米国デラウェア州法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップ(3)





 先日に引き続き地裁の裁判例を検討します。

















 第3 当裁判所の判断



  1 本案前の争点(本件予備的追加的変更に係る訴えの適法性・B事件)について




 (1) 前記前提事実(3)イ(ア)記載のとおり,原告X2は,平成14年分の所得税について,平成16年3月15日付けで更正の請求をし,これに対し,刈谷税務署長は,平成17年2月25日付けで,更正をすべき理由がない旨の通知処分(原告X214年分通知処分)を行い,さらに,同月28日付けで申告納税額を増額する更正処分(原告X214年分更正処分)を行った。


  このように,同一年分の所得税について,更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分と申告納税額を増額する更正処分が併存する場合,いずれの処分を取消訴訟の対象とすべきかが問題となるが,通知処分は申告納税額が正当であるとするものであるのに対し,増額更正処分は納付すべき税額全体に関わり,申告納税額を正当でないものとして否定し増額の更正を加えることにより税額の総額を確定するものであるから,増額更正処分の内容は通知処分の内容を包摂する関係にあるといえる。それゆえ,通知処分は増額更正処分に吸収され,後者のみが訴訟の対象となると解すべきである。


  したがって,原告X2の平成14年分の所得税についても,予備的追加的訴えの変更により主位的請求とされた原告X214年分通知処分ではなく,予備的請求とされた原告X214年分更正処分が訴訟の対象とされるべきことになる。






  (2) 通則法115条1項は,国税に関する法律に基づく処分の取消訴訟について,不服申立て前置の原則を採用しているところ,前記前提事実(3)イ(ア)記載のとおり,原告X2は,原告X214年分更正処分について,異議申立て及び審査請求を行わずに,その取消訴訟を提起しているため,かかる不服申立ての手続を経ないことにつき,同項3号の正当な理由があるか否かが問題となる。


  そこで検討するに,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,


①原告X2は,平成15年3月17日,平成14年分の所得税について確定申告を行ったが,本件LPS(P)を通じて行った本件不動産賃貸事業(P)から生ずる損失が原告X2の不動産所得に当たり損益通算を行うことができるものであったとして,平成16年3月15日,刈谷税務署長に対し,更正の請求をしたこと,


②これに対し,刈谷税務署長は,平成17年2月25日付けで,上記損失は原告X2の不動産所得には当たらないとして,更正をすべき理由がない旨の通知処分(原告X214年分通知処分)をしたこと,


③さらに,刈谷税務署長は,同月28日付けで,原告に対し,原告が上記確定申告において損益通算を行っていた船舶リース事業で発生した損失(船舶リース事業損失)は損益通算の対象にならないとして,増額更正処分である原告X214年分更正処分をしたこと,


④原告X2は,原告X214年分通知処分については,所定の不服申立て期間内に異議申立て及び審査請求をし,平成19年1月22日付けで国税不服審判所長から審査請求を棄却する旨の裁決を受けたが,原告X214年分更正処分については,船舶リース事業損失が損益通算の対象にならないとの刈谷税務署長の判断を争わず,異議申立て及び審査請求をしなかったこと,


⑤原告X2は,同年6月14日,原告X214年分通知処分等の取消しを求めるB事件に係る訴えを提起したこと,


刈谷税務署長は,船舶リース事業損失は損益通算の対象になるとして,従来の判断を改め,平成20年5月14日付けで,原告X2に対し,減額更正処分をしたこと,


⑦原告X2は,当裁判所から,平成14年分の所得税について取消訴訟の対象とすべきものは,原告X214年分通知処分ではなく,原告X214年分更正処分となるのではないかとの釈明を受け,平成21年10月26日付け訴えの変更申立書により,原告X214年分通知処分の取消訴訟を主位的請求とし,予備的請求として,原告X214年分更正処分の取消訴訟(本件予備的追加的変更に係る訴え)を追加したことが認められる。



  原告X214年分通知処分と原告X214年分更正処分は,処分としては別個のものであるが,前記(1)で判示したとおり,増額更正処分の内容は更正をすべき理由がない旨の通知処分の内容を包摂する関係にあり,上記認定の本件予備的追加的変更に係る訴えが追加されるに至る経緯に鑑みると,原告X2は,当初から一貫して,本件不動産賃貸事業(P)から生ずる損失は原告X2の不動産所得に当たらないとの刈谷税務署長の判断を不服として,その救済を求めてきたことが認められるのであるから,原告X214年分更正処分につき不服申立ての前置がされていないという形式的な理由で,その訴えを不適法なものとすることは,原告X2に酷に過ぎるものといわざるを得ない。他方,本件予備的追加的変更に係る訴えを適法なものと扱うことによって,司法審査に先立ち課税庁に処分の適否につき見直しの機会を与え,紛争の自主的な解決を図り,大量的かつ回帰的にされる課税処分について訴訟の氾濫を防ぐなどといった課税処分につき不服申立て前置の原則が採用された趣旨を損なうおそれはないものと認められる。

  以上のような事情の下では,原告X214年分更正処分につき不服申立てを経ることなく本件予備的追加的変更に係る訴えを提起することについて,通則法115条1項3号の正当な理由があると認めるのが相当である。




  (3) また,上記(2)で認定した事実関係の下においては,原告X214年分更正処分の取消しを求める訴えは,原告X214年分通知処分の取消しを求める訴えが提起された時から既に提起されていたものと同視するのが相当であり,出訴期間の遵守に欠けるところがないものと解すべきである。




  (4) 以上によれば,原告X214年分更正処分の取消しを求める本件予備的追加的変更に係る訴えは,適法である。これと異なる被告の主張は採用することができない。

  他方,原告X214年分通知処分の取消しを求める訴え(主位的請求)については,訴えの利益を認めることができず,不適法であるといわざるを得ない。










  2 本案の争点(本件各処分の適法性=所得税法69条1項に基づく損益通算の可否・全事件)について



 (1) 判断の枠組み


 ア 我が国の租税法の規定等を通観すると,次の点を指摘することができる。


  すなわち,我が国の租税法上,内国法人に対しては,原則として,各事業年度の所得につき各事業年度の所得に対する法人税を,清算所得につき清算所得に対する法人税を課し(法人税法5条),外国法人に対しては,原則として,各事業年度の所得のうち所定の外国法人の区分に応じ所定の国内源泉所得に係る所得につき各事業年度の所得に対する法人税を課するとされており(同法9条),法人には,その事業(取引)の損益が帰属することを前提として,その所得に対する法人税が課されている。これに対し,法人の構成員である個人については,配当所得(法人から受ける利益の配当,剰余金の分配[出資に係るものに限る。]など所得税法24条1項所定の「配当等」に係る所得)として所得税が課され(同法7条1項1号ないし3号),当該個人が居住者の場合,その年中の配当等の収入金額を配当所得の収入金額とし(同法24条2項),これを基礎として計算した総所得金額等(同法21条1項2号,22条2項1号)に基づき所得税の額が計算される(同法21条1項4号)など,上記所得の帰属主体である法人から受ける利益の配当や剰余金の分配で出資に係るものによる所得に所得税が課されている。



