政府税制調査会 海外調査報告(中里 実 、佐藤 主光)(4)

 

 

 

第30回 税制調査会(2016年5月16日)資料一覧からの引用。   

 

アメリカにおける所得控除の逓減・消失化、カナダにおける所得控除の税額控除化

 

 

 

 

 

 

アメリカにおける所得控除の逓減・消失化の概要

 

 

・アメリカでは、日本と同様に所得控除方式の人的控除が存在するが、所得が一定金額を超える場合、人的控除の額が逓減・消失する仕組みとなっている。

 

 

○ 所得控除の逓減・消失化の目的・評価

 

・人的控除(所得控除)の逓減・消失化を86年改革で行った。税率の累進構造を強化しにくいという政治的な状況の下、高所得者に一定の負担を求めるために設けられたものである。

 

・86年改革当時は、一般論として、所得控除は担税力の減殺に対応するもの、税額控除はインセンティブを付与するものとして理論的にその役割が異なるとの考え方があったが、現在では、こうした理論的な区別はあまり考えられていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナダにおける所得控除の税額控除化の概要

 

 

・カナダの人的控除は、87年改革において所得控除方式から税額控除方式に変更。

 

・具体的には、所得控除からの移行前後で低中所得者層の税負担が増加しないよう「税額控除の対象となる所得金額」が設定され、この額に最低税率を乗じた額を税額控除することとされた。この結果、限界税率が最低税率よりも高い者にとっては税負担が大きくなることとなった。

 

 

○ 所得控除の税額控除化の目的・評価

 

・所得控除について、「累進課税の下では高額所得者に有利な制度となる」との批判があったため、人的控除(所得控除)の税額控除化を87年改革で行った。この制度変更によって、垂直的公平性が高まり、所得再分配効果が向上した。