従業員名義で経営していた店舗に係る所得の帰属先(3)

 

 

 

 

 

 争点1について審判所の判断を検討します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3 判断

 

 

 

 

(1) 争点1(本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人か否か。)

 

 

 

イ 認定事実

  

 

原処分関係資料、請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

 

(イ) 法律行為等の名義人について

 請求人の本件調査担当者に対する申述によれば、請求人が本件各店舗別試算ファイル等に基づいて作成して提出した本件各年分のK店並びに平成22年分及び平成24年分の新Q店の事業所得に係る所得税、平成20年課税期間、平成21年課税期間及び平成22年課税期間のK店の課税資産の譲渡等の対価に係る消費税等の各確定申告書(上記1の(4)のロの(イ)のA及びC並びに(ロ)のA)は、各店舗の風俗営業許可を店長名義で得ているため、それに合わせて各店舗の店長がそれぞれの店舗の経営者であるかのように装って提出したものであること、申告していない年があることを請求人が認識していたこと、請求人が実際の納税も行っていたこと、また、各店長は上記各確定申告書がどのように計算して作成されたものか知らず、納税にも関与しなかったことが認められる。

 

 

(ロ) 収支の管理について

 請求人は、上記1の(4)のイの(ハ)のAのとおり、各店長に現金残額と日報等を持参させ、請求人がその現金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫において保管していたことから、請求人は、日々、本件各店舗における現金売上げ及び本件各店舗で現金により支払う経費を確認していたと推認される。

 

 

(ハ) 店舗等の開店、移転等の費用の支出について

 

A 本件月間試算ファイルによれば、①平成20年4月頃のR店の営業開始(上記1の(4)のイの(イ)のCの(A))、②同年11月頃の本件jビル事務所の移転(上記1の(4)のイの(イ)のD)、③平成21年1月頃のR店の移転(上記1の(4)のイの(イ)のCの(A))、④同年11月頃の「J」店から「K」店への屋号変更(上記1の(4)のイの(イ)のAの(A))、⑤同年11月頃のR店から新Q店への屋号変更(上記1の(4)のイの(イ)のBの(A))に際して、次の支出がされていることが認められる。

 

(A) 上記①について

 平成20年4月に「電気工事及び看板」代として87,200円、「名刺(スタッフ、R)」代として102,900円の合計190,100円

 

(B) 上記②について

 平成20年9月に「新事務所改装費」として1,690,000円、「新事務所敷金」として180,000円、「新事務所仲介料」として90,000円、同年12月に「事務所改装費(トイレ)」として170,000円の合計2,130,000円

 

(C) 上記③について

 平成20年9月に「R敷金」として420,000円、「R仲介料」として210,000円、同年11月に「照明器具」代として209,000円、「パネル製作費、看板」代として188,400円、同年12月に「R改装費(電気工事)」として784,350円、「R改装費(照明工事他)」として270,000円、平成21年2月に「改装費」として1,150,000円の合計3,231,750円

 

(D) 上記④について

 平成21年10月に「制服」代として67,646円、「看板」代として190,050円、同年11月に「制服代」として13,808円の合計271,504円

 

(E) 上記⑤について

 平成21年10月に「制服」代として65,733円、同年11月に「看板代」として計155,000円の合計220,733円

 

 

B 本件月間試算ファイルは、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(C)のとおり本件月間支払ファイルを基に作成され、本件月間支払ファイルは、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(B)のとおり請求人が請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管されていた現金で自ら支出を決定した経費等を支払い、当該支払に係る請求書等に基づいて作成していたものであるから、上記Aの各支出も請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管されていた現金での支払であり、また、後記(ホ)のAのとおり請求人が請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた現金は本件各店舗の売上げを原資とするものであったことから、上記Aの各支払の原資も同様に本件各店舗の売上げであることが推認される。

 

 

(ニ) 売上金が入金された口座について

 

A P9○○支店口座

  P9○○支店口座及び請求人△△支店口座に係る各普通預金取引明細表、P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

(A) P9○○支店口座は、請求人の依頼により平成18年12月12日にP9が開設した口座であり、口座開設後、キャッシュカードは請求人が所持していた。

  請求人は、請求人の自宅に保管していたK店及び旧Q店の売上げを原資とする現金、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれるP2x1銀行口座から出金した現金をP9○○支店口座に入金していた。

 

(B) 請求人は、平成19年1月5日から平成20年1月23日までの間、P9○○支店口座へ平成19年中に合計66,955,671円、平成20年中に合計3,591,133円を現金で入金し、P9○○支店口座から平成19年中に合計56,087,759円、平成20年中に合計4,673,583円を現金で出金し、出金した現金を請求人の自宅に保管していた。

