政府税制調査会 海外調査報告(中里 実 、佐藤 主光)(6)

 

 

 

第30回 税制調査会(2016年5月16日)資料一覧からの引用。   

 

BEPSプロジェクトに関するカナダの検討状況

 

 

 

 

 

○カナダ

 

・BEPSプロジェクトの勧告における、カナダの対応については、本年3月22日の2016年度予算案(Budget)において、以下の方針を公表した。①大規模多国籍企業に、国別報告書を提出させることにより、移転価格の文書化の改善を図るための新しい法案の提示。②見直された多国籍企業の移転価格ガイドラインの適用。③多国間枠組を発展させるための国際的な取組への参加。④他の租税管轄圏との自動的情報交換への着手。

 

 

 

 

行動8-10 (移転価格(TP) ガイドライン)

 

 

・移転価格ガイドラインについては、①低付加価値サービスに関する簡素化アプローチの提案と、②(「キャッシュボックス」と呼ばれる)資金提供のみ行う機能がほとんどない事業体に関するリスクフリーの利益率や適切なリスクの利益率の定義の明確化、という2つの分野において、歳入庁はまだ行政上の慣行を移転価格ガイドラインに適合したものにしていない。カナダは、OECDにおける見直し作業が終わった後、上記の2つの分野における見直しに取り組むことに決めている。

 

 

 

 

行動13 (移転価格文書化)

 

・2016年度予算案において、BEPSプロジェクトの勧告に沿って国別報告書の提出に関する提示を実施。この施策は、グループの総収入が年間7億5,000万ユーロ(約10億カナダドル)以上の多国籍企業にのみ適用され、そのような多国籍企業の最終的な親会社がカナダ国内法人である場合、歳入庁に国別報告書を提出することが求められる。国別報告書の交換は2018年6月から開始。

 

 

 

 

行動15 (多数国間協定の策定)

 

・2016年度予算案において、政府は租税条約の濫用に関するOECDにおける合意に沿った対応をするとのコミットメントを確認。最近、カナダは条約特典制限条項を採用した条約や、限定的主要目的テストを採用した条約を結んでいる。カナダは、多数国間協定の策定のための国際的な取組に積極的に参加しており、これにより、租税条約の濫用を含む、条約に関連したBEPSプロジェクトの勧告の実行を進めていく予定。