懇親会費等は必要経費か?

 

 

 東京高等裁判所判決/平成23年(行コ)第298号、判決 平成24年9月19日、判例タイムズ1387号190頁について検討します。

 

 

 

 

【判示事項】

 

 

 弁護士が弁護士会等の役員としての活動に伴い支出した懇親会費等の一部が,その事業所得の計算上必要経費に算入することができ,また,消費税等の額の計算上課税仕入れに該当するとされた事例

 

 

 

 

 

 

 

主   文

 

 

一 原判決を次のように変更する。

  

(1) 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一六年分の所得税の更正処分(ただし、平成二一年三月二四日付け審査裁決により一部取り消された後のもの)のうち、総所得金額一三七七万五七六三円及び納付すべき税額マイナス五一二万四四一二円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、上記裁決により一部取り消された後のもの)のうち、過少申告加算税額一万七〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

  

(2) 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年分の所得税の更正処分のうち、総所得金額三一九五万二五四三円及び納付すべき税額三九二万八三〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税額五万八〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

  

(3) 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年一月一日から同年一二月三一日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、納付すべき消費税の額二〇四万八一〇〇円及び納付すべき地方消費税の額五一万二〇〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち、過少申告加算税額七〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

  

(4) 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

 

二 訴訟費用は第一、二審を通じて四分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

 

       

 

 

 

事実及び理由

 

第一 控訴の趣旨

 

一 原判決を取り消す。

 

二 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一六年分の所得税の更正処分(ただし、平成二一年三月二四日付け審査裁決により一部取り消された後のもの、以下「本件平成一六年分所得税更正処分」という。)のうち、総所得金額一三二一万五六八一円及び納付すべき税額マイナス五二九万二四一二円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、上記裁決により一部取り消された後のもの、以下「本件平成一六年分所得税賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。

 

三 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年分の所得税の更正処分(以下「本件平成一七年分所得税更正処分」という。)のうち、総所得金額三〇七三万四六六一円及び納付すべき税額三四七万七六〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件平成一七年分所得税賦課決定処分」という。)のうち、過少申告加算税額一万三〇〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

 

四 処分行政庁が平成二〇年三月一一日付けでした控訴人の平成一七年一月一日から同年一二月三一日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、納付すべき消費税の額二〇〇万二一〇〇円及び納付すべき地方消費税の額五〇万〇五〇〇円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

 

 

 

第二 事案の概要

  〈編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します〉

 次のように付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由の第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

 

一 原判決二頁二一行目〈編注・本誌二一四五号一八頁三段二九行目〉の次に行を改めて次のように加える。

 「 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却した。これに対し、控訴人が控訴した。」

 

二 原判決六頁五行目〈同一九頁四段五行目〉の「本件所得税賦課決定処分」を「本件所得税各賦課決定処分」に改める。

 

三 原判決六頁一五行目から一七行目〈同一九頁四段二二~二五行目〉までを次のように改める。

 

「 三 税額等に関する当事者の主張

 被控訴人の主張する本件課税処分等の根拠及び適法性は、原判決別紙八記載のとおりであり、本件所得税各更正処分における必要経費の合計額(後記四の争点(1))及び本件消費税等更正処分における課税仕入れに係る消費税額(後記四の争点(2))を除き、税額等の計算の根拠となる金額及び計算方法については、当事者間に争いがない。」

 

四 原判決八頁一九行目〈同二〇頁三段一七行目〉の次に行を改めて次のように加える。

 「 また、酒食を伴う懇親会は、その性格上、個人的な知己との交際や旧交を温めるといった側面を含むことから、そのために支出した懇親会費は、一般的には、家事費としての性質を有するものである。したがって、仮に業務遂行上の費用が含まれていたとしても、その区分が明確でない家事関連費に相当し、控訴人の弁護士としての事業の遂行上必要な部分を明らかにすることができない以上、控訴人の弁護士としての事業所得の必要経費には該当しない。」

 

五 原判決八頁二〇行目〈同二〇頁三段一八行目〉の「したがって、」の次に次のように加える。

 「弁護士会及び日弁連の会員としての資格を維持するための弁護士会費の支出が事業所得の必要経費に該当することはあっても、」

 

六 原判決一五頁二一行目の「事業所得」から二四行目〈同二二頁四段二三~二八行目〉末尾までを次のように改める。

 「弁護士が顧問会社から得た顧問料収入が事業所得と給与所得のいずれに該当するかを判断する基準として述べられたものであり、「事業所得の必要経費」の判断基準を示したものではない。「事業所得の必要経費」の判断基準を示した判例は、大阪高裁昭和五四年一一月七日判決であり、これを認容した最高裁昭和六〇年三月二七日判決である。上記大阪高裁判決は、「収入を終局の目的として直接あるいは間接に支出を余儀なくされたもの」を必要経費とすべきであると判断しており、必要経費と収入との個別対応が必ずしも必要でないことを明示している。

 また、処分行政庁は、控訴人が弁護士会の会員として行った会務活動に伴う支出は必要経費であると認めている。弁護士が行う会務活動は、弁護士会等の会員としてであれ、役員としてであれ、その効果が弁護士会等ないし弁護士を含む弁護士全体に帰属することに変わりはない。そして、弁護士会等の制度上、弁護士会等の役員として活動することは、すべての弁護士に課せられた義務というべきものである。したがって、会務活動に伴う支出について、会員としてした場合と役員としてした場合とで必要経費に該当するか否かを区別する合理的な理由はない。」

