家事関連費、青色事業専従者(1)

 

 

 

 

 

 千葉地方裁判所判決、判決 平成22年2月26日、 税務訴訟資料260号順号11389について検討します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主   文

 

  1 原告の請求をいずれも棄却する。

  2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

        

 

 

事実及び理由

 

 

 

第1 請求

  

1 麻布税務署長が、いずれも平成18年3月6日付けでした原告の平成14年分及び平成15年分の所得税についての更正処分のうち、平成14年分については、納付すべき税額274万円を超える部分、平成15年分については、納付すべき税額△85万0100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

  

2 麻布税務署長が、原告の平成16年分の所得税につき平成18年8月2日付けでした減額更正処分及び変更決定処分後における、原告の平成16年分の所得税についての平成18年3月6日付けでした更正処分のうち、納付すべき税額246万7300円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

 

 

 

 

第2 事案の概要

   

 本件は、原告が、平成14年ないし平成16年の所得税の確定申告につき、平成18年3月6日付けで、処分行政庁(ただし、同日付け更正処分は、原告の事業所を所轄する麻布税務署長が行ったものである。)からそれぞれ更正処分を受けたが、同処分は、原告の妻を青色事業専従者と認めない点及び原告の車両2台を事業用に使用する車両と認めない点が違法であると主張して、同処分のうち申告額との差額部分(平成16年分の更正処分については、上記更正処分が平成18年8月2日付けで減額更正された後のものと申告額の差額部分。以下「本件各更正処分」という。)及び同処分に係る各過少申告加算税賦課決定処分(平成16年分の過少申告加算税賦課決定処分については平成18年8月2日付け変更決定処分で減額された後のもの。以下「本件各賦課決定処分」という。)の取消しを求めている事案である。

  

 

1 関係法令等

 

 

   

(1) 青色事業専従者に関連する規定

     

 所得税法(以下、「法」という。)56条は、居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む事業所得について、これを生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る事業所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る事業所得の金額の計算上、必要経費に算入し、この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす旨を規定している。

     

 法57条1項は、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む事業所得について、これを生ずべき事業に従事したことその他の事由において給与の支払を受けた場合には、同法56条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る事業所得の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする旨を規定している。

     

 所得税法施行令(以下「施行令」という。)165条1項は、法57条1項に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営む同項に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうかによるとし、但し、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその2分の1に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りる場合があるとし、その事由として、①当該事業が年の中途における開業、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかったこと、②当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかったこととする旨を規定している。

     

 施行令165条2項は、同条1項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとし、その者として、①学校教育法で定められている学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校)、専修学校又は各種学校の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、専修学校又は各種学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)、②他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)、③老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者とする旨を規定している。

   

 

 

 

(2) 家事関連費に関する規定

     

 法37条1項は、その年分の事業所得等の金額の計算上必要経費に算入すべき金額を別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額金額を得るために直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨を規定している。そして、法37条1項の「別段の定め」として、法45条は、居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入しないとし、その事項の1つとして、「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」を規定している。

     

 施行令96条は、法45条1項1号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とするとし、①家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費、②前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費とする旨を規定している。

  

 

 

 

 

 

2 前提事実(末尾に証拠等の記載のない事実は、当事者間に争いがないか、明らかに争わない事実である)。

   

(1) 当事者等

     

 原告は弁護士であり、「A法律事務所」と称する法律事務所を東京都港区に所在するBビル3階に置き(以下、「本件事務所」という。)、本件各係争年分において、本件事務所の所在地を納税地としていた(乙1ないし乙3)。

     

 平成14年度ないし平成16年度における原告の住居は、千葉県柏市であり、配偶者である乙(以下「乙」という。)と同居して生計を同一にしていた(以下、原告の自宅を「本件自宅」という。弁論の全趣旨)。

   

 

(2) 本件更正処分等の経緯について

   

 ア 原告は、所得税の申告を青色の申告書により提出することができるという税務署長の承認を受けていたので、本件各係争年分の所得税について、いずれも法定申告期限内に青色の申告書を提出し、確定申告をした。

      

 原告は、①本件各係争年について、乙は青色事業専従者に当たるとして、専従者給与の額492万円を必要経費とし、②平成14年1月から平成16年12月までは、CとDを、平成16年12月からは、C、D及びEを事業用に使用しているとして(以下、D及びEを併せて「本件各車両」という。)、本件各係争年において本件各車両の減価償却費を、平成16年分の所得税の確定申告においては、Dに係る自動車税、本件各車両に係る損害保険料の額を、事業専用割合を100%として、必要経費として算出した。平成14年1月から平成16年12月の間、上記Cの減価償却費についても事業専用割合を100%として、必要経費として、申告をした。 (甲1の3、乙5の1ないし6)

    

イ 原告は、麻布税務署の調査担当者から、乙は原告の事業所得を生ずべき事業に専ら従事したものとは認められないこと、また、原告の建物の貸付けは不動産所得を生ずべき事業として行われているとはいえないことから、青色事業専従者給与の額は原告の事業所得及び不動産所得の金額の計算上必要経費に算入できないと指摘されたことを受け(乙7)、平成18年2月28日の本件各係争年分の所得税の修正申告において、いずれの年分も、事業所得に係る青色事業専従者給与の額を、当初の492万円から72万円減額した420万円に、不動産所得に係る青色事業者専従者給与の額を零円とした(弁論の全趣旨)。原告は、麻布税務署の調査担当者から、Cを除く本件各車両は事業の遂行上必要とは認められないから、その減価償却費等の額は原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できないと指摘されたことを受け(乙7)、平成18年2月28日の本件各係争年分の所得税の修正申告において、いずれの年分も、本件各車両の事業専用割合を50パーセントとして減価償却費を算出した。 (乙1ないし3、乙6の1ないし6)

    

ウ 処分行政庁は、原告に対し、平成18年3月6日付けで、別紙1別表1-1ないし1-3のとおり更正決定及び過少申告加算税賦課決定処分をした(甲1の1ないし3)。処分行政庁は、①平成14年度分ないし平成16年分について、乙は青色事業者に該当しないから、青色事業専従者給与額420万円は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入されないとし、②平成14年度分の車両(D)の減価償却費9万6320円、平成15年度分の車両(D)の減価償却費6万5594円、平成16年度分の車両(D)の減価償却費4万4669円、車両(E)の減価償却費3万4332円、車両(D)の自動車税5万1000円、車両(D)の損害保険料7万4230円、車両(E)の損害保険料6万4000円は家事上の経費であり必要経費には該当しないとした。

      

 処分行政庁は、平成18年8月2日付けで、平成16年分の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分については、減額更正決定及び変更決定処分をした。

    

