米国デラウェア州法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップ(2)






 先日に引き続き地裁判決を検討します。












(3) 課税の経緯



  ア 原告X1(A事件及びE事件)について



 (ア) 原告X1の平成13年分ないし平成15年分の所得税に係る課税の経緯は,別表1-1記載のとおりである。


  (イ) 原告X1の平成16年分の所得税に係る課税の経緯は,別表1-2記載のとおりである。


  (ウ) 原告X1の平成17年分の所得税に係る課税の経緯は,別表4記載のとおりである。



  イ 原告X2(B事件及びD事件)について






 (ア) 原告X2の平成14年分ないし平成16年分の所得税に係る課税の経緯は,別表7記載のとおりである。



  なお,原告X2は,別表7記載のとおり,刈谷税務署長が平成17年2月25日付けでした原告X2の平成14年分の所得税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分(原告X214年分通知処分)については,平成17年4月18日付けで異議申立てをし,同年8月19日付けで審査請求をした上で,平成19年6月14日,B事件に係る訴えを提起したが,平成17年2月28日付けでされた原告X214年分更正処分に対しては,異議申立て及び審査請求をせずに,平成21年10月26日付けの訴えの変更申立書により,原告X214年分通知処分の取消請求を主位的請求とし,予備的請求として原告X214年分更正処分の取消請求を追加した(以下,当該予備的追加的変更に係る訴えを「本件予備的追加的変更に係る訴え」という。)。









  (イ) 原告X2の平成17年分の所得税に係る課税の経緯は,別表10記載のとおりである。



  ウ 原告X3(C事件及びF事件)について



 (ア) 亡G1の平成13年分ないし平成15年分の所得税に係る課税の経緯は,別表13記載のとおりである。



  (イ) 亡G1の平成16年分及び平成17年分の所得税に係る課税の経緯は,別表16記載のとおりである。



  (ウ) 亡G1は,平成20年4月13日死亡し,同人の妻である原告X3は,本件LPS(C)等を通じて亡G1が行った米国不動産賃貸事業に関する一切の権利及び義務を相続し,同事業に係る所得税について,申告,更正の請求,課税処分に対する不服申立て,取消訴訟の提起,その他同事業に関して原告X3が有する一切の地位を承継した(甲ハ7ないし9)。









  4 税額等に関する当事者の主張



  被告が本件訴訟において主張する原告ら投資家の総所得金額,納付すべき税額及び過少申告加算税の額等は,別紙8「本件各処分の根拠及び計算」記載のとおりであり,本件の争点に関する部分を除き,計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない(被告は,本件の争点に関して被告の主張が認められず,本件各LPSに係る本件各不動産賃貸事業から生じた損益[本件各建物の貸付けに係る損益]を原告ら投資家の各年分の所得税に関する損益通算の対象とすることとなった場合,本件各建物に係る収入金額及び必要経費として計上することのできる数額が原告らの主張額[確定申告,修正申告又は更正の請求の額]であることを争っていない。)。












  5 争点



  本件の争点は,以下のとおりである。





  (1) 本案前の争点(B事件)


  本件予備的追加的変更に係る訴えの適法性






  (2) 本案の争点(全事件)



  本件各処分の適法性(所得税法69条1項に基づく損益通算の可否)本件における本案の争点は,本件各処分の適法性であるところ,原告らは,本件各信託契約を介して本件各LPSを組成し,本件各建物を取得してその貸付けを行ったことにより,本件各建物の貸付けに係る損益は原告ら投資家の不動産所得に該当すると主張して,本件各不動産賃貸事業から生じた損失をもって原告ら投資家の他の所得と損益通算をして確定申告若しくは修正申告をし,又は更正の請求をしており,本件各処分の適法性については,原告らが主張する上記各損失の損益通算が許されるかどうか,すなわち,本件各不動産賃貸事業から生じる損益が原告ら投資家の不動産所得に該当するか否かが主たる争点となり,より具体的には,上記損益が本件各LPSに帰属することなく(パススルー),不動産所得の性質を有したまま本件各信託契約を介して原告ら投資家に帰属するのか否かという点が問題とされ,当該争点に関して,さらに,以下の4点が争われている。