  請求人は、P9○○支店口座から、K店の家賃、酒代、おしぼり代等の経費を振込みの方法により支払い、また、P9○○支店口座の預金を振込みの方法で請求人△△支店口座に送金していた。

 

(C) P9が上記(B)の期間においてP9○○支店口座を個人的に使用した形跡は見当たらないこと、そして、P9○○支店口座の開設、キャッシュカードの保管及び預金の入出金に係る上記(A)及び(B)の状況からすると、P9○○支店口座は、K店及び旧Q店に係る事業用の借名口座であり、請求人がこれを管理していたことが認められる。

 

B 請求人x2銀行各口座

  請求人x2銀行各口座に係る各普通預金取引明細表、請求人の子であるP12名義のx2銀行○○支店の普通預金口座(番号○○○○。以下「P12○○支店口座」という。)及び同行××支店の普通預金口座(番号○○○○。平成22年3月23日にx2銀行△△支店の番号○○○○の普通預金口座から移管された。以下「P12××支店口座」という。)に係る各普通預金取引明細表、P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、S社、T社、U社及びM社から原処分庁宛の各回答書(取引金額等の照会に対するもの)、i県民共済生活協同組合、○○i県本部、k社及びf市財政局料金課長から当審判所宛の各回答書(取引内容又は納付状況の照会に対するもの)、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

 (A) 請求人△△支店口座は、平成18年7月下旬にK店が営業を開始する前から請求人が使用していた口座で、平成22年3月23日に請求人××支店口座に移管されたものであり、また、請求人○○支店口座は、同年2月18日に請求人が開設した口座であり、当該各口座はいずれも請求人が管理していた。

 

(B) 請求人は、請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金について、平成19年1月以降平成22年3月頃までは請求人△△支店口座に、同月以降は請求人○○支店口座にそれぞれ入金していた。

  また、上記1の(4)のイの(イ)のBの(C)のとおり、請求人○○支店口座は、新Q店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座とされており、新Q店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれていたところ、請求人は、随時、キャッシュカードでこれを出金し、その出金した現金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた。

  さらに、請求人は、上記Aの(B)のとおりP9○○支店口座の預金を振込みの方法で請求人△△支店口座へ送金し、また、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれるP2x1銀行口座から出金した現金を請求人○○支店口座へ入金していた。

 

(C) 請求人は、平成19年1月以降、請求人x2銀行各口座から、本件各店舗に係る経費である店舗及び従業員の寮の家賃を振込みの方法により支払っていた。

 

(D) 請求人は、請求人x2銀行各口座から、平成19年2月15日以降平成24年12月17日までの間、契約者を請求人とするi県民共済生活協同組合の生命共済に係る掛金を、平成19年2月28日以降平成24年12月28日までの間、契約者を請求人とするm共済に係る掛金を、平成22年4月27日以降平成24年12月27日までの間、契約者を請求人とするk社の生命保険に係る保険料を、平成19年8月31日以降平成24年7月2日までの間、請求人の国民健康保険料を、それぞれ引落しの方法で支払っていた。

  また、請求人は、請求人x2銀行各口座から、平成18年11月30日以降平成23年5月25日までの間、P12に対する仕送りとして合計2,470,000円をP12○○支店口座へ、平成19年1月31日以降平成23年5月25日までの間、P13(請求人の元妻)からの借入金の返済金として合計2,580,000円をP12××支店口座へそれぞれ送金していた。

 

(E) 請求人は、後記Dの(E)のとおり、平成25年12月12日及び同月13日に請求人x4銀行口座から請求人○○支店口座にそれぞれ3,000,000円、4,500,000円を送金し、同日、請求人○○支店口座から10,000,000円を現金で出金しているところ、当該10,000,000円が本件各店舗の事業用の資金として使用された形跡は見当たらない。

 

(F) 上記(A)から(D)までのとおり、請求人が、平成19年1月以降、本件各店舗の売上げを原資とする現金を請求人x2銀行各口座に入金し、その入金後の預金を本件各店舗の家賃等の経費の支払に充てた以外に、生命保険等に係る保険料等及び国民健康保険料の支払、子に対する仕送り並びに元妻への借入金の返済に充てていたことから、請求人は、本件各店舗の売上げに係る資金を個人的な費消に充てていたものである。

 

 

C 請求人x3銀行口座

  請求人x3銀行口座に係る普通預金取引明細表、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

(A) 請求人x3銀行口座は、平成19年6月12日に請求人が開設した口座である。

 

(B) 請求人は、平成19年6月12日以降平成24年12月25日までの間、請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金について、請求人x3銀行口座へ平成19年中に合計310,000円、平成23年中に合計2,100,000円、平成24年中に合計4,120,000円をそれぞれ入金し、また、請求人x3銀行口座から平成19年中に300,000円、平成23年中に合計1,500,000円、平成24年中に合計1,100,000円を現金でそれぞれ出金し、その出金した現金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた。

