本日は 第46節 優先権に関する追加的なケース から
急激な資本蓄積と全員の一般的な生活水準が着実に改善されたのは、富の分配の不平等によるものである。
正義の諸原理を十分に実現するための諸条件が実在しない以上、こうした不平等は正義に悖るものではないと主張すべきである。
以上を踏まえ、制度に関する正義の二原理
一 各人は平等な基本的自由の最も広範な全システムに対する対等な権利を有するべきである。
二 社会的・経済的不平等は、
① 最も不遇な人々の最大の便益が保持される
② 公正な機会均等の諸条件が保持される
様に編成されるべきである。
そして、そのための優先権ルールとして
一 他の何ものよりも自由が優先すべきである。
二 効率と福祉よりも正義が優先すべきである。
私見、「自由論」は致命的なパラドックスを含み、相当危険な思想であるようにも思える。佐伯先生は「自由についての議論は自由について正面から論じれば論じるほど、自由そのものからは遠ざかってしまうだろうということ、そして、真に自由を求める者は、それを決して自由の名で呼びはしない」と述べられています。(『自由とは何か』2004年)自由思想の根底には、正義あるいは博愛といった少数者の利益衡量(あまり適当な言葉ではないが)が必要である。