 

 

 

 

 

 

 

第三 当裁判所の判断

 

一 争点(1)(本件各支出を所得税法三七条一項に規定する必要経費に算入することができるか否か。)について

 

(1) 所得税法三七条一項の解釈、本件各支出の内容等について

 次のように補正するほかは、原判決の事実及び理由の第三の一の(1)から(3)まで(原判決一九頁一九行目から三三頁二三行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

 

ア 原判決二〇頁一八行目から一九行目〈同二四頁三段八~一〇行目〉にかけての「所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要であること」を「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であること」に改める。

 

イ 原判決二〇頁二二行目〈同二四頁三段一四行目〉の次に行を改めて次のように加える。

 

「 これに対し、被控訴人は、一般対応の必要経費の該当性は、当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ、専ら業務の遂行上必要といえるかによって判断すべきであると主張する。

 

しかし、所得税法施行令九六条一号が、家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて、経費の主たる部分が「事業所得を…生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定している上、

 

ある支出が業務の遂行上必要なものであれば、その業務と関連するものでもあるというべきである。

 

それにもかかわらず、

 

これに加えて、事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず、「直接」という文言の意味も必ずしも明らかではないことからすれば、被控訴人の上記主張は採用することができない。」

 

 

ウ 原判決二〇頁二四行目から二五行目〈同二四頁三段一七~一九行目〉にかけての「原告の事業所得を生ずべき業務と直接関係し、かつその業務の遂行上必要であること」を「控訴人の事業所得を生ずべき業務の遂行上必要であること」に改める。

 

エ 原判決二一頁三行目から五行目〈同二四頁三段二七~三〇行目〉にかけての「原告が弁護士として行う事業所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要なもの」を「控訴人が弁護士として行う事業所得を生ずべき業務の遂行上必要なもの」に改める。

 

オ 原判決二一頁六行目の「所得税法」から七行目末尾〈同二四頁三段三二行目~四段二行目「のことをいう」〉までを次のように改める。

 

 

「事業所得を生ずべき業務とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務のことをいう」

 

 

カ 原判決二一頁一〇行目、一六行目及び一八行目〈同二四頁四段六、一七、二二行目〉の「「事業」」を「事業所得を生ずべき業務」に改める。

 

キ 原判決二一頁一九行目から二〇行目にかけての「当該活動」から二三行目〈同二四頁四段二三~三〇行目〉末尾までを次のように改める。

 

 「当該活動の内容等を総合考慮し、社会通念に照らして客観的に判断されるべきものであると解するのが相当である。」

 

ク 原判決二一頁二四行目から二五行目〈同二四頁四段三二~末行目〉にかけての「原告の所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ当該業務の遂行上必要な支出」を「控訴人が弁護士として行う事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出」に改める。

 

 

ケ 原判決二二頁一行目の「甲七六」の次に「、八八」を加える。

 

コ 原判決二二頁八行目から九行目〈同二五頁一段一五~一六行目〉にかけての「同日以降の同会執行部の在り方」を「平成一六年度の同会執行部(会長、副会長、庶務委員長、庶務副委員長及び常議員会議長で構成される事実上の同会の執行機関をいう。)の在り方」に改める。

 

サ 原判決二二頁一四行目の「であった」から一五行目の「会議」〈同二五頁一段二三~二六行目〉までを次のように改める。

 

「であった。同委員会は、毎年一回、全国の各弁護士会の弁護士業務改革委員会委員長を集めて、各地の弁護士業務改革についての活動状況等を協議する全国委員長会議を開催していたところ、同月二六日に開催された同会議」

 

シ 原判決二三頁一六行目冒頭から同行目〈同二五頁三段二行目「その後の」~三行目〉末尾までを次のように改める。

 

「その後の懇親会及び二次会にも出席して、懇親会の費用一万円及び二次会の費用二万四一〇〇円の合計三万四一〇〇円を支出した。」

 

ス 原判決二三頁二〇行目〈同二五頁三段八行目〉の「常議員会」を「平成一五年度最後の常議員会」に改める。

 

セ 原判決二三頁二四行目〈同二五頁三段一四行目〉の「理事会」を「平成一五年度最後の理事会」に改める。

 

ソ 原判決二四頁七行目〈同二五頁三段二八行目〉の「第一回東北弁連理事会」を「平成一六年度の第一回東北弁連理事会」に改める。

 

タ 原判決二四頁一〇行目から一一行目にかけて〈同二五頁一段一行目〉の「第一回常議員会」を「平成一六年度の第一回常議員会」に改める。

 

チ 原判決二五頁二行目〈同二五頁四段二八行目〉の「仙台弁護士会執行部会」の次に「(同会執行部メンバーにより、原則として毎週火曜日に仙台弁護士会館二階において行われる会議)」を加える。

 

ツ 原判決二五頁二四行目〈同二六頁一段二九行目〉の「一万円」を「五〇〇〇円」に改める。

 