 

D 請求人x4銀行口座

  請求人x4銀行口座に係る取引履歴明細証明書、請求人○○支店口座に係る普通預金取引明細表、n証券の請求人名義の取引に係る精算履歴(請求人の顧客コードを○○○○とするもの)、p証券の請求人名義の取引に係る顧客勘定元帳(番号○○○○)、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

(A) 請求人x4銀行口座は、平成20年5月23日に請求人が開設した口座である。

 

(B) 請求人は、平成20年5月31日以降平成24年12月25日までの間、本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金について、請求人x4銀行口座へ平成20年中に合計8,448,000円、平成21年中に合計4,318,000円、平成22年中に合計2,170,000円、平成23年中に合計2,110,000円、平成24年中に合計5,969,000円をそれぞれ入金し、また、請求人x4銀行口座から平成21年中に合計1,490,000円、平成22年中に合計1,900,000円を現金でそれぞれ出金し、その出金した現金を本件jビル事務所の金庫に保管していた。

 

(C) 請求人は、請求人x4銀行口座から、本件各店舗に係る経費である店舗及び従業員の寮の家賃を振込みの方法により支払っていた。

 

(D) 請求人は、平成24年6月29日以降同年12月21日までの間、請求人x4銀行口座から、9回にわたり合計5,500,000円を振込みの方法によりn証券に送金した上、n証券に開設した請求人名義の口座で「q社」の株式40,000株を取得価額5,351,518円で取得し、また、請求人は、平成25年2月25日以降同年10月末までの間、n証券の上記口座で上記のとおり取得した「q社」の株式40,000株のうち30,000株を売却価額○○○○円で売却し、その売却代金を基に「t社」の株式35,000株を取得価額11,519,675円で取得し、3,000,000円を請求人x4銀行口座からp証券の請求人名義の口座へ送金した。

 

(E) 請求人は、平成25年4月8日以降同年6月26日までの間、請求人x4銀行口座から、4回にわたり合計6,000,000円を振込みの方法によりp証券に送金し(このうち3,000,000円はn証券における株式売却代金を上記(D)のとおり送金したもの)、p証券の請求人名義の口座で「q社」の株式13,000株を取得価額5,226,266円で取得した。

  また、請求人は、平成25年12月12日、上記口座で上記の「q社」の株式13,000株を売却価額○○○○円で売却し、同日、その売却代金と上記口座の残額774,299円の合計額○○○○円を上記口座から請求人x4銀行口座に送金した後、請求人x4銀行口座から同日及び同月13日にそれぞれ3,000,000円、4,500,000円を請求人○○支店口座に送金した。

 

(F) 上記(A)から(E)までのとおり、請求人が、平成20年5月31日以降、本件各店舗の売上げを原資とする現金を請求人x4銀行口座に入金し、その入金後の預金を基にn証券及びp証券の請求人名義の各口座で株式を取得したことは、請求人が本件各店舗の売上げに係る資金を請求人個人の資産運用に充てていたものである。

 

E P2x1銀行口座

  P2x1銀行口座に係る普通預金異動明細表、P9○○支店口座及び請求人○○支店口座に係る各普通預金取引明細表、L社及びM社から原処分庁宛の各回答書、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

  P2x1銀行口座は、上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)のとおり、K店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座とされており、平成18年8月以降平成25年1月までの間、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれていたところ、請求人は、本件各年において、月1回程度、P2x1銀行口座からキャッシュカードで現金を出金し、その出金した現金について、平成19年中に合計1,710,000円(7回)をP9○○支店口座へ、平成23年中に合計650,000円(2回)、平成24年中に350,000円(1回)を請求人○○支店口座へそれぞれ入金し、また、請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた。

  P2が本件各年においてP2x1銀行口座を個人的に使用した形跡は見当たらないこと及びP2x1銀行口座の上記状況から、P2x1銀行口座は、K店に係る事業用の借名口座であり、請求人がこれを管理していたことが推認される。

 

F P10x3銀行口座

  P10x3銀行口座に係る普通預金取引明細表、請求人x4銀行口座に係る取引履歴明細証明書、請求人の当審判所に対する答述及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

 

(A) P10x3銀行口座は、本件各店舗のホステスの送迎をする際にETCカードを利用した場合の利用代金の引落しのために、請求人の依頼により平成21年3月17日にP10が開設した口座であり、キャッシュカードは請求人が所持し、請求人は、本件jビル事務所の金庫に保管していた本件各店舗の売上げを原資とする現金をP10x3銀行口座へ入金していた。

 

