蟻の正義 Do the right thing ? (10)





本日は第2章 働かないアリはなぜ存在するのか?からです。








 

 

 昆虫の社会には階層的管理システムがない。

 

 

 昆虫社会には上司がいないので、この役割を果たすのが「反応閾値」=「仕事に対する腰の軽さの個体差」である。

 

 

 一つの仮説として、反応閾値モデルがある。これが司令官を持つことができない社会性昆虫たちのコロニーに個性が存在する理由である、とされる。

 

 

 反応閾値の違いは遺伝子の差に由来することもわかってきた。

 

 

 ミツバチの女王の多数間交尾は、反応閾値の変異を高く保つためであるかもしれない。仕事処理の複雑化と遺伝支配による反応閾値の多様化の関係が注目されている。

 

 

 反応閾値の変異による労働配分の制御は、相当複雑である。

 

 

 

 シミュレーションでは、反応閾値が異なるシステムでは、「働けなかった」個体は、怠けてコロニーの効率を下げているのではなく、コロニーの中の労働力をゼロ状態にさせないことによって、コロニーの存続を可能にさせている。規格外のメンバーを抱え込む効率の低いシステムが、ムシの進化の答えである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私見、先進国のように教育が規格化され、その評価が標準化されるような社会は、確かに効率性が高くはなるが、存続可能性、持続可能性が低くなるのだと筆者は考える。

 この点、ジョンロールズ先生の言う、原初状態、(第三章)で選択される「正義」はパレート最適のような、「平均的効用原理」を導き出すとしているが、これはやはり米国の正義であって、「正義」とは、筆者の直観だが、西部先生の言う社会や慣習、言葉に埋め込まれた、諸社会固有のようなものであると思う。もしかしたら、反応閾値のようにヒトに埋め込まれているものなのかもしれない。