重加算税 隠ぺい、仮装の認定 認めなかった事例

 

 

 

 

 

 

 当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認められるものの、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動を認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例について検討します。

 

 

 

 

 

 

 

 

(1) 争点1(本件各賦課決定処分の理由の提示に不備があるか否か。)について

 

 

イ 法令解釈

 

 行政手続法第14条第1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。

 

そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきであるところ、

 

そこにおいて要求される提示の内容及び程度は、特段の理由のない限り、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方においてその提示内容自体から了知し得るものでなければならないというべきである。

 

 

ロ 当てはめ

 

 本件各通知書に記載された処分の理由は、別表2-1及び別表2-2のとおりであるところ、本件各通知書には、処分の理由として、各事実が掲げられた上で、

 

1当該各事実から、

 

イ請求人は、本件事業に係る事業所得があることを認識していたにもかかわらず、意図的に当該所得を申告に含めず、所得税等の確定申告書を提出していたと認められること、

 

ロ請求人は、本件事業に係る対価を得ていることを認識していたにもかかわらず、消費税等の確定申告をしていなかったものと認められること、

 

 

21のことから、隠ぺい又は仮装の事実が認められること、そして、

 

 

3請求人が提出した所得税等の修正申告書又は消費税等の期限後申告書により納付すべき税額に通則法第68条の規定に基づき計算した重加算税の額を賦課決定したことが記載されている。

 

 

 

 また、本件各通知書において、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等に係る各通知書には、処分の理由として、理由中に掲げた各事実が、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為により税額を免れた場合に該当するため、これらに係る処分には同項の規定が適用される旨も記載されている。

 

 

 以上の記載によれば、本件各通知書における処分の理由は、原処分庁がいかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して本件各賦課決定処分をしたかについて、請求人において了知し得る程度に記載されており、

 

行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を知らせて不服の申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条の趣旨に照らし、法の要求する理由の提示として欠けるものではないというべきである。

 

 したがって、本件各賦課決定処分の理由の提示に不備はなく、この点において同処分を取り消すべき違法はない。

 

 

 

 

ハ 請求人の主張について

 

 請求人は、本件各賦課決定処分の理由には意図的に隠ぺい又は仮装を行ったところにより申告がなされている旨の記載があるだけで、請求人のどの行為がなぜ隠ぺい又は仮装に当たるのかが具体的に記載されていない上、偽りその他不正の行為及び隠ぺい又は仮装の主要な要件であるほ脱のための故意が何によって証明されるのかが示されておらず、本件各通知書には行政手続法第14条の要求する必要かつ十分な理由付記がなされていない旨主張する。

 

 しかしながら、本件各通知書に記載された処分の理由が、法の要求する理由の提示として欠けるものでないことは上記ロのとおりである。

 

 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

 

 

 

 

(2) 争点2(請求人は、本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいしたか否か。)について

 

 

イ 法令解釈

 

 通則法第68条第1項及び第2項が定める重加算税の制度は、納税者が過少申告又は無申告について隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

 

 したがって、重加算税を課するためには、

 

納税者のした過少申告行為又は納税者の無申告そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、

 

過少申告行為又は無申告そのものとは別に、

 

隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、

 

これに合わせた過少申告がされ、又は無申告とされたことを要するものである。

 

 

しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、

 

納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をし、又はその意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の上記賦課要件が満たされるものと解すべきである。

 

 

 

ロ 検討

 

 原処分庁は、請求人が本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいしたとして、上記3の(2)の「原処分庁」欄のホのとおり主張しているため、本件においては、以下のとおり、まず、

 

1請求人に過少申告等の意図及びその意図に基づく過少申告行為等があったか否か、次に、

 

2請求人に過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったか否かの順に検討することとする。

 

 

(イ) 請求人に過少申告等の意図及びその意図に基づく過少申告行為等があったか否かについて

 

 原処分庁は、請求人は本件事業から多額の利益が生じており、当該利益を確定申告すべきであることを十分に認識していながら、税を免れることを意図し、その意図に基づき所得を過少に申告するなどしていたものと認められる旨主張するので、この点について以下検討する。

