政府税制調査会 海外調査報告(中里 実 、佐藤 主光)(1)

 

 

 

 第30回 税制調査会(2016年5月16日)資料一覧からの引用。

 

 (1)諸外国における経済社会の構造変化を踏まえた税制の課題

 

 

 

 

 

【ポイント】

 

○ アメリカ・カナダともに経済社会の構造変化を踏まえ、税制改革を実施。

 

○ アメリカ・カナダともに人種が多様な国であり、主要課題は所得格差。高齢化も重要な課題ではある一方、日本と比較すると、老年人口比率は低く抑えられており、高齢化の進展は緩やか。

 

○ アメリカ・カナダともに、税制が、財源調達機能に加え、勤労世代・子育て世代を対象とした再分配機能を意識した制度設計になっていることが伺える。

 

○ 税制の課題を検討するに当たっては、社会保障制度をはじめ関連する諸制度を合わせて見ていく必要があるところ、アメリカ・カナダとも日本と社会保障制度は異なる面があり、単純な比較は難しい点に留意が必要。

 

 

 

 

 

 

-社会保障制度の概要-

 

 

・ 税制の課題を検討するに当たっては、社会保障制度をはじめ関連する諸制度を合わせて見ていく必要があるが、アメリカ・カナダとも日本と社会保障制度は異なる面があり、その単純な比較は難しい。

 

 

 

 

 

(社会保障制度一般)

 

アメリカ:日本の生活保護制度のような、連邦政府による包括的な公的扶助制度はない(貧困家庭一時扶助(TANF)等の生活補助は州政府が所管)。

 

カナダ:原則州政府の所管であり、連邦政府による統一的な運用は行われていない。

(公的年金制度・医療保険制度)

 

 

アメリカ:

 

・公的年金の財源は社会保障税という名目で調達され、一定の所得を限度として労使折半で負担される。国民全員の最低限の老後所得を保障するためのものであり、給付は支払った社会保障税額によって決まるが、受給中に一定以上の所得を有する者は年金が減額される。

 

・公的医療保険(メディケア・パートA)の対象者は、高齢者、障害者等に限定されているなど、広く国民一般をカバーする制度が存在しない。

 

 

カナダ:

 

・カナダの公的年金は税方式の老齢保障プログラム(OAS)と社会保険方式のカナダ年金プラン(CPP)がある。OASが最低限の生活を確保するもの、CPPが生活の安定を図るものとされている。

 

・公的医療保険(メディケア)の対象者は、全国民と広いものとなっており、コアとされる医療については税財源で患者の自己負担が発生しない仕組みとなっている。