エ 原告は、平成18年3月15日に柏税務署長に納税地変更の届出書を提出し、納税地を事業所から住所地に変更したので、これに伴い、処分庁は麻布税務署長から柏税務署長となった。

    

オ 原告は、平成18年5月2日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、平成19年6月22日、棄却の裁決がされた(甲2)

    

カ 原告は、平成19年12月25日に、本件各処分の取消訴訟を提起した。

  

 

 

3 被告が主張する原告の総所得税額及び納付すべき税額等(以下「被告主張額」という。)

    別紙2 (本件各更正処分等の根拠及び適法性について)のとおりである。

 

 

 

 

4 争点

   (1) 原告の妻が青色事業専従者に当たるか。

   (2) 本件各車両が事業の遂行上必要といえるか。

  

 

 

5 争点に関する当事者の主張

   

(1) 争点(1)原告の妻が青色事業専従者に当たるか。

    

 

(被告の主張)

    

ア 親族が「専ら居住者の営む事業に従事」しているかどうかについては、施行令165条1項が「当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうかによる」と規定しているが、同項の「専ら従事する」の意味を具体的に規定する特段の規定はないため、「専ら従事する」かどうかは、法57条1項及び施行令165条の規定の趣旨に照らし、かつ、当該居住者の営む事業の業種や業態、当該親族の具体的な労務内容やその事務量等を総合的に勘案した上、社会通念に照らして判断するのが相当と解すべきである。

    

イ 原告は法律事務所で事務員2名を雇って重要な事務を担当させていて、原告の妻が担当したとの客観的な証拠はないし、家事育児等の負担もあったから「専ら…事業に従事するもの」とはいえない。

      

 その理由としては、①原告が本件自宅以外の場所で営業していた本件事務所において、丁弁護士のみならず、常時2名の事務員を雇っていたこと、②特に、原告の弁護士業務において重要な事務を戊事務員が担当しており、原告の事業所得の金額の計算の基礎となる総勘定元帳も戊事務員が作成したものであり、税務申告書類の作成は原告の税務代理人税理土に委任したものであること、③乙が本件事務所で原告の営む弁護士業務に従事した形跡はないこと、④乙が原告の弁護士業務に従事していたと客観的に認められるのは、原告の自宅集計分経費の集計及びこれに伴う領収書の用紙への貼付のみであり、その事務量は極めて僅少なものに過ぎず、その他、原告が主張する事業に乙が従事していた事実を認めるに足る客観的な証拠が全く提出されていないこと、⑤原告と乙の間には、扶養親族である4人の子供がおり、原告は、自己の弁護士業務が繁忙である旨主張していることに鑑み、上記4人の子供に係る家事は専ら乙が担当せざるを得ない状況にあったと認められ、さらに、乙は、このほかにも主婦として家事一切を担当していたものと認められることからすると、乙が専ら原告の営む弁護士業に従事していたとは認めがたい。加えて、乙が「専ら」原告の営む弁護士業に従事する者であるとすれば、本件事務所をその主たる勤務場所として原告の弁護士業務に従事していることが社会通念上、通常である。

      

 なお、仮に、乙が調査担当者に主張したように、来客者の対応、郵便物の投函、原告の書類作成の補助等の労務を行っていたとしても、それらの業務はいずれも本件自宅で行われたものであり、当該業務はいずれも社会通念上原告の営む事業を原告の配偶者あるいは家族として補助したにすぎないものであって、これをもって、乙が専ら原告の営む事業に従事する状況にあったとみることはできない。

      

 以上のとおりであり、乙は青色事業専従者に該当しないから、青色事業専従者給与の額を原告の本件各係争年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。原告は、原告が本件自宅で長時間執務しており、それに伴い乙も原告の側で業務を手伝っていたと主張する。

      

 しかし、原告が本件自宅で長時間執務していたとは認められないし、乙が専ら原告の営む事業に従事していたとは認められない。

    

 

 

 

 

(原告の主張)

    

ア 法57条1項所定の青色事業専従者であるか否かについては、法令が規定する要件に形式的に合致するか否かによって判断されるべきであり、税務当局が更正等を行えるのは、「青色事業専従者と評価できるや否や」との観点からではなく、「その給与が適正であるや否や」の観点からなのである。にもかかわらず、処分行政庁は、実質的な判断を行い、乙の従事が単なる手伝い程度であり、社会通念上原告の営む事業を原告の配偶者あるいは家族として補助したにすぎないとして、青色事業専従者に当たらないとしたのであるから、違法である。また、仮に実質的な判断が可能であるとしても、租税法律主義の観点から、青色事業専従者として認められるための判断基準を明らかにした上で、本件がその基準に該当しないことを主張、立証すべきところ、それがされていないから、本件更正処分は取り消されるべきである。

    

イ 被告は、乙が原告の事業に従事していない根拠として、上記①ないし⑤の点を挙げるが、これに対する原告の反論はつぎのとおりである。①については、原告の事務所には常時、原告及び丁弁護士の他常時2名から3名の弁護士が執務していたが、それを補助する事務員は2名にすぎないことからすると、原告が本件自宅で多くの事務を処理し、その補助を乙が行っていたのであり、同事務員が原告の事業における重要な事務を処理していたとはいえない。②については、弁護士業における経理作業の比重は低い上に、戊事務員は本件事務所の売上や経費を集計するのみで、総勘定元帳はK公認会計士の事務所に委託して作成していたにすぎない。③については、乙は、土曜日及び日曜日に事務所にきて、同事務所の作業環境整備などをしており、同事務所内をみればそれが明らかである。④については、乙は、原告の補助業務をしていたが、形に残らないものであり、証明が難しいが、本件自宅の備品等から、乙が補助をしていたのは明らかである。⑤については、原告と乙の間には子供が4人いたが、長男及び次男は大学生、三男は浪人中、四男は中学生とすでに手がかからない年頃であるから、このことによって、乙が弁護士業務の補助作業をすることができなかったとはいえない。

      

 以上のとおり、被告の掲記する上記①ないし⑤の事由は薄弱であり、乙が原告の事業に専ら従事していなかった根拠とはなり得ない。

   

 

 

 

(2) 本件各車両が事業の遂行上必要といえるか。

     

(被告の主張)

     

 原告が本件各車両を原告の営む弁護士業に専用の車両として使用していたと認めるに足る客観的証拠はなく、本件各車両がいずれも普通乗用自動車であり、その経常的な駐車場所が本件事務所ではなく本件自宅であること、事業用車両に係るガソリン代が自宅集計分経費として本件自宅において管理されていたという事情があること、さらに、原告及び家族の自動車運転免許証の所持状況、本件自宅が所在する地域における交通・商業施設等の状況等を総合考慮すれば、本件各車両が原告の営む弁護士業に専用に使用されていた車両であるとは認められないから、本件各車両に係る減価償却費等は家事関連費に該当するといえる。そして、家事関連費については事業の遂行上必要であることが明らかにできる一定部分に限って必要経費への算入が認められるところ、原告の帳簿書類及び原始記録によっては、本件各車両の減価償却費等の額が、弁護士業務の遂行に必要であると判断することはできず、またその業務に必要な部分の金額を明らかに区分することもできないから、本件各車両の減価償却費等の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

