米国の正義 Do the right thing ? (69)





本日は 第75節 道徳心理学の原理 から










 道徳上の発達の素描を踏まえて直ちに〈公正としての正義〉の相対的な安定性を吟味しなければなら

ない。


 しかし、この作業に先立って、三つの心理法則について何点か述べておきたい。


 この心理法則は複数の傾向性を表しており、かつ他の条件が等しいならば実効性を有している。





第一法則


 家族の制度が正義にかなっており、その上で両親が子どもを愛し、子どもの善に心を砕くことによっ

て親の愛を表明しているならば、子どもは自分に対する両親の明白な愛を認識し、彼らを愛するようになる。




第二法則


 第一法則に則った愛着を習得することによって仲間意識を抱く個人の能力が実現されており、かつ社

会的な制度編成は正義にかなっていて、さらにすべての人によって正義にかなっていると公共的に知ら

れていることを前提とするならば、その個人は、他の人びとが明白な意図を持って彼らの義務と責務を

遵守し、そしておのおのの持ち場における理想に従って生活している限り、連合体の中で他の人びとに

対する友愛の情と信頼の絆とを発達させる。




第三法則


 最初の二法則に則った愛着を形成することによって仲間意識を抱く個人の能力が実現されており、か

つ社会の諸制度は正義にかなっていて、またすべての人によって正義にかなっていると公共的に知られ

ているならば、その個人は、自分やおのれが世話を焼いている人たちがそうした制度編成の受益者であ

ることを認める限り、それに対応した正義感覚を習得する。







 正義感覚の習得は知識と理解力の成長が結びつく段階で生じる。




 もし正義の情操が習得されるべきであるならば、社会的な世界(実社会)についての理解力や、何が正

しく何が不正であるのかについての理解力を人は発展させなければならない。




 他の人びとの明白な意図が認識されるのは、自己とその状況に関する各人の見解によって解釈される

ものである公共的な制度を背景としている。



 

 正と正義の理論は、予期される発達過程はどのようなものであるのかを記述するために用いられる。




 秩序だった社会が編制される仕方、および完全な制度枠組を律する、原理・理想・指針の完全な体系

が、道徳性の三つのレベルを区別するひとつの方法を提供している。





 契約説によって統制されている社会の中では、道徳の学びは提示してきた順序に従うであろうという

見解は説得力を有する。



 道徳の発達段階は習得されるべきものごとの構造によってー必要な諸能力が実現されるにつれて単純

なことからより複雑なことへと進みながらー決定されるのである。




 道徳の学びについての説明を明示的にある特定の倫理の理論に基づかせることによって、道徳の発達

段階の系列は漸進的発達を表しているのであって、たんに正則列(正規の順序)を表しているのではない

ということがーどのような意味でそうであるのかがーはっきりと分かる。