トッカン(3)









 本日は同裁判例、最後の争点と裁判所の判断を検討します。












(5)争点(5)(原告が被告の本件保証契約に基づく請求を拒み得るその他の事由の有無)について




  (原告の主張)




  ア 前記のとおり、訴外会社は現在も存在しているから、訴外会社と訴外会社の社長であるIの個人財産等に対して強制換価の手続等を行うべきである。本件保証書では単に保証人とされており、連帯保証人とはされていない。



  イ 原告が訴外会社に関与し始めたのは平成4年8月からであるところ、訴外会社の決算書(甲5、6)には滞納国税の額は一切計上されておらず、原告への報告もなく、その資料の提供も受けていなかった。


 ただ、板橋税務署に毎月約300万円及びJ事務所に毎月200万円を1年余りにわたって支払っていたと聞いたことがあり、本件通知書における源泉所得税及び法人税に係る延滞税の合計額815万円から推定すれば、相当額の法人税及び認定賞与が課税されたものと考えられる。


 この課税が適正であったか疑問である。



 その後、地主(K)から提訴され、土地代金4100万円余りを支払った裁判記録も存在するはずである(甲5添付の決算報告書の勘定科目④参照)。



 東京国税局が原告の納税義務の時効消滅を否定するのであれば、上記の課税そのものをもう一度洗い直すべきである。



 ウ 前記のとおり、代表取締役であったCが死亡し、債務整理が行われている状態にあった以上、東京国税局は、保有する未決済の小切手をもって取立てすべきであった。国税については、最優先のものとして扱われるはずである。会社と個人の債務整理が法的に行われているのに、任意整理なので知らなかったというのは余りにも無責任である。何もしなかった東京国税局には、重大な過失が認められる。






   (被告の主張)





 通則法52条1項及び2項は、主たる納税者等に対する滞納処分等の執行を保証人に対する納税告知書による告知の要件とはしていない。



 納税保証契約における国税の保証人については、民法の保証債務に関する規定が類推適用されると解され、当該保証債務は、主たる納税義務との関係で、附従性及び補充性を持つとされるが、保証人に対する徴収手続については、通則法52条において、その納税義務の補充性を考慮して滞納処分開始要件及び換価制限について特別な定めがされていることから、民法452条及び453条の催告及び検索の抗弁権に関する規定の適用はないと解されている。



 なお、訴外会社の決算書に国税等未納額が一切計上されていなかったことは否認する。










国税通則法  第52条  担保の処分




税務署長等は、担保の提供されている国税がその納期限(第38条第2項(繰上請求)に規定する繰上げに係る期限及び納税の猶予又は徴収若しくは滞納処分に関する猶予に係る期限を含む。以下次条及び第63条第2項(延滞税の免除)において同じ。)までに完納されないとき、又は担保の提供がされている国税についての延納、納税の猶予若しくは徴収若しくは滞納処分に関する猶予を取り消したときは、その担保として提供された金銭をその国税に充て、若しくはその提供された金銭以外の財産を滞納処分の例により処分してその国税及び当該財産の処分費に充て、又は保証人にその国税を納付させる。



2 税務署長等は、前項の規定により保証人に同項の国税を納付させる場合には、政令で定めるところにより、その者に対し、納付させる金額、納付の期限、納付場所その他必要な事項を記載した納付通知書による告知をしなければならない。この場合においては、その者の住所又は居所の所在地を所轄する税務署長に対し、その旨を通知しなければならない。


3 保証人がその国税を前項の納付の期限までに完納しない場合には、税務署長等は、第6項において準用する第38条第1項の規定により納付させる場合を除き、その者に対し、納付催告書によりその納付を督促しなければならない。この場合においては、その納付催告書は、国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、その納付の期限から50日以内に発するものとする。


4 第1項の場合において、担保として提供された金銭又は担保として提供された財産の処分の代金を同項の国税及び処分費に充ててなお不足があると認めるときは、税務署長等は、当該担保を提供した者の他の財産について滞納処分を執行し、また、保証人がその納付すべき金額を完納せず、かつ、当該担保を提供した者に対して滞納処分を執行してもなお不足があると認めるときは、保証人に対して滞納処分を執行する。


5 前項の規定により保証人に対して滞納処分を執行する場合には、税務署長等は、同項の担保を提供した者の財産を換価に付した後でなければ、その保証人の財産を換価に付することができない。