テ 原判決三〇頁一〇行目〈同二七頁三段一四行目〉の「平成一七年四月二八日」を「平成一七年度の日弁連執行部が発足して間もない同年四月二八日」に改める。

 

ト 原判決三〇頁二四行目〈同二七頁四段三行目〉の「開催した」を次のように改める。

 「、控訴人が日弁連副会長として活動していることを激励する趣旨で開催した」

 

 

(2) 検討

 

 

ア 先に引用した原判決の事実及び理由の第三の一の(3)で認定した本件各支出の内容によれば、本件各支出は、

 

控訴人が、仙台弁護士会の次期会長予定者若しくは会長若しくは常議員会の常議員又は東北弁連の理事又は日弁連の次期副会長予定者若しくは副会長、理事若しくは業務改革委員会の副委員長又は弁護士として行った活動に要した費用である

 

 

ここで、弁護士会とは、弁護士及び弁護士法人(以下「弁護士等」という。)を会員とし、

 

弁護士等の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする法人であり(弁護士法三一条、三六条、三六条の二)、

 

日弁連は、弁護士等及び弁護士会を会員とし、弁護士等及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする法人である(同法四五条、四七条)。

 

また、東北弁連は、仙台高等裁判所の管轄区域内の弁護士会が、共同して特定の事項を行うため、日弁連の承認を受けて設けた法人格なき社団であり(同法四四条参照)、

 

仙台高等裁判所の管轄区域内の弁護士会の連絡及びこれらの弁護士会所属会員相互間の協調、共済並びに懇親に関する事項のほか、弁護士等の品位保持及び業務改善に関する事項を行うこと等を目的としている。

 

なお、仙台弁護士会会長、東北弁連理事、日弁連理事及び日弁連副会長は、それぞれの団体の役員である。また、仙台弁護士会常議員会とは、同弁護士会の運営に関する事項等を審議することを目的とする同会の機関であり、日弁連弁護士業務改革委員会とは、弁護士業務改革のため調査、研究等を行うことを目的とする日弁連の機関である。

 

 

 そうすると、弁護士会等と個々の弁護士は異なる人格であり、

 

弁護士会等の機関を構成する弁護士がその権限内でした行為の効果は、弁護士会等に帰属するものであるから、

 

控訴人が弁護士会等の役員等(弁護士会等の各種委員会の委員等を含む。以下同じ。)として行う活動は、弁護士会等の業務に該当する余地はあるとしても、社会通念上、控訴人の「事業所得を生ずべき業務」に該当すると認めることはできない。

 

 

 これに対し、控訴人は、弁護士による弁護士会等の会務活動が弁護士の事業所得を生ずべき業務に該当すると主張するが、

 

弁護士会等と個々の弁護士は異なる人格であり、

 

弁護士会等の機関を構成する弁護士がその権限内でした行為によりその弁護士が事業所得を得ることはないから、これを採用することはできない。

 

 

また、そもそも、

 

本件各支出の内容からすれば、その原因となった控訴人の弁護士会等の役員等としての活動は、いずれも、営利性、有償性を有するものではないことが明らかであるから、その点からいっても、控訴人の上記主張は採用することができない。

 

 

イ もっとも、控訴人の弁護士会等の役員等としての活動が控訴人の「事業所得を生ずべき業務」に該当しないからといって、その活動に要した費用が控訴人の弁護士としての事業所得の必要経費に算入することができないというものではない。

 

 

なぜなら、

 

控訴人が弁護士会等の役員等として行った活動に要した費用であっても、これが、先に判示したように、控訴人が弁護士として行う事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出であれば、その事業所得の一般対応の必要経費に該当するということができるからである。

 

 

 そこで検討するに、先に判示したとおり、

 

弁護士会及び日弁連は、弁護士等及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とするものであり、東北弁連は、仙台高等裁判所の管轄区域内の弁護士会の連絡及びこれらの弁護士会所属会員相互間の協調、共済並びに懇親に関する事項等を行うことを目的とするものである。

 

 

そして、弁護士会等は、弁護士法に定められている弁護士の資格審査又は懲戒についての事務を行うほか、本件訴訟に提出された《証拠略》から認められるだけでも、平成一六年度から平成一七年度にかけて、国選弁護報酬や民事法律扶助制度への補助金の増額に関する国会議員等への働きかけ、弁護士倫理の遵守を目的とした弁護士職務基本規程の制定、弁護士新人研修制度の充実のための資料作成、弁護士補助職認定制度の創設に向けた準備等の活動を行っており、これらが弁護士の使命の実現並びに我が国の社会秩序の維持及び法律制度の改善(弁護士法一条参照)のためであることはいうまでもない。

 

 

 また、弁護士となるには日弁連に備えた弁護士名簿に登録されなければならず(同法八条)、弁護士名簿に登録された者は、当然入会しようとする弁護士会の会員となり(同法三六条一項)、弁護士は、当然、日弁連の会員となる(同法四七条)とされているとおり、弁護士については、弁護士会及び日弁連へのいわゆる強制入会制度が採られている。

 

 

そのため、弁護士が、弁護士としての事業所得を生ずべき業務を行うためには、弁護士会及び日弁連の会員でなければならない上、弁護士会等の役員等は、その団体の性質上、会員である弁護士の中から選任するのが一般的であり、

