮崎県日向市のアパートを所有していたほか,現金約90万円とE建設の株式2000株を所有しており,J株式会社からの給与とアパート収入による不動産所得として年間約500万円を得ていたが,投資に回すことのできる余裕資金としては,上記の現金約90万円と,平成13年3月末時点の時価約52万2000円のE建設の株式2000株程度であった。

 原告は,それまでの投資経験として,C証券に口座を開設して行った数銘柄の現物株取引及び投資信託と,G株式会社に口座を開設して行った外国為替証拠金取引があり,いずれの取引においても損失を被ったことがあったが,商品先物取引の経験はなかった。また,原告がそれまで勤務していた会社においては,商品製造の仕事をしており,投資に関する知識が得られるような職場での勤務経験はない。

 これらの事実関係によれば,原告は,一定程度の投資経験,資産,収入を有するものではあるが,商品先物取引の投資経験はなく,商品先物取引のリスクについては,一般的にリスクの高い取引であるという程度の知識を有していたとしても,商品先物取引における取引の仕組み,それによって生じ得る具体的なリスクを理解していたものとは認められないし,取引の対象商品や行うべき取引手法を判断することができる能力,知識を有していたとか,各商品の相場状況について独自の情報を得ていたものとも認められない。

 

(イ) A商事の営業担当者やHは,上記のような原告に対し,電話で商品先物取引を勧誘して原告に本件先物取引を行うことを決意させ,本件先物取引のために金融機関から借入れをしてまでその預託金を調達させたものである。

 原告は,本件先物取引の開始の際,A商事の営業担当者ないしHから,本件ガイド等で一定の説明を受けたものの,上記程度の商品先物取引の経験,知識を有していたにすぎない原告にとって,先物取引の仕組み,それによって生じ得る具体的なリスクを十分に理解できるような説明を受けたことを認めることはできない(なお,原告が口座開設申込書において「説明を受けおおむね理解できた」という箇所に○印を記載しているが,このことは原告が実際に先物取引の仕組み,リスクを理解したことを示すものとはいえない。)。

 

イ 新規委託者保護義務違反に関する違法性について

 本件管理規則及び本件内規によれば,A商事においては,商品先物取引の経験がない委託者について3か月を限度とする習熟期間を設け,年収500万円以上,有価証券・預貯金合計が500万円以上と推定され,かつ,商品取引に関する知識・理解度が深いことを基準とする審査に適合する者に対しては,50枚を超え100枚までの建玉枚数の範囲内で取引するが,この基準を満たさない者に対しては,建玉枚数を50枚以下とする旨が定められている。また,本件管理規則には,余裕資金を保持した取引を励行させる旨も定められている。

 原告は,「有価証券・預貯金合計が500万円以上と推定される者」とは認められない上,「商品取引に関する知識・理解度が深い」とも認められないところ,本件先物取引は,取引開始後1か月強の建玉枚数が45枚(平成13年5月30日現在),約1か月半後の建玉枚数は62枚(同年6月7日現在),約3か月後の建玉枚数は90枚(同年7月27日現在),約3か月半後の建玉枚数は190枚(同年8月17日現在)に増えており,3か月以内の建玉枚数は本来50枚以下に抑えるべきであったにもかかわらず,これを超えた取引がされている。また,原告は預託金の大半を金融機関又は親族からの借入金によって調達しており,本件先物取引は,余裕資金を保持した状態でされたものとは到底いうことができない。

 

ウ 断定的判断の提供,無断売買,実質的一任売買及び両建て等の特定売買に関する違法性について

 前記アのとおり,原告は,取引の対象商品や行うべき取引手法を判断することができる能力,知識を有しておらず,また,各商品の相場状況について独自の情報を得ていなかったにもかかわらず,前記(1)イのとおり,3取引所で7商品もの取引を頻繁に行っており,それが原告に無断でされたと認めることはできないものの,その大部分の実質的な判断はHによってされていたものと認められる。そして,別表3のとおり,途転,日計り,両建て及び手数料不抜けの特定売買が頻繁に行われ,その特定売買が全取引に占める割合は45.8%である。上記の特定売買に関しては,農林水産省及び通商産業省が特定売買監視システムを設け,取引全体に占める特定売買の割合(ただし,取引開始後3か月以内)を受託業務の適不適の判断基準の一つとしたものであり,現時点において,特定売買監視システムに関する通達が廃止されているとしても,一定期間の取引を全体的に観察した場合の特定売買の比率は,商品取引員の外務員が顧客の利益よりも売買委託手数料を稼ぐという不公正な目的を優先させて取引を行わせたか否かの一つの指標となり得るものというべきである。