     

 原告は、仕事をするのに乗用車を使用した方が便利であると一般的に認められさえすれば、必要経費として認められるべきであると主張するが、家事関連費が事業所得等の金額の計算上必要経費と認められるためには、当該費用が事業と何らかの関連があるというだけでは足りず、それが事業の遂行上必要なものであり、かつ、その必要な部分の金額が客観的に明らかでなければならない。

     

 また、原告は、本件各車両の減価償却費の計算において、事業専用割合を50パーセントであると計算しているが、その割合について、具体的な根拠を示していない。

     

 

 

 

(原告の主張)

     

①被告の主張は、一般に弁護士業の遂行上車両が必要不可欠な資産とはいえないから、その関係経費を事業所得の計算上必要経費に算入するためには、当該車両が明らかに事業専用であると認められるような特段の事情が必要であるか、そうでないとすれば「当該車両の利用状況の具体的内容等から、その主たる部分が業務の遂行上必要なものであり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合」であるか、「当該関係経費のうち、取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる」ことが必要であるというものであるが、このような考え方は、これまでの税務慣行及び税務実務から離れたものであること(通常は、ある仕事をするのに乗用車を使用した方が便利であると一般的に認められさえすれば、減価償却費等の金額を必要経費に算入することを認めているのが、現在の税務慣行ないし税務実務である。)、②原告は、F駅から、本件事務所や裁判所に行くことが多く、そのような場合、本件各車両でF駅前の駐車場と本件自宅を往復しているのである。原告は、他にも車両を有しているが、他の車両は、青空駐車場に止めるのに適さない車であるから、F駅前に駐車している車は、本件各車両である。

     

 したがって、本件各車両は、上記のような使用方法のために所有しているのであるから、その関係経費は、家事費には該当せず、仮に一部が家事費に当たるとしても施行令96条所定の「家事関連費」に該当し、必要経費に算入することができるものである。また、原告は、本件各係争年分の全ての期間について、本件各車両の減価償却費等50%を必要経費として算入しているが、これは実態としてほぼ100%である必要経費部分について、保守的に50%として確定申告しているにすぎない。

 

 

 

第3 当裁判所の判断

  

 

1 争点(1)(原告の妻が青色事業専従者に当たるか。)について

  

(1) 当裁判所は、被告主張のとおり、法57条1項所定の当該居住者から同条2項所定の青色事業専従者給与に関する届出書が提出されていたとしても、同届出書に記載されている当該青色事業専従者が専ら当該居住者の営む事業に従事する実態があると認められなければ、同条1項の適用はなく、またその実態があるといえるかどうかの基準については、一義的・画一的基準を設けることは出来ず、当該事案において、当該居住者の営む事業の事業形態、当該親族が従事している具体的労務内容やその事務量等を総合勘案し、社会通念に従って判断するほかはないものと考える。その理由は次のとおりである。

     

 前掲関連法令等(第2の1)によれば、法57条1項は、青色事業専従者控除が認められるための要件として、当該親族が専ら居住者の営む事業に従事していることを定めており、施行令165条1項は、解釈規定としてその判定のための要件を規定してはいるものの、「専ら従事する」の意味を具体的に規定する定めは置かれていない。しかしながら、法56条の趣旨は、事業を営む居住者と密接な関係にある者がその事業に関して対価の支払をうける場合に、これを居住者の事業所得等の金額の計算上必要経費にそのまま算入することを認めると、納税者間における税負担の不均衡をもたらすおそれがあるなどのため、必要経費への算入を認めないとしたものと解せられるところ、それをそのまま貫いたのでは個人営業のままの者と会社組織に改めた者との間での税負担が不均衡になるおそれがあることから、徴税政策上の観点(青色申告の普及、記帳の奨励)をも併せて考慮し、法57条1項は、制限的に必要経費算入を認めたものと解される。

     

 そうすると同項が定める当該親族が専ら居住者の営む事業に従事しているとの要件は緩和的に解釈されるべきではなく、その文言どおり、その実態があると認められる場合に限って同項が適用されるべきであると解される。もっとも、租税法律主義の観点からは、「専ら従事する」場合とはいかなる場合であるかを一義的、画一的に規定することが可能であれば、その方が望ましいということはできるものの、その文言は事案に応じて判断されるのを相当とする規範的概念として立法化せざるを得ない制約があるのもやむを得ないところである。しかして、上記法56条、57条1項の趣旨に加えて、法57条1項が定める青色事業専従者の給与の相当額として認める範囲の基礎事情として掲げている諸事情や、施行令165条1項及び2項の文言に照らせば、当該親族が当該居住者の事業に専ら従事する期間を含め、当該居住者(事業者)の営む事業の業種・業態、当該親族が従事している具体的労務内容やその事務量等を勘案し、社会通念に従って「専ら従事する」ものといえるかどうかを判断するよりほかはないというべきである。

     

以上の理由によれば、冒頭記載のとおり、解するのが相当である。

     

そこで、かかる観点にたって本件を検討する。

   

(2) 前記前提事実、弁論の全趣旨及び後掲の各証拠によれば、以下の事実が認められる。

    

ア 原告の事業の状況

     

(ア) 原告は、昭和57年に弁護士登録を行い、昭和59年に独立開業後、平成13年に丙弁護士(以下「丙弁護士」という。)とともに本件事務所を開設し、平成14年に、同事務所を現在の所在地に移転した。同事務所の営業時間は、午前9時30分から午後5時30分まで、休日は、土曜日、日曜日及び祝日となっていた。

       

 本件各係争年分において、本件事務所には、原告及び丙弁護士以外の他に2名から3名の弁護士が勤務しており、そのうち、丁弁護士(以下、「丁弁護士」という。)は、原告と雇用契約を結び、原告が丁弁護士に給与を支給していたが、他の弁護士らは、本件事務所の一部を間借りしていただけで、原告と業務上の雇用関係等はなかった。

       

 また、原告は、本件各係争年分を通じ、本件事務所において常時2名程度の事務員を雇用し、顧客からの電話受付、来客への応対のほか、同事務所における請求書・領収書の作成、小口現金の管理、事務所外への書類の使送等、本件事務所内の雑務全般に従事させていた。

       

 上記2名程度の事務員のうち、戊事務員は、本件各係争年分の全期間を通じて雇用されている。

       