 

 

A 本件事業からの利益に関する請求人の認識について

 

 請求人は本件業務委託料に係る請求書及び本件スタッフごとの報酬明細書を自ら作成し(上記1の(2)のイの(ハ)及び(ヘ))、本件業務委託料は、全て請求人が管理するF口座に入金され(同(ニ))、

 

また、本件支払報酬についても請求人自ら振込手続を行っていたことからすれば(同(ヘ))、

 

請求人は、各月の本件業務委託料の金額及び本件支払報酬の金額を把握していたものと認められるし、

 

F口座に入金された本件業務委託料を請求人口座へ振り替えて、同口座からクレジットカードの利用金額を支払うなど、これを生活費として費消していたことも認められる(同(ホ)及び(ト))。

 

 

 さらに、請求人は、本件調査において、調査担当職員に対し、

 

12005年(平成17年)くらいには、取引先は10社以上となり、その後は収入も○○○○円ないし○○○○円ほどになって、利益も出るようなった旨、

 

2本件事業に係る利益を生活費や家賃の支払のほか、毎月の借入金の返済及び次女の教育費の支払などに充てていた旨申述していることが認められる。

 

 

 以上のことからすると、請求人は、本件各年分においても、本件事業に係る利益の額が相当額あったことを認識していたものと認められる。

 

 

B 本件事業に係る所得税等及び消費税等の申告及び納税の義務に関する請求人の認識について

 

 

(A) 請求人は、

 

1本件各年分の所得税等の確定申告書を税理士等の専門家に頼ることなく自ら作成し、これを原処分庁に提出して源泉徴収された所得税等の還付を受けていること(上記1の(2)のロの(イ))、

 

2請求人自ら作成した本件業務委託料に係る請求書に消費税額を記載していること(同イの(ハ))のほか、

 

3当審判所が、請求人が調査担当職員に提出した見積書(同ハの(ロ)。なお、提出された見積書は平成21年以降のものである。)のうち、本件各取引先に対する作成時期の最も古い見積書を確認した限りにおいても、消費税に関して、「消費税別」又は「消費税込」との記載をしていることが認められる。

 

 

 さらに、請求人は、本件調査において、調査担当職員に対し、

 

1(所得税等の)確定申告は正しいものではない旨、

 

2税理士などへの相談も考えていた旨、

 

3本件事業に係る収入は年間○○○○円ないし○○○○円で自らの取り分も月額○○○○円ほどあり、消費税も含め申告しなければいけないという認識はあった旨(なお、この申述内容は平成26年10月30日のものであり、平成27年2月10日の申述では、この点について、本件事業に係る収入は年間○○○○円ないし○○○○円くらいで自らの取り分も月額○○○○円ほどあり、納税の申告をしなければいけないことは認識していた旨、消費税の問題があることは認識していた旨述べている。)申述していることも認められる。

 

 以上のことからすると、請求人は、所得税等及び消費税等の申告納税制度に一定の知見があり、事業を営むことによって収入及び利益(所得)が発生すれば、所得税等及び消費税等の申告及び納税が必要になることなど、本件事業に関する申告及び納税の義務について一定の理解があり、これらの義務を当然に認識していたものと認められる。

 

 

(B) なお、請求人は、調査担当職員に対する上記(A)の3の「申告しなければいけないという認識はあった」との申述内容は申述当時の請求人の認識とは異なる旨主張する(上記3の(2)の「請求人」欄のイ参照)。

 

 しかしながら、当該申述内容は、請求人にとって不利な内容であるところ、

 

1J税理士が同席して行われた平成27年2月10日の請求人の申述においても、上記(A)のとおり、その内容に平成26年10月30日の申述から大きな変遷は認められず、同様のことが述べられていること、

 

2請求人は、申述内容を記載した質問応答記録書(上記1の(2)のハの(イ))の記載内容に誤りがないことを自ら確認した上で、それぞれに署名押印していることからすると、この点に関する申述は信用することができ、当該申述内容は本件事業に関する所得税等及び消費税等の申告及び納税の義務について請求人が有していた認識を正しく述べたものと認められる。