 そうすると,本件先物取引において,A商事の担当者が個々の取引の際に具体的にどのような勧誘をしたかは必ずしも明確ではないものの,本件先物取引は,実質的には委託の際の指示事項の全部又は一部について原告の指示を受けないでされたものであって,しかも,その取引内容は,特定売買の比率が45.8%と高い割合であり,原告の被った損失が1281万5795円であるのに対し,A商事は1425万7900円もの多額の手数料を得たものであるから,本件先物取引の大部分がHによる実質的な一任売買であり,またその一定部分が売買委託手数料を稼ぐ目的を優先させたものであると認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。

 

エ 以上によれば,

 

① A商事の営業担当者又はHは,商品先物取引の経験がなく,取引の対象商品や行うべき取引手法を判断することができる能力,知識を持たず,各商品の相場状況について独自の情報を得る能力もない原告に対し,先物取引を勧誘し,その取引手法やリスクについて十分な説明をしないまま,取引を始めさせ,

 

② Hは,商品取引に関する知識・理解度が深いとはいえず,また,余裕資金を保持してはいなかった原告に対し,本件管理規則及び本件内規に反して,3か月以内に所定の基準を超える建玉90枚もの取引を行わせ,その約20日後には建玉190枚にまで増加させ,さらに,原告がA商事に支払った預託金の大半を金融機関又は親族からの借入金によって調達していることを知りながら,原告に過大な取引を行わせ,

 

③ しかも,本件先物取引の大部分がHによる実質的な一任売買であり,またその一定部分が売買委託手数料を稼ぐ目的を優先させたものであったのであるから,原告が本件先物取引によって被った損害は,A商事の営業担当者及びHの不法行為によるものであり,A商事は,同損害につき民法715条に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。

 

 なお,被告は,原告が問題とする損失は平成13年9月20日の取引によって生じたものであるから,同取引とは関連のない取引等を含む本件先物取引全体を違法と評価すべきではないと主張するが,原告が結果的に被った損失1281万5795円は一連の本件先物取引によって生じたものと評価するのが相当である。また,被告は,原告が平成14年2月15日に別件先物取引を開始している点を指摘するが,別件先物取引は,本件先物取引を開始した後の事情であって,A商事の不法行為の成否に直接影響するものとは認められない。

 

(3) 次に,過失相殺について検討する。

 原告の年齢,投資経験,保有資産及び本件先物取引の経緯に照らせば,原告においても,一般的にリスクが高いとされている先物取引を安易に行ったことについて不注意があったといわざるを得ない。

 本件では,本件和解金457万0455円(原告の被った損失1281万5795円の約35.7%に相当)が不法行為に基づく損害賠償金として支払われたものか否かが問題となるところ,A商事の不法行為の内容及び程度,原告の不注意の内容及び程度,本件先物取引の経過等に照らすと,A商事の負うべき損害賠償額について過失相殺として控除すべき割合は,64%を超えることはないと認めるのが相当である。

 そうすると,本件和解金の額は,本件先物取引に係る不法行為についての過失相殺後の損害賠償金額の範囲内のものであるということができる。

 

(4) 以上のとおり,A商事は原告に対し本件先物取引について不法行為責任を負っており,本件和解金の額は過失相殺後の損害賠償金額の範囲内であるから,本件和解契約は,この不法行為に基づく損害賠償金として本件和解金を支払う趣旨で締結されたものと認めるのが相当である。

 

 このことは,A商事が,本件先物取引においてA商事の営業担当者に不法行為等の非があったことを認め,原告に対し本件和解契約のとおり損害賠償の責めに任じ,和解金の名目で本件和解金を支払った旨を証明する文書(乙11)を作成していること,商品取引員であるA商事が不法行為が成立する余地がないのに安易に損失補てんとして和解金の支払に応ずることは通常考え難いことからも明らかである。

 

 被告は,原告がA商事に対し浅井弁護士の名前を示したところ50万円の増額がなされたことなどの交渉経緯を理由に,本件和解金が一種の紛争解決金であって,不法行為に基づく損害賠償金の性質を有するものではないと主張する。しかし,原告とA商事との間でそうした交渉がされ,両者の紛争を解決するために本件和解金が支払われることになったとしても,上記のとおり,A商事は原告に対し本件先物取引について不法行為責任を負っていたのであるから,本件和解契約が締結されるまでの交渉も,その不法行為に基づく損害賠償の問題を解決するためにされたものというべきであり,また,その交渉の結果支払うことになった本件和解金の額も過失相殺後の損害賠償金額の範囲内であるのであるから,本件和解金は,不法行為に基づく損害賠償金としての性質を有するものというべきである。

