建築確認の許否は建物建築請負契約の要素か

 

 

 

 最高裁判所第1小法廷判決/昭和31年(オ)第395号、判決 昭和34年5月14日、 最高裁判所民事判例集13巻5号584頁について検討します。

 

 

 

 

【判決要旨】 注文者の指定場所に建物を建築すべき請負契約において、注文者が建築確認を受け得るかどうかは、右事情が当事者間で特に契約の内容とされないかぎり、契約の要素と解すべきではない。 

 

 

 

 

 

 

 

主   文

 

 

  本件上告を棄却する。

  上告費用は上告人の負担とする。

 

        

 

 

理   由

 

 

 

 

  

 上告代理人柿村秀治の上告理由第一乃至第四点について。

  

 しかし所論の確認を受けずに建築をした場合、建築主が建築基準法による制裁を受けることがあるのは格別、右建物を目的とする請負契約が当然に無効と解すべき理由はないから、原判決に建築基準法六条一項を無視した違法がある旨の論旨は採用するに由なく、

  

 また所論建築請負契約において右確認を受け得るかどうかは、単に契約の動機にとどまるものというべく、本件契約にあたり、上告人と被上告人との間において、右建築確認を受け得ることを特に契約の内容とした趣旨は、原審の引用にかかる一審判決の判文上窺い得ないから、所論要素の錯誤の主張を認容しなかつた原審の措置は結局正当に帰し、

 

 さらに原審の認定した事実関係の下において所論自殺的損害の主張を排斥した原判示も相当として是認できる。

  

 

 その余の論旨は、違憲をいう点もあるが、実質は原審で主張のなかつた事実(本件地上に建物を建築することは原始的に不能であつた。もしくは不可抗力によつて建築場所を指定し得なかつた等)を前提として原判決を非難するか、原審の裁量権に基いてした所論合意解除の事実は認め得ないとの判断を攻撃するに帰し採るを得ない。

  

 

 同第五点について。

  

 

 しかし原判決は、上告人が当初の建築場所を変更する旨の申入に基ずく新たな建築場所を指定しないため、被上告人より上告人に対してなした右指定の催告並びに契約解除を理由として上告人に対し、右解除時までに被上告人において建築準備のためにした素材の切込作業による損害の賠償を命じたものであることは判文上明らかであり、所論、上告人の責に帰すべからざる履行不能による契約解除の意思表示は無効であるとか、上告人に債務不履行について過失がないとか、他に代替地を求めることは事実上不可能であるとかの主張は、いずれも原審において主張がなく、従つて原審の認定しない事実に基ずいて原判決を非難するものでしかなく、その他自殺的損害、要素の錯誤をいう所論は第一点乃至第四点における同趣旨の論旨の繰返しに過ぎないから、いずれも採るを得ない。

  

 

 同第六点について。

  

 しかし上告人の指定した場所に建物を建築する旨の請負契約において、上告人より建築場所変更の申入があり、新たな建築場所が遂に求め得なかつたからといつて、右請負契約が自然消滅もしくは不成立になるいわれはない。所論は原判示に副わない事実もしくは独自の見解に立つて原判決に所論の違法あるが如くに主張するものであるから採るを得ない(違憲の主張はその前提を欠くものである)。

  

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

      

 

最高裁判所第一小法廷

 

          裁判長裁判官    高   木   常   七

             裁判官    斎   藤   悠   輔

             裁判官    入   江   俊   郎

             裁判官    下 飯 坂   潤   夫