 

C 小括

 

 上記A及びBを踏まえると、請求人は、所得税等及び消費税等については申告納税の制度が採られていること、所得税等の確定申告においては、その所得の種類、並びに全ての所得を申告し、また、消費税等についてもこれを申告し、それにより算出された正当な所得税額及び消費税額を納付すべきであることを十分に認識していたものと認められる。

 

 したがって、請求人が、本件各年分の所得税等の確定申告に際し、本件事業に係る所得を全て秘匿して、給与所得及び株式等に係る譲渡所得等のみを記載した内容虚偽の確定申告書を提出し、これを申告しなかったこと、また、本件各課税期間において本件事業に係る収入等につき消費税等の申告をしなかったことは、単なる所得計算の違算や亡失というものではなく、請求人が当初から所得を過少に申告する意図の下になした過少申告行為、又は法定申告期限までに申告しないことを意図して行われたものと認めるのが相当である。

 

(ロ) 請求人に過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったか否かについて

 

 原処分庁は、請求人が税を免れる意図に基づき、本件事業に係る帳簿書類をあえて作成せずに、本件事業に係る所得を無いものとし、本件各年分にわたって多額の本件事業に係る売上金額を一切記載しない内容虚偽の所得税等の確定申告を行い、本件各課税期間の消費税等についてあえて申告していなかったのであり、これら請求人の一連の行為は、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められる旨主張するので、この点について以下検討する。

 

 

A 請求人が本件事業に係る帳簿を作成していなかったことについて

 

 請求人は本件各年分において本件事業に係る帳簿を作成していないものの(上記1の(2)のイの(チ))、

 

1本件業務委託料に係る請求書及び本件スタッフごとの報酬明細書については請求人自らパソコンで作成していること(同(ハ)及び(ヘ))、

 

2本件業務委託料は、全て請求人が管理するF口座に入金されていること(同(ニ))、

 

3本件支払報酬に関する振込手続は、請求人自らパソコンを使用して行っていること(同(ヘ))、並びに

 

4請求人は、本件各契約書、上記1の請求書及び報酬明細書などの書類等についてもこれらを破棄することなく、パソコン等に保存していたことからすると(同ハの(ロ))、

 

請求人が本件事業に係る帳簿を作成していないのは、これらの書類等により、本件事業に関する収入金額、必要経費及び請求人自ら処分可能なおおよその利益を把握することができたためである可能性が残り、原処分庁提出の証拠や当審判所の調査で収集した証拠を総合しても、請求人が本件事業に関する正当な収入金額、必要経費及び所得金額を秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い。

 

 したがって、本件において、請求人が本件事業に係る帳簿を作成していなかったことをもって、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とまでは評価することができない。

 

 

 

B 小括

 

 上記Aのとおり、原処分庁の主張する請求人の行為をもって、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価することはできず、

 

また、上記1の(2)に掲げた事実のほか、本件各契約書の作成から受注、本件事業に係る業務の遂行、本件業務委託料に係る請求、入金等並びに所得税等及び消費税等の申告行為等までに至る本件事業に関する請求人の一連の行為において、当審判所の調査によっても過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動などを見いだすことはできない。

 

 

 

(ハ) まとめ

 

 以上のように、本件において請求人に所得を過少に申告する意図、又は消費税等を法定申告期限までに申告しない意図並びにその意図に基づく過少申告行為等は認められるものの、

 

原処分庁が主張する請求人の行為については、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とは評価することができないものであり、

 

他に原処分庁は通則法第68条第1項又は第2項に規定する重加算税の賦課要件に該当する事実を主張及び立証しておらず、当審判所の調査によっても当該事実を見いだすことはできない。

 

 

 したがって、請求人の本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等について、重加算税を賦課することはできないものといわざるを得ない。

 

 

(3) 争点3(請求人は、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れていたか否か。)について

 

 

イ 法令解釈

 