そして,この点は,その事業体が人格のない社団等に該当する場合においても,法人とみなされて法人税法の規定が適用されることから,同様である(同法2条8号,3条,所得税法2条1項8号,4条)。




また,法人及び人格のない社団等のいずれにも該当しない事業体には,当該事業体の行う事業活動から生じた損益について,当該事業体自体に法人税を課す旨の規定を設けていないから,これに対する法人税として課税はされず(法人税法4条1項参照),その構成員に対する所得税又は法人税としての課税がされることとなる(以下,当該課税を「構成員課税」という。)。




例えば,法人及び人格のない社団等に該当しない事業体の典型例である民法667条の規定による組合(以下「任意組合」という。)の事業に係る利益等の帰属時期やその額の計算については,所得税法及び法人税法上の明文規定はないものの,組合に対して,法人税は課されず,当該組合の事業の損益が構成員に帰属することを前提として,その構成員に所得税又は法人税が課されている。




  このように,ある事業体の事業から生じた収益がその構成員に分配された場合において,その構成員に対し課税がされるか否かは,第1次的には当該事業体が法人に該当するか否かにより判断され,これに該当しない場合に人格のない社団等に該当するか否かが問題となり,いずれも否定される場合に初めて構成員課税がされることになる。そして,法人と人格のない社団等とは,いずれも法人税の納税義務者でありながら法人格の有無が決定的に異なり,また,人格のない社団等と任意組合のような法人及び人格のない社団等のいずれにも該当しない事業体とは,いずれも実質的にはその構成員の財産とは別個独立の財産を有すると解されるものでありながら,事業の損益の帰属主体となり得る実体の有無が異なるため,法人税の納税義務者になるか否かの結論を異にするものと解される。





  上記の点に加えて,所得税及び法人税を,事業の収益の実質的な帰属主体に課すとする実質所得者課税の原則(所得税法12条,法人税法11条)に鑑みても,ある事業体が法人税の納税義務者になるか否か(逆にいえば構成員課税を行うか否か)の実質は,当該事業体がその事業の損益の帰属主体となり得る実体を有するか否かにあるということができる。



  これらの点を総合すれば,我が国の租税法は,法人が,法律により,法人格を付与されて構成員とは別個の(いわば自然人と同様の)権利義務の主体とされ,損益の帰属すべき主体(逆にいえば,その構成員に直接その損益が帰属することが予定されない主体)として設立が認められたものであり,また,人格のない社団等も,法人格は有しないものの,法人と同様に,損益の帰属すべき主体としての組織を備え存続する団体であることから,いずれも,当該法人や人格のない社団等を法人税の納税義務者とし,それぞれの各構成員には当該所得に対する構成員課税を行わないこととしたものと解される。




  イ そうすると,本件において,原告らが主張する本件各不動産賃貸事業から生じた損失の損益通算の可否,より具体的には,本件各不動産賃貸事業から生じる損益が原告ら投資家の不動産所得に該当するか否かを判断するに当たっても,その事業主体とされる本件各LPSが,我が国の租税法上の法人又は人格のない社団等に該当する場合には,当該損益は,本件各LPSに帰属することになるのであって,不動産所得の性質を有したまま直接原告ら投資家に帰属することはないというべきであるから,当該損益の不動産所得該当性を検討するに先立ち,本件各LPSの我が国租税法上の法人該当性や,人格のない社団等への該当性を検討すべきこととなる。






  (2) 本件各LPSの租税法上の法人該当性について



 ア 判断基準


  (ア) 別紙3関係法令等の定め記載のとおり,民法33条(現民法33条1項)は,法人は民法その他の法律の規定によらなければ成立しない旨を定め,法人の成立(法人格の付与)は,法律の定めによってのみ認められることを明らかにしている(法人法定主義。なお,現民法33条2項は,公益を目的とする法人,営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立,組織,運営及び管理については,民法その他の法律の定めるところによる旨を規定し,その趣旨を更に明確にしている。)。これを受けて,個々の団体の成立の根拠となる準拠法は,例えば,会社法3条が「会社は,法人とする。」と規定し,消費生活協同組合法4条が「消費生活協同組合(中略)は,法人とする。」と規定する等,当該団体に法人格を付与する場合には,これを法人とする旨の明文の規定を設けている。


  この点,我が国の租税法は,法人の意義に関して,内国法人を国内に本店又は主たる事務所を有する法人,外国法人を内国法人以外の法人と定義するにとどまり,法人自体の意義を定義した規定はない。


  しかしながら,租税法律主義(憲法84条)の下では,課税要件の定めは明確でなければならないこと,租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には,租税法律主義や法的安定性の確保の観点から,本来的に私法上の概念と同じ意義に解するのが相当であることをも併せ考慮すれば,我が国の租税法上の法人も,その準拠法によって法人とする(法人格を付与する)旨を規定されたものをいうと解すべきである。


  すなわち,我が国の国内法に準拠して組成された事業体を租税法上の法人であるというためには,その準拠法である民法その他の法律によって法人とする旨を規定されたものであることを要し(民法33条),他方,民法その他の法律によって法人とする旨を規定されていない任意組合,人格のない社団等その他の事業体は,例えそれらが民法その他の法律によって法人とする旨を規定されたものと類似した属性を有するとしても,我が国の私法上の法人と認められる余地はない。


  これに対し,民法36条1項の「外国法人」とは,外国の法令に準拠して法人として成立した団体,すなわち外国の法令に準拠して法人格を付与された団体をいうと解されるから,外国の法令に準拠して組成された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かも,基本的には,当該外国の法令の規定内容から,その準拠法である当該外国の法令によって法人とする(法人格を付与する)旨を規定されていると認められるか否かにより判断されるべきである。


  もっとも,諸外国の法制・法体系は様々であり,我が国の「法人」概念に相当する概念が諸外国において形成されるに至った沿革や背景事情等も多様であると考えられることから,当該外国の法令の規定内容をその文言に従って形式的に見るだけでは,当該外国の法令において当該事業体を法人とする(当該事業体に法人格を付与する)旨が規定されているのかどうか直ちに判別できない場合もあり,結局,そのような場合も含めて,外国の法令に準拠して組成された事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かについては,より実質的な観点から,当該事業体を当該外国法の法令が規定する内容を踏まえて我が国の法人と同様に損益の帰属すべき主体(その構成員に直接その損益が帰属することが予定されない主体)として設立が認められたものといえるかどうかを検証する必要があり,この点が肯定されて初めて,我が国の租税法上の法人に該当すると解すべきである。



  (イ) 被告は,外国の法令によって組成された事業体が我が国の租税法上の「法人」に該当するか否かは,具体的には,当該事業体の設立準拠法の内容のみならず,実際の活動実態,財産や権利義務の帰属状況等を考慮した上,個別具体的に,我が国の私法において法人に認められる権利能力と同等の能力を有するか否か,すなわち,当該事業体が,


①その構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有するか否か,


②その名において契約を締結し,その名において権利を取得し義務を負うなど独立した権利義務の帰属主体となり得るか否か,


③その権利義務のためにその名において訴訟当事者となり得るか否かに基づいて判断すべきである旨主張する。



  しかしながら,被告が法人該当性の判断基準として主張する上記①ないし③の点は,いずれも法人格が付与されることによって認められる法人の属性にすぎず,これらを満たせば法人に該当するというその立論に法的な根拠はないといわざるを得ない。


