出入国管理及び難民認定法違反被告事件、 大阪簡易裁判所判決/平成28年(ろ)第73号、判決 平成29年2月8日、LLI/DB 判例秘書登載について検討します。
主 文
被告人株式会社Y1を罰金100万円に処する。
被告人Y2を罰金70万円に処する。
被告人Y2において,この罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社Y1(以下「被告会社」という。)は,大阪市西成区(以下略)に本店を置き,食料品等の販売等を営む事業者,被告人Y2は,被告会社の人事部長として,被告会社の従業員の採用業務等を担当するものであるが,被告人Y2は,被告会社の業務に関し
第1 別表記載のとおり,平成28年2月28日から同年5月21日までの間,
前記場所所在のY1玉出2号店等において,「留学」等の在留資格で本邦に在留し,
法務大臣から1週について28時間以内の報酬を受ける活動について資格外活動の許可を受けたベトナム社会主義共和国等の国籍を有する外国人であるA(A)ほか10名を,
1週について28時間を超えて被告会社の従業員として稼働させて報酬を受ける活動に従事させ
第2 同年4月1日から同年5月25日までの間,同市生野区(以下略)所在のY1大池店において,
「留学」の在留資格で本邦に在留し,
法務大臣の資格外活動の許可を受けていない中華人民共和国の国籍を有する外国人であるB(B)を,被告会社の従業員として稼働させて報酬を受ける活動に従事させ
もって事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせたものである。
(証拠の標目)
(括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求の証拠番号を示す。)
被告人両名につき,判示事実全部について
被告人Y2及び被告会社代表者代表取締役Cの当公判廷における供述
被告人Y2の検察官に対する供述調書(乙7)
東京入国管理局長作成の出入(帰)国及び外国人登録記録調査書(写)(甲42)
Dの司法警察員に対する供述調書2通(甲44,45)
Eの司法警察員に対する供述調書(甲46)
Fの司法警察員に対する供述調書2通(甲47,48)
Gの司法警察員に対する供述調書(甲49)
被告人両名につき,判示第1の事実について
検察官作成の捜査報告書(甲13)
Aの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲14)
Aの検察官に対する供述調書(謄本)(甲15)
東京入国管理局長作成の出入(帰)国及び外国人登録記録調査書(謄本)2通(甲16,20)
東京入国管理局長作成の出入(帰)国及び外国人登録記録調査書(写)5通(甲22,24,28,31,33)
Hの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲17)
Iの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲18)
Jの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲19)
Kの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲21)
Lの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲23)
Mの司法警察員に対する供述調書(謄本)3通(甲25ないし27)
Nの司法警察員に対する供述調書(謄本)2通(甲29,30)
Oの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲32)
Pの司法警察員に対する供述調書(謄本)3通(甲34ないし36)
Qの司法警察員に対する供述調書(謄本)3通(甲37ないし39)
被告人両名につき,判示第2の事実について
被告人Y2の司法警察員に対する供述調書2通(乙5,6)
東京入国管理局長作成の出入(帰)国及び外国人登録記録調査書(写)(甲24)
Bの検察官に対する供述調書(謄本)(甲40)
Bの司法警察員に対する供述調書(写)(甲41)
Bの司法警察員に対する供述調書(謄本)(甲50)
司法警察員作成の捜査報告書(謄本)(甲51)
検察官作成の電話聴取書(甲52)
(法令の適用)
罰条 判示各所為(判示第1については別表記載の各従業員ごと)について,被告人両名につき,(判示第1の各所為についてはそれぞれ包括して)いずれも出入国管理及び難民認定法73条の2第1項1号
被告人株式会社Y1につき,更に同法76条の2
刑種の選択 被告人Y2につき,罰金刑選択
併合罪の処理 被告人両名につき,それぞれ刑法45条前段,48条2項
労役場留置 被告人Y2につき,刑法18条
(量刑の理由)
本件は,大阪府下で複数のスーパーマーケットを展開し,多数の外国人をアルバイト従業員として稼働させていた被告人株式会社Y1(以下「被告会社」という。)において,
被告会社の人事部長である被告人Y2(以下「被告人Y2」という。)が,
法務大臣の資格外活動の許可を受けた外国人は週28時間までしか就労できないことを知りながら外国人11人に対し週28時間を超えて稼働させ,
また,法務大臣の資格外活動の許可を受けていない外国人は就労させることができないことを知りながら外国人1人をアルバイト従業員として就労させた事案である。
被告人Y2は,法務大臣の資格外活動の許可を受けた外国人が週28時間を超えて稼働させることが違法であることを認識した上で,
その発覚を防ぐために正規のタイムカードとは別に裏タイムカードを作成して,その発覚を隠蔽するなど,その手口は悪質であるばかりか,これら違法行為の中心的役割を果たしており,その刑事責任は軽視できない。
また,被告会社は,被告人Y2の前記違法行為を容認していたばかりか,
違法就労させていた多数の外国人従業員のタイムカードの確認,集計,データ入力,給料に充てる現金の支出などの各過程において,
被告人Y2以外の被告会社社員らを通じて前記違法行為実現への積極的な関与が認められること,
被告会社は過去にも同種事案及び労働者管理に関する罰金前科2犯を有することに鑑みれば,
被告会社は,適法,適正な労働力確保のための企業努力についての認識が希薄であるといわざるを得ない。
しかし一方,被告人Y2及び被告会社は,本件を真摯に反省し,本件発覚後速やかに外国人従業員の勤務についての社内通達を発し,法務大臣の資格外活動の許可を受けた外国人の勤務時間を遵守するように社員に指示していること,
週一度,社会労務管理士から被告会社の労務管理についての相談やアドバイスを受ける体制を構築し,再発防止に向けた努力を行っていることなど,
被告人に有利に斟酌する事情もあるので,これら諸般の事情を併せ考え,決められた法律を適用して主文のとおり判決する。
(求刑 被告人株式会社Y1につき罰金100万円,被告人Y2につき罰金70万円)
平成29年2月8日
大阪簡易裁判所刑事2係
裁判官 柏森正雄