第30回 税制調査会(2016年5月16日)資料一覧からの引用。
カナダにおける包括的税制改革(87年改革)・現在の課題及び対応
包括的税制改革(87年改革)の概要・評価
【背景】
アメリカの86年改革に影響を受けたこと、垂直的公平や水平的公平等を目標としたカーター委員会報告の理念に近づこうとしていたこともあり、87年にカナダは税制改革を行うこととし、「より低税率でより公平な税制」を提案。
【概要】
所得税関連では、主に以下のような改革が行われた。
- 最高税率の引下げ(34%→29%)を含めた税率構造の大幅な累進緩和(10段階→3段階)
- キャピタルゲインの課税割合の拡大(50%→67%)
- 所得控除方式であった人的控除等の税額控除化(最低税率からの所得控除と類似の効果)
- 特定の所得を有する者しか適用できない控除制度の廃止(例:利子・配当所得控除の廃止)
一方で、法人税関連では、基本税率を36%から28%に引き下げるとともに、税務上控除可能な減価償却費の引下げやキャピタルゲイン課税の強化、交際費課税の強化が行われた。消費課税関連では、87年改革のステージ2として91年に製造者売上税を廃止し、課税ベースの広いGSTを導入した。
【評価】
・経済的不平等の一定程度の是正、所得再分配機能の強化
・租税特別措置の縮減・廃止等に伴う、水平的公平性の向上
カナダにおける現在の税制上の課題及び対応
○ 政権交代
・2015年に保守党から自由党に政権交代。ハーパー前保守党政権の下で、スポーツや芸術等の利益団体を優遇する税制措置が多数導入されたが、トルドー現自由党政権は、これを富裕層優遇であると批判し、富裕層への課税強化、中間層の負担軽減を行う方針が示されている。
○ 低所得者への対策
・生活保護を受けている低所得者が、就労の際に給付の減少等によりかえって手取り収入が減少する問題を解決し、就労インセンティブを促進するために、勤労所得手当を2007年に導入。また、 1991年に製造者売上税からGSTへ移行する際に、付加価値税の低所得者対策として、所得税法の枠組みの中でGSTクレジットを導入(課税ベースの拡大とセット)。
・GSTクレジットの不正受給は大きな問題とはなっていないが、その理由の一つに、確定申告時期と給付時期との間に所得情報等を当局が確認するための十分な時間を確保できることが挙げられる。
上記引用ここまで
GST クレジットの制度概要
カナダのGST クレジットは,カナダにおける付加価値税(GST:Goods and Services Tax)の負担軽減を目的とした直接給付制度である。カナダでは,1991 年に税率7% の付加価値税を導入したが,その際に年収3 万カナダドル以下の世帯における負担軽減を狙いとしてGST 税額控除が創設されたという16)。
付加価値税には,対所得比率でみた税負担が高所得者よりも低所得者に高いという逆進性の問題が存在するが,カナダのGST クレジットは,給付方式により逆進性の緩和を狙うものである。
白石浩介「給付つき税額控除による所得保障」(参照日:2016年5月24日、参照先:http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/j42d02.pdf) より引用
財務省HP(参照日:2016年5月24日、参照先:https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/241a.htm)