 

 

(5) 以上のとおりであるから,本件和解金は,A商事の原告に対する不法行為に基づく損害賠償金に当たるものというべきである。

 

 

 

 

2 争点(2)(本件和解金が所得税の課税対象となるか否か)について

 

(1) 法は,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得という所得区分を設けるほか(法23条ないし34条),それらに含まれない所得をすべて雑所得として課税の対象としており(法35条),人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成するという包括的所得概念を採用している。その上で,法は,立法政策上,所得税の課税対象とすることが適当でないと判断された所得について,非課税所得としてこれを個別的に列挙しているところ,法9条1項16号は,「損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で,心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」を非課税所得として定めている。同号が損害賠償金を非課税所得として定めた趣旨は,損害賠償金は,他人の行為によって被った損害を補てんするものであって,その担税力等を考慮すると,これに所得税を課するのは適当でないという判断によるものであるが,賠償の対象となる損害には種々のものが含まれるため,損害賠償金のすべてを一律に非課税所得とすることは適当でないことから,同号は,「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」を例示的に掲げた上,これらを含めて,非課税所得となる損害賠償金の範囲の具体的な定めを政令にゆだねたものと解される。

 

 そして,法9条1項16号の規定を受けて,施行令30条は,「法第9条第1項第16号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は,次に掲げるものその他これらに類するもの」とする旨規定し,その1号で,「損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付金で,身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)」を,その2号で,「損害保険契約に基づく保険金及び当該契約に準ずる共済に係る契約に基づく共済金(中略)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第94条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)」を掲げている。

 

 

(2)ア 本件においては,本件和解金が施行令30条2号にいう「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当たるかどうかが問題となるところ,この点につき,被告は,同号にいう「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不法行為,すなわち,相手方との合意に基づかない突発的で予想することができない不法行為を意味するものであると主張する。

 

 しかしながら,施行令30条2号は,「不法行為その他突発的な事故」と規定しているのであり,「不法行為その他の突発的な事故」と規定しているのではない。法令における「その他」と「その他の」の使い分けに関する一般的な用語法に照らせば,同号において「不法行為」と「突発的な事故」は並列関係にあるものとして規定されていると解されるのであって,文言上,同号にいう「不法行為」を被告が主張するように限定的に解すべき根拠はない。また,不法行為の態様が,突発的な事故ないしそれと同様の態様によるものであるか,又はそれ以外の態様によるものであるかによって,当該不法行為に係る損害賠償金の担税力に差異が生ずるものではないから,損害賠償金が非課税所得とされている立法趣旨に照らしても,同号にいう「不法行為」は突発的な事故と同様の態様によるものに限られると解する理由はない。

 

 

イ 被告は,施行令30条2号にいう「不法行為」を被告が主張するように限定的に解すべき根拠として,法19条1項16号及び施行令30条が現行の規定のように定められるにつきその基礎となった税制調査会答申において,「課税所得を構成するか,あるいは非課税所得とすべきかという点の判断の基準は,その損害の発生が不可抗力ないし不可避的なものであったかどうかということよりも,むしろそれが突発事故,つまり相手の合意をえない予想されない災害であったかどうかというところに基準を置くほうが,常識的に妥当と思われる。」という方針が示されたことを挙げている。

 

 しかしながら,税制調査会答申の上記の被告引用部分については,非課税所得に関する当時の規定に関し,

 

 

「たとえば,現在の技術水準のもとでは防止しえない事由による汚水の流出や鉱害の発生等によって,他人の財産に損害を与えたような場合も,この規定に該当し,その賠償金が課税の対象となるものと解釈されうるが,このような事故が突発的に起った場合でも,それが企業として不可抗力のものであったという理由で課税することができるかどうかについては,社会常識的に疑問がある。」との記述に引き続いて,

 

「このような場合,それが課税所得を構成するか,あるいは非課税所得とすべきかという点の判断の基準は,その損害の発生が不可抗力ないし不可避的なものであったかどうかということよりも,むしろそれが突発事故,つまり相手の合意をえない予想されない災害であったかどうかというところに基準を置くほうが,常識的に妥当と思われる。」と述べられたものである

 

(上記のうち「このような場合,それが」を除いた部分が被告引用部分である。)。

 

すなわち,被告引用部分は,一定の類型に属する事故を前提として,その場合に非課税所得とすべきであるかどうかのあるべき判断基準を述べたにすぎないのである。

 