  ア 本件各LPSの租税法上の法人該当性

  イ 本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性

  ウ 本件各不動産賃貸事業から生じた損益の不動産所得該当性

  エ 通則法65条4項の「正当な理由」の有無












  6 争点に関する当事者の主張の要旨



  争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙9「当事者の主張の要旨」記載のとおりであり,その骨子は,次のとおりである。




  (1) 本案前の争点(本件予備的追加的変更に係る訴えの適法性・B事件)



  (被告の主張の骨子)


  本件予備的追加的変更に係る訴えにより取消しの対象とされている原告X214年分更正処分は,原告X214年通知処分とは別個独立の処分であるから,不服申立てを行った上,出訴期間内に取消訴訟を提起する必要があるところ,原告X2が当該不服申立手続を経ていないこと及び出訴期間を徒過したことについては,正当な理由がない。

  したがって,本件予備的追加的変更に係る訴えは不適法である。






  (原告X2の主張の骨子)


  原告X214年分更正処分は,同一年度の同一国税に係る原告X214年分通知処分について異議決定及び審査請求を経て提起したその取消訴訟の係属中にされたものであり,その不服内容も同一であるから,原告X214年分更正処分の取消しを求めるに当たり,司法審査に先立ち不服申立手続を経由させる合理的理由がなく,不服申立手続を経ないことに正当な理由がある。また,当該事情を考慮すれば,原告X214年分更正処分の取消しを求める訴えは,出訴期間内に提起された原告X214年分通知処分の取消しを求める訴えの時から既に提起されていたものと同視するのが相当であり,出訴期間の経過についても,正当な理由がある。

  したがって,原告X214年分更正処分の取消しの訴えは,適法である。










  (2) 本案の争点(本件各処分の適法性=損益通算の可否・全事件)


  ア 本件各LPSの租税法上の法人該当性について





 (被告の主張の骨子)


  (ア) 我が国の租税法上,損益の帰属主体となり得る「法人」(所得税法2条1項6号,7号,24条1項等参照)は,我が国の私法上の「法人」と同義であり,自然人以外の者で権利義務の帰属主体となるものをいうと解される。


  そこで,外国の法令によって設立された事業体が我が国の租税法上の「法人」に該当するか否かは,具体的には,当該事業体の設立準拠法の内容のみならず,実際の活動実態,財産や権利義務の帰属状況等を考慮した上,個別具体的に,我が国の私法において法人に認められる権利能力と同等の能力を有するか否か,すなわち,当該事業体が,









①その構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有するか否か,



②その名において契約を締結し,その名において権利を取得し義務を負うなど独立した権利義務の帰属主体となり得るか否か,



③その権利義務のためにその名において訴訟当事者となり得るか否かに基づいて判断すべきである。






  (イ) 本件各LPSの準拠法,本件各LPS契約の内容,実際の活動内容,財産や権利義務の帰属状態等を見ると,特に次の事実を指摘することができる。


  すなわち,本件各LPSは,権利の主体となり当事者能力を有する独立した法主体を意味する「separate legal entity」である(州LPS法201条(b))。


しかも,本件各LPSは,構成員である各パートナーの個人財産とは区別された独自の財産を所有し,自ら独立して負債等を負担するなど,その事業,目的に必要なあらゆる行為をすることができる能力を有する事業体であり(州LPS法106条(b),303条(a),本件各LPS契約1.3条,1.5条,2.7条),


現に本件各建物について,本件各LPS名義で本件各売買契約等を締結してその所有権を取得し,本件各LPS名義で米国の登録所に登録しているほか,本件各LPSの名義において自ら法的手続を行う権限・能力も有する(州LPS法105条(a),本件各LPS契約1.3条)。