6 第38条第1項及び第2項、前節並びに第55条(納付委託)の規定は、保証人に第1項の国税を納付させる場合について準用する。

 

 






民法




(催告の抗弁) 


第四百五十二条   債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。 




(検索の抗弁) 


第四百五十三条   債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。 










裁判所の判断






  1 争点(1)(本件保証契約における原告の保証の範囲)について






 (1)前記第2の2(1)の事実のほか、証拠(甲1、乙4、乙7、乙9)及び弁論の全趣旨によれば、



 ①原告は、税理士として訴外会社に関与していたところ、前記第2の2(1)ア記載のように訴外会社所有の不動産について差押えがされたことを受けて、Cから不動産の差押えの解除に協力してほしい旨の依頼をされ、Cとともに東京国税局を訪れ、本件保証書及び原告の印鑑登録証明書等を所部係官に提出したこと、



 ②本件保証書の1枚目においては、「換価の猶予に係る下記納税者の猶予税額を私ども保証人連帯で納税保証をします。」との記載があり、その下部の「納税者」欄には訴外会社が記載され、「猶予税額」欄には「別紙“滞納金目録”のとおり」と記載されており、添付の本件滞納金目録(本件保証書の2枚目及び3枚目)においては、「年度」、「税目」、「納期限」、「本税」、「加算税」、「延滞税」、「法定納期限等」及び「備考」欄の各記載により、別紙租税債権目録(1)記載の内容の本件滞納国税が明記されていること、



③本件保証書の1枚目と2枚目の綴り部分及び2枚目と3枚目の綴り部分には、いずれも契印として原告の印鑑の印影があり、また、3枚目末尾の空欄1行には、斜線が引かれてその上にも原告の印鑑の印影があること、



④本件滞納金目録において、本税が完納されていない租税については「延滞税」欄に「要す」という旨が記載されていること、



⑤本件保証書添付の本件滞納金目録と東京国税局長作成に係る換価の猶予決議書(乙9)添付の別紙「滞納金目録」とは、同一のものであり、本件保証書の内容どおり本件保証契約が締結されたことが認められる。






 以上によれば、原告は、別紙租税債権目録(1)記載の内容の訴外会社の本件滞納国税全部について保証債務を負うというべきである。






 そして、延滞税が、国税の全部又は一部を法定納期限内に納付しない場合に未納税額を課税標準として法律の規定に従って当然に課されるものであること(通則法60条1項)及び本税の完納まではその額が確定しないことからすれば、本件滞納金目録の「延滞税」欄の「要す」という旨の記載は、未確定の延滞税及び本税の完納までに将来発生する延滞税の全額を保証する旨を意味するものと解され、



 原告が税理士であったことからすれば、原告もその旨を十分に理解した上で本件保証書に署名押印したものと認めるのが相当である。



 したがって、原告は、本件滞納金目録に確定額をもって記載されていない延滞税についても、本件保証契約締結の時点までに発生していたもの及びその後発生したものの全額について、保証債務を負うというべきである。






(2)ア これに対し、原告は、本件保証書を作成した際、担当者から説明は一切なかったと主張するが、仮に多数にわたる本件滞納国税の内訳等につき担当者から詳しい説明がなかったとしても、前記(1)で指摘した諸点に照らし、原告は本件保証書の内容を十分に理解していたものというべきであるから、上記は前記判断を左右するものではない。



 また、原告は、本件保証書を作成した際、担当者が後日数字を書き入れるとだけ述べたと主張するところ、その主張の趣旨は必ずしも明確ではないが、前記(1)で指摘した諸点、特に前記③の点からすれば、本件保証書作成当時、本件滞納金目録が添付され、そこで別紙租税債権目録(1)記載の内容の租税が特定されていたことは疑いないものというべきである。



 原告の上記主張は、延滞税につき「要す」という旨の記載がされた部分について、担当者が後日その額が確定した際に数字を書き入れる旨を述べたとするものとも解されるが、仮にそのようなやり取りがされていたとしても、そのことによって原告の保証債務の範囲が限定されるものでないことは、前記のとおりである。