(B) 請求人は、平成21年4月3日以降平成24年12月25日までの間、P10x3銀行口座へ平成21年中に合計1,000,000円、平成22年中に合計2,700,000円、平成23年中に合計3,800,000円、平成24年中に合計5,500,000円を現金で入金し、また、P10x3銀行口座から平成22年中に合計1,500,000円、平成23年中に合計800,000円、平成24年中に合計4,500,000円を現金で出金し、その出金した現金を本件jビル事務所の金庫に保管していた。

  P10x3銀行口座からは、口座開設日以降平成24年末までの間、ETCカードの利用による代金が引き落とされ、また、請求人は、P10x3銀行口座の預金を請求人x4銀行口座へ送金していた。

 (C) P10が上記(B)の期間においてP10x3銀行口座を個人的に使用した形跡は見当たらないこと、そして、P10x3銀行口座の開設、キャッシュカードの保管及び預金の入出金に係る上記(A)及び(

B)の状況からすると、P10x3銀行口座は、本件各店舗に係る事業用の借名口座であり、請求人がこれを管理していたことが認められる。

 

 (ホ) 売上げに係る資金の保管又は保有状況及び使途について

A 上記1の(4)のイの(ハ)及び上記(ニ)の状況から、請求人x4銀行口座以外の本件各口座については、本件各店舗の売上げを原資とする現金以外の源泉によるものとみるべき入金は見当たらず、また、請求人x4銀行口座についても、上記(ニ)のDの(D)及び(E)のとおり請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金により行った個人的な投資に係るn証券及びp証券の請求人名義の各口座からの入金のほかに本件各店舗の売上げを原資とする現金以外の源泉によるものとみるべき入金はないこと、上記1の(4)のイの(ハ)のCのとおり現金による経費支払については請求人が請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管していた現金から支払っていたこと、上記(ニ)のBの(D)のとおり請求人は請求人x2銀行各口座からi県民共済生活協同組合の生命共済に係る掛金を引落しの方法で支払うなどしていたことから、請求人は、平成19年1月5日以降平成24年12月31日までの期間、本件各店舗の売上げを原資とする資金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫で一旦保管し、当該資金を随時P2x1銀行口座以外の本件各口座に入金した後、その入金した資金について、これを使って個人的な費消及び資産運用を行い、それらの必要に応じて他の口座に預け替え、また、経費の支払を行い、必要に応じて再度出金して上記場所で保管していたものと推認される。

 

B 原処分関係資料によれば、平成25年11月6日、請求人が、本件調査担当者に対し、本件jビル事務所の金庫に保管されていた別表5記載の40件の金銭借用証書(以下「本件各金銭借用証書」という。)を提示した。

  これらの40件のうち26件の金銭借用証書の名宛人欄には何も記載されていないが、14件の金銭借用証書については、名宛人欄に、「P1(請求人)」と記載されたものが7件、「○○(請求人の姓)」と記載されたものが4件、請求人が使用している屋号「X社」(上記1の(4)のロの(イ)のEのとおり請求人の所得税の確定申告書に屋号として記載されている。)を示す記載がされているものが3件あり、他方、P11等請求人以外の者を名宛人として記載したものはなかった。

  本件各金銭借用証書の上記保管状況及び記載状況から、本件各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の貸主はいずれも請求人であったことが推認される。

  そして、請求人の当審判所に対する本件各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の借主に関する答述によれば、①別表5の順号16、21から26まで、28、33、35及び38から40までの合計13件の各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の借主は本件各店舗の従業員であり、②別表5の順号1から15まで、17から20まで、27、29から32まで、34、36及び37の合計27件の各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の借主は請求人の親族や知人であると認められ、そうすると、前者は本件各店舗の事業遂行上の金銭消費貸借であり、後者は本件各店舗の事業とは関係のない金銭消費貸借であるところ、後者の金銭消費貸借についてその返済金が本件各店舗の事業の用に供された形跡は見当たらない。

  また、上記Aのとおり、請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金を個人的な費消及び資産運用にも充てていたことから、本件各金銭借用証書に係る金銭消費貸借の原資も、本件各店舗の売上げを原資とする資金であったことが推認される。

 

(ヘ) 出資について

 上記1の(4)のイの(イ)のAの(D)のとおり請求人が平成18年7月下旬に営業を開始した当時のK店に係る賃貸借契約上の賃借人であることに、上記(ホ)のAのとおりK店開店以降請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金を管理して個人的な費消及び資産運用に用いていた事後的状況を併せ考慮し、また、請求人以外の者による出資又は利益享受が存在するとみるべき事情は具体的には見当たらないことからすると、平成18年7月下旬に営業を開始した当時のK店に係る出資は請求人によってなされていたことが推認される。

 

 

 

ロ 判断

 

(イ) 争点について

 

A 本件各店舗に係る経営上の行為について

 