他方,本件各LPSの各パートナーは,本件各LPSの個別(特定)の財産に対して何らの持分を有しない(州LPS法701条,本件各LPS契約10.15条)。


さらに,本件各LPS契約4.5条は,州LPS法201条(b)及び701条の適用を排除・変更するものではなく,州LPS法503条並びに本件各LPS契約4.7条及び4.8条によっても,本件各LPSに生じたグロスの損益(収益の総額と損失の総額)がその構成員である本件各受託銀行を介して原告ら投資家に直接帰属することはない。



  以上の事実等に照らすと,本件各LPSは,




①その構成員とは明確に区別された独自の財産を有し,


②その名において契約を締結し,権利義務の帰属主体となり,


③その権利義務のためにその名において訴訟当事者となり得るものといえる。







  なお,LLC判決は,米国ニューヨーク州法に基づいて設立されたLLCが我が国の私法(租税法)上の法人に該当すると判断しているところ,本件各LPSの準拠法である州LPS法には,自身の名義で訴訟手続を行うことができる旨の規定や同法に準拠して設立された事業体は独立した法的主体(separate legal entity)になる旨の規定を始め,LLCの準拠法であるニューヨーク州LLC法と同趣旨又は類似の規定があり,そのことも,本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当することを裏付けている。



  (ウ) したがって,本件各LPSは,我が国の租税法上の「法人」である。














  (原告らの主張の骨子)




  (ア) 被告主張の解釈(被告の主張の骨子(ア))は,




①法人とされたことから生じた効果を述べるにすぎず,内国の事業体の場合における形式的一義的な判断とは異なる実質判断を行う点で我が国の私法上の法人概念と相いれず,論理が破たんしており,しかも私法上の損益の帰属主体であるか否かを一切考慮していないから,その理論的な根拠を欠き,合理性を有しないこと,




②被告が主張する基準は我が国の租税法上の組合とされる事業体にも当てはまるもので,法人と組合とを区別する基準になっていないこと,




③我が国においてもデラウェア州のLPSが我が国の租税法上の法人と同等の事業体ではないとの理解が一般的であること及び本件各LPSについての米国での税務上の取扱いや米国のコーポレーション(corporation)との違い(損益の帰属,組成手続等)からすれば,本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するとの解釈は社会通念等に反すること,





④実質的には,本件各不動産賃貸事業には適用できなかった本件措置法特例を遡及適用したものにほかならないことから,失当である。











  (イ) 仮に被告主張の上記解釈によって本件各LPSの法人該当性を判断したとしても,次の諸点に照らすと,被告主張の判断基準を充足するとはいえない。






  すなわち,本件各LPSが「separate legal entity」であること(州LPS法201条(b))は,我が国の民法上の組合と同じ取扱いを受けられるという程度の意味を有するにすぎず,法人格が与えられたことを意味するものではない。



また,本件各LPSのパートナーは,パートナーシップの財産についてそのパートナーシップ割合に等しい不可分の持分を有し(本件各LPS契約4.5条),本件各LPSの財産はパートナー間の内部関係において特定の共有持分のない共有状態にあるから,州LPS法701条をもって,本件各LPSが構成員の財産とは区別された独自の財産を有するといえず,州LPS法503条並びに本件各LPS契約4.7条及び4.8条によれば,ある会計年度において本件各LPSに生じた損益は,パートナーシップ出資割合に従ってその各パートナーに配分されるため,本件各LPSには当該損益が帰属せず,我が国の民法上の組合と同様に,グロスの当該損益(収益の総額と損失の総額)が各パートナーに(LPSにおける配当決議による配当を待たずに)直接帰属することとなるから,本件各LPSが独立した権利義務の帰属主体となり得るともいえない。