殊に,独立した権利義務の主体となることが認められるのが正に法人なのであるから,法人該当性の判断基準として上記②の基準を掲げるのは,それ自体基準として不合理であるといわなければならない。また,被告の主張によれば,外国の事業体についてのみ,その準拠法上の法人格の有無という画一的な基準によることなく,個別具体的な実質判断を行うこととなり,内国法人の場合の判断基準と相違する結果となるから,法的安定性の観点からも許容できない。

  したがって,被告が主張する上記判断基準は採用することができない。




  (ウ) 以上によれば,本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するか否かについては,前記(ア)のとおり,基本的には,当該外国の法令の規定内容から,その準拠法である当該外国の法令によって法人とする旨を規定されていると認められるか否かという観点からこれを検討し,さらに,より実質的な観点から,当該外国の法令が規定する内容を踏まえて,当該事業体が我が国の法人と同様に損益の帰属すべき主体として設立が認められたものといえるかどうかを検証するのが相当であると解される。



  イ 本件各LPSの準拠法(州LPS法)の概要


  前記前提事実及び証拠(甲A全84,乙A全25)及び弁論の全趣旨によれば,本件各LPSは,州LPS法その他のデラウェア州の法律に準拠する本件各LPS契約に基づいて組成されたものであると認められるところ,州LPS法の概要は以下のとおりであると認められる(なお,邦訳に争いがあるものは,本文に被告主張の邦訳を記載し,原告ら主張の邦訳を注記した。)。


  (ア) 定義


  a ジェネラル・パートナーとは,パートナーシップ契約に基づきLPSのジェネラル・パートナーとして認められ,かつ,LPS証明書又は(必要とされる場合には)LPSの成立のよりどころになる類似の法律文書で指名された者を意味する(101条(5))。


  b リミテッド・パートナーとは,301条に基づき,LPSのリミテッド・パートナーと認められた者を意味する(101条(8))。


  c LPSとは,デラウェア州法の下で2人以上の者によって組織され,かつ,1名以上のジェネラル・パートナーと1名以上のリミテッド・パートナーで構成されたリミテッド・パートナーシップを意味し,更にデラウェア州法の下では,リミテッド・ライアビリティ・リミテッド・パートナーシップを含むものとする(101条(9))。


  d パートナーとは,リミテッド・パートナー又はジェネラル・パートナーを意味する(101条(11))。


  e パートナーシップ契約とは,LPSの業務及び営業に関するパートナー全員の書面又は口頭による合意を意味する(101条(12))。


  f パートナーシップ持分(Partnership Interest)とは,LPSの損益に対して各パートナーが保有する持分及びLPSの資産(partnership assets)の分配を受ける権利をいう(101条(13))。


  g 者(Person)とは,自然人,(無限責任又は有限責任を問わない。)パートナーシップ,LLC,信託,財団,社団(corporation),企業,受託者,受取人又はその他の個人若しくはエンティティ(entity)であって本人又はその代理人の資格を有するものを意味する(101条(14))。



  (イ) 訴状・召喚状の送達


  LPSに対する訴状・召喚状は,LPSの経営代理人,総代理人若しくはジェネラル・パートナー等に対して直接写しを手渡すことにより,又は,これらの者のデラウェア州内の住居等に送付することにより,送達されたものとみなされる(105条(a))。



  (ウ) 認可事業の性格及び権限


  a LPSは,デラウェア州法第8編コーポレーション法の126条に規定されている保険担保権を発行する事業,保険リスクを引き受ける事業及び銀行業を除き,営利目的か否かを問わず,いかなる合法的な事業,目的又は活動をも実施することができる(106条(a))。


  b LPSは,本章(デラウェア州法第6編第17章,すなわち州LPS法。以下同じ。)若しくはその他の法律又は当該LPSのパートナーシップ契約により付与された全ての権限及び特権並びにこれらに付随するあらゆる権限(当該LPSの事業,目的,活動の実行,促進及び達成のために必要又は好都合な権限や特権を含む。)を保有し,それを行使することができる(106条(b))。




  (エ) LPS証明書


  a LPSを設立するためには,1名以上の者(persons)(ジェネラル・パートナーの合計数を下回らない数とする。)がLPS証明書を履行(作成・登録の意味と解される。)しなければならない。LPS証明書には次の事項を記載し,州務長官登録局に登録するものとする(201条(a))。


  (a) LPSの名称


  (b) 登録された事務所の所在地及び本編の104条によって記載が義務付けられている訴状・召喚状の送達のための登録代理人の名称及び住所


  (c) 各ジェネラル・パートナーの名称,事務所若しくは居住地の住所又は郵送用の住所


  (d) パートナー全員がLPS証明書に記載するものと決定したその他の事項



  b LPSは,最初のLPS証明書が州務長官登録局に登録された時点又はLPS証明書に記載された(当該登録後の)日付にて設立される(formed(注)「組成される」)ものとし,いずれの場合においても,本項の要件を完全に満たすものでなければならない。本章に基づき組織されたLPSは,独立した法的主体(separate legal entity)となり,その独立した法的主体(separate legal entity)としての地位は,当該LPSのLPS証明書が解除されるまで継続する(201条(b))。



  c LPS証明書が州務長官登録局に登録されているという事実は,当該パートナーシップがLPSであることを通告するものであるとともに,本編の201条(a)(1)ないし(3)(上記a(a)ないし(c))及び202条(f)においてLPS証明書への記載が義務付けられている全ての事実並びに本編の218条(b)においてLPS証明書への記載が認められている事実が記載されているということを通告するものである(208条)。




  (オ) リミテッド・パートナーの資格付与


  LPSの設立(the formation)に関連し,主体(person)は,次の事象のうちいずれか遅い方が発生した時に,LPSのリミテッド・パートナーとしての資格を付与される(301条)。


  a LPSの設立(the formation)


  b パートナーシップ契約に規定された日時。パートナーシップ契約に規定されていない場合には,LPSの記録に当該者(person)への資格付与が記載された時




  (カ) リミテッド・パートナーの第三者に対する責任


  リミテッド・パートナーは,自己がジェネラル・パートナーでもある場合又はリミテッド・パートナーとしての権利や権限の行使に加えて当該事業の経営管理に関与している場合を除き,LPSの債務を弁済する責任を負わない。ただし,リミテッド・パートナーが事業の経営管理に関与する場合でも,リミテッド・パートナーの行為に基づきリミテッド・パートナーがジェネラル・パートナーであるものと合理的に信じてLPSと取引をした者に対してのみ,責任を負う(303条(a))。




  (キ) ジェネラル・パートナーの一般的な権限と責任


  a 本章又はパートナーシップ契約で規定されている場合を除き,LPSのジェネラル・パートナーが有する権利や権限には,1999年7月11日時点で有効なデラウェア州統一パートナーシップ法(1999年改正前の州GPS法)に規定されるパートナーシップのパートナーに対する制限が適用される(403条(a))。

