平成28年3月31日付で公布された「所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)」等の主な
改正の概要について検討します。
⑴ 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた一定の要件を満たす家屋(注)
(主として居住の用に供していた一の建築物に限ります。以下「被相続人居住用家屋」といいます。)
及び
相続開始の直前において
その被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等
(以下「被相続人居住用家屋の敷地等」といいます。)
を相続又は遺贈により取得をした個人が、
平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、
次のイ又はロに掲げる譲渡
(相続開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたものに限るものとし、その譲渡の対価の額が1億円を超えるもの等を除きます。以下「対象譲渡」といいます。)
をした場合には、
その譲渡に係る譲渡所得の金額について3,000万円の特別控除を適用することができることとされました(措法35①③)。
ただし、
相続開始の時からその対象譲渡をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、
①その対象譲渡に係る対価の額と、
②その相続又は遺贈により被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(他の相続人を含みます。)が行った、
その対象譲渡に係る被相続人居住用家屋と一体としてその被相続人の居住の用に供されていた家屋又はその家屋の敷地の用に供されていた土地等の譲渡の対価の額との合計額が1億円を超える場合には、
この特例を適用することはできません(措法35⑤⑥)。
注
「一定の要件を満たす家屋」とは、
ⅰ昭和56年5月31日以前に建築されたこと、
ⅱ区分所有建物ではないこと、
ⅲ相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったことを満たす家屋をいいます(措法35④)。
イ 相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋
(相続開始の時後に被相続人居住用家屋につき行われた増築等に係る部分を含むものとし、次の①及び②に掲げる要件を満たすものに限ります。)
の譲渡又は被相続人居住用家屋とともにする相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(次の①に掲げる要件を満たすものに限ります。)
の譲渡
① 相続開始の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
② 譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又は基準に適合するものであること。
ロ 相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋
(次の①に掲げる要件を満たすものに限ります。)の全部の取壊し等をした後における相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等
(次の②及び③に掲げる要件を満たすものに限ります。)
の譲渡
① 相続開始の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
② 相続開始の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
③ 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
⑵ 相続開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、
その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります(措法35④、措令23⑦)。
⑶ この特例は、
「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(措法39)」等との選択適用となります。
なお、居住用財産についての譲渡所得の他の特例(措法36の2、41の5、41の5の2)とは重複して適用することができます。
⑷ この特例は、
確定申告書に、
この特例の適用を受けようとする旨等一定の事項を記載するとともに、
被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の登記事項証明書、
市区町村長の相続開始の直前において被相続人居住用家屋に被相続人が居住していたこと、
かつ、
被相続人居住用家屋にその被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと等一定の要件を満たす旨の確認書、
売買契約書の写し等の
添付がある場合に適用することができます(措法35⑪、措規18の2②二)。