課税標準 土地

 

 

 登録価格のない土地の課税標準について、当該土地の近傍に存する土地の登録価格を基礎として算定した事例について検討します。

 

 

 

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の所有権移転登記を受けるに当たり納付した登録免許税額が過大であったとして、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき、原処分庁に対し、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をしたところ、原処分庁が、還付通知をすることはできない旨の通知処分をしたことから、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。

 

 

 

 

 

(1) 認定事実

 

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

イ 本件登記申請日における本件土地の現況等は、次のとおりである。

 

(イ) 本件土地は、間口12.00m、奥行き14.06mの長方形状の宅地である。

(ロ) 本件土地の地積は、166.13平方メートルである。

(ハ) 本件土地は、別紙2のとおり、○○第○条第○項に定める○○第2種地域に所在しており、当該地域の○○はXX%、○○はXX%である。

 

ロ 本件隣接地は、別紙2のとおり、○○第○条第○項に定める○○第3種地域に所在しており、当該地域の○○はXX%、○○はXX%である。

 

ハ 別紙2のとおり本件土地の北西方約50mに位置するa市b町h番○所在の土地(以下「本件近傍地」という。)の本件登記日における現況等は、次のとおりである。

 

(イ) 本件近傍地は、間口23.72m、奥行き8.53mのほぼ長方形状の宅地である。

(ロ) 本件近傍地の地積は、202.50平方メートルである。

(ハ) 本件近傍地は、別紙2のとおり、○○第○条第○項に定める第2種地域に所在している。

 

ニ 本件土地、本件隣接地及び本件近傍地は、別紙2のとおり、

 

いずれも、d号線に沿接しており、本件土地及び本件近傍地の土地の固定資産評価に適用されるd号線に付された平成24年度(平成26年度の基準年度)の路線価は○○○○円であり、本件隣接地の土地の固定資産評価に適用されるd号線に付された同年度の路線価は○○○○円である。

 

ホ 本件近傍地に係る平成26年度の登録価格は○○○○円である。

 

(2) 検討

 

イ 登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額である旨規定し、同法附則第7条は、上記課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該不動産の登録価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。

 

 そして、登録免許税法附則第7条の委任を受けた施行令附則第3項は、上記政令で定める価額は、登録価格のある不動産の場合については、登録価格の100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とし、登録価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産の登録価格を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額(以下「登録機関認定価額」ということがある。)とする旨規定している。

 

ロ 本件土地は、上記1の(3)のホのとおり、施行令附則第3項第1号所定の基準日である本件登記申請日の前年12月31日現在において登録価格がなかったことから、

 

同項の規定により、課税標準たる不動産の価額は、本件登記申請日において本件土地に類似する不動産の登録価格を基礎として登記機関が認定した価額によることとなるが、

 

上記(1)のイ、ロ及びニのとおり、本件隣接地は、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価が本件土地とは異なることから、本件土地に類似する不動産とは認め難い。

 

したがって、上記1の(3)のホのとおり本件隣接地価格を基礎として算定された本件登記官認定額は、登録機関認定価額として適正なものということはできない。

 

ハ 一方、上記(1)のイ、ハ及びニのとおり、本件近傍地は、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価が本件土地と同じであることから、本件土地に類似する不動産であると認めることができる。

 

 そこで、本件近傍地の登録価格を基礎として本件土地の登録機関認定価額(算定の基準日は、施行令附則第3項第1号の規定により、本件登記申請の日の前年12月31日である平成26年12月31日となる。)を算定すると、別表のとおり、○○○○円となり、これをもって本件登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額と認めるのが相当である。

 

 

ニ 請求人は、上記1の(3)のヘのとおり本件合筆前土地の平成27年度の登録価格を基礎として算定した請求人主張額が、本件土地の正当な価額である旨主張する。

 

 しかし、上記ハのとおり、本件登記に係る登録機関認定価額の算定の基準日は、

 

本件登記申請の日の前年12月31日である平成26年12月31日となるから、

 

これと異なり、算定の基準日を平成27年1月1日とする

 

本件合筆前土地の平成27年度の登録価格を算定の基礎とする請求人主張額は、

 

施行令附則第3項第1号の規定に反しており、本件登記に係る登録機関認定価額として適正なものとはいえないから、請求人の主張は採用することができない。

 

(3) 小括

 

以上によれば、本件登記官認定額のうち、上記(2)のハの審判所認定額を超える部分は、過大であると認められる。

 

 

 

上記4のとおり、本件土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は○○○○円となり、これを基に、登録免許税法第9条、同法別表第1第1号の(ニ)のハ及び租税特別措置法第72条の規定により登録免許税の額を算定すると、○○○○円(100円未満切捨て)となるから、

 

これと、上記1の(3)のニのとおり請求人が納付した登録免許税○○○○円との差額である○○○○円については、

 

登録免許税の課税標準等又は税額の計算が国税に関する法令の規定に従っていなかったものと認められ、過誤納と認められる。

 

 したがって、請求人の還付通知をすべき旨の請求は、上記過誤納の限度で理由があり、原処分のうち、上記過誤納に係る部分は違法であるから、当該部分を取り消すべきである。

 

 

(平成28年9月28日裁決)