  

 b 本章で規定されている場合を除き,LPSのジェネラル・パートナーは,1999年7月11日時点で有効なデラウェア州統一パートナーシップ法(1999年改正前の州GPS法)に準拠するパートナーシップにおけるパートナーとしての責任を当該パートナーシップ以外又は他のパートナー以外の者ら(persons)に対して有する(403条(b)前段)。




  (ク) 損益の分配


  LPSの損益は,パートナーシップ契約の規定に従い,パートナー並びにパートナーのクラス及びグループの間で割当てが行われる(shall be allocated)。パートナーシップ契約にその定めがない場合,損益は,各パートナーによって拠出された出資(LPSによって受領され,かつ返還されていないものに限る。)に関して(当該LPSの記録上の)合意された価額に基づき割当てが行われる(shall be allocated)(503条)。




  (ケ) ジェネラル・パートナーの脱退


  ジェネラル・パートナーは,パートナーシップ契約で特定されている事象の発生時に,パートナーシップ契約に基づきLPSから脱退することができる。パートナーシップ契約は,ジェネラル・パートナーがLPSのジェネラル・パートナーとしての地位から脱退する権利を有しないと規定することもできる。しかしながら,パートナーシップ契約においてLPSのジェネラル・パートナーがその地位から脱退する権利を有しないと規定されている場合でも,ジェネラル・パートナーは,他のパートナーに書面による通知を行うことにより,いつでもLPSから脱退することができる。ジェネラル・パートナーの脱退がパートナーシップ契約の違反となる場合,準拠法の下で適用される救済策に加え,LPSは,脱退するジェネラル・パートナーからパートナーシップ契約の違反に係る損害賠償を受けることができ,当該損害賠償金によって脱退するジェネラル・パートナーへの配当額を相殺することができる(602条)。




  (コ) リミテッド・パートナーの脱退


  リミテッド・パートナーは,パートナーシップ契約に特定された事象の発生時にのみパートナーシップ契約に基づきLPSから脱退することができる。準拠法の下で別段の定めがある場合においても,パートナーシップ契約に別段の定めがある場合を除き,リミテッド・パートナーは,LPSの解散や清算前にLPSから脱退してはならない。準拠法の下で別段の定めがある場合においても,パートナーシップ契約は,パートナーがLPSに対する自己の持分をLPSの解散や清算前に譲渡することを禁止することができる(603条)。




  (サ) 脱退時の配当


  脱退するパートナーは,本節に規定されている場合を除き,パートナーシップ契約に基づき受領資格のある配当を脱退時に受領することができ,当該パートナーは,パートナーシップ契約に別段の定めがある場合を除き,脱退後の合理的な期間内において,当該パートナーのLPSに対するパートナーシップ持分の脱退日における公正価額を,LPSからの配当の分配を受ける権利に基づき,LPSから受領することができる(604条)。




  (シ) パートナーシップ持分の性質


  パートナーシップ持分は,動産(personal property)である。パートナーは,特定のLPS財産(specific limited partnership property)に対していかなる持分も所有しない(701条)。




  (ス) パートナーシップ持分の譲渡


  当該パートナーシップ契約に別段の定めがある場合を除き,①パートナーシップ持分は,その全部又は一部を譲渡することができ,②パートナーシップ持分の譲渡は,LPSの解散や譲受人がパートナーとなったりパートナーの権利・権限を行使したりする資格を得るということを示すものではなく,③パートナーシップ持分の譲渡により,譲受人はその損益に対する持分を有し,配当を受領し,収益,利益,損失,控除,債権等に関して,譲受人による保有が認められているものについて保有が認められている程度の割当てを受けることができる(702条(a))。




  (セ) 譲受人がリミテッド・パートナーとなる権利


  パートナーシップ持分の譲受人(ジェネラル・パートナーの譲受人を含む。)は,以下のいずれかの条件を満たした場合,リミテッド・パートナーになることができる(704条(a))。


  a パートナーシップ契約にその旨規定されている場合


  b 全てのパートナーが同意した場合


  c リミテッド・パートナーとなった譲受人は,譲渡された範囲における権利・権限を有し,パートナーシップ契約及び本章に規定されるリミテッド・パートナーの責任・制限が適用される(704条(b))。





  (ソ) 裁判所の決定によらない解散


  LPSは,以下のいずれかの事由等が発生した時点で解散し,その事業は清算されるものとする(801条)。


  a パートナーシップ契約に規定された日時。当該日時がパートナーシップ契約で規定されていない場合,LPSは永続的な存在(a perpetual existence(注)「期限の定めのないもの」)となる(801条(1))。


  b パートナーシップ契約に別段の定めがある場合を除き,(Ⅰ)LPSのジェネラル・パートナー全員及び(Ⅱ)LPSのリミテッド・パートナー又はリミテッド・パートナーの複数のクラス若しくはグループが存在する場合にはそのクラス別若しくはグループ別の賛成投票若しくは書面による同意がある場合(801条(2))


  c ジェネラル・パートナーが脱退した場合(ただし,脱退の時点で別のジェネラル・パートナーが少なくとも1名存在し,残存するジェネラル・パートナーによって事業が続行されることがパートナーシップ契約で認められ,当該パートナーがその続行を行う場合等を除く。)(801条(3))


  d リミテッド・パートナーが存在しなくなった場合(ただし,最後のリミテッド・パートナーが脱退する原因となった事象の発生時より90日以内又はパートナーシップ契約で定められた期間内に,最後のリミテッド・パートナーの代理人及び全てのジェネラル・パートナーが,書面又は投票により,LPSの事業を継続することに同意し,最後のリミテッド・パートナーが脱退する原因となった事象の発生日をもって当該リミテッド・パートナーの代理人,被任命者又は被指名者を当該LPSのリミテッド・パートナーとして迎え入れることに同意した場合等の条件を満たした場合を除く。)(801条(4))





  (タ) 裁判所の決定による解散


  パートナーシップによる申立て又はパートナーのための申立てに基づき,衡平裁判所は,パートナーシップ契約を遵守した形での事業継続が合理的に不可能であると判断した場合,当該LPSを解散する旨の判決をすることができる(802条)。




  (チ) パートナーシップ契約の構築と適用


  契約における自由原則及びパートナーシップ契約の執行可能性に最大限の効果を与えるのが本章の狙いである(1101条(c))。




  (ツ) 州GPS法等の準用


  本章に規定されていないいかなる事例も,1999年7月11日時点で有効な(in effect)デラウェア州統一パートナーシップ法(1999年改正前の州GPS法),コモン・ロー及び衡平法(商事法を含む。)に準ずるものとする(1105条)。





  ウ 州LPS法に基づく法人該当性


  (ア) 上記イで認定した州LPS法の規定内容によれば,州LPS法上,州LPS法に準拠して組成されたLPSが法人である旨を明示的に定めた規定はないが,①州LPS法に基づき組織されたLPSは,独立した法的主体(separate legal entity)となる旨規定されており(201条(b)),加えて,②LPSは,州LPS法若しくはその他の法律又は当該LPSのパートナーシップ契約により付与された全ての権限及び特権並びにこれらに付随するあらゆる権限(当該LPSの事業,目的,活動の実行,促進及び達成のために必要又は好都合な権限や特権を含む。)を保有し,それを行使することができ(106条(b)),③パートナーは,特定のLPS財産(specific limited partnership property)に対していかなる持分も所有しない(701条)旨も規定されている。


