電子帳簿保存法(1)

 

 

 

 

問1 電子帳簿保存法はどのような内容となっていますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)の概要は次のとおりです。

 

 

(1) 国税関係帳簿書類のうち電子計算機を使用して作成している国税関係帳簿書類については、税務署長等の承認を受けた場合には、一定の要件の下で、電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルム(以下「COM」といいます。)による保存等(国税関係帳簿の場合には備付け及び保存をいいます。以下同様となります。)が認められます(法4、5)。

 

 

  また、取引の相手先から受取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し(国税関係書類(決算関係書類を除きます。))について、税務署長等の承認を受けた場合には、書面による保存に代えて、一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められます(法43)。

 

 

(2) 所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者がいわゆるEDI取引等の電子取引を行った場合には、電子取引に係る取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項)を電磁的記録又はCOM若しくは書面により保存しなければなりません(法10)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電子帳簿保存法は、納税者の国税関係帳簿書類の保存に係る負担の軽減等を図るために、その電磁的記録等による保存等を容認しようとするものですが、納税者における国税関係帳簿書類の保存という行為が申告納税制度の基礎をなすものであることに鑑み、あらかじめ税務署長等の承認を受け、かつ、適正公平な課税の確保に必要な一定の要件に従った形で、電磁的記録等の保存等を行うことが条件とされています。

 

 

  また、所得税法及び法人税法では、取引に関して相手方から受け取った注文書、領収書等や相手方に交付したこれらの書類の写しの保存義務が定められていますが、同様の取引情報を電子取引により授受した場合には、この注文書、領収書等の原始記録の保存が行われない結果となりかねない状況にあったため、電子帳簿保存法において、新たに電子取引に係る取引情報について保存義務が設けられたものです。

 

 

  加えて、当初の電子帳簿保存法では、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿及び自己が一貫して電子計算機を使用して作成する書類についての電磁的記録による保存等を認めていましたが、取引の相手先から紙で受取った請求書等についてのスキャン文書による保存は認めていませんでした。

 

 

その理由として、

 

1スキャン文書は電子データの特性として変更が容易であり、変更履歴を完全に保持するシステムがないこと、

 

2スキャニングにより書類に残された紙質、筆圧等の情報が消滅してしまい、不正把握の重要な端緒が消滅するなど証拠収集上の問題があることなど、帳簿書類保存制度の目的を損なわないような真実性・可視性を確保するための実効性のある条件を見出せない状況等がありました。

 

 

 このスキャン文書による保存については、

 

 

 平成17年度の税制改正により、電子署名、タイムスタンプにより、スキャン文書の変更等の検知が可能となったこと及びヴァージョン管理によるスキャン文書の変更履歴を保持することが可能になったことなどから、認めることとなりました(契約書等については、記載された契約金額又は受取金額が3万円未満のものについて認めることとなりました。)。

 

 

 

  また、平成27年度の税制改正により、平成27年9月30日以後に行う承認申請から、次のような改正がされました。 

 

 

1 契約書等に係る金額基準(3万円未満)を廃止し、適正な事務処理を担保する規程の整備等が要件とされたこと。

 

 

2 契約書等について、業務サイクル後速やかに入力を行っている場合の関連する国税関係帳簿の電子保存の承認要件を廃止したこと。

 

 

3 入力者等の電子署名を不要とし、タイムスタンプを付すとともに、入力者等情報の確認を要件としたこと。

 

4 いわゆる一般書類(規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類)については、その書類の大きさに関する情報の保存を不要とし、カラーではなくグレースケールでの保存でも要件を満たすこと。