本日は 第70節 権威の道徳性 から
正義感覚は社会の若年の構成員が成長するにつれて徐々に習得される。
他人を愛するとは、その人の欲求やニーズを気遣うことを意味するだけでなく、自分の人格には価値
(かけがえのなさ)があるという相手の感覚を肯定・擁護することも意味する。
子どもの権威の道徳性が粗野であるのは、大部分が指針の集積から構成されているからである。
自分に申し入れられているルールが正当化されるところの、より大きな正と正義の枠組みを子どもは
理解することができない。
子どもの権威の道徳性は一時的なものであり、子どもに特有の状況と限定的な理解力から必然的に生
じてくる。
さらに、神学・宗教において権威の道徳性に匹敵するものがあるとしても、平等の自由という第一原
理に照らすならば、社会の基礎構造には適用されない特別な事例でしかない。
したがって、
権威の道徳性は基礎的な社会的制度編成において限定的な役割しか有しておらず、問題となっている
実践・慣行が課す特異な要望事項が特定の個人に指揮と命令の特権を与えることを必須のこととする場
合にのみ、正当化されうる。
いかなる場合でも権威の道徳性の作用域は、正義の原理によって律せられている。