 

少なくとも、仙台弁護士会、東北弁連及び日弁連の役員並びに仙台弁護士会常議員会の常議員は、会則等において、その会員である弁護士の中から選任することとされている。

 

要するに、上記のような弁護士会等の活動は、すべてその役員等に選任された弁護士が現実に活動することによって成り立っているものである(弁護士法二四条、弁護士職務基本規程七九条参照)。

 

 

 

 そして、弁護士会等は、独自に資産を有し、会員や所属の弁護士会から会費を徴収すること等により、その活動に要する費用を支出しているものの、そのすべてを弁護士会等が支出するものではなく、弁護士会等が支出しない分は、弁護士会等の役員等に選任された個々の弁護士が自ら支出しているのが実情である。

 

 

 以上によれば、弁護士会等の活動は、弁護士に対する社会的信頼を維持して弁護士業務の改善に資するものであり、

 

弁護士として行う事業所得を生ずべき業務に密接に関係するとともに、会員である弁護士がいわば義務的に多くの経済的負担を負うことにより成り立っているものであるということができるから、

 

弁護士が人格の異なる弁護士会等の役員等としての活動に要した費用であっても、

 

弁護士会等の役員等の業務の遂行上必要な支出であったということができるのであれば、

 

その弁護士としての事業所得の一般対応の必要経費に該当すると解するのが相当である。

 

 

 

 

ウ 前記の観点から、本件各支出の内容に応じて個別に検討する。

  

(ア) 弁護士会等の役員等として出席した懇親会等の費用

  

a 先に引用した原判決の事実及び理由の第三の一の(3)によれば、本件各支出のうち、原判決別紙九(以下「別紙九」という。)の番号一六-一、一六-三から一六-七まで、一六-一〇、一六-一二から一六-三四まで及び一六-三六並びに原判決別紙一〇(以下「別紙一〇」という。)の番号一七-一から一七-四まで及び一七-七は、仙台弁護士会の次期会長予定者又は会長として、別紙九の番号一六-二は、日弁連業務改革委員会の副委員長として、別紙九の番号一六-八は、仙台弁護士会常議員会の常議員として、別紙九の番号一六-九及び一六-一一並びに別紙一〇の番号一七-六は、東北弁連の理事として、別紙九の番号一六-三五は、日弁連の理事として、別紙一〇の番号一七-五、一七-八、一七-一〇から一七-一二まで、一七-一四から一七-二一まで及び一七-二三から一七-二八までは、日弁連の次期副会長予定者又は副会長として、それぞれ控訴人が出席した酒食を伴う懇親会等の費用である。

  

b 先に判示した弁護士会等の目的やその活動の内容からすれば、

 

 

弁護士会等の役員等が、

 

① 所属する弁護士会等又は他の弁護士会等の公式行事後に催される懇親会等、

 

② 弁護士会等の業務に関係する他の団体との協議会後に催される懇親会等に出席する場合であって、その費用の額が過大であるとはいえないときは、社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であったと解するのが相当である。

 

 

 また、弁護士会等の役員等が、

 

③ 自らが構成員である弁護士会等の機関である会議体の会議後に、その構成員に参加を呼び掛けて催される懇親会等、

 

④ 弁護士会等の執行部の一員として、その職員や、会務の執行に必要な事務処理をすることを目的とする委員会を構成する委員に参加を呼び掛けて催される懇親会等に出席することは、それらの会議体や弁護士会等の執行部の円滑な運営に資するものであるから、

 

これらの懇親会等が特定の集団の円滑な運営に資するものとして社会一般でも行われている行事に相当するものであって、その費用の額も過大であるとはいえないときは、社会通念上、その役員等の業務の遂行上必要な支出であったと解するのが相当である。

  

 

 

c そこで、前記aの各支出の内容を見るに、次の各支出が前記bの①から④までに該当するものと認められる。

  

(a) 前記bの①に該当する支出

 別紙九の一六-二、一六-一五、一六-二一及び一六-二四並びに別紙一〇の番号一七-一一、一七-一二、一七-一六から一七-一九まで、一七-二一、一七-二四及び一七-二五(ただし、二次会を除く。)

  

(b) 前記bの②に該当する支出

 別紙九の番号一六-一八、一六-二六(ただし、二次会を除く。)、一六-二九、一六-三〇及び一六-三二並びに別紙一〇の番号一七-一及び一七-八

  

(c) 前記bの③に該当する支出

 別紙九の番号一六-七(ただし、二次会を除く。)、一六-八、一六-九、一六-一一、一六-一二及び一六-三五並びに別紙一〇の番号一七-二(ただし、二次会を除く。)、一七-三(ただし、二次会を除く。)、一七-五、一七-六、一七-一〇、一七-二六、一七-二七(ただし、二次会を除く。)及び一七-二八

  

(d) 前記bの④に該当する支出

 別紙九の番号一六-五、一六-一三(ただし、二次会を除く。)、一六-二五(ただし、二次会を除く。)及び一六-二八(ただし、二次会を除く。)並びに別紙一〇の番号一七-四、一七-一五及び一七-二三