むしろ,税制調査会答申は,その結論として,「物的損害に対する補償については,それが不法行為その他突発事故による損失であるか,それ以外の損失,すなわち契約,収用等による資産の移転ないし消滅に基づく損失であるかによって区分するとともに,さらに,その対象となる資産が生活用資産であるか,又はそれ以外の資産であるかどうかによって区別してその取扱いを定めるのが適当である。」と述べているのであって,

 

そこでは「不法行為その他突発事故による損失」と「契約,収用等による資産の移転ないし消滅に基づく損失」とを区分しているものの,

 

不法行為を,突発的な事故ないしそれと同様の態様によるものかそれ以外の態様によるものかで区分する考え方は何ら示されていないのである。

 

 したがって,税制調査会答申は,施行令30条2号にいう「不法行為」を被告が主張するように限定的に解すべき根拠にはならないというべきである。

 

 ウ 以上のとおり,施行令30条2号にいう「不法行為」は,突発的な事故ないしそれと同様の態様によるものに限られると解することはできない。これと異なる被告の主張は,採用することができない。

 

 本件和解金がA商事の原告に対する不法行為に基づく損害賠償金に当たるものであることは,前述のとおりであるから,本件和解金は,施行令30条2号にいう「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当たるというべきである。

 

 

 

(3)ア 被告は,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とはならないと主張する。

 施行令30条柱書きの括弧書きは,損害賠償金等の額のうちに損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には,当該金額を控除した金額に相当する部分を非課税所得とする旨規定している。同括弧書きの趣旨は,損害賠償金等の額のうちに損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には,当該金額を非課税所得となる金額から控除しなければ,当該金額につき非課税所得と必要経費の控除という二重の控除を認めることとなってしまうため,これを防ぐことにあるものと解される。

 

 原告は,本件先物取引による売買差益と委託手数料,取引所税及び消費税を差引き計算すると,1281万5795円の損失を被っており,本件和解金は,これを原告の損害とみて,その一部を不法行為に基づく損害賠償金として支払うこととしたものということができるところ,本件の事実関係の下では,本件和解金の中に,これを非課税所得とした場合に上記のような必要経費としての控除との二重の控除を認めることとなる金額が含まれているとは認められない。そうであるとすれば,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得には当たらないということはできず,被告の上記主張は採用することができない。

 

 イ また,被告は,本件和解金が施行令94条1項2号所定の補償金等に当たり,施行令30条2号括弧書きにより非課税所得から除外されると主張する。

 

 施行令94条1項柱書きは,「不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので,その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に係る収入金額とする。」と定め,同項2号は「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」と定めているから,同号所定の補償金等に該当するものは,休業補償,収益補償等の事業の遂行による得べかりし利益に代わるものであって,実損害を補てんするための損害賠償金がこれに含まれると解することはできない。

 

 本件和解金は,原告に生じた実損害を補てんするための損害賠償金であるから,施行令94条1項2号所定の補償金等に当たるということはできず,被告の上記主張は採用することができない。

 

 

(4) そうすると,本件和解金は法9条1項16号,施行令30条2号により所得税を課すことができない所得であるというべきであるから,別表1の「雑所得がゼロの場合」欄記載のとおり,原告の平成15年分の所得税の納付すべき税額は84万4100円とすべきであり,過少申告加算税は0円とすべきである。

 

 したがって,原告の平成15年分の所得税の納付すべき税額を184万1400円とした本件更正処分は,納付すべき税額84万4100円を超える部分について,過少申告加算税11万4000円を賦課する旨の本件賦課決定処分は,その全部について,取り消されるべきである。

 

 第4 結論

 以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。

    名古屋地方裁判所民事第9部

        裁判長裁判官  増田 稔

           裁判官  前田郁勝

           裁判官  杉浦一輝

 

 

 

 

 

 

 

 

(別紙1)

       関連法令

1 所得税法

 9条1項 次に掲げる所得については,所得税を課さない。

  16号 損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で,心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

2 所得税法施行令

 30条 法第9条第1項第16号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は,次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には,当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。

  1号 損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付金で,身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)

  2号 損害保険契約に基づく保険金及び当該契約に準ずる共済に係る契約に基づく共済金(前号に該当するもの及び第184条第4項(満期返戻金等の意義)に規定する満期返戻金等その他これに類するものを除く。)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第94条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)

  3号 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第94条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。)

 94条1項 不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので,その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に係る収入金額とする。

  2号 当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの

 

(別紙2)

