専業主夫受給要件区別合憲判断

 

 

 

 遺族補償年金等不支給決定処分取消請求事件、最高裁判所第3小法廷判決/平成27年(行ツ)第375号

判決 平成29年3月21日、裁判所時報1672号89頁

 

 

 

 

【判示事項】

 

 地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項の規定のうち死亡した職員の夫について一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分は,憲法14条1項に違反しない

 

 

 

 

 

 

 

 

主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       

 

理   由

 

 上告代理人松丸正,同下川和男,同成見暁子の上告理由について

 

 所論は,地方公務員災害補償法の遺族補償年金につき,死亡した職員の妻については,当該妻が一定の年齢に達していることは受給の要件とされていないにもかかわらず,

 

死亡した職員の夫については,当該職員の死亡の当時,当該夫が一定の年齢に達していることを受給の要件とする旨を定めている同法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項の各規定が,

 

憲法14条1項に違反する旨をいう。

 

 

 しかしながら,地方公務員災害補償法の定める遺族補償年金制度は,

 

憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度というべきところ,

 

その受給の要件を定める地方公務員災害補償法32条1項ただし書の規定は,

 

妻以外の遺族について一定の年齢に達していることを受給の要件としているが,

 

男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い,

 

平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況に鑑み,

 

妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは,

 

上告人に対する不支給処分が行われた当時においても合理的な理由を欠くものということはできない。

 

 

したがって,地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち,死亡した職員の夫について,当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない。

 

 以上は,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁の趣旨に徴して明らかである。所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

 

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 

(裁判長裁判官 山崎敏充 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 木内道祥)