  

d 前記aの各支出のうち前記cに掲げる各支出を除くものは、前記bの①から④までに該当すると認めることはできず、他に弁護士会等の役員等として業務の遂行上必要な支出であったと認めるに足りる証拠はない。その理由は、次のとおりである。

  

(a) 別紙九の番号一六-一、一六-三、一六-四、一六-一〇、一六-一四、一六-一六、一六-一七、一六-一九、一六-二〇、一六-二二、一六-二三、一六-二七、一六-三一、一六-三四及び一六-三六並びに別紙一〇の番号一七-七について

 

 

 これらの各支出は、いずれも、控訴人が、仙台弁護士会の次期会長予定者又は会長として、同会の執行部を構成するメンバーとの懇親会等に出席した費用である。

 

しかし、これらの懇親会等の態様を見ると、毎週行われる執行部会(その準備会を含む。)後に引き続いて行われたものか、控訴人が他の執行部のメンバーを慰労するためにホテルに一泊して行われたものであって、

 

いずれも、弁護士会等の公式行事とも、特定の集団の円滑な運営に資するものとして社会一般でも行われている行事に相当するものともいうことはできず、

 

その費用の額も、控訴人が参加者全員の費用も含めて全額負担し、又は他の参加者よりも多く負担することがあるなど、過大であるといわざるを得ない。

 

 したがって、これらの各支出が前記bの①から④までに該当すると認めることはできない。

  

 

(b) 別紙九の番号一六-六、一六-七(ただし、二次会に限る。)、一六-一三(ただし、二次会に限る。)、一六-二五(ただし、二次会に限る。)、一六-二六(ただし、二次会に限る。)、一六-二八(ただし、二次会に限る。)及び一六-三三並びに別紙一〇の番号一七-二(ただし、二次会に限る。)、一七-三(ただし、二次会に限る。)、一七-一四、一七-二〇、一七-二五(ただし、二次会に限る。)及び一七-二七(ただし、二次会に限る。)について

 

 これらの各支出は、前記cの懇親会等後に開催された二次会に出席した費用である。しかし、前記cの懇親会等に出席すれば、社会通念上、前記bで判示した弁護士会等の役員等の業務遂行上の必要性は満たしたものということができ、

 

その後の二次会への出席は、個人的な知己との交際や旧交を温めるといった側面を含むといわざるを得ず、仮に業務の遂行上必要な部分が含まれていたとしても、その部分を明らかに区分することができると認めるに足りる証拠はない。

 したがって、これらの各支出が前記bの①から④までに該当すると認めることはできない。

  

(イ) 仙台弁護士会会長又は日弁連副会長に立候補した際の活動等に要した費用

  

a 先に引用した原判決の事実及び理由の第三の一の(3)によれば、本件各支出のうち、別紙九の番号一六-三七は、控訴人が仙台弁護士会会長に立候補した際の活動に要した費用であり、別紙一〇の番号一七-二九から一七-三一までは、控訴人が日弁連副会長に立候補した際の活動等に要した費用である。

  

b 弁護士会等の活動が、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務に密接に関係しているものであり、仙台弁護士会及び日弁連の役員は、会則において、その会員である弁護士の中から選任することとされていることは、上記イで判示したとおりである。

 

確かに、被控訴人が主張するように、弁護士会等の役員になることが弁護士法等によって個々の弁護士に義務付けられているとは認められないものの、いずれかの弁護士が弁護士会等の役員に選任されない限り、弁護士会等が機能しないことは明らかである。

 

もっとも、弁護士が弁護士会等の役員に立候補した後、役員に選任されるため、投票権を有する者に対して自らへの投票を呼び掛ける活動は、自らの弁護士会等の運営に関する意見を実現するために行われるものであるというべきであり、弁護士会等の活動と同視することができないのはもちろんのこと、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務と密接に関係しているとも認めることはできない。

 

 

 以上の事情を総合考慮すると、

 

弁護士が弁護士会等の役員に立候補した際の活動に要した費用のうち、立候補するために不可欠な費用であれば、その弁護士の事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出に該当するが、その余の費用については、これに該当しないと解するのが相当である。

 

 

  

c そこで、前記aの各支出を見るに、別紙一〇の番号一七-三一は、日弁連副会長に立候補するために、日弁連副会長候補者選挙規定に基づく費用を支出したというものであり、立候補するために不可欠な費用であると認めることができるので、控訴人の事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出に該当するが、その余の各支出については、控訴人が仙台弁護士会会長又は日弁連副会長に立候補するために不可欠な費用であると認めることはできないから、控訴人の事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出には該当しない。

  

(ウ) その他の費用

  

a 別紙一〇の番号一七-九

 

 日弁連副会長の活動の補助者である日弁連事務次長の父親の逝去に伴う香典であるが、日弁連を代表して控訴人が支出したというようなものではないことは明らかであり、

 

控訴人とその日弁連事務次長とは日弁連執行部メンバーとしての交流しかなかったことを考慮しても、社会通念上、日弁連副会長の業務の遂行上必要な支出であったとまではいえない。

 したがって、控訴人の事業所得の一般対応の必要経費に該当すると認めることはできない。

  

b 別紙一〇の番号一七-一三

 

