税賠(1)

 

 

 

 

 

 

 本日からは損害賠償請求事件(第1事件、第2事件)  東京地方裁判所判決/平成21年(ワ)第36719号、平成22年(ワ)第8566号 、 平成24年1月30日 判決、判例タイムズ1404号207頁を検討します。

 

 

 

 

 





事案の概要




  一 本件は、税理士である承継前被告丁原春夫との間で相続税等の申告手続に係る委任契約を締結した原告らが、同契約に基づいて承継前被告が行った相続税の申告手続に相続財産の申告漏れ等の不備があったため、修正申告と重加算税等の納付とを余儀なくされたと主張して、



 承継前被告の相続人である被告らに対し、債務不履行に基づく損害賠償として、原告らが実際に納付した相続税の本税並びに重加算税、過少申告加算税及び延滞税の合計額から、修正申告と同一内容の申告を当初からしていた場合に納付すベきであった相続税額を控除した金額



 (原告甲野花子につき一億一六一七万二三〇〇円、原告甲野松夫につき三一六万二一〇〇円、原告乙山竹子及び原告丙川梅子につき各五三万一八〇〇円)



 と原告らが承継前被告に支払った報酬相当額(原告甲野花子につき二二〇万円、原告甲野松夫につき一二〇万円、原告乙山竹子及び原告丙川梅子につき各一五万円)との合計額



 (原告甲野花子につき一億一八三七万二三〇〇円、原告甲野松夫につき四三六万二一〇〇円、原告乙山竹子及び原告丙川梅子につき各六八万一八〇〇円)



 並びにこれらの各合計金員に対する訴状送達の日の翌日(原告甲野花子、原告甲野松夫及び原告乙山竹子については平成二一年一〇月二九日、原告丙川梅子については平成二二年三月一三日)から各支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。








争いのない事実等(証拠による認定事実は、末尾に当該証拠を掲記した。)






  (1) 当事者




  ア 原告甲野花子(以下「原告花子」という。)は、平成一九年一月四日に死亡した甲野太郎(以下「亡太郎」という。)の妻であり、亡太郎が経営していた株式会社甲田(以下「甲田社」という。)の代表取締役である。



  イ 原告甲野松夫(以下「原告松夫」という。)は、亡太郎とその前妻乙野一江との間の次男であり、亡太郎が経営していた株式会社丙山(以下「丙山社」という。)の代表取締役である。




  ウ 原告乙山竹子(以下「原告竹子」という。)は、亡太郎とその前妻乙野一江との間の長女である。




  エ 原告丙川梅子(以下「原告梅子」という。)は、亡太郎と原告花子との間の長女である。




  オ 承継前被告丁原春夫(以下「亡春夫」という。)は、税理士であり、台東区蔵前において丁原税務会計事務所を経営していた者であるが、



 本訴が提起された後の平成二三年三月一五日に死亡し、



 


 その相続人は、



 亡春夫の妻である被告丁原夏子(以下「被告夏子」という。)



 並びに亡春夫と被告夏子との間の長女である被告戊田秋子(以下「被告秋子」という。)及び長男である被告丁原冬夫(以下「被告冬夫」という。)の三名である。














  (2) 原告らと亡春夫との委任契約



  ア 原告らは、亡太郎の死亡後、亡春夫に対し、亡太郎の死亡に伴う相続に関する一切の税務申告を委任した(以下「本件委任契約」という。)。




  イ 亡春夫は、平成一九年一〇月中旬ころ、原告らの相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を完成させたが、



 

本件申告書においては、




相続財産中に海外資産は全く存在しないものとされており、




 また、亡太郎が経営していた丙山社の株式は発行済株式総数九万株のうち六万四九〇五株が相続財産であるとされていた。





  亡春夫は、平成一九年一〇月三一日、本郷税務署長に本件申告書を提出し、原告らは、法定納期限までに、申告に係る相続税として、



 


 原告花子は三〇八四万六八〇〇円を、原告松夫は四三一五万八四〇〇円を、原告竹子及び原告梅子は各一三二六万五三〇〇円をそれぞれ納付した。







  ウ 原告らは、亡春夫に対し、亡太郎の死亡に伴う相続に関する一切の税務申告に対する報酬として、原告花子において二二〇万円を、原告松夫において一二〇万円を、原告竹子及び原告梅子において各一五万円(合計三七〇万円)をそれぞれ支払った。










  (3) 修正申告及び加算税の賦課決定の経緯






  ア 平成二〇年八月に至り、原告らの申告した相続税に関して、東京国税局の税務調査が開始された。





  イ 亡春夫は、平成二〇年一一月二八日、原告花子に対し、ファクシミリ送信により、体調が悪いため本件委任契約を同月三〇日をもって解消する旨を通知した。




  ウ 東京国税局の税務調査の結果、



 当初の相続税申告の際に申告漏れとなっていた海外資産(不動産、預金等)及び国内資産(有価証券、預貯金等)の存在が判明したため、




 原告らは、平成二一年二月一七日、本郷税務署長に相続税の修正申告書(以下「本件修正申告書」という。)を提出し、



 そのころ、修正申告に係る相続税として、



 原告花子は一億四五〇八万一五〇〇円を、


 原告松夫は二一五六万七一〇〇円を、


 原告竹子及び原告梅子は各三六二万九二〇〇円をそれぞれ納付した。(《証拠略》)





  さらに、原告らは、平成二一年三月三〇日、


 本郷税務署長から過少申告加算税及び重加算税の賦課決定を受けたため、






 原告花子は過少申告加算税一六三万九〇〇〇円、


 重加算税四五〇三万八〇〇〇円



 及び延滞税八四七万七九〇〇円を、








 原告松夫は過少申告加算税二一五万六〇〇〇円



 及び延滞税一〇〇万六一〇〇円を、









 原告竹子は過少申告加算税三六万二〇〇〇円



 及び延滞税一六万八九〇〇円を、









 原告梅子は過少申告加算税三六万二〇〇〇円



 及び延滞税一六万九八〇〇円をそれぞれ納付した。(《証拠略》)