(A) 法律行為等の名義人

  法律行為等の名義人に請求人名義以外のものがあるが、次のとおり、これらは、本件各店舗の事業のために、請求人が本件各店舗の店長及び請求人の親族又は同居人の名義を借用したものである。

 

a 上記1の(4)のイの(イ)のAからCまで及び(ハ)のA並びにロの(イ)のA、Cの(A)及び(ロ)のAのとおり、本件各店舗の事業に係る法律行為等の名義人には、請求人のほか、本件各店舗のその時々の店長名義及び請求人の親族又は同居人の名義が用いられ、他方、請求人が真の経営者であるとするP11の名義は全く見当たらない。

 

 b 店舗の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が継続的な契約関係を形成するものであり、賃借人の支払能力を含む信用や目的物件の具体的使用形態が重視されるのが通常であるから、特段の事情のない限り、当該店舗を実際に使用する者、すなわちそこにおいて行われる事業の経営者が賃借人と一致すると考えられるものであるところ、上記1の(4)のイの(イ)のAの(D)のとおりK店に係る平成18年8月1日付の賃貸借契約は請求人を賃借人としてなされている。

 

c それ以外の法律行為等の名義人についてみれば、上記1の(4)のイの(イ)のAからCまで並びにロの(イ)のA、Cの(A)及び(ロ)のAのとおり、店舗の賃貸借契約には本件各店舗の店長名義が用いられているが、それらに伴い、請求人が連帯保証人となり賃借人と同等の責任を負う立場にもあり、また、①その他の風俗営業許可上の営業者及びクレジットカード加盟店契約、②本件各年分のK店並びに平成22年分及び平成24年分の新Q店の事業所得に係る所得税の各確定申告書、③平成20年課税期間、平成21年課税期間及び平成22年課税期間のK店の課税資産の譲渡等の対価に係る消費税等の各確定申告書については、いずれも本件各店舗の店長の名義が用いられているが、これらの各店長名義を用いた風俗営業許可上の営業者、クレジットカード加盟店契約及び賃貸借契約は、請求人が各店長の就任時期に合わせてその店長の名義を用いることにしたものである。

  そして、上記②及び③の各確定申告書についても、上記イの(イ)のとおり、各店長は上記各確定申告書がどのように計算して作成されたものか知らず、納税にも関与しない一方で、請求人が、各店舗の風俗営業許可を店長名義で得たことに合わせて各店舗の店長がそれぞれの店舗の経営者であるかのように装って上記各確定申告書を作成して提出し、納税も済ませたものである。

 

d さらに、請求人が上記1の(4)のイの(ハ)のAのとおり日々における現金残額を随時預け入れていた本件各口座の名義についてみれば、請求人は、上記イの(ニ)のB、C及びDのとおり請求人名義の請求人x2銀行各口座、請求人x3銀行口座及び請求人x4銀行口座を本件各店舗に係る事業用の口座とし、また、上記イの(ニ)のA及びFのとおり請求人がP9○○支店口座及びP10x3銀行口座を本件各店舗に係る事業用の借名口座として用いたものである。

 

  他方、上記イの(ニ)のEのとおり、P2x1銀行口座も、K店のクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座として平成18年8月以降平成25年1月までの間、K店のクレジットカード売上げに係る立替金が振り込まれていたK店に係る事業用の借名口座であるが、請求人は、これからは月1回程度、現金を出金して一部を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫に保管し、また、その資金をP9○○支店口座や請求人○○支店口座へ入金していたものである。

 

 そうすると、本件各店舗の売上げに係る資金の終局的な流入先の口座の名義人は、請求人、請求人が用いた借名である請求人の親族又は同居人であったとみるべきものである。

 

 

(B) 従業員の雇用、監督の状況

  上記1の(4)のイの(イ)のAの(E)、Bの(E)及びCの(C)並びに(ロ)のとおり、請求人が本件各店舗の各店長の就任を決定した上、原則として全てのホステス及び男性従業員の雇用の採否を決定し、各店長を責任者としてホステス及び男性従業員を監督させ、また、ホステスの報酬の支払方法及び男性従業員の給料の額もそれぞれ決定していたものであることから、請求人が本件各店舗の各店長の上位者として本件各店舗の従業員の雇用及び監督を行っていたものとみるべきである。

  また、P11等請求人以外の者が請求人の上記雇用及び監督に関与していたとみるべき事情は見当たらない。

 

 

(C) 収支の管理状況

  請求人は、上記イの(ロ)のとおり、日々、本件各店舗に係る現金売上げについて確認し、また、上記1の(4)のイの(ハ)のBのとおり、請求人○○支店口座及びP2x1銀行口座(上記1の(4)のイの(イ)のAの(C)及び(E)並びに上記イの(ニ)のEのとおり、請求人が用いることを決定した借名口座である。)をクレジットカード売上げに係る立替金の指定振込口座としてクレジットカード売上げに係る振込額を確認していた。

