蟻の正義 Do the right thing ? (9)





第1章 7割のアリは休んでる より






 

 中田兼介先生の研究では、トゲオオハアリに生まれた個体は、みな同じパターンで労働しないことが示された。コロニーを維持するための必要な労働をほとんど行わないアリがいる。

 

 

 この働かないアリは「予測不可能性」の存する変動環境の中で、「余力」となり、突発的な外部環境に参加する余剰であり、コロニーにとって一定の効率性を有しているシステムである。

 

 

 

 

 

 彼らの仕事といった役割は、階層的な情報伝達システムがないのにうまく分担されている。

 

 彼らの仕事は「齢間分業」され、育児ー巣の維持ー採餌 年を取ることによって、危険な仕事に就く、というシステムとなっている。

 

 

 

 

 ドーンハウス先生の実験では、ムネボソアリでは、一つの仕事ばかりやり続けると、仕事の効率が上がるわけではないという結果が出た。

 

 ムシの場合、能力差のない個体の集まりとしてのコロニーでは誰がどの仕事をやろうとコロニーとしての効率は差が出ない。

 

 

 

 

 

 エドワード・ウィルソン先生のコロニーサイズとワーカーの行動性の関係についての議論からは、ワーカーが少ない種類は原始的で、体のつくりは精密でボディの各パーツの狂いが少ないことがわかった。真社会性生物に進化する前に持っていた単独性の狩猟型ハチの生態的特徴を残していると分析された。

 

 

 

 

 西森拓先生の研究グループでは、仲間のワーカーのフェロモンを追尾する能力の正確さと、一定時間内にコロニーに持ち帰られる餌量の関係のシュミレーションで、能力の低い個体がいることで、「間違える個体による効率的ルートの発見」がおこり、コロニーの効率性を上げることがわかった。

 

 

 

 

 

 

 オオズアリの仲間で「兵隊アリ」は他種のアリが餌を横取りしようとやってきても、真っ先に逃げてしまう。それは、兵隊アリが小型の働きアリより育て上げるのにコストが多くかかっており、それを多少の餌を賭けた戦いで失うのがコロニーにとって得策ではないからだ。