 仙台弁護士会の平成二八年度執行部会メンバーが、控訴人が日弁連副会長として活動していることを激励する趣旨で開催した二次会の費用を負担したものであり、その趣旨からいって、弁護士会等の役員等として支出したものではない上、個人的な知己との交際や旧交を温めるといった側面を含むといわざるを得ず、仮に弁護士としての業務の遂行上必要な部分が含まれていたとしても、その部分を明らかに区分することができると認めるに足りる証拠はない。

 したがって、控訴人の事業所得の一般対応の必要経費に該当すると認めることはできない。

  

 

c 別紙一〇の番号一七-二二

 仙台弁護士会事務員会の活動費として寄附したものであり、その趣旨からいって、弁護士会等の役員等として支出したものではない上、個人的な知己との交際といった側面を含むといわざるを得ず、仮に弁護士としての業務の遂行上必要な部分が含まれていたとしても、その部分を明らかに区分することができると認めるに足りる証拠はない。

 したがって、控訴人の事業所得の一般対応の必要経費に該当すると認めることはできない。

 

(3) 小括

 以上によれば、本件各支出のうち、別紙九の一六-二、一六-五、一六-七(ただし、二次会を除く。)、一六-八、一六-九、一六-一一、一六-一二、一六-一三(ただし、二次会を除く。)、一六-一五、一六-一八、一六-二一、一六-二四、一六-二五(ただし、二次会を除く。)、一六-二六(ただし、二次会を除く。)、一六-二八(ただし、二次会を除く。)、一六-二九、一六-三〇、一六-三二及び一六-三五並びに別紙一〇の番号一七-一、一七-二(ただし、二次会を除く。)、一七-三(ただし、二次会を除く。)、一七-四から一七-六まで、一七-八、一七-一〇から一七-一二まで、一七-一五から一七-一九まで、一七-二一、一七-二三、一七-二四、一七-二五(ただし、二次会を除く。)、一七-二六、一七-二七(ただし、二次会を除く。)、一七-二八及び一七-三一は、控訴人の事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出に該当するので、必要経費に算入することができるが、その余は、必要経費に算入することはできない。

 

 

 

二 争点(2)(本件各消費税関係支出が消費税法二条一項一二号の課税仕入れに該当するか否か。)について

 次のように補正するほかは、原判決の事実及び理由の第三の二(原判決四一頁三行目から二一行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

 

(1) 原判決四一頁三行目〈同三一頁一段一九行目〉の「本件各支出の一部である」を削る。

 

(2) 原判決四一頁一八行目の「本件各支出」から二一行目〈同三一頁二段一二~一七行目〉末尾までを次のように改める。

 

「本件各消費税関係支出のうち、前記一の(3)に掲記した各支出は、所得税法上の必要経費に算入することができるので、「課税仕入れ」に該当するが、その余の支出は、必要経費に算入することができないから、「課税仕入れ」に該当するものではない。」

 

 

三 本件課税処分等の適法性について

 

(1) 控訴人の平成一六年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額について

 以上を前提として、控訴人の平成一六年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額を算出すると、次のようになる。なお、必要経費の合計額の部分を除き、計算の基礎となる金額及び計算方法については、先に引用した原判決別紙八の一の(1)記載のとおりであるから、特に説明を付さない。

 

ア 総所得金額 一三七七万五七六三円

  (ア) 総収入金額 八六一六万八三三四円

  (イ) 必要経費の合計額 六五六五万〇五七一円

  a 接待交際費 二六九万五六二八円

 上記金額は、次の(a)の金額から(b)の金額を差し引いた金額である。

  (a) 修正申告額 三二八万〇七一〇円

  (b) 必要経費不算入額 五八万五〇八二円

 

 上記金額は、控訴人の事業所得の金額の計算上、所得税法三七条一項に規定する必要経費に算入できないと認められる接待交際費に係る各支出の合計額であり、本件訴訟において控訴人が必要経費に算入することができると主張する金額八六万九六九二円(別紙九の番号一六-一から一六-三七までの各金額の合計額)に本件訴訟外で必要経費に算入することができないと認められる二万五〇〇〇円を加えた金額から前記一の(3)で判示した必要経費に算入できる支出(別紙九の一六-二、一六-五、一六-七(ただし、二次会を除く。)、一六-八、一六-九、一六-一一、一六-一二、一六-一三(ただし、二次会を除く。)、一六-一五、一六-一八、一六-二一、一六-二四、一六-二五(ただし、二次会を除く。)、一六-二六(ただし、二次会を除く。)、一六-二八(ただし、二次会を除く。)、一六-二九、一六-三〇、一六-三二及び一六-三五)の各金額の合計額三〇万九六一〇円を差し引いた金額である。

 

  b 福利厚生費 三七四万三一五三円

  c 上記以外の経費 五九二一万一七九〇円

  (ウ) 専従者給与 六一九万二〇〇〇円

  (エ) 青色申告特別控除額 五五万〇〇〇〇円

 イ 所得控除の額の合計額 三七五万六八一〇円

 ウ 課税総所得金額 一〇〇一万八〇〇〇円

 エ 納付すべき税額 △五一二万四四一二円

  (ア) 課税総所得金額に対する税額 一七七万五四〇〇円

  (イ) 定率減税額 二五万〇〇〇〇円

  (ウ) 源泉徴収税額 四七〇万三四一二円

  (エ) 予定納税額 一九四万六四〇〇円

 