 原告が本件保証書の金額が限定的なものと考えるべきであるとして主張するその他の事情も、既に述べたところからして、採用することができない。





 イ 原告は、本件処分に係る別紙租税債権目録(2)記載の国税のうち、


①順号5の平成5年1月25日を納期限とする源泉所得税の延滞税額403万9000円、


②順号12及び14の平成4年6月22日を納期限とする法人税の延滞税額54万5200円及び56万1600円、


③順号23ないし27の平成6年9月30日から平成8年9月30日を納期限とする消費税の延滞税額の合計額205万7100円は、いずれも本件保証書には記載されていないと主張するが、



 それらの延滞税については、本件滞納金目録の「延滞税」欄でいずれも「要す」と記載されていたものであるから、既に述べたとおり、それらにつき本件通知書において初めて確定額が示されたからといって、それらが原告の保証債務の範囲に含まれないということはできない。



 なお、このことは、別紙租税債権目録(2)の順号22の平成4年9月30日を納期限とする消費税の延滞税額27万6100円についても同様である。




 そして、証拠(乙21の1ないし18、乙28、乙30、乙38ないし43、乙50、乙53、乙54)によれば.別紙租税債権目録(2)の順号5、12、14及び22ないし27の租税に係る延滞税は、それぞれ、同目録の「延滞税額」欄記載のとおりであると認められる(上記各順号についての別紙一覧表(1)の「税額異動状況」欄中の「延滞税」の「残高」欄及び別紙一覧表(2)の「納付通知書送付時」欄中の「延滞税」欄の記載参照)。










 2 争点(2)(原告が履行すべき保証債務の数額)について





 証拠(甲1、乙4、乙9、乙17ないし43(枝番を含む。)、乙50、乙53、乙54)によれば、本件滞納国税の各本税、各加算税及び各延滞税に係る法定納期限(過怠税についてはその納税義務の成立の日。以下「法定納期限等」という。)、


 納税告知、納期限、納付及び売却代金等の充当並びにそれらの事由が生じた時点における各本税額、各加算税額及び各延滞税額は、別紙一覧表(1)の「税額異動状況」欄記載のとおりであると認められる(ただし、同一覧表においては過怠税の納税義務の成立の日についても「異動事由」としては「法定納期限」と記載されている。


 なお、延滞税の計算根拠は、同一覧表の「延滞税計算」欄の記載のとおりである。)。



 また、証拠(乙20の3、乙54)及び弁論の全趣旨によれば、同一覧表の順号4の課税期間が平成2年12月に係る源泉所得税については、自主納付があったことが判明したことから、同一覧表中、上記の源泉所得税に係る「税額異動状況」欄中の平成4年6月30日における「訂正取消」の記載のとおり、課税処分の一部取消しがされたことが認められる。




 前記のとおり、別紙租税債権目録(1)記載の内容の租税が特定された本件滞納金目録が添付された本件保証書に、税理士である原告は署名押印しているところ、



 本件滞納金目録(なお、既に述べたように、東京国税局長作成に係る換価の猶予決議書(乙9)添付の別紙「滞納金目録」は、これと同一である。)の内容、すなわち、別紙租税債権目録(1)記載の内容も、別紙一覧表(1)に沿うものである一方、他に別紙一覧表(1)記載の各本税額、各加算税額及び各延滞税額に誤りがあるとみるべき事情は見受けられない。




 そうすると、本件処分がされた時点における各本税、各加算税及び各延滞税の額等は、それぞれ別紙租税債権目録(2)の「本税額」欄、「加算税」欄及び「延滞税額」欄記載のとおりであると認められる。



 したがって、本件処分に係る本件通知書に記載された本件滞納国税の数額に誤りは認められない。








 3 争点(3)(本件納付委託による本件滞納国税の納税義務の消滅の有無)について



(1)納付委託は、納税者が証券の取立て及びその取り立てた金銭による国税の納付を委託するものであって(通則法55条1項前段)、納付委託がされたことによって、直ちに納税義務が消滅するものではなく、委託に基づいて有価証券の取立てによるいわゆる現金化がされ、それが納付されて、初めて、納税義務が消滅するものである。



 なお、先日付小切手は、国税の納付に使用することができる証券ではなく(証券ヲ以テスル歳入納付ニ関スル法律1条、歳入納付ニ使用スル証券ニ関スル件(大正5年勅令第256号)等参照)、本件各小切手の交付により納付の効果が生じたとはいえない。また、証拠(乙8の2)によれば、本件各小切手のうち4通につき「取戻依頼書受理」の取扱いがされたことがうかがわれ、本件各小切手がすべて現金化されて本件滞納国税につき納付がされたと認めることもできない。