  そこで,以下では,そのような州LPS法201条(b)の規定等をもって,州LPS法がこれに準拠して組成されたLPSを法人とする旨を定めたものと解することができるのか否か,とりわけ,州LPS法201条(b)の規定が独立した法的主体とする「separate legal entity」が,法人を意味する概念であると解されるのか否かという点を中心として,検討する。


  (イ) 一般に,租税条約は,各締結国の租税法規やその前提となる私法上の法制度の異なることを考慮した上で,各締結国の公用語によりそれぞれ正文が作成されるものであるから,租税条約の正文で同一概念を指すものとして用いられた各締結国の公用語による概念は,特段の事情がない限り,同義であると解するのが相当である。日米租税条約は,かかる租税条約として,日本国政府と米国政府との間で,所得に対する租税に関し,二重課税を回避し,脱税を防止することを目的として締結された条約であって,日本国については所得税及び法人税に適用されるものであり(2条1項),我が国の所得税法及び法人税法を中心とする租税法の一環をなす法規範であるから,日米租税条約で用いられた法概念は,その意義が我が国の所得税法や法人税法と異なることが留保されているなどの特段の事情がない限り,所得税法及び法人税法上の概念と同義であると解される。



  しかして,日米租税条約3条1項(e)及び(f)並びに日米租税条約の議定書2項は,法人等の意義について,別紙10記載のとおり規定している(顕著な事実。なお,下線部が該当部分である。)。


  上記の日米租税条約等の規定内容を見る限り,我が国の租税法上の「法人」という概念(なお,この概念につき私法上の「法人」と同じ意義に解すべきことは,前記アで説示したとおりである。)に該当する米国の概念は「company」,我が国の租税法上の「法人格を有する」という概念に該当する米国の概念は「corporate」であるというべきであり,他方,米国の「entity」という概念は,我が国における租税法上の「団体」という概念に相当し,米国の「partnership」という概念は,「組合」を意味し,我が国における租税法上の「法人」に含まれないというべきである。そして,上記規定について,その意義が我が国の所得税法や法人税法と異なることが留保されているとは認められない。



  したがって,米国において,我が国の租税法上の「法人」に相当する概念は,「company」や「corporation」であると解することができる。



  (ウ) また,前記前提事実(2)のとおり,米国の財務省規則においても,連邦税の課税上,ビジネス・エンティティ(business entity)について,コーポレーション(corporation)とパートナーシップ(partnership)に区分した取扱い(前者については事業体課税,後者については構成員課税)を定めており,コーポレーションとされるものとして,連邦又は州の制定法に基づき組織されたビジネス・エンティティで,その法律がその事業体をインコーポレイティド(incorporated)として,又はコーポレーション,ボディ・コーポレート(body corporate)として記述し,言及するものが定められており(財務省規則301.7701-2(a),(b)),それ以外のビジネス・エンティティで2人以上の構成員を有するものは,コーポレーションとしての課税を選択しない限り,パートナーシップとして構成員課税がされるもの(当該事業体は納税義務者とならない。)とされている。



  さらに,証拠(甲A全65)によれば,米国の連邦民事訴訟法においても,団体が訴え又は訴えられる能力について,①コーポレーション(corporation)と②パートナーシップ(partnership)その他の法人格なき団体(other unincorporated association)とで分けて規律されていることが認められる。



  このように,米国の他の法令においても,法人をコーポレーション(corporation),インコーポレイティド(incorporated)やボディ・コーポレート(body corporate)とし,法人格のない団体の典型としてパートナーシップ(partnership)が掲げられているのであり,かかる点からも,我が国の租税法上の法人と同義である米国の概念等を上記(イ)のように解する相当性を肯定することができるというべきである。




  (エ) 他方,州LPS法201条(b)の「separate legal entity」という概念については,次の諸点に照らすと,少なくとも我が国の租税法(私法)上の法人という概念とは同一の概念であると認めることはできないというべきである。


  a 「separate legal entity」又は「entity」の用語等の州LPS法等における使用状況について



 (a) 米国では,州LPS法の改正前の規定やその他の法令の各規定において,「separate legal entity」又は「entity」の用語等が次のとおり使用されている。



  Ⅰ 州LPS法


  1987年に開始した統一州法委員会全国会議(NCCUSL)での1914年統一GPS法の修正の検討状況等を踏まえ,1990年,州LPS法の改正が行われたが,同年改正後の州LPS法201条(b)は,「本章に基づき組成されたLPSは,「separate legal entity」となり,その「separate legal entity」としての地位はLPS証明書のLPSによる解除まで継続する」旨を規定している(甲A全90,乙A全25)。



  Ⅱ 1994年改訂統一GPS法


  1994年改訂統一GPS法201条(a)は「A partnership is an entity distinct from its partners.(パートナーシップは,そのパートナーとは別個の事業体(entity)である。)」旨を規定している(甲A全90,乙A全83)。



  Ⅲ 州GPS法


  1999年改正後の州GPS法(1999年7月12日施行)201条(a)は,「A partnership is a separate legal entity which is an entity distinct from its partners unless otherwise provided in a statement of partnership existence and in a partnership agreement.(パートナーシップは,パートナーシップ存続証明書又はパートナーシップ契約で別途規定されない限り,パートナーとは別個の独立した「separate legal entity」である。)」旨を規定している(乙A全77)。



  Ⅳ 2001年改訂統一LPS法


  2001年改訂統一LPS法104条(a)は,「A limited partnership is an entity distinct from its partners.(LPSは,そのパートナーとは別個の事業体(entity)である。)」旨を規定している(乙A全88)。

  Ⅴ 統一法人格なき非営利団体法(the Uniform Unincorporated Nonprofit Association Act)


  統一法人格なき非営利団体法では,


① 非営利団体(a nonprofit association)は,その構成員から別個の「legal entity」であると定められ,また,② 法人格のない協同組合(a cooperative that is not incorporated)は,不動産及び動産の取得,保有,担保提供,及び移転の目的において,その構成員とは別個の「legal entity」であり,不動産又は動産の財産権又は持分を自らの名義により取得,保有,担保提供,又は移転することができるとされている(甲A全67,68)。





  Ⅵ デラウェア州法(Delaware Code)3801条(g)(2)


  デラウェア州法(Delaware Code)3801条(g)(2)は,「制定法上の信託(Statutory trust)とは,本節の3810条に従い信託証書の届出がなされた法人格なき団体を意味する。かかる法人格なき団体は組織前又は組織後において制定法上の信託であり,かつ『separate legal entity』でなければならない。」旨を規定している(甲A全70)。