 原告の弁護士業務の主要なものは、専門的な知識と経験が必要である経営コンサルタント、事業再生及び企業関係の訴訟等の代理であった。 (以上、乙8、弁論の全趣旨)

     

(イ) また、原告は、本件事務所において事業をするだけでなく、本件自宅で業務を行うこともあった。その実態は次のとおりである。

      

Ⅰ 原告は本件自宅の一部分を原告の弁護士業務に係る減価償却資産として計上し、その業務に関係する書類の一部を本件自宅に持ち帰って保管し、又は、その業務の用に供する事務用品、事務機器を本件自宅に設置していた(甲4、乙10、弁論の全趣旨)。

      

Ⅱ 原告は、土曜日及び日曜日は本件自宅で1日執務をしていることもあったが、その他の曜日である平日は、出張に行く前などに本件自宅で執務をしていたにすぎなく、本件自宅で丸1日執務をしていることはなかった(証人乙)。

      

Ⅲ 原告の本件自宅は、L自動車道のインターチェンジの近くにあり、遠方の顧客や自動車を利用する顧客とは、本件事務所よりも本件自宅で打合せをする方が便利な場合があり、本件自宅で法律相談等の業務も行っており、その際、乙がお茶出し等の対応していた(証人乙、原告、甲25、甲26、弁論の全趣旨)。

      

Ⅳ 本件自宅で原告が弁護士業務の関係で文書を作成する場合、自身でワープロを使用して作成しており、印刷等も自ら行っていた(原告)。

        

 なお、原告は、本件自宅において多くの仕事を行っており、乙がその補充業務をおこなっていた旨主張し、本件自宅での業務量を裏付ける証拠として、「行動状況表」(甲3)、手帳の写し(甲6)を提出する。

        

 確かに、上記行動状況表(これによると、原告が弁護士業務をするうち、本件自宅での執務が約3割から4割程度であるという。)や、上記認定の本件自宅での業務からすると、平成16年において、原告が、本件自宅で執務をしていたことが認められる。

        

 しかし、行動状況表と手帳の写しを比べると、同じ日時について、異なる記載がされている箇所があり、行動状況表の正確性が担保されているとはいえないのであり、原告の主張する行動状況のとおり、原告が弁護士業務を行っていたとまでは認めることができない上に、これに記載されているのは平成16年分のみであり、他の係争年度においても、同様の執務状況であったとまでは認められない。

        

 これらの事情や原告の弁護士業務の主要なものが、前記((2)のア)認定のとおり、一般弁護士の場合と異なり、企業関係等の業務であること、原告は平日、原則として本件事務所で勤務していたこと、原告は都心の一等地に本件事務所を構え、複数の弁護士や事務員とともに稼働していたこと等の事情からすると、本件自宅で執務をしていたことがあるものの、それが本件各係争年分において全体の弁護士業務の3割から4割にまで達する程度のものであったとは認められず、その実態は付随的なものにすぎなかったと認めるのが相当であり、本件事務所での業務が大部分を占めていたと推認せざるを得ない。

    

イ 乙の稼働状況

      

 乙は、本件各係争年分において、本件事務所には勤務しておらず、原告と4人の子供を扶養し、家庭での主婦業を行っていたものである(弁論の全趣旨)。

      

 そして、原告の事業に関係する乙の仕事内容は、次のとおりである。

     

(ア) 本件事務所の作業環境整備

       

 乙は、本件係争年分の平成14年から同16年までの間はさほど本件事務所に行かなかったものの、週末に本件事務所に行くことがあり、そこで作業環境整備を行ったことがある。その作業環境整備の内容は大型ゴミの廃棄、鉢植えや絵画の交換等であり、その作業を行うのに長時間は必要ではなかった(原告、証人乙、弁論の全趣旨)。

     

(イ) 本件自宅における原告の業務の補助

      

Ⅰ 乙は、本件事務所の経費以外の個人経費(本件自宅の事業用部分の租税公課、借入金利子、水道光熱費、事務用消耗品費、通信費、接待交際費、会議費、ガソリン代、書籍代及び修繕費(ただし、旅費交通費を除く。))について、本件自宅において、集計し、用紙に貼付してた(乙8、乙10、弁論の全趣旨)。

      

Ⅱ 乙は、原告が作成した文書を印字したり、原告から指示された目録等の粗打ちや文書や資料の整理、インターネットによる検索等をしていた(証人乙、原告、甲4、甲25、甲26)。

      

Ⅲ 乙は、日々の原告のスケジュールを把握しておらず、生活等に支障が生じないための範囲でスケージュールを把握していたのみであった(証人乙)。

     

(ウ) 裁判所への同行

       

 乙は、原告に同行して裁判所等に行き、最寄り駅まで原告を送迎したりしたことがある(甲25、弁論の全趣旨。もっとも、その頻度についての主張立証はなく、原告の裁判所等への送迎がそれほど多かったとは認められない。)。

     

(エ) 以上の(ア)ないし(ウ)の事実からすると、乙は本件事務所の作業環境整備や裁判所等への送迎等をおこなっていたものの、その業務の回数を認めるに足りる的確な証拠はなく(乙は本件事務所を訪れた回数について証言するものの、曖昧な内容にとどまっている。)、むしろ、その業務量は少ないものと推認せざるを得ない。

   

(3) 以上の認定の(2)の事実に前記第2の2の前提事実を加え、前記(1)の判断基準に則して本件を検討すると、次のとおりである。

     

 原告は、法律の専門職としての経験を相当程度有する弁護士であり、都心の一等地に本件事務所を構え、複数の弁護士や事務員とともに同事務所で平日稼働している。そのため、平日は千葉県柏市の自宅から通勤し、土曜日、日曜日及び祝日は本件自宅で過ごすことを通常とする生活を送っている。他方、原告の妻である乙は、本件自宅でいわゆる専業主婦の生活を送るのを常としている。

     

 本件で問題となるのは、①本件係争年分において、乙が週末に本件事務所に行き同事務所の作業環境整備を行うことや、②本件自宅において本件事務所の経費以外の個人経費の集計等の経理事務を行ったり、原告の自宅業務の補助を行ったりすることが、専ら原告の弁護士業務に従事するものといえるかどうかである。

     

 前記認定事実によれば、乙は、日常の生活を基本的には専業主婦として過ごしており、①の点についても、本件事務所の作業環境整備の内容や頻度等に照らせば、さほど時間を要するものでなかったことは明らかであり、また、そのような環境整備をしていたとしても、その必要を生じた際にたまにこれを乙が行うというようなものに過ぎなかったことが推認されることから、そのような仕事を乙が行っていたとしても、これをもって原告の弁護士業務に従事していると評価できるものではなく、本件事務所を経営する原告の妻として個人的に行っていたものにすぎないというべきである。

     