  また、売上げに係る資金についても、上記イの(ホ)のAのとおり、請求人が、平成19年1月5日以降平成24年12月31日までの期間、本件各店舗の売上げを原資とする資金を請求人の自宅又は本件jビル事務所の金庫で一旦保管し、当該資金を随時P2x1銀行口座以外の本件各口座に入金した後、その入金した資金を必要に応じて他の口座に預け替え、また、再度出金して上記場所で保管していた。

  他方、支出についても、上記1の(4)のイの(ハ)のCのとおり、請求人が、原則として自ら、また、一部については各店長に支払を任せて経費の支出を決定しており、これらを現金又は振込みの方法で支払っていた。

  こうした状況において、請求人は、上記1の(4)のイの(ハ)のDの(A)から(C)までのとおり、各店長に指示して作成させた日報等に基づいて本件各ファイルを作成して本件各店舗別の各月の利益を把握していたのであるから、請求人が収支を管理していたものというべきである。

  そして、P11等請求人以外の者が請求人の収支の管理に関与していたとみるべき事情は見当たらない。

 

 

B 本件各店舗から生じた利益の処分について

 上記イの(ホ)のとおり、請求人が本件各店舗の売上げに係る資金を個人的な費消及び資産運用に充て、知人らに対して金銭の貸付けをしていたことから、請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金から利益を享受していたというべきである。

  他方、請求人以外に利益を享受した者は、具体的には見当たらない。

  以上の状況に、上記Aの(C)のとおり請求人が本件各店舗の売上げに係る現金及び預金を管理していたことを併せてみれば、請求人がこれらの資金を自由に処分することができる立場にあったとみるべきである。

 

 

C 本件各店舗に係る出資について

 上記イの(ヘ)のとおり、K店の開店における出資が請求人によってなされたものであること、上記イの(ハ)のとおり、その後の店舗等の開店、移転等の費用の支出について、請求人が本件各店舗の売上げを原資とする資金及びそれを用いた請求人の個人的な資産運用に係る資金を基に支払っていること、他に出資をした者は具体的には見当たらないことから、出資に係る資金の負担者は請求人であったとみるべきである。

 D 請求人の申述及び答述等について

 

(A) 請求人の本件調査担当者及び異議審理庁に対する各申述並びに当審判所に対する答述のうち、本件各年における本件各店舗の経営者の特定に関する部分以外の経営状況に関する部分については、上記1の(4)の各事実及び上記イにおいて認定した各事実並びに客観的事実及び証拠との間に矛盾がなく、また、本件調査の開始当初からその申述及び答述趣旨は一貫しており、信用することができる。

 

(B) 他方、請求人の本件調査担当者及び異議審理庁に対する各申述並びに当審判所に対する答述のうち、本件各年における本件各店舗の経営者の特定に関する部分については、請求人は、本件調査当初の自己が本件各年における本件各店舗の経営者である旨の自認を、本件調査中の平成25年12月4日以降翻して、別の者が、更にP11が経営者である旨述べた上、P11が本件各年における本件各店舗の経営者であることを証する資料として、平成26年1月15日に、異議審理庁に対し、同月6日付の営業権利譲渡契約書の写し(以下「本件営業譲渡契約書」という。)を、同年7月2日に、当審判所に対し、同年1月6日付の領収証の写し(以下「本件領収証」という。)をそれぞれ提出した。

  また、請求人から本件各店舗の経営者であると名指しされたP11も、異議審理庁に対する申述及び当審判所に対する答述において、自己が本件各年における本件各店舗の経営者である旨述べた上、そのことを証する資料として、平成26年2月12日、異議審理庁に対し、平成18年8月28日付の念書の写し(以下「本件念書」という。)及び本件営業譲渡契約書を提出した。

 

 以下、本件営業譲渡契約書、本件領収証及び本件念書を併せて「本件各書類」という。

 

  しかしながら、請求人が経営者である旨の自認を翻した請求人の申述及び答述並びに本件各書類については、次に述べるとおり信用性がなく、上記AからCまでの状況から請求人が本件各年における本件各店舗の経営者であることを推認することを妨げるものではない。

 

a P11の経営への関与等の状況について

 上記Aで認定した本件各年における本件各店舗に係る経営上の行為に関する状況(法律行為等の名義人に係る状況、従業員の雇用、監督の状況、収支の管理状況)には、本件各年における本件各店舗の経営者がP11であったことを示すものは見当たらず、また、上記Bのとおり、請求人が、本件各年において本件各店舗から生じる利益をもって個人的な費消に充て、個人としての資産運用を図り、知人らに対して金銭の貸付けをしていたことからすると、本件各店舗の経営者がP11であったとみることは不自然、不合理である。