  (b) 以上のような州LPS法等の各規定に関し,本件全証拠によっても,「separate legal entity」又は「entity」とされたものが「company」,「corporation」,「body corporate」と同様に取り扱われる旨の規定等の存在を認めることはできない。



  b 州LPS法の制定経緯等について


 (a) 証拠(甲A全38,41,54,57,60,61,90,乙A全87)及び弁論の全趣旨によれば,


①パートナーシップ,特にその原型であるGPSは,複数の者が,営利の目的で金銭,労力等を出資して事業を行うことを目的として,当事者間の合意のみによって成立し,当事者相互間の契約に関するコモン・ロー上の権利にのみ依拠するものであり,本質的に契約関係である点において,当事者間の合意のみによっては成立しないコーポレーション(corporation)とは異なること,


②かかるGPSは,英米法のコモン・ローの下では,パートナーから別個独立の事業体(entity)ではなく(別個の法律上の存在を有さず),複数の人(者)からなるグループ内の契約そのものであって,単なるパートナーの集合体にすぎないとされ(集合体理論(aggregate theory)),伝統的に,エイジェンシー(agency(代理))の延長として,どの組合員も他の組合員の代理人であるという形で把握されており,構成員から独立した法人格を有しないものとされてきたこと,


③これに対し,LPSは,元来,英米法(コモン・ロー)には存在せず,大陸法に倣って,1907年に英国で,1916年に米国で立法によって導入された制定法の産物とされているものの,LPSに関する統一法である1916年統一LPS法は,当初から,GPSに関する1914年統一GPS法と連結され,1914年統一GPS法の適用を前提とするものとして提案されたものであり,そこでは,LPSについて,1916年統一GPS法及びリミテッド・パートナーシップ契約で修正される点を除き,1914年統一GPS法に基づくパートナーシップであり,そこに新たな地位(リミテッド・パートナー)が導入されただけのものであると規定されていること,


④そのため,LPSは,GPSとの連続性・同質性を有するものであり,無限責任を負うジェネラル・パートナーに加えて有限責任のリミテッド・パートナーを導入する点に主眼があるとの意見も提出されていること(アレン教授意見書参照)などが認められ,かかる州LPS法の制定経緯等を踏まえると,LPSの本質は契約関係であることが分かる。





  また,州LPS法の規定内容を見ても,


①GPSに関するデラウェア州法である州GPS法(1999年改正前のもの)と同一法典内の別章として定められ,当該州GPS法の多数の条文が準用されていること(例えば,ジェネラル・パートナーのパートナーシップ債務に関する連帯責任等の権限及び責任に関する準用規定である州LPS法403条(a),(b),一般的な準用規定である州LPS法1105条等),


②州LPS法1101条(c)において,州LPS法の方針が契約自由の原則とパートナーシップ契約の執行可能性を最大限に尊重することであることが明示的に規定されていること(なお,同条に関しては,同法の立法者は,LPSの本質はパートナー間の契約・合意であるから,パートナーシップ契約をその条項に従い執行することが州LPS法の根本的な方針であるべきものと結論付けていたとの解説もある[甲A全41参照]。),


③LPSに係る事項及び事業の運営に関するパートナー間の合意がリミテッド・パートナーシップ契約(Partnarship agreement)とされ(州LPS法101条(12)),ジェネラル・パートナーの脱退が原則的な解散事由とされていること(州LPS法801条(3))など,LPSが本質的に契約関係であることを前提とした条項が規定されている。




  そして,州LPS法201条(b)の規定等に関しては,


①GPS及びLPSに関する統一法及び各州法には,パートナー間の契約関係であるというパートナーシップの本質を前提としつつ,法的安定性を求めて組成されたパートナーシップの存在に理論的な裏付けを付与し,ビジネスの世界においてパートナーシップが事業体(entities)のように取り扱われる程度を反映し,分析を簡潔にするため,事業体モデル(entity model)に基づく規定が置かれるようになったが,集合体アプローチ(aggregate approach)も,例えばパートナーの個人責任等の一定の目的との関係ではなお存続している(甲A全42,乙A全83),


②パートナーシップは,財産の譲渡を容易にし,責任財産の順位を決め,個々のパートナーが関与する直接的影響に対して事業運営を保護する等の一定の目的との関係ではlegal entityとして,また,ある目的においては人の集合体(an aggregate of persons)としてみなされる混合型の組織(a hybrid organization)である(甲A全62),


③州LPS法201条(b)の「separate legal entity」との文言は,LPSがジェネラル・パートナーとは区別されたものであることを意味するが,この中の「separate」という語には,何ら法的な重要性はなく,1976年改訂統一LPS法及び2001年改訂統一LPS法のような「パートナーとは異なる事業体(entity distinct from its partners)」との文言や,「リーガル・エンティティ(legal entity)」又は「エンティティ(entity)」との文言が使用されていたとしても,全く同じで意味あったと考えられる(アレン教授意見書),といった米国の法学者の見解等も存する。



  以上によれば,州LPS法に基づいて組成されたLPSは,本質的にその性質上パートナー間の契約関係であるといえ,コーポレーション(corporation)と同一の機能を有するとか同義であるとは解することができないというべきである(アレン教授意見書,ラムザイヤー意見書参照)。




  c 州LPS法701条について


 (a) 証拠(乙A全76,77)によれば,州LPS法1105条により州LPS法に準用され得る1999年改正前の州GPS法1525条(a)は,パートナーは,パートナーシップの所有者として有する特定のパートナーシップ財産につき,他のパートナーとの共同所有者である旨規定しているのに対し,同改正後の州GPS法203条は,パートナーシップが取得した資産はパートナーシップの資産であり,パートナーの個人資産ではない旨を規定しており,州LPS法においては,上記1525条(a)と同様の規定やLPSが所有権の帰属主体となり得る旨の明文規定が存在せず,前記イ(シ)の701条の規定のとおり,特定のLPS財産に対するパートナーの持分のみが否定されていることが認められる。

  そうすると,州LPS法701条は,任意組合(民法668条)における「組合財産」と同様に(民法676条は,任意組合の目的達成のために利用され,又は組合債権者のための責任財産となるべき組合財産について,一部の組合員による組合財産に対する持分の処分により組合員以外の者の持分が生じたり,これが分割されたりすれば,組合財産としての意義が失われ,組合事業の遂行に支障をきたすため,組合財産についてその持分の処分や分割請求を禁止・制限している。),LPSの事業遂行の用に供される特定のLPS財産について,パートナーが合有的な共同所有者となることを承認しつつ,パートナーが特定のLPS財産に対する持分の処分や分割請求等を行うことを禁止する趣旨の規定と解する余地がある。



  (b) また,我が国の私法上の法人に関しては,法人の所有する特定の財産について,その構成員間の合意により特定の構成員が持分を有するとの法律効果を生じさせることは,その構成員の間で利益になるとしても,およそ法律上予定されていないが,被告が自己の主張根拠として提出したモリス回答書を見ると,州LPS法201条(b)及び701条の規定にかかわらず,LPSのパートナーらの間で有益であるとみなされる状況があるときは,デラウェア州の裁判所において,第三者には関係なく全パートナー間のみの関係において修正することができるとの判断がされる可能性に言及しており,当該意見が,被告が主張するように,極めて限定的な条件を設定した上で述べられたものであるとしても,第三者に影響を及ぼさない範囲で,パートナー間の合意に基づき特定のパートナーがLPSの財産につき特定の持分を所有することが許容される余地は残されているといえる。