 次に②の点についてみるに、まず、本件自宅における経理の仕事については、一般の経理の職員が行うような内容の業務ではなく、原告の指示を受けて、家計簿を作成するが如く家計の管理業務を行う一貫として行っていたものにすぎない実態であったと推認するのが相当である。さらに、原告の自宅業務の補助については比較的多岐にわたるが、総じてその業務量はさほど多くはなかったものと推認される。

 

 その理由は次のとおりである。すなわち、原告が本件自宅で業務を行っていたものは、本件事務所で行われていた、原告の主要業務に付随する業務にすぎなかったこと、原告が自宅業務において文書を作成する場合、原告自身がワープロを使用して作成しており、印刷等も行っていたことなどからすると、この点の乙の補助はそれほど多かったとはいえず、乙は原告が業務をしている時間は本件自宅にいたとしても、事務員等が事務所等で待機するのとは異なり、このことのみで、業務を補助しているとはいえない。加えて、乙が原告のスケジュール等を把握していたのは生活に支障が生じないようにするためであったことからも、乙は原告の業務を補助することを日々の仕事としていたわけではないといえるし、その携わる時間も家事などの合間をみつけて行っていた程度のそれほど長い時間であったとは認められない。

 

 さらに、原告の業務の内容が、専門的な知識と経験が必要である経営コンサルタント、事業再生及び企業の訴訟等であったことからすると、原告が、本件各係争年度に本件自宅で行っていた訴訟の書面の作成等の業務は、他の者が代替して行うことは困難であり、原告自身が相当の労力及び時間を費やす必要があることが通常であると考えられるから、その反面その余の文書の整理等に相当な時間がかかるとは考えがたい。また、本件自宅で原告と顧客が打合せをしたり、原告が顧客から法律相談を受ける際に、乙がお茶出し等をするのも、原告の妻としての社会通念に従った儀礼的行為にすぎないというべきであるが、さらに、乙が裁判所等へ同行したり、原告を送迎するのも、弁護士の妻としての立場で行う範囲内のものにすぎず、これを特別の業務として評価することもできない。そうすると、原告が本件自宅で多くの仕事を行っており、乙がその補充業務を相当程度行っていたと認めるには足りないというべきである。

     

 以上によれば、原告の営む事業の業種・業態、原告の妻である乙が従事している具体的業務内容やその業務量等に照らし、乙が原告の弁護士業務の一部を補助していた事実は認められるもののその程度は原告が行う同業務全体との比較からすれば少ない程度にとどまるものであり、乙は、むしろ、専業主婦として家事等に主に従事していたとみるのが相当である。

     

 そうすると、乙は原告の営む事業に専ら従事していたとは認められないから、同人は青色事業専従者であるとはいえず、同人に対する給与を必要経費として認めなかった処分行政庁の判断に違法はない。

  

 

 

 

2 争点(2)(本件各車両が事業の遂行上必要といえるか。)について

  

(1) 一般に、個人は、専ら利潤追求のための事業活動を目的として消費生活をもたない法人とは異なり、生産活動(所得稼得行為)の主体であると同時に消費経済の主体であり、その支出は所得稼得に関連した「必要経費」の性質をもつものがある一方で消費支出(「家事費」の支出)の性格を有するものもあるため、法においては個人の所得の計算について「収入金額」から「必要経費」を控除する一方で、「家事費」「家事関連費」は「必要経費」に算入していないものと解される。そして、「家事費」については、所得の処分と考えられることから必要経費に算入される例外は定められていないが、「家事関連費」については、必要経費の要素も混在するといえるから、施行令96条において必要経費として算入することができる場合について定められており、家事関連費が業務の遂行上必要であることが明らかにできる一定部分に限ってこれを必要経費にすることができるとされている(施行令96条1号)。このような法令の趣旨に照らせば、家事関連費に当たる場合、単に当該費用が事業と何らかの関連があるというだけでは足りず、それが業務の遂行上必要であることが要件となると解される。

     

 これを本件についてみるに、本件各車両が原告が営む事業のため専用的に使用されているものといえず、本件各車両に係る関係経費が所得の処分としての性格も有する場合、家事上の関連費であるといえるから、その費用支出が業務の遂行上必要であるかどうか、あるとしてその必要性を明らかにできる一定部分を区分できるかどうかを検討することになる。

     

 これに対し、原告は、通常、ある仕事をするのに乗用車を使用した方が便利であると一般的に認められさえすれば、減価償却費等の全額を必要経費へ算入することを認めているのが現在の税務慣行ないしは税務実務であるとして、上記解釈は社会の一般常識から大きく隔たっている旨主張する。

     

 しかしながら、このような原告の主張は、明らかに法の趣旨に反するものであって、合理的根拠があるとはいえない。

     

 現に、課税実務上も、施行令96条1号(家事関連費)に規定する「経費の主たる部分」又は同条2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定するものとして取り扱われており(所得税基礎通達45-1)、また、同条1号の「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定し、当該必要な部分が50%以下であっても、その必要である部分を明らかにすることが出来る場合には、当該必要な部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えないものとして取り扱われている(同通達45-2)。

     

 そうすると、原告の上記主張は理由がなく採用することはできない。

     

 そこで、このような観点に立って、本件について次に検討する。

   

 

(2) 前記前提事実、弁論の全趣旨及び後掲の各証拠によれば、以下の事実が認められる。

    

ア 原告は、本件各係争年分において、本件各車両及びCのほか、常時2台の車両を所有していた(原告は、本件各係争年において、Cを事業用車両としていた。また、原告は、同各係争年において、その他に、Gを所有し、平成14年から同15年まではHを所有し、同16年はIを所有していた。)(弁論の全趣旨)。

    

イ 本件各係争年分において、原告は、本件自宅において、乙及び長男を除く子と居住し、原告の家族で自動車運転免許証の交付を受けていたのは、原告、乙、長男及び次男であり、平成15年12月に三男が自動車免許証の交付を受けた(乙1ないし乙3、乙10、原告、弁論の全趣旨)

    

ウ 原告は、駐車場代として年間12万円を支払っており(乙5の1ないし乙6の3)、ガソリン代を自宅集計分経費としていた(乙8、乙10)。

    

エ 本件各車両はいずれも普通乗用自動車であり、その経常的な駐車場所が本件事務所ではなく、本件自宅である(原告、弁論の全趣旨)。

    

オ 本件各車両については、原告が本件自宅から本件事務所へ向かう通勤のため、本件自宅とF駅との間を往復するのに使用されていた(原告、弁論の全趣旨、ただし、その往復に本件各車両のみが使用されたことをうかがわせる証拠はない。)。

    

カ 本件各車両については、原告のみならず、原告の家族である乙、次男及び三男が旅行や買い物等の私的な用事に利用しており、同車両が本件自宅からF駅までの往復に使用された割合が、同車両全体の使用量のどれ位を占めるものかについては判然としない(証人乙、原告)。