(2)原告は、本件各小切手に係る小切手債務の成立と同時に本件滞納国税の納税義務が消滅したと主張するが、納付委託としての有価証券の提供は、通則法55条に定めるとおり、国税の担保等の趣旨でされるものであって、本件各小切手の振出し等につきこれとは異なる判断をすべき事情を認めるに足りる証拠はなく、原告の上記主張は採用することができない。








4 争点(4)(本件滞納国税の納税義務の時効消滅の有無)について




(1)国税の徴収権は、その国税の法定納期限等から5年間行使しないことによって時効消滅するところ(通則法72条1項及び2項)、前記2のとおり、本件滞納国税の各本税及び各加算税の法定納期限等は、別紙一覧表(1)記載のとおりであるから、本件処分がされた平成20年5月13日の時点では、いずれの租税債権についても法定納期限等から5年を経過していたものである。

 したがって、時効中断事由が認められない限り、本件滞納国税は時効消滅したものというべきである。




(2)ア 証拠(乙17ないし43(枝番を含む。)、乙50、乙53、乙54)によれば、本件滞納国税の各本税及び各加算税について、別紙一覧表(1)の「税額異動状況」欄中「事由」を「督促」とするもの及び別紙一覧表(2)の「時効中断事由」欄中「督促年月日」欄に記載のとおり、法定納期限等から5年を経過する前にそれぞれ督促状を発して督促がされたことが認められる。そして、各督促状は、各督促状を発した日の翌日又は翌々日には送達されたものと推定される(通則法12条2項、乙51)。



 したがって、各督促状の送達によって、本件滞納国税の各本税及び各加算税について時効が中断し、各督促状を発した日から起算して10日を経過した日から、新たに時効期間が進行することとなる。




 イ 証拠(乙47)及び弁論の全趣旨によれば、別紙一覧表(2)の順号1ないし6、12ないし23の各租税債権について、平成7年5月1日に社団法人G協会を第三債務者とする債権の差押え(本件差押処分2)がされたことが認められる。



 また、前記第2の2(1)ア及び(2)イ記載のとおり、平成9年4月17日に本件滞納国税について本件差押処分1がされ、その後、平成19年12月11日に本件差押処分1に係る不動産(別紙不動産目録1記載1の不動産)が公売され、本件差押処分1の効力が失われたことが認められる。




 したがって、別紙一覧表(2)の順号1ないし6、12ないし15及び17ないし23の各租税債権については、前記アの各督促状を発した日から起算して10日を経過した日から5年を経過する前に、本件差押処分2により、再度、時効が中断し、さらに、本件差押処分2の日から5年を経過する前にされた本件差押処分1により、時効が中断し、その効力は平成19年12月11日まで継続したものと認められる(通則法72条3項、民法147条2号)。



 そして、同日から本件処分の日である平成20年5月13日までの期間は、5年に満たないものである。



 以上より、別紙一覧表(2)の順号1ないし6、12ないし15及び17ないし23の各租税債権については、時効消滅したものとは認められない。




 ウ 別紙一覧表(2)の順号7ないし11及び24ないし27の各租税債権については、前記第2の2(1)ア及び(2)イ記載のとおり、前記アの各督促状を発した日から起算して10日を経過した日から5年を経過する前にされた本件差押処分1により、再度、時効が中断し、その効力は平成19年12月11日まで継続したものと認められる(通則法72条3項、民法147条2号)。


 そして、同日から本件処分の日である平成20年5月13日までの期間は、5年に満たないものである。


 以上より、別紙一覧表(2)の順号7ないし11及び24ないし27の各租税債権については、時効消滅したものとは認められない。




 エ 証拠(乙44ないし46、乙52)によれば、別紙一覧表(2)の順号16の租税債権については、平成元年11月21日、平成2年11月28日及び平成3年7月29日、訴外会社の王子税務署徴収職員に対する申入れにより、上記租税債権の全部又は一部について納付委託がされたことが認められる。