通則法第70条は、国税の更正、決定等の期間制限(賦課権の除斥期間)を定めているところ、同条第4項において、「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等」に関しては、その除斥期間を7年と定め、それ以外の場合よりも長い除斥期間を定めている。これは、偽りその他不正の行為によって国税の全部又は一部を免れた納税者がある場合にこれに対して適正な課税を行うことができるよう、より長期の除斥期間を定めたものである。

 

 また、同項に規定する

 

 

「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行っていることをいう

 

のであって、単なる不申告行為などはこれに含まれないところ、

 

偽計その他の工作を伴う不正な行為を行うとは、納税者が真実の所得を秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、所得の金額を殊更に過少にした内容虚偽の申告書を提出し、又は法定申告期限までに申告をせず、正当な納税義務を過少にするなどしてその不足税額を免れる行為も、それ自体単なる不申告などの不作為にとどまるものではなく、偽りの工作的不正行為といえるから、上記「偽りその他不正の行為」に該当するものと解するのが相当である。

 

ロ 当てはめ

 

 本件において、上記(2)のロの(イ)のことからすると、請求人は、

 

本件事業に係る所得を全て秘匿し、それが課税の対象となることを回避するため、

 

所得の金額を殊更に過少にした内容虚偽の所得税等の確定申告書を提出し、

 

また、法定申告期限までに消費税等の申告を行わず、

 

本件各年分の所得税等及び本件各課税期間の消費税等の税額を免れていたものと認められ、

 

このような過少申告行為等は、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為に該当するものと認められる。

 

 したがって、請求人が、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、全部若しくは一部の税額を免れていたことは、通則法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことに該当する。

 

 

ハ 請求人の主張について

 

請求人は、本件事業に係る収入等について申告をしなかったのは租税に関する知識を欠いていたためであり、請求人にほ脱のための故意はなく、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為はない旨主張する。

 

 

 しかしながら、○○○○円ないし○○○○円ほどにもなる本件事業に係る収入等(上記1の(2)のハの(ハ))について申告の必要性を認識していなかったとする請求人の主張は、

 

○○○○円ほどの給与収入についてでさえ申告している請求人の本件各年分の所得税等の確定申告の状況(同ロの(イ))及び上記(2)のロの(イ)のBの認定に照らしてもおよそ採用することはできないし、

 

 

請求人が、平成19年分ないし平成22年分の所得税並びに平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為により、これらの税額を免れていたと認められることは上記ロのとおりである。

 

 なお、請求人は、所得税法第238条と

 

 

通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為を別異に解することはできず、同項の規定を適用するには、

 

所得税法第238条のほ脱犯の刑事罰の構成要件である故意が必要であるとも主張するが、

 

同項の規定は、上記イのとおり、適正な課税を実現するために更正等の除斥期間を延長するにすぎないものであるところ、

 

 

このような趣旨に鑑みると、ほ脱犯の刑事罰の構成要件である故意を同項の適用要件と解することはできない。

 

 

 したがって、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。

 

(4) 本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分の適法性について

 

請求人の本件各年分の所得税等については、上記(2)のロの(ハ)のとおり、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていないものの、上記(3)のロのとおり、請求人は、平成19年分ないし平成22年分の所得税について、同法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことが認められる。

 

そして、本件各年分の修正申告に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、請求人に同法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。

 

 以上のことから、本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額については、それぞれ違法であるから、いずれも別紙1ないし別紙7の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

 

 

(5) 本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分の適法性について

 

請求人の本件各課税期間の消費税等については、上記(2)のロの(ハ)のとおり、

 

 

 

通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしていないものの、

 

上記(3)のロのとおり、請求人は、平成19年課税期間及び平成20年課税期間の消費税等について、

 

同法第70条第4項に規定する「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことが認められる。

 

 

そして、本件各課税期間の消費税等につき、期限内申告書の提出がなかったことについて、

 

請求人に同法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められない。

 

 

 以上のことから、本件各課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分のうち、無申告加算税相当額を超える部分の金額については、それぞれ違法であるから、いずれも別紙8ないし別紙14の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。

 

(6) その他

 

原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

 

 

(平成28年7月4日裁決)