争点2(平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当するか否か。)について検討します。
争点2(平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当するか否か。)
原処分庁
上記(1)の「原処分庁」欄のとおり、K店及び旧Q店の事業に係る所得の帰属先は請求人であるにもかかわらず、請求人は、平成18年分について、K店の事業に係る所得についてP2名義の確定申告書を提出して同人が経営者であるかのように装い、また、平成19年分について、K店については平成18年分と同様にP2が経営者であるかのように装った上、旧Q店については風俗営業許可を店長のP6名義で取得して請求人が旧Q店の経営者であることを秘匿して、所得の帰属先を仮装したことが認められる。
平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の上記行為は、税額を免れる意図の下に税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような偽計その他の工作を伴う不正な行為といえるから、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。
請求人
請求人は、K店及び旧Q店の法律行為の名義人を各店長としていたものがあることに加え、K店に係る平成18年分及び平成19年分の所得税の確定申告書をいずれもP2名義で提出したが、上記(1)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、K店及び旧Q店の事業に係る所得の帰属先は請求人ではないから、平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の上記行為が、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当することはない。
(2) 争点2(平成18年分及び平成19年分の所得税に係る請求人の行為は、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当するか否か。)
イ 法令解釈
通則法第70条第4項は、納税者が「偽りその他不正の行為」により国税を免れた場合の更正決定等の除斥期間を7年と規定し、それ以外の場合よりも長い除斥期間を規定している。
これは、納税者が「偽りその他不正の行為」によって国税の全部又は一部を免れた場合、納税者間の公平を確保する必要があることなどを考慮し、適正な課税を行うことができるように、通常の場合よりも長期間その国税の賦課を可能として、適正、公平な課税の実現を図ることとしたものである。
このような通則法第70条第4項の趣旨からすれば、同項が規定する「偽りその他不正の行為」とは、税の賦課徴収を不能又は困難にするような何らかの偽計その他の工作を行うことをいうものと解することが相当である。
ロ 判断
(イ) 争点について
A 上記(1)のロの(イ)のEのとおり、平成18年分及び平成19年分のK店及び旧Q店に係る事業所得は請求人に帰属するところ、請求人が、既に締結されていた他人名義のクレジットカード加盟店契約を利用し又は新たに借名でクレジットカード加盟店契約を締結してこれを利用した上、クレジットカード売上げに係る立替金の入金も借名口座に受け、また、借名で店舗に係る賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用し、さらに、本件各店舗に係る事業所得について他人名義の確定申告書を提出したことは、請求人の売上げ、売上げに係る資金又は事業所得が他人に帰属するかのような外形を作出するものであって、税の賦課徴収を困難にするような偽計その他の工作となるものであり、当該各年分につき次の事実がある。
(A) 平成18年分
K店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)及び(E)のとおり、平成18年5月頃にL社と締結されていたP2名義のクレジットカード加盟店契約を同年7月下旬の営業開始以降利用し、また、新たに同年11月頃にP2名義でM社とクレジットカード加盟店契約を締結してこれも利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のとおり、事業所得についてP2名義の確定申告書を提出した。
(B) 平成19年分
K店について、請求人は、上記(A)のとおり平成18年5月頃及び同年11月頃に締結されたP2名義の各クレジットカード加盟店契約を利用した上、これらのクレジットカード売上げに係る立替金の入金を借名口座であるP2x1銀行口座に受け、さらに、上記1の(4)のロの(イ)のAの(A)のとおり、事業所得についてP2名義で確定申告書を提出した。
また、旧Q店について、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)のBの(D)及び(E)のとおり、平成19年9月19日付でP6名義の賃貸借契約を締結し自らは借主の連帯保証人の形式をとってこれを利用した。
B 平成18年分及び平成19年分の所得税に係る上記Aの(A)及び(B)の請求人の行為は、税の賦課徴収を困難にするような偽計その他の工作であり、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当する。
(ロ) 請求人の主張について
上記2の(2)の「請求人」欄のとおり、請求人は、P11に雇われて本件各店舗の経営を任されていただけであり、K店及び旧Q店の事業に係る所得の帰属先は請求人ではないから、請求人の行為が、通則法第70条第4項に規定する偽りその他不正の行為に該当することはない旨主張する。
しかしながら、上記(1)のロの(イ)のEのとおり、本件各店舗の事業所得の帰属先は請求人であるから、請求人の主張は前提となる事実関係を誤っている。
したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。