  そうすると,仮に,州LPS法に準拠して組成されたLPSが,州LPS法201条(b)及び701条の規定により権利の帰属主体になり得るものであるとしても,上記のような例外が許容される余地がある以上,これをもって我が国の私法(租税法)上の「法人」と同義であるということはできない。





  (c) このように,州LPS法が「separate legal entity」と規定するLPSについては,その特有財産について,パートナーが共同所有者となり得るとする余地(1105条,1999年改正前の州GPS法1525条)や,LPSのパートナー間の合意により州LPS法201条(b)及び701条の規定の適用を排除してこれと異なる法律効果を生じさせることを許容する余地が残されているのであるから,我が国の租税法(私法)上の法人とは,異なる法律効果を許容するものというべきである。






  d 小括



  以上のとおり,



①日米租税条約では,「entity」が我が国の租税法上の「団体」と同一概念とされている上,「separate legal entity」又は「legal entity」という概念は,州LPS法以外の米国内の法律において,法人格のない協同組合(a cooperative that is not incorporated)や制定法上の信託(Statutory trust)といったものにまで用いられていること,



②州GPS法で規定されている「separate legal entity」や,1994年改訂統一GPS法や2001年改訂統一LPS法で規定されていた「an entity distinct from its partners」は,そもそも集合体理論を基礎としていたパートナーシップに事業体理論が一部取り入れられたこと(混合型の組織(a hybrid organization)であること)を反映するものにすぎず,州LPS法に準拠して組成されたLPSは,州GPS法に準拠して組成されたGPSと同様,その本質はパートナー間の契約関係であり,コーポレーションとは別個の機能を有するものと解されること,



③州LPS法における「separate legal entity」は,我が国の租税法(私法)上の法人とは異なる法律効果を許容されていることなどの諸点を併せ考慮すれば,州LPS法201条(b)の「separate legal entity」は,LPSがその構成員とは別個の「団体」であることを示す概念であるが,その団体は,法人ではないにもかかわらず,事業体理論に基づき,対外関係等の一定の範囲内で構成員とは別個に権利を取得したり義務を負担したりするような法的取扱いが認められるという概念であり,我が国では存在しない法概念であるといわざるを得ない。






  (オ) 我が国の英米法に関する文献においても,米国の州法に基づくLPSが「法人」ではない旨の記述がされているものが多数存在する(甲A全38・202頁,甲A全4・64頁,甲A全9,甲A全14)上,税務当局の実務家又はその経験者の税務関係の著作にも,米国の州法に基づくLPSが「法人」ではない旨の記述がされているものがある(甲A全27・141頁,甲A全75資料3)。




  (カ) 本件措置法特例は,平成12年4月小委員会討議用資料に「日米における事業体に係る課税上の取扱い」としてGPSやLPSが法人格のないものの代表例として分類・明記されるとともに,パートナーシップが非法人の事業組織体(unincorporated organization)であると明記され,これを踏まえて議論された平成12年7月政府税調中期答申において,主として,GPSやLPSについて,「わが国の税制では,外国の事業体がその外国において私法上『法人』とされているかどうかにより,法人課税の対象とするかどうかを判断していますが,外国の多様な事業体の中には,その本国において私法上『法人』とはされないものの,自己の名前で取引をしているなど,その実態を見れば法人税の課税対象とすることがふさわしいものもあると考えられます。」とした上で,これらが我が国の租税法上「法人」に当たらないことから生起する課税上の諸問題を解消するためのルール作りを行うことが提言され,平成17年になって,任意組合の事業から生ずる損失を利用した租税回避行為を防止するために制定されたものであるが,その規定内容を見ると,任意組合を利用して航空機リース事業を行うような租税回避行為に対応するためであれば必要がないはずの,外国における民法667条1項に規定する組合契約又は投資事業有限責任組合契約に関する法律3条1項に規定する投資事業有限責任組合契約に類する契約や,外国における有限責任事業組合契約(有限責任事業組合契約に関する法律3条1項に規定する有限責任事業組合契約をいう。)に類する契約までその適用対象としており,財務省主税局の本件措置法特例の立案担当者が執筆した解説(甲A全16)においても,上記契約の代表例として,米国におけるGPSやLPSが掲げられており(ただし,パートナーシップ契約の中にも,その事業体の個々の実態等により外国法人と認定されるケースもあるとの記述もされている。),これらの点に鑑みると,本件措置法特例は,GPS及びLPSが我が国の租税法上の法人に該当しないと解されることをも想定して,制定されるに至ったものと認められる。



  なお,平成16年法律第34号による改正前の中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年法律第90号。平成16年法律第34号による一部改正により題名が「投資事業有限責任組合契約に関する法律」に改正された。)は,米国の有限責任組合制度を参考にしたものとされるが,同法に基づいて成立する組合は,「法人」とされていない(甲A全10参照)。また,平成17年には,共同で営利を目的とする事業を営むための組合契約であって,組合員の責任の限度を出資の価額とするものに関する制度を確立することにより,個人又は法人が共同して行う事業の健全な発展を図り,もって,我が国の経済活力の向上に資することを目的とする有限責任事業組合契約に関する法律(平成17年法律第40号)が制定されているところ,同法は,英米法におけるリミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(LLP)をモデルにしているとの指摘がされているが,同法3条1項の有限責任事業組合契約によって成立した組合(有限責任事業組合)も,「法人」とはされていない(甲A全12参照)。




  (キ) 以上の諸点を総合すると,州LPS法がこれに準拠して組成されたLPSを法人とする旨を定めたものと解することはできない。








  エ 実質的観点からの検証



  (ア) 上記ウのとおり,州LPS法がこれに準拠して組成されたLPSを法人とする旨を定めたものと解することができない以上,州LPS法に準拠して組成された本件各LPSも,我が国の租税法上の法人であるとは認め難いというべきであるが,念のため,本件各LPSが,実質的に見て,我が国の租税法上の法人と同様に損益の帰属すべき主体として設立が認められたものといえるか否かについて検証する。



  (イ) 前記前提事実,前記イの州LPS法の概要並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,①州LPS法に準拠して組成されるLPSは,1名以上のジェネラル・パートナー及び1名以上のリミテッド・パートナーにより構成され(101条(9)),州LPS法若しくはその他の法律又は当該LPSのパートナーシップ契約により付与された全ての権限及び特権並びにこれらに付随するあらゆる権限を保有し,これを行使できるとされているところ,そのうち,ジェネラル・パートナーの権限や責任等については,1999年改正前の州GPS法に準拠したパートナーシップのパートナーと同様,事業の運営・遂行に関与する平等の権利があり,パートナーシップの債務についての連帯責任を負うとされる一方で(403条(a),(b)),リミテッド・パートナーは,原則として,LPSの事業の経営管理に関与せず,LPSの債務を弁済する責任も負わないとされている(303条(a))こと,②州LPS法の主眼は,契約における自由の原則及びパートナーシップ契約の執行可能性に最大限の効果を与えることとされ(1101条(c)),1999年改正前の州GPS法が広く準用されている(1105条)こと,③LPSの損益に対して各パートナーが保有する持分をパートナーシップ持分(Partnership Interest)として認め(101条(13)),LPSの損益は,パートナーシップ契約の規定に従い,パートナー並びにパートナーのクラス及びグループの間で割当てが行われる(shall be allocated)とされている(503条)ことが認められる。

