第15章 世界的な資本税
21世紀のグローバル化金融資本主義に対するコントロールを取り戻すには、資本に対する世界的な累進課税が必要である。
固定資産税は一般に税率が一律かそれに近いものになっている。
これを他の資産クラスにも拡張する。
しかし、こうした税金は穴だらけである。
所有する資本資産を財務当局へ申告する、固定資産税のように、報告された当該資産の現在価値に基づき賦課課税する。
国際的な財務透明性が、現代税制国家に重要な課題である。
資本所得推計において一律の収益率を想定して、その金額をを所得に含め、これに累進課税する、という方法もある。
相続税、所得税、資本税が相補的な役割を果たす。
金が金を生み出すことについて、アリストテレスもその危険性に注目していた。
資本税が不等式r>gだけでなく、最初の規模に応じて資本収益にも格差が出るという問題に対する最も適切な対応となる。
国際的な協調的な税制については、矢内一好先生の著作に解説がありますので、引用します。(『Q&A国際税務の基本問題』2008年)
1998年,東南アジアに通貨危機が生じましたが,その原因の1つが国際的な投機資金の急激な流出入であるという分析が行われました。このような国際的な資本移動を抑制する選択肢として,1972年に米国のノーベル経済学者であるJames Tobin教授の提唱した,いわゆる「トービンタックス」が当時脚光を浴びました.このトービンタックスは,1970年代前半の為替の変動相場制移行を受けて,為替取引に税という負担をかけることにより為替の投機を抑制することを意図したものです。この税は,1995年,デンマークで開催された国連サミットにおいて,フランス及びカナダに支持され,その後のカナダのハリファックス・サミットでは,議題として取り上げることが検討されましたが,多くの参加国から拒否されています。
20世紀が所得税の時代であり,租税条約網の確立による国際税務の時代であるとすると,21世紀,少なくともその初期は,この現行体制が継続するのかどうかということに問題がありそうです。
国際企業経営におけるボーダレス化,規制緩和等の変化を背景として,デリバティブ取引,電子商取引等のボーダレス化を象徴するような取引形態が出現しています。これらの取引の特徴は,いわゆる足の早い取引であり,法制度の整備及び執行が経済実態に追いつかないのが現状です。しかも,時間の遅れは
あっても,制度を整備し執行を強化することにより,課税所得としてこれらの取引の所得を捕捉できるかというとこれは疑問です。
「グローバルタックス」とは,これまでのように,一国家による法制度等の整備では追いつかない取引形態を捕捉するために,各国が協調して整備を図る必要がある税目の意味です。しかし,一方で,各国の利害は対立するでしょうし,多国間条約を締結しても,国内法の規定が必要となります。何よりも問題として残るのは,このようなグループに入ることがないと思われるタックスヘイプンの存在です。このように現行の国際税務の体制を変える必要に迫られる事態が早晩に訪れるのではないか」とお考えのようです。