    

キ 原告がDのほかにEを購入した動機は、Dの減価償却の時期が終わったことから、事業用のEを購入したことによる(原告)。

   

(3) これらの認定事実からすると、車両が弁護士業務の遂行上必要であることが認められるとしても、通常、弁護士業務において、通例複数台の車両が必要であるとは認めることは困難であり、またその車両が事務所ではなく本件自宅に経常的に配置されている場合には(特に複数台の車両が本件自宅に配置されている場合)、なおさらその車両が事業の遂行上必要であるとは認めることは困難といえる。

     

 もっとも、例外的に複数台の車両の使用、それを本件自宅に経常的に配置することが業務の遂行上必要であるといえる場合においては、業務に必要な経費として認めるべきであるといえる。そこで、本件において、複数台の車両の使用、それを本件自宅に経常的に配置することが業務の遂行上必要であるといえるのかを検討する。

     

 原告は、F駅前に駐車場を借り、本件自宅から事務所あるいは裁判所その他東京へ仕事で向かうときには、本件自宅を本件各車両で出てF駅前の駐車場に同車両を駐車し、M線の各駅停車で東京に向かうといった方法で本件各車両を利用していたとし、その具体的利用方法について、Cは主に東北や北関東の顧問先を訪れる際や水戸地方裁判所の支部(龍ヶ崎支部、土浦支部、下妻支部)、千葉地方裁判所の支部(松戸支部、佐倉支部)、関東地方の裁判所や茨城県取手市所在の顧問先等を訪れるために使用していたのであり、Dについては主に本件自宅とF駅の往復に使用し、その他に、事務所で不要となった記録や資料あるいは鉢植えのような大きな物を運ぶ際に事務所との往復に使用してたのであり、Eは、主に本件自宅とF駅の往復に使用し、その他に、茨城県取手市の顧問先を訪れるため、事務所への交通手段として利用していたと主張する。

     

 また、原告は、F駅前の駐車場が青空駐車場であり、Cは主に顧問先を訪ねる際に使用することから、洗車等をする必要があり、青空駐車場に駐車することは困難であることから、本件自宅からF駅への往復には本件各車両を使わざるをえなかったと主張する。

     

 しかしながら、原告の車両の所有状況をふまえると、本件各車両が本件自宅とF駅の往復に使用していたとしても、他の車両も利用されていた可能性があることに加え、複数台の車両が業務の遂行上必要であったとまではいえない。

     

 また原告の上記主張のような使い分けは、業務上の便宜を図るためであることは認められるものの、これにより、複数台の車両の業務における必要性が基礎づけられるとはいえない。加えて、本件各車両が私的に使用できる本件自宅に置かれていて、原告の家族の者が個人の需要のために現に使用していたことや、本件各車両の一部は、単に別の車両の減価償却費の償却が済んだことを理由として購入されていて、原告の事業の遂行の必要性とは必ずしも関連性を有しないこと、本件各車両が本件自宅とF駅の往復に使用されていた頻度については不明確であること等を併せ考慮すれば、前記のとおり複数台の車両が必要であるとは認められず、本件各車両が業務の遂行上必要であると認めることはできない。また、業務の遂行上必要でないとはいえないとしても、その必要な部分を区分することはできないというべきである。

   

(4) してみれば、本件各車両は、家事関連費に当たり、必要経費として認められるための要件を欠いているから、必要経費として認めなかった処分行政庁の判断は適法である。

  

 

5 なお、原告は、原告に係る過去の税務調査や本件各係争年分後の年分を対象として実施されている税務調査について、本件各係争年分の場合とは異なり、青色事業専従者の件や事業用として減価償却等を経費算入している乗用車の件について何の指摘も受けず適正と認められていること、原告が平成17年6月24日に別件訴訟で税務職員を厳しく証人尋問したことの報復のため、同各係争年分の税務調査が行われたことの2点を挙げて、本件各更正処分等の違法性を主張するかのようである。

    

 しかしながら、これらのうち、本件各係争年分以外の税務調査の状況等は、本件各更正処分等と直接の関係はなく、したがって、同更正処分等の違法性に影響することはないから主張自体失当である。

    

 また、本件各更正処分等に係る税務調査が別件訴訟における証人尋問の報復が目的であるとの点については、確かに原告が主張に係る別件訴訟の原告代理人として税務職員に対する証人尋問を行い、その後に上記税務調査が実施されたことが認められる(甲10の31、甲24、乙8)ものの、報復目的であるとの原告の供述部分は、これを裏付ける的確な証拠はなく、いわば憶測の域を出ないものといわざるを得ない上に、本件各更正処分等に違法事由があるとはいえないことは既に述べたとおりであるから、原告のこの点に関する主張は理由がなく、採用することはできない。

  

 

6 本件更正等の適法性

   

(1) 本件更正の適法性

     

 以上述べたところ及び弁論の全趣旨によれば、原告の平成14年分及び平成16年分の総所得金額及び納付すべき税額は、いずれも被告主張額のとおりであると認められる。そして、平成15年分の総所得金額及び納付すべき税額について、少なくとも、更正決定における総所得金額の範囲で納付すべき税があることが認められる。

     

 そうすると、本件各更正処分における平成14年分ないし平成16年分の総所得金額及び納付すべき税額は、これと同額であるから、本件各更正処分は適法である。

   

 

(2) 本件賦課決定の適法性

     

 前記(1)のとおり、本件各更正処分は適法であるから、過少申告加算税の額は、いずれも被告の主張のとおり(別紙1別表1-1ないし1-3記載の更正処分等欄に照応する過少申告加算税額)である。そうすると、本件各賦課決定処分における過少申告加算税は、これと同額であるから、本件各賦課決定処分は適法である。

  

7 結論

    

 以上によれば、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は適法であり、原告の各請求は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

     

 

千葉地方裁判所民事第3部

         裁判長裁判官  堀内 明

            裁判官  藤本博史

            裁判官  三田村つかさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別紙2

        本件各更正処分等の根拠及び適法性について

 