(2) 控訴人の平成一七年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額について

 以上を前提として、控訴人の平成一七年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額を算出すると、次のようになる。なお、必要経費の合計額の部分を除き、計算の基礎となる金額及び計算方法については、先に引用した原判決別紙八の一の(2)記載のとおりであるから、特に説明を付さない。

 

 ア 総所得金額 三一九五万二五四三円

  (ア) 事業所得の金額 三一八九万四四四三円

  a 総収入金額 九二〇四万七〇〇六円

  b 必要経費の合計額 五六七二万五〇六三円

  (a) 接待交際費 一五一万四五二九円

 

 上記金額は、次の①の金額から②の金額を差し引いた後の金額である。

  ① 修正申告額 三〇五万一四四六円

  ② 必要経費不算入額 一五三万六九一七円

 

 上記金額は、控訴人の事業所得の金額の計算上、所得税法三七条一項に規定する必要経費に算入できないと認められる接待交際費に係る各支出の合計額であり、本件訴訟において控訴人が必要経費に算入することができると主張する金額一四八万三七七七円(別紙一〇の番号一七-一から同一七-二九までの各金額の合計額)に本件訴訟外で必要経費に算入することができないと認められる三七万五〇〇〇円を加えた金額から前記一の(3)で判示した必要経費に算入できる支出(一七-一、一七-二(ただし、二次会を除く。)、一七-三(ただし、二次会を除く。)、一七-四から一七-六まで、一七-八、一七-一〇から一七-一二まで、一七-一五から一七-一九まで、一七-二一、一七-二三、一七-二四、一七-二五(ただし、二次会を除く。)、一七-二六、一七-二七(ただし、二次会を除く。)、一七-二八)の各金額の合計額三二万一八六〇円を差し引いた金額である。

 

  (b) 福利厚生費 三六四万七八五九円

  (c) 雑費 四〇万六七七六円

 上記金額は、次の①の金額から②の金額を差し引いた後の金額である。

  ① 修正申告額 四六万二七四一円

  ② 必要経費不算入額 五万五九六五円

 

 上記金額は、控訴人の事業所得の金額の計算上、所得税法三七条一項に規定する必要経費に算入できないと認められる雑費に係る各支出の合計額であり、本訴において控訴人が必要経費に算入することができると主張する金額一五万五九六五円(別紙一〇の番号一七-三〇及び一七-三一の合計額)から前記一の(3)で判示した必要経費に算入できる支出(別紙一〇の番号一七-三一)の金額一〇万円を控除した金額である。

 

  (d) 上記以外の経費 五一一五万五八九九円

  c 専従者給与 二七七万七五〇〇円

  d 青色申告特別控除額 六五万〇〇〇〇円

  (イ) 雑所得の金額 五万八一〇〇円

 イ 所得控除の額の合計額 三二一万八八五〇円

 ウ 課税総所得金額 二八七三万三〇〇〇円

 エ 納付すべき税額 三九二万八三〇〇円

  (ア) 課税総所得金額に対する税額 八一四万一二一〇円

  (イ) 定率減税額 二五万〇〇〇〇円

  (ウ) 源泉徴収税額 三九六万二八九〇円

 

 

(3) 本件所得税各更正処分の適法性について

 

ア 本件平成一六年分所得税更正処分の適法性について

 前記(1)によれば、本件平成一六年分所得税更正処分のうち総所得金額一三七七万五七六三円及び納付すべき税額△五一二万四四一二円を超える部分が違法である。

 

イ 本件平成一七年分所得税更正処分の適法性について

 前記(2)によれば、本件平成一七年分所得税更正処分のうち総所得金額三一九五万二五四三円及び納付すべき税額三九二万八三〇〇円を超える部分が違法である。

 

(4) 本件所得税各賦課決定処分の適法性について

 上記(1)及び(2)で認定した納付すべき税額の計算の基礎となっていた事実のうちに、本件所得税各更正処分前における税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があると認められるものはない。

 したがって、控訴人に課せられる過少申告加算税の額は、平成一六年分について、控訴人が新たに納付すべきこととなった税額一七万円(ただし、国税通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)を基礎として、これに同法六五条一項の規定に基づく一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一万七〇〇〇円となり、平成一七年分について、控訴人が新たに納付すべきこととなった税額五八万円を基礎として、これに上記割合を乗じて算出した金額五万八〇〇〇円となる。

 そうすると、本件平成一六年分所得税賦課決定処分のうち過少申告加算税額一万七〇〇〇円を超える部分及び本件平成一七年分所得税賦課決定処分のうち過少申告加算税額五万八〇〇〇円を超える部分がそれぞれ違法である。

 

(5) 控訴人の平成一七年課税期間の消費税等の納付すべき税額について

 以上を前提として、控訴人の平成一七年課税期間の消費税等の納付すべき税額を算出すると、次のようになる。なお、課税仕入れに係る消費税額の部分を除き、計算の基礎となる金額及び計算方法については、先に引用した原判決別紙八の四記載のとおりであるから、特に説明を付さない。

 