 

 b 請求人の申述及び答述の変遷について

(a) 請求人は、本件調査の開始当初は、本件調査担当者に対し、本件各店舗は請求人の指揮、命令、監督の下で営業を行っていた旨、本件各店舗の日々の営業の終了後、日報等及び当日の現金残額が請求人の下に集められ、請求人が現金を保管し、日報等を基に本件各ファイルを作成していた旨、本件各店舗の店長が飽くまで各店舗の経営者であるかのように装って風俗営業許可を取得して、申告も請求人の判断により店長名義で行っていた旨、本件各店舗から生じる利益で株式への投資や個人的な貸付けを行っている旨申述するとともに、自己が本件各年における本件各店舗の経営者である旨申述していたところ、平成25年11月13日、本件調査担当者が、請求人及び請求人の関与税理士であるP14税理士に対し、所得税に係る調査の対象年分は平成18年分以降である旨を改めて説明すると、P14税理士は、本件調査担当者に対し、「税務署側である程度の数字を出してもらってから話をしていきたい。」旨申述した。

  そして、平成25年12月4日、本件調査担当者が、請求人に対し、その時点で推計の方法により算定した本件各年分のおおよその事業所得の金額の合計額は約XXX,XXX,XXX円となり、これにより納付すべきこととなる所得税の合計額はXX,XXX,XXX円からXX,XXX,XXX円程度の金額になる旨を示したところ、請求人は、「平成21年2月までは、K店及び旧Q店の経営者は、請求人とは別の者であったことを忘れていた。その者が当該各店舗を手放したので、それ以降、当該各店舗が請求人の店舗となった。裏付け資料はない。」という趣旨の申述をした。

 

 さらに、異議申立て及び本件審査請求において、請求人は、「上記の別の者とはP11という者であり、本件各年における本件各店舗の実質経営者はP11であった。」旨、更に申述及び答述を変遷させた。

 

 (b) 上記の申述及び答述の変遷の理由について、請求人は、当審判所に対し、「当初はオーナーの名前を出せず税金を被るつもりでいたが、調査担当者から聞いた大まかな追徴税額がばくだいなものだと思っていたところ、平成21年2月頃にP11と請求人との間で収益の授受の方法が変更されたことを思い出し、平成18年から平成21年2月までの間だけでも別の者が経営者であったことを認めてもらえば、追徴税額は半分位で済むだろうと考え、思いつきで言った。」旨答述し、また、「税務署からの更正決定処分により約XX,XXX,XXX円を納付すべきこととなったため、P11に対して助けを求めたところ、P11が『私の名前を出しなさい。それと、店はもういらない。』と言ったので、P11が実質経営者であると言えるようになった。」旨答述する。

  しかしながら、これらは要するに、前者に関しては本件調査担当者が示した所得税の納付税額がXX,XXX,XXX円を超える見込みであり、後者に関しては原処分による所得税及び消費税等の納付税額が約XX,XXX,XXX円であるという、いずれも高額な税の負担を提示されたので翻意したというにすぎず、上記の申述及び答述の変遷について、合理的な理由があるとはいえない。

 

 

c 本件各書類並びにP11の申述及び答述について

 

(a) 請求人は、平成25年12月4日、本件調査担当者に対し、本件各店舗の経営者についての説明を、平成21年2月まではK店及び旧Q店の経営者が請求人とは別の者で、その者が当該各店舗を手放したので、それ以降、当該各店舗が請求人の店舗となった旨、また、裏付け資料はない旨申し述べたが、異議審理庁に対しては、上記別の者とはP11であるとした上で、平成26年1月15日、本件各年における本件各店舗の経営者がP11であることを証する資料として、本件営業譲渡契約書を提出した。

  本件営業譲渡契約書には、請求人及びP11の署名及び押印があり、平成26年1月1日をもって当該各店舗の営業の権利をP11が請求人に譲渡する旨記載されているが、譲渡価額については記載されていなかった。

 

(b) 請求人から本件各店舗の経営者と名指しされたP11は、平成26年2月5日、異議審理庁に対し、同年1月までは自己が本件各店舗のオーナーであった旨申述したが、金をどこで受け取っていたのかという質問に対して「言えん。」と申述するなど経営に関する具体的な説明はなく、店舗の権利を請求人に譲渡した際の金銭の授受についても「ない。」と申述し、否定していた。

  また、P11は、平成26年2月12日、異議審理庁に対し、「J」店について、請求人の署名及び押印があり、P11の許可なしに営業の権利を譲渡することを禁止すること及び請求人は責任者として現金を管理し毎月10日までに現金出納帳を作成して利益を全てオーナーであるP11に支払うことを請求人がP11に約束する旨記載された本件念書及び本件営業譲渡契約書を提示したが、P11は、本件営業譲渡契約書の作成時期及び作成場所に関する質問に対して「どこでもええが。」と申述し、平成25年12月分の利益の受取状況に関する質問の途中で、「そんなのはええが。」と申述し、本件念書について説明をしないまま退室し、この際も経営に関する具体的な説明はなかった。