第1 本件各更正処分の根拠及び適法性について

 1 本件各更正処分の根拠について

   被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の所得税額等は、次のとおりである。

   (1) 平成14年分

    ア 総所得金額 4947万9472円

      上記金額は、次の(ア)ないし(エ)の各金額の合計額である。

     (ア) 事業所得の金額 4569万2154円

       上記金額は、次のaの金額からb及びcの各金額を控除した後の金額である。

      a 総収入金額 8498万9428円

        上記金額は、原告が麻布税務署長に対し、平成18年2月28日に提出した平成14年分の所得税の修正申告(以下「平成14年分再修正申告書」という。)に添付した平成14年分所得税青色申告決算書(一般用)(以下「平成14年分決算書」という。)の「売上(収入)金額」欄に記載した事業所得の総収入金額と同額である(別紙1別表2-1「①再修正申告の額」欄・順号1参照)。

      b 必要経費の合計額 3874万7274円

        上記金額は、次の(a)ないし(c)の各金額の合計額であり、その内訳は、別紙1別表2-1「②被告主張額」欄・順号2ないし22及び25記載のとおりである。

       (a) 減価償却費の額 218万6047円

         上記金額は、原告が平成14年分決算書に記載した減価償却費の額228万2367円から、Dに係る減価償却費の額9万6320円を差し引いた後の金額である(別紙1別表3の「平成14年分」「減価償却費」欄参照)。

       (b) 青色事業専従者給与の額 0円

         乙は、青色事業専従者には該当しないため、原告が平成14年分決算書に記載した青色事業専従者給与の額420万円は、原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できない。

       (c) 上記以外の項目に係る必要経費の合計額 3656万1227円

         上記金額は、減価償却費及び青色事業専従者給与以外の各項目に係る金額の合計額であり、原告が平成14年分決算書に記載した各項目に係る金額の合計額と同額である。

      c 青色申告特別控除額 55万円

        上記金額は、原告が平成14年分決算書に記載した青色申告特別控除額と同額である(別紙1別表2-1「①再修正申告の額」欄・順号27参照)。

     (イ) 不動産所得の金額 △16万1082円

       上記金額は、原告が平成14年分再修正申告書に記載した不動産所得の金額(損失額)と同額である。

       なお、金額の前の△は、損失を表す(以下同じ。)。

     (ウ) 給与所得の金額 394万円

       上記金額は、原告が平成14年分再修正申告書に記載した給与所得の金額と同額である。

     (エ) 雑所得の金額 8400円

       上記金額は、原告が平成14年分再修正申告書に記載した雑所得の金額と同額である。

    イ 所得控除の額の合計額 416万1138円

      上記金額は、次の(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。

     (ア) 申告額 378万1138円

       上記金額は、原告が平成14年分再修正申告書に所得控除の額の合計額として記載した金額である。

     (イ) 配偶者控除の額 38万円

       上記金額は、乙に係る配偶者控除の額である(法2条1項33号、83条参照。以下同じ。)。

    ウ 課税される総所得金額 4531万8000円

      上記金額は、前記アの総所得金額4947万9472円から前記イの所得控除の額の合計額416万1138円を控除した後の金額(ただし、国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定により1000円未満の端数金額を切り捨てた後もの。以下同じ。)である。

    エ 納付すべき税額 418万8900円

      上記金額は、次の(ア)の金額から(イ)及び(ウ)の各金額を差し引いた後の金額(ただし、通則法119条1項の規定により100円未満の端数金額を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。

     (ア) 課税される総所得金額に対する税額 1427万7660円

       上記金額は、前記ウの課税される総所得金額4531万8000円に法89条1項の税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成11年法律第8号。ただし、平成17年法律第21号による改正前のもの。以下「負担軽減措置法」という。)4条の特例を適用したもの。以下同じ。)を乗じて算出した金額である。

     (イ) 定率減税額 25万円

       上記金額は、負担軽減措置法6条2項の規定により算出した定率減税額である。

     (ウ) 源泉徴収税額 983万8700円

       上記金額は、原告が平成14年分再修正申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。

   (2) 平成15年分

    ア 総所得金額 3030万1511円

      上記金額は、次の(ア)ないし(ウ)の各金額の合計額である。

     (ア) 事業所得の金額 2716万9740円

       上記金額は、次のaの金額からb及びcの各金額を控除した後の金額である。

      a 総収入金額 5857万1119円

        上記金額は、次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。

       (a) 申告額 5732万9519円

         上記金額は、原告が麻布税務署長に対し、平成18年2月28日に提出した平成15年分の所得税の修正申告書(以下「平成15年分再修正申告書」という。)に添付した平成15年分所得税青色申告決算書(一般用)(以下「平成15年分決算書」という。)の「売上(収入)金額」欄に事業所得の総収入金額として記載した金額である。

       (b) 株式会社Jからの収入金額 124万1600円

         上記金額は、株式会社Jからの収入金額であり、平成15年中の日当である。

      b 必要経費の合計額 3085万1379円

        上記金額は、次の(a)ないし(c)の各金額の合計額であり、その内訳は、別紙1別表2-2「②被告主張額」欄・順号2ないし20及び23記載のとおりである。

       (a) 減価償却費の額 193万4991円

         上記金額は、原告が平成15年分決算書に記載した減価償却費の額200万585円から、Dに係る減価償却費の額6万5594円を差し引いた後の金額である(別紙1別表3の「平成15年分」「減価償却費」欄参照)。

       (b) 青色事業専従者給与の額 0円

         乙は、青色事業専従者に該当しないため、原告が平成15年分決算書に記載した青色事業専従者給与の額420万円は、原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できない。