そして,本件各LPSが訴訟当事者となる資格を有するのは,特に法律で定められて初めてその資格を付与されたからであり(連邦民事訴訟法17条(b)(2),同(3)(A)),コーポレーション(corporation)と同様の意味において認められたものではない。なお,ニューヨーク州LLC法上のLLCは,州LPS法上のLPSと比べ,よりコーポレーションに近い事業体であるから,LLC判決をもって本件各LPSの我が国の租税法上の法人該当性を肯定することもできない。



  したがって,被告主張の上記解釈によっても本件各LPSが我が国の租税法上の法人に該当するとはいえない。







  (ウ) 外国の事業体が我が国の租税法上の外国法人として取り扱われるためには,外国法人(法人税法2条4号,所得税法2条1項7号)に該当する必要があるところ,これに該当するというためには,民法36条1項に従い,同項の外国法人であって,商事会社に該当するものとして,認許されるものでなければならないと解すべきであり,その判断方法としては,



①当該外国の事業体の根拠法において,その事業体がコーポレーション(corporation)又はこれに準ずる「body corporate」,「juristic person」その他のこれらと同等の概念(コーポレーション等)に該当すると規定されているか否かという内国法人の法人法定主義と同様の専ら形式的な基準により同項の外国法人該当性を判断した上,



②商行為をすることを業とする目的をもって設立された社団(商事会社)に当たるか否かを判断すべきである。




  これを本件について見ると,



①本件各LPSの根拠法である州LPS法には,これに基づき組成されるLPSをコーポレーション等のように権利能力及び行為能力を有するものとして設立されたものとする旨の規定はなく(州LPS法201条(b)がこれに該当しないことは前記(イ)①のとおりである。),



②本件各LPSは後記イ(原告らの主張の骨子)のとおり社団でもないから,我が国の租税法上の「外国法人」に区分けされることはない。










  イ 本件各LPSの租税法上の人格のない社団該当性について







 (被告の主張の骨子)



  (ア) 所得税法所定の「人格のない社団」(同法2条1項8号)とは,原則として,





①団体としての組織を備え,


②多数決の原則が行われ,


③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,


④その組織によって代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものをいうと解されるが,




必ずしも上記4要件の全てを独立して厳格に満たす必要はなく,むしろ社団性認定のための指標として,各要件相互の関係で柔軟に解釈され得るものというべきである。







  (イ) 本件各LPSは,これを組織する構成員が特定され,その管理及び運営に関する独占的権限(本件各LPSの業務執行を代表して行う権限)が本件各GPに,その解任権限がパートナーシップ持分の80%を超える持分を有する者の賛成又は同意を条件として各リミテッド・パートナーに付与されていること等から,団体としての組織を備え(要件①),



多数決の原則が行われている(要件②)。


また,本件各LPS契約上,ジェネラル・パートナーの解任,新規パートナーの承認,リミテッド・パートナーの脱退,パートナーシップ持分の譲渡が認められていること等から,構成員の交代にもかかわらず団体が存続する(要件③)。



そして,本件各LPSが構成員の財産とは区別された独自の財産を有し,本件各LPS契約にはその管理の方法等や契約内容の多数決による変更に関する定めがあること等から,団体としての主要な点も確定している(要件④)。




  (ウ) したがって,本件各LPSは,仮に我が国の租税法上の「法人」に該当しないとしても,人格のない社団(権利能力のない社団)に該当し,我が国の租税法における独立した損益の帰属主体となる。










  (原告らの主張の骨子)


  (ア) 人格のない社団に該当するためには,被告主張に係る要件①ないし④の全てを独立して満たす必要がある。



  (イ) 本件各LPSは,ジェネラル・パートナー1名とリミテッド・パートナー1名又は2名間の契約関係が存在するにすぎず,意思決定のための内部組織を備えておらず(要件①),