 上記の各納付委託の申入れによって、訴外会社は、王子税務署徴収職員に対し、上記租税債権につき承認(通則法72条3項、民法147条3号)をしたものと認めることができる。


  したがって、別紙一覧表(2)の順号16の租税債権については、前記アの各督促状を発した日から起算して10日を経過した日から5年を経過する前に、上記各納付委託の申入れによって、3回にわたり、時効が中断したところ、上記のうち最後の納付委託の申入れの日である平成3年7月29日から5年を経過する前に、前記イのとおり、本件差押処分2がされたことにより、再度、時効が中断し、さらに、本件差押処分2の日から5年を経過する前にされた本件差押処分1により、時効が中断し、その効力は平成19年12月11日まで継続したものと認められる(通則法72条3項、民法147条3号)。


 そして、同日から本件処分の日である平成20年5月13日までの期間は、5年に満たないものである。



 以上より、別紙一覧表(2)の順号16の租税債権については、時効消滅したものとは認められない。




 オ そして、前記アないしエの各時効中断の効果は、本件滞納国税に係る延滞税にも及び(通則法73条5項)、また、保証人である原告にも及ぶものである(通則法72条3項、民法457条1項)。


 よって、本件滞納国税の納税義務が時効消滅したとは認められない。なお、同義務が時効消滅したとして原告が主張するその他の事由は、そもそも時効の完成に無関係の事情であるか、既に述べたところから採用することができないものである。










 5 争点(5)(原告が被告の本件保証契約に基づく請求を拒み得るその他の事由の有無)について







(1)原告は、連帯保証人ではなく単なる保証人であるから、訴外会社及び訴外会社の現在の社長に対して強制換価の手続等を行うべきであると主張する。


 国税の保証人は、契約関係に基づいて国に対して保証債務を負うものであるから、その性質を踏まえ、民法の保証債務に関する規定を類推適用し得るものと解されるが、


 通則法52条4項は、保証人に対する滞納処分について、滞納者の財産について滞納処分を執行してもなお不足があると認めることを要件として定め、


 同条5項は、滞納者の財産を換価に付した後でなければ保証人の財産を換価に付することができない旨を定めており、


 保証人に対する滞納処分につき、保証人の附従性に係る規定を置いているところである。


 その一方で、同条1項は、保証人に対して納付通知書による告知(同条2項前段)をする要件として、ただ担保の提供されている国税がその納期限までに完納されないことを要件として定め、


 滞納者に対する催告や滞納処分の執行等を要件とはしていない。


 このように、保証人の附従性を踏まえたものと解される通則法52条の規定が置かれていること及び上記のような同条各項の定めに照らせば、納税保証については、民法452条(催告の抗弁)及び453条(検索の抗弁)は、いずれも類推適用されないものと解するのが相当である。



 したがって、原告の主張する上記の点は、原告が本件滞納国税についての保証債務の履行を拒絶し得る事由には当たらないから、本件処分を違法とみるべき事情とはならない。



 (2)その他、原告の主張する事情も、いずれも原告が本件滞納国税についての保証債務の履行を拒絶し得る事由であるとは認められない。



 なお、原告は、訴外会社の債務整理に関し東京国税局に重大な過失があるなどとも主張するが、前記のとおり、本件滞納金目録においては、延滞税の算定の基準となる国税の金額及び法定納期限が記載され、また、「延滞税」欄には「要す」と記載されていたこと並びに原告が訴外会社及びCと関係を有する税理士であったことに加え、原告が訴外会社の債務整理に係る通知等を受領していたこと(甲7の1、甲8の1)のほか、


 そもそも法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、


 法の一般原理である信義則の適用については慎重でなければならないというべきことなどを考慮すれば、


 原告の主張するように東京国税局が訴外会社の債務整理に参加しなかったものであるとしても、


 そのゆえに原告の保証債務を制限すべきものとまでは認められず、


 その他、本件全証拠をもってしても、信義則上、本件処分が違法であるとみるべき事情は認められない。




  6 まとめ


  以上によれば、本件処分は適法である。本件処分が違法であるとの原告の主張は、いずれも採用することができない。



 第4 結論


  よって、原告の請求は、理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

     東京地方裁判所民事第3部

         裁判長裁判官  八木一洋

            裁判官  中島朋宏








主   文


  1 原告の請求を棄却する。

  2 訴訟費用は原告の負担とする。