  そして,州LPS法に準拠して組成されるLPSのパートナーは,LPSの損益をパートナーに帰属させる方法について完全な契約上の自由を有するとされ,LPSの損益はそのパートナーシップ契約の定めに従い帰属する(なお,パートナーシップ契約が何も言及しない場合を除き,州LPS法は損益の帰属方法を特定しない。)と解されているところ(甲A全41参照),本件各LPS契約は,いずれも,会計年度の利益及び損失は所定の割合で各パートナーに割り当てられるものとし,「本契約で別途定められていない限り,本パートナーシップの所得,収益,損失及び控除の全ての項目のパートナーシップ持分割合は,利益及び損失の分配持分と同じとする。」と定めている(4.12条(a))。



  (ウ) また,前記前提事実(2)のとおり,チェック・ザ・ボックス規則により,連邦課税上,一定のビジネス・エンティティとされるパートナーシップがコーポレーションとしての課税を選択した場合には,パートナーシップの事業から生じた損益がパートナーシップ自体に帰属することを選択したものと見ることも可能である一方,このような選択がない場合には,デフォルト・ルールとして,パートナーシップとしての課税(すなわち,パートナーシップの事業から生じた損益がパートナーに帰属することを前提とする課税)を選択したものとみなされており,本件各LPSも,連邦課税上,パートナーシップとしての課税(パートナーシップの事業から生じた損益がパートナーに帰属することを前提とする課税)を選択したものとみなされている。

  なお,この点,ラムザイヤー意見書によれば,LPSの損益は,州LPS法503条に基づき,パートナーシップ契約書に定められた方法によりパートナー間で配分されるが,パートナーシップ内の損益配分(profit and loss allocation)は,パートナーシップ契約書に従って自動的に行われるものであって,資金の移転を伴うものではないとされ,さらに,米国の租税法上,現在のチェック・ザ・ボックス制度が導入される以前から,パートナーシップの事業活動により発生した損益が各パートナーの損益になるという私法上の原則に従って,パートナーシップ(又はLPS)が納税主体とされていなかったとの指摘もされているところである。



  (エ) 以上の点に加えて,本件各LPSの損益が本件各LPS自体に帰属することを明確に認めるに足りる法令の定めや証拠はないことに鑑みれば,本件各LPSの損益は,州LPS法に基づく本件各LPS契約上,総額(グロス)ベースでパートナーに直接帰属することが予定されているものと解するのが相当であり,本件各LPSが,デラウェア州法上,当然に損益の帰属主体となるとまで認めることはできない。



  (オ) 他方,上記説示の点に加えて,前記前提事実により認められる本件各LPS契約の目的や契約内容,前記ウ(エ)cで説示した州LPS法701条の解釈等をも併せ考慮すれば,州LPS法に準拠して組成されたLPSは,実質的に見ても,パートナー間の契約関係を本質として,その事業の損益をパートナーに直接帰属させることを目的とするものであると解することができる。



  (カ) 以上によれば,州LPS法の規定するLPSの成り立ち,組織,運営及び管理等の内容に着目して実質的に見ても,本件各LPSは,我が国の法人と同様に損益の帰属すべき主体(その構成員に直接その損益が帰属することが予定されない主体)として設立が認められたものということはできない。





  オ ニューヨーク州LLC法に関する被告の主張について


 (ア) 被告は,本件各LPSの準拠法である州LPS法には,LLC判決が我が国の私法(租税法)上の法人に該当すると判断したLLCの準拠法であるニューヨーク州LLC法と同趣旨又は類似の規定があることから,本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するといえる旨を主張する。


  (イ) しかしながら,証拠(乙A全54,55)及び弁論の全趣旨によれば,そもそも,LLC判決は,前記(2)アで述べた判断基準とは異なる見解に基づき,ニューヨーク州LLC法に準拠して設立されたLLCが我が国の私法(租税法)上の法人に該当すると判断したものであって,その判断の対象となる準拠法も異なるものであることが認められ,かかるLLC判決の判断内容に依拠して,本件各LPSの法人該当性を判断することは相当ではない。


  (ウ) また,証拠(乙A全91)によれば,ニューヨーク州LLC法においては,


①LLCが「separate legal entity」である旨規定する(203条)一方,LLCは,文脈上他の意味に解釈すべき場合を除いて,ニューヨーク州LLC法及びこの州の法律に基づいて設立され存続する,パートナーシップ又は信託以外の,当該事業の契約上の義務又はその他の債務に対して有限責任を持っている1名又は複数名からなる非会社組織(unincorporated organazation)であると規定されており(101条(m)),「Limited Liability Company」又はその省略形の「L.L.C.」若しくは「LLC」という文言を含む名称を使用することを許されていること(204条(a),(e)),


②設立発起人(設立するLLCの構成員である必要はない。)による基本定款の作成・提出を成立要件としていること(203条,207条,209条),


③構成員は,当該LLCの個別財産には一切権利を持たず(601条),当該LLCのいかなる負債又は債務に対しても責任がないとされていること(609条(a)),


④LLCの現金又はその他の資産の分配金は,構成員の間でまた構成員の階級(もしあれば)間でオペレーティング契約に従って配分するものとした上(504条),LLCは,当該分配の時点で,構成員持分を理由とする構成員に対する負債及び債権者の償還請求が当該LLCの特定財産に制限されている負債を除き,当該分配実施後の当該LLCの全負債が当該LLCの資産の公正市場価額を超える範囲では,構成員に分配を行ってはならないとされていること(508条(a)),⑤構成員又はマネージャーによるLLCの運営や構成員会等の組織(401条~420条)に関し,基本定款に特別の定めがない限り,当該LLCを運営する権限はその構成員に与えられ(401条(a)),当該LLCの業務の運営等に関する投票に際しては,オペレーティング契約に定めがある場合を除き,構成員の持分に比例して投票するものとされていること(402条(a)),及び,オペレーティング契約に特段の定めがある場合を除いて,LLCは年1回構成員会を開くものとされ(403条),また,基本定款に運営権を1名又は複数名のマネージャーに与えると規定されている場合には,構成員が年に1度当該LLCの1名又は複数名のマネージャーを任命又は選任するための投票をするものとし(413条(a)),そのマネージャーがLLCの代理人となり(412条(b)(2)),基本定款に運営権を1名又は複数名のマネージャーに与えると規定していない場合には,各構成員がLLCの事業上LLCの代理人になる旨規定していること(412条(a))が認められる。




  これらの規定に鑑みると,ニューヨーク州LLC法のLLCは,そもそもパートナーシップ以外の非会社組織とされた上,「Limited Liability Company」という「Company」と類似の名称の使用が許容されるものである上,州LPS法に準拠して組成されたLPSと比べて,その成り立ち,構成員の責任,組織運営等についても異なるものであるというべきであるから,両者の類似性を根拠とする被告の上記主張は,その前提自体が誤っており,これを採用することはできない。




  カ まとめ



 以上の次第で,本件各LPSは,我が国の租税法上の法人には該当しないというべきである。