       被告の主張する税額

 1 総所得金額(別表1の⑤の「被告主張額」欄)   1286万2287円

 上記金額は,下記(1)ないし(4)の各金額の合計額である。

(1) 不動産所得の金額(別表1の①の「被告主張額」欄)200万0181円

(2) 給与所得の金額(別表1の②の「被告主張額」欄) 214万4000円

(3) 雑所得の金額(別表1の③の「被告主張額」欄)  456万0455円

 上記金額は,本件和解金に係る雑所得(総合課税分)の金額であり,下記アからイを控除した後の金額である。

 ア 総収入金額                    457万0455円

 上記金額は,本件和解金の金額である。

 イ 必要経費の額                         1万円

 上記金額は,原告が平成15年2月22日に浅井岩根法律事務所に支払った弁護士費用であり,本件和解金,すなわち雑所得の総収入金額を得るために要した費用である。

(4) 一時所得の金額(別表1の④の「被告主張額」欄) 415万7651円

 2 商品先物取引に係る雑所得等の金額(申告分離課税分)(別表1の⑥の「被告主張額」欄)

                             71万3175円

 3 所得控除の額(別表1の⑦の「被告主張額」欄)   167万5962円

 4 課税総所得金額(別表1の⑧の「被告主張額」欄) 1118万6000円

 上記金額は,上記1の総所得金額から,上記3の所得控除の額を差し引いた金額(1000円未満切捨て)である。

 5 商品先物取引に係る課税雑所得等の金額(申告分離課税分)(別表1の⑨の「被告主張額」欄)

                             71万3000円

 上記金額は,上記2と同額(1000円未満切捨て)である。

 6 納付すべき税額(別表1の⑬の「被告主張額」欄)  194万5300円

 上記金額は,下記(1)の金額から下記(2)及び(3)の各金額を差し引いた金額(100円未満切捨て)である。

(1) 算出税額(別表1の⑩の「被告主張額」欄)    223万2750円

 上記金額は,上記4の課税総所得金額に所得税法89条1項の税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律《以下「負担軽減法」という。》4条の特例を適用した後のもの)を乗じて算出した金額212万5800円と上記5の商品先物取引に係る課税雑所得等の金額(申告分離課税分)に平成16年法律第14号による改正前の租税特別措置法41条の14第1項の税率を乗じて算出した金額10万6950円の合計額である。

(2) 定率減税額(別表1の⑪の「被告主張額」欄)        25万円

 上記金額は,負担軽減法6条2項かっこ書の規定により算出した金額である。

(3) 源泉徴収税額(別表1の⑫の「被告主張額」欄)    3万7400円

 

(別紙3)

       受託業務管理規則(抜粋)

 10条 自社又は他の商品取引員において商品先物取引を3か月以上取引したことのある者及び金融・証券の先物取引を行ったことのある者以外は,未経験者として扱う。

 11条 当社は,商品先物市場に参入するにふさわしい健全な委託者層の拡大を図るため,商品先物取引の経験のない委託者,又はこれと同等と判断される委託者については,3か月を限度とする習熟期間を設け,次に掲げる保護育成措置を講ずるものとする。

 (1) 略

 (2) 取引にあたっては,特に委託追証拠金及び損失が発生した場合についての理解を求め,余裕資金を保持した取引を励行させるとともに,当該委託者の資金力,取引経験等からみて,明らかに不相応と判断される取引については,これを抑制する等の措置を講ずること

 (3) 商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託にあたっては,委託者保護の徹底とその育成を図るため,当該委託者の資質・資力等を考慮のうえ,相応の建玉枚数の範囲内においてこれを行うこととする。

 (4) 第3項の相応の建玉枚数の範囲については,別に定めるものとし,一定期間(習熟期間中)は,その建玉枚数の範囲を超えないこととする。

 (5) 略

 

(別紙4)

       管理部内規

 受託業務管理規則第11条第4項に定める相応の資金量の範囲はつぎによるものとする。

 1 第1分類(建玉枚数50枚超~100枚まで)

 担当者の申請に基づき,管理室責任者がつぎの基準により審査を行い,その適否について判断し,妥当と認められる範囲内において受託をする。

 (1) 年収500万円以上,有価証券・預貯金合計が500万円以上と推定されること

 (2) 商品取引に対する知識・理解度が深いこと

 2 第2分類(建玉枚数100枚超)

 担当者の申請に基づき,統括責任者がつぎの基準により審査を行い,その適否について判断し,妥当と認められる範囲内において受託をする。

 (1) 年収800万円以上,有価証券・預貯金合計が1000万円以上と推定されること

 (2) 商品取引に対する知識・理解度が深いこと

 3 第3分類(建玉枚数50枚以下)

 1,2に規定する以外のもの