ア 消費税

  (ア) 課税標準額 八七六六万三〇〇〇円

  (イ) 消費税額 三五〇万六五二〇円

  (ウ) 控除対象仕入税額 六三万七七六二円

 上記金額は、消費税法三〇条の規定に基づき算出した原告の平成一七年課税期間における課税仕入れに係る消費税額であり、次のaの金額からbの金額を差し引いた後の金額一六七四万一二六七円に同条一項の規定に基づく一〇五分の四の割合を乗じて算出した金額である。

 

  a 課税仕入れに係る支払対価の額(修正申告) 一八二九万四一四九円

  b 課税仕入れに係る支払対価の額の過大額 一五五万二八八二円

 

 上記金額は、上記aの金額のうち、上記(2)のアの(ア)のbの(a)の②及び(c)の②において述べた事業所得の計算上必要経費に算入できないと認められる、接待交際費の金額一五三万六九一七円及び雑費の金額五万五九六五円の合計額一五九万二八八二円から先に引用した原判決別紙八の四の(1)のウの(イ)中の表の三及び四記載の課税取引以外の支出(不課税取引)合計四万円を控除した後の金額であり、消費税法三〇条一項に規定する「課税仕入れに係る支払対価の額」に該当しない金額である。

 

  (エ) 差引税額 二八六万八七〇〇円

  (オ) 中間納付税額 八二万〇六〇〇円

  (カ) 差引納付すべき税額 二〇四万八一〇〇円

 イ 地方消費税

  (ア) 課税標準となる消費税額 二八六万八七〇〇円

  (イ) 譲渡割額(納税額) 七一万七一〇〇円

  (ウ) 中間納付譲渡割額 二〇万五一〇〇円

  (エ) 差引納付すべき譲渡割額 五一万二〇〇〇円

 ウ 消費税等合計額 二五六万〇一〇〇円

 

(6) 本件消費税等更正処分の適法性について

 上記(5)によれば、本件消費税等更正処分のうち納付すべき消費税の額二〇四万八一〇〇円及び納付すべき地方消費税の額五一万二〇〇〇円をそれぞれ超える部分がいずれも違法である。

 

(7) 本件消費税等賦課決定処分の適法性について

 上記(5)で認定した納付すべき税額の計算の基礎となっていた事実のうちに、本件消費税等更正処分前における税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法六五条四項に規定する正当な理由があると認められるものはない。

 

 したがって、控訴人に課される過少申告加算税の額は、控訴人が新たに納付すべきこととなった税額七万円(ただし、国税通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後のもの)を基礎として、これに同法六五条一項の規定に基づく一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額七〇〇〇円となる。

 そうすると、本件消費税等賦課決定処分のうち過少申告加算税額七〇〇〇円を超える部分が違法である。

 

四 以上によれば、控訴人の請求は、本件平成一六年分所得税更正処分のうち、総所得金額一三七七万五七六三円及び納付すべき税額マイナス五一二万四四一二円をそれぞれ超える部分、本件平成一六年分所得税賦課決定処分のうち、過少申告加算税額一万七〇〇〇円を超える部分、本件平成一七年分所得税更正処分のうち、総所得金額三一九五万二五四三円及び納付すべき税額三九二万八三〇〇円をそれぞれ超える部分、本件平成一七年分所得税賦課決定処分のうち、過少申告加算税額五万八〇〇〇円を超える部分、本件消費税等更正処分のうち、納付すべき消費税の額二〇四万八一〇〇円及び納付すべき地方消費税の額五一万二〇〇〇円をそれぞれ超える部分並びに本件消費税等賦課決定処分のうち、過少申告加算税額七〇〇〇円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるから一部認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。

 

 よって、控訴人の控訴は一部理由があるから、以上と結論を異にする原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。

 

(裁判長裁判官 春日通良 裁判官 太田武聖 一場康宏)

 

 別紙 代理人等目録

 一 控訴人訴訟代理人弁護士

  関戸  勉 水野 武夫 三木 義一

  山下清兵衛 青木 康國 山本洋一郎

  鳴戸 大二 松本 素彦 藤田 耕司

  山川  均 高垣  勲 松坂 英明

  小寺 一矢 若旅 一夫 松本 修二

  田中  宏 西嶋 吉光 松本 光寿

  田邉 宣克 細田 初男 金子 武嗣

  道上  明 犬飼 健郎 渡辺 英一

  木村 清志 村越  進 庭山正一郎

  田中 敏夫 山田 庸男 杉崎  茂

  高階 貞男 二國 則昭 山原 和生

  吉成 昌之 清水 規廣 田中 清隆

  市川 茂樹 村上 文男 角山  正

  藤井 克巳 内田  武 岩井 重一

  久保田嘉信 畑  守人 出口 治男

  柳瀬 康治 有田 佳秀 星  徳行

  益田 哲生 藤本  明 中村 周而

  細井 土夫 吉田 良尚 青山  学

 二 控訴人補佐人税理士

  長谷川 博 稲葉 恭治 益子 良一

  横濱 英紀 植松 省自 田添 正寿

  池袋 一弘 金子 秀夫 瀧浪 貫治

  池田 忠博 清水 一男

 三 被控訴人指定代理人  南部 崇徳 〈ほか四名〉