 

(c) 請求人は、平成26年7月2日、当審判所に対し、本件営業譲渡契約書におけるK店及び新Q店の営業の権利の譲渡価額を証する資料として、宛名を請求人、金額を10,000,000円、ただし書に「営業権利売」と記載された本件領収証を提出した。

 

(d) P11は、当審判所に対し、「(最初の店舗の開業資金はいくらかという質問に対して)請求人の言うとおりにして。」、「(各店舗の営業上の指示を請求人にしていたかという質問に対して)ない。請求人がどう言っているか分からないが。」、「(店舗の収支報告に関する質問に対して)本人から月1回電話で報告を受けていた。5年くらい前からだったと思うが分からん。それまでは書類を持ってきていたが、どこで会ったか場所は忘れた。請求人がどう言っているか分からんけど。」、「(各店舗の利益の受領方法に関する質問に対して)開業した当時から月に200,000円もらっていた。多くもらったこともあったかもしれないが、自分からもっとよこせということはなく、請求人が持ってきた分だけである。請求人がどう言っているか分からんけど。受け取った場所は駅の周辺で、代理人から受け取っていた。」などと答述した。

 

(e) 上記(a)から(c)までの請求人及びP11からの本件各書類の一連の提出経緯及び状況は、真実P11が本件各年における本件各店舗の経営者であり請求人に対してK店及び新Q店を譲渡したとみるには不自然である。

  すなわち、本件営業譲渡契約書の記載内容自体、譲渡価額の記載がないという不自然な点を有することに加え、これに係るK店及び新Q店の譲渡に関して請求人が本件領収証を提出したものの、P11はこれらの譲渡に際しての金銭の授受を否定しており、請求人の説明及び本件領収証の記載は、譲渡の当事者で本件領収証を発行した者であるはずのP11の説明と本質的な点で矛盾している。

  このように、本件営業譲渡契約書及び本件領収証の提出経緯並びに本件営業譲渡契約書の記載内容及びそれと本件領収証との相互関係が不自然であり、また、これらの作成ないし譲渡の両当事者である請求人とP11の説明が矛盾していることからは、本件営業譲渡契約書及び本件領収証が真実の法律関係に即して作成されたものであるとみることはできず、信用することはできない。

  また、このように、本件営業譲渡契約書及び本件領収証は信用することができないものであることに加えて、P11が、上記(b)のとおり経営状況及びこれらの書類のいずれについても作成経緯等に関し具体的な説明をしてもおらず、退室により回答を回避する態度もみられること、上記(d)のとおり請求人の説明内容を慮る態度がみられることからは、本件念書が請求人とP11の関係の実態に即して作成されたものと認める根拠がなく、信用することはできない。

 

 さらに、自己が経営者である旨のP11の上記申述及び答述も、具体的な内容を伴うものではなく、信用できるものではない。

 

(C) 以上のとおり、請求人の申述及び答述のうち、別の者又はP11が経営者である旨述べる部分並びに本件各書類は信用できない。

  また、請求人が別の者又はP11が経営者であるとの前提で上記1の(4)の各事実及び上記イにおいて認定した各事実並びに上記AからCまでと矛盾する申述及び答述をする部分も信用することができない。

 

 

 E 結論

  上記AからCまでのとおり、請求人が本件各年における本件各店舗の法律行為等について自らの名義又は自ら決定した借名を用いて行い、従業員を雇用、監督し、収支を管理し、本件各店舗から生じた利益を享受していたこと、また、本件各店舗に係る開店及び移転の各費用並びに出資に係る資金の負担者が請求人であったことから、本件各年における本件各店舗の経営者は請求人であったと認められる。

  したがって、本件各店舗の事業に係る所得(事業所得)の帰属先は請求人であると認められる。

 

(ロ) 請求人の主張について

 上記2の(1)の「請求人」欄のとおり、請求人は、本件各年における本件各店舗の経営者はP11であるから、本件各店舗の事業に係る所得の帰属先は請求人ではない旨主張する。

 

 しかしながら、上記(イ)のEのとおり、本件各年における本件各店舗の経営上の行為の状況、利益の享受状況及び出資の状況から、本件各店舗の経営者は請求人であったと認められるから、本件各店舗の事業所得の帰属先は請求人であると認められ、実質経営者はP11である旨の請求人の申述及び答述、本件各書類並びにP11の申述及び答述が信用することができないことは、上記(イ)のDの(C)のとおりである。

  したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。