       (c) 上記以外の項目に係る必要経費の合計額 2891万6388円

         上記金額は、減価償却費及び青色事業専従者給与以外の各項目に係る金額の合計額であり、原告が平成15年分決算書に記載した各項目に係る金額の合計額と同額である。

      c 青色申告特別控除額 55万円

        上記金額は、原告が平成15年分決算書に記載した青色申告特別控除額と同額である(別紙1別表2-2「①再修正申告の額」欄・順号25参照)。

     (イ) 不動産所得の金額 △16万8229円

       上記金額は、原告が平成15年分再修正申告書に記載した不動産所得の金額(損失額)と同額である。

     (ウ) 給与所得の金額 330万円

       上記金額は、原告が平成15年分再修正申告書に記載した給与所得の金額と同額である。

    イ 所得控除の額の合計額 489万9814円

      上記金額は、次の(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。

     (ア) 申告額 451万9814円

       上記金額は、原告が平成15年分再修正申告書に所得控除の額の合計額として記載した金額である。

     (イ) 配偶者控除の額 38万円

       上記金額は、乙に係る配偶者控除の額である。

    ウ 課税される総所得金額 2540万1000円

      上記金額は、前記アの総所得金額3030万1511円から前記イの所得控除の額の合計額489万9814円を控除した後の金額である。

    エ 納付すべき税額 104万6900円

      上記金額は、次の(ア)の金額から(イ)ないし(エ)の各金額を差し引いた後の金額である。

     (ア) 課税される総所得金額に対する税額 690万8370円

       上記金額は、前記ウの課税される総所得金額2540万1000円に法89条1項の税率を乗じて算出した金額である。

     (イ) 定率減税額 25万円

       上記金額は、負担軽減措置法6条2項の規定により算出した定率減税額である。

     (ウ) 源泉徴収税額 452万6041円

       上記金額は、原告が平成15年分再修正申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。

     (エ) 予定納税額 108万5400円

       上記金額は、原告が平成15年分再修正申告書に記載した予定納税額(第1期及び第2期の合計額)と同額である。

   (3) 平成16年分

    ア 総所得金額 3739万1903円

      上記金額は、次の(ア)ないし(エ)の各金額の合計額である。

     (ア) 事業所得の金額 3499万7055円

       上記金額は、次のaの金額からb及びcの各金額を控除した後の金額である。

      a 総収入金額 6919万9114円

        上記金額は、次の(a)及び(b)の各金額の合計額から(c)の金額を差し引いた後の金額である。

       (a) 申告額 6960万0714円

         上記金額は、原告が麻布税務署長に対し、平成18年2月28日に提出した平成16年分の所得税の修正申告書(平成16年分修正申告書」という。)に添付した平成16年分所得税青色申告決算書(一般用)(以下「平成16年分決算書」という。)の「売上(収入)金額」欄に事業所得の総収入金額として記載した金額である。

       (b) 株式会社Jからの収入金額 84万円

         上記金額は、株式会社Jからの収入金額であり、平成16年中の日当である。

       (c) 申告額のうち平成15年分の事業所得の総収入金額となるもの 124万1600円

         上記金額は、原告が平成16年分の事業所得の総収入金額として申告した6960万0714円(上記(a)参照)のうち、株式会社Jからの収入金額124万1600円である。

         なお、上記金額は、平成15年中の日当であるから、平成15年分の事業所得の総収入金額となるものである(上記(2)アa(b)参照)。

      b 必要経費の合計額 3420万2059円

        上記金額は、次の(a)ないし(e)の各金額の合計額であり、その内訳は、別紙1別表2-3「②被告主張額」欄・順号2ないし22及び25記載のとおりである。

       (a) 租税公課の額 345万0805円

         上記金額は、原告が平成16年分決算書に記載した租税公課の額350万1805円から、Dに係る自動車税5万1000円を差し引いた後の金額である(別紙1別表3の「平成16年分」「自動車税」の「合計」欄参照)。

       (b) 損害保険料の額 21万5850円

         上記金額は、原告が平成16年分決算書に記載した損害保険料の額35万4080円から、本件各車両に係る損害保険料13万8230円を差し引いた後の金額である(別紙1別表3の「平成16年分」「損害保険料」の「合計」欄参照)。

       (c) 減価償却費の額 133万4766円

         上記金額は、原告が平成16年分決算書に記載した減価償却費の額141万3767円から、本件各車両に係る減価償却費の額7万9001円を差し引いた後の金額である(別紙1別表3の「平成16年分」「減価償却費」の「合計」欄参照)。

       (d) 青色事業専従者給与の額 0円

         乙は、青色事業専従者には該当しないため、原告が平成16年分決算書に記載した青色事業専従者給与の額420万円は、原告の事業所得の金額の計算上必要経費に算入できない。

       (e) 上記以外の項目に係る必要経費の合計額 2920万0638円

         上記金額は、租税公課、損害保険料、減価償却費及び青色事業専従者給与以外の各項目に係る金額の合計額であり、原告が平成16年分決算書に記載した各項目に係る金額の合計額と同額である。

      c 青色申告特別控除額 0円

        上記金額は、原告が平成16年分決算書に記載した青色申告特別控除額と同額である(別紙1別表2-3「①修正申告の額」欄・順号27参照)。

     (イ) 不動産所得の金額 20万6048円

       上記金額は、原告が平成16年分修正申告書に記載した不動産所得の金額と同額である。

     (ウ) 給与所得の金額 216万0800円

       上記金額は、原告が平成16年分修正申告書に記載した給与所得の金額と同額である。

     (エ) 雑所得の金額 2万8000円

       上記金額は、原告が平成16年分修正申告書に記載した雑所得の金額と同額である。

    イ 所得控除の額の合計額 513万4814円

      上記金額は、次の(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。

     (ア) 申告額 475万4814円

       上記金額は、原告が平成16年分修正申告書に所得控除の額の合計額として記載した金額である。

     (イ) 配偶者控除の額 38万円

       上記金額は、乙に係る配偶者控除の額である。

    ウ 課税される総所得金額 3225万7000円

      上記金額は、前記アの総所得金額3739万1903円から前記イの所得控除の額の合計額513万4814円を控除した後の金額である。

    エ 納付すべき税額 375万1500円

      上記金額は、次の(ア)の金額から(イ)及び(ウ)の各金額を差し引いた後の金額である。

     (ア) 課税される総所得金額に対する税額 944万5090円

       上記金額は、前記ウの課税される総所得金額3225万7000円に法89条1項の税率を乗じて算出した金額である。

     (イ) 定率減税額 25万円

       上記金額は、負担軽減措置法6条2項の規定により算出した定率減税額である。

     (ウ) 源泉徴収税額 544万3513円

       上記金額は、次のa及びbの各金額の合計額である。

      a 申告額 536万3513円

        上記金額は、原告が平成16年分修正申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。

      b 株式会社Jからの収入金額に係る源泉徴収税額 8万円

        上記金額は、上記ア(ア)a(b)の株式会社Jからの収入金額に係る源泉徴収税額である。

  2 本件各更正処分の適法性について

   被告が、本訴において主張する原告の本件各係争年分の納付すべき税額は、前記1(1)エ、(2)エ及び(3)エで述べたとおり、それぞれ、

     平成14年分 418万8900円

     平成15年分 104万6900円

     平成16年分 375万1500円

    であるところ、本件各更正処分に係る納付すべき税額は、それぞれ、

     平成14年分 418万8900円

     平成15年分 58万7700円

     平成16年分 375万1500円

    であって、平成14年分及び同16年分については、被告が本訴において主張する納付すべき税額と同額であり、同15年分については、被告が本訴において主張する納付すべき税額を下回るから、本件各更正処分はいずれも適法である。

 第2 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について

  前記第1のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であるところ、本件各更正処分により新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち、本件各更正処分前における税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法65条4項にいう正当な理由があるとは認められない。

   したがって、本件各更正処分により原告が新たに納付すべきことになった税額を基礎として、次のとおり計算してした本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

  1 平成14年分 14万4000円

    上記金額は、平成14年分所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額144万円(ただし、通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)を基礎として、これに通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。

  2 平成15年分 14万3000円

    上記金額は、平成15年分所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額143万円を基礎として、これに通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。

  3 平成16年分 12万8000円

    上記金額は、平成16年分所得税の更正処分(なお、柏税務署長による平成18年8月2日付けの更正処分により減額された後のもの。)により原告が新たに納付すべきこととなった税額128万円を基礎として、これに通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額である。