本件各LPSの管理運営・業務執行が原則的にジェネラル・パートナーのみにより行われることとされ(本件各LPS契約2.1条),多数決は行われていない(要件②)。


また,本件各LPSは,構成員が1人になるとそのまま存続できないことから(州LPS法101条(9),本件各LPS契約801条(3)及び(4)),構成員の変更にもかかわらず団体が存続するとはいえない(要件③)。


そして,本件各LPSは,現在の代表から次の代表を決めるルールが設けられておらず,総会の運営や財産の管理に関する規定もないから,正に当事者間の契約にすぎないのであって,団体としての主要な点が確定しているとはいえない(要件④)。



  (ウ) したがって,本件各LPSは,人格のない社団(権利能力のない社団)にも該当しない。

















  ウ 本件各不動産賃貸事業から生じた損益の不動産所得該当性について



 (被告の主張の骨子)



  (ア) ある所得が不動産所得に該当するためには,一般的には,納税者が,賃貸借契約の「貸主」となり得る何らかの権利・権原(所有権,占有権等)を有していることを前提とした上で,不動産を「借主」に貸し付け,これを収益させることによって得た対価としての性質を有するものであることを要すると解すべきである。



  (イ) 原告ら投資家は,本件各LPSが各リミテッド・パートナー(本件各受託銀行)の財産と区別された独立の財産として本件各建物を所有する以上,本件各建物の「貸主」となり得る占有権等の権利・権原を有しておらず,本件各建物を第三者に賃貸すること等も本件各LPSが行っているから,その各リミテッド・パートナー(本件各受託銀行)において本件各建物を第三者に貸し付け,これを収益させて対価を得ているとはいえない。



  (ウ) したがって,原告ら投資家が本件各受託銀行を介して受ける本件各不動産賃貸事業から得た損益は,不動産所得に該当しない。







  (原告らの主張の骨子)



  (ア) 本件各LPSが本件各不動産賃貸事業から得た所得(損益)は,不動産の貸付けによる所得(不動産所得)に該当し,当該所得(損益)が本件各LPSに直接帰属せず,(本件各受託銀行を介して)原告ら投資家に直接帰属する以上,原告ら投資家に直接帰属した本件各不動産賃貸事業に係る損益が不動産所得に該当することは明らかである。



  (イ) 不動産所得の意義(要件)に関する被告の主張は,明文なき要件を付加して不動産所得の範囲を不当に狭く解釈するもので失当であるが,仮にこれによったとしても,


①本件各LPSのリミテッド・パートナーである本件各受託銀行が本件各不動産に固有の権利を有すること(本件各LPS契約4.5条参照),


②本件各受託銀行が本件各LPSの管理又は運営等の権限を有しないことは不動産所得の特質(規模や業務への関与度合いに関係なくその損失と他の所得との損益通算が可能とされていること)からその該当性判断に影響を与えないこと等に照らして,被告主張の事情から不動産所得の該当性を否定することはできない。












  エ 通則法65条4項の「正当な理由」の有無について



 (被告の主張の骨子)


  原告ら主張の事情は,結局法令の解釈を誤っていたというに尽きるから,これをもって,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たるということはできず,通則法65条4項の「正当な理由」があるとは認められない。







  (原告らの主張の骨子)


  平成12年7月政府税調中期答申及び平成12年4月小委員会討議用資料等によれば,米国のLPSに法人格はないという租税法立法当局等の理解が示されており,他方,平成18年1月に至るまで外国のパートナーシップが法人に該当し得るとの公式の解釈は示されておらず,国税不服審判所長も,同年に本件各LPSや州LPS法を準拠法として組成されたLPSの法人該当性を否定する裁決をしていた。



  以上の事情等に照らすと,原告ら投資家が本件各不動産賃貸事業から生じた損失を原告ら投資家に直接帰属すると解し,かつ,これが不動産所得に当たるとして損益通算を行ったことには,真に原告ら投資家の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお原告ら投資家に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるというべきであるから,通則法65条4項の「正当な理由」があると認められる。