6 保証人保護の方策の拡充
(1) 個人保証の制限
個人保証の制限について、次のような規律を設けるものとする。
ア 保証人が法人である場合を除き、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は
主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先
立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行
する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
イ アの公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
(ア) 次に掲げる保証契約を締結し、保証人になろうとする者が、それぞれ次に定める事項を公証人に口
授すること。
a 保証契約(bを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する
利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに当該主
たる債務者が債務を履行しないときには、当該債務の全額について履行する意思(保証人になろうとす
る者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者
に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか又は他に保
証人がいるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
b 根保証契約 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、保証契約における極度額、元本確
定期日の有無及びその内容並びに当該主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度
で元本確定期日又は5(2)ア若しくはイに掲げる事由が生じた時までに生じた主たる債務の元本及び主
たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行す
る意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合に
は、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することが
できるかどうか又は他に保証人がいるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有し
ていること。
(イ) 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞か
せ、又は閲覧させること。
(ウ) 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保
証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代え
ることができる。
(エ) 公証人が、その証書は(ア)から(ウ)までに掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに
署名し、印を押すこと。
(注)保証人になろうとする者が口をきけない者である場合又は耳が聞こえない者である場合について
は、民法第969条の2を参考にして所要の手当をする。
ウ ア及びイの規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の
範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償
権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)に準用する。
エ 次に掲げる者が保証人である保証契約については、アからウまでの規定は、適用しない。
(ア) 主たる債務者が法人その他の団体である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者
(イ) 主たる債務者が法人である場合のその総社員又は総株主の議決権の過半数を有する者
(ウ) 主たる債務者が個人である場合の主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事
業に現に従事している主たる債務者の配偶者
(2) 契約締結時の情報提供義務
契約締結時の情報提供義務について、次のような規律を設けるものとする。
ア 主たる債務者は、事業のために負担する債務についての保証を委託するときは、委託を受ける者(法
人を除く。)に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
(ア) 財産及び収支の状況
(イ) 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
(ウ) 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内
容
イ 主たる債務者がアの説明をせず、又は事実と異なる説明をしたために委託を受けた者がアの(ア)から(
ウ)までに掲げる事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をし
た場合において、主たる債務者がアの説明をせず、又は事実と異なる説明をしたことを債権者が知
り、又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
(3) 保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務
請求による履行状況の情報提供義務について、次のような規律を設けるものとする。
債権者は、委託を受けた保証人から請求があったときは、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち履行期限が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
(4) 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務について、次のような規律を設けるものとする。
ア 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、主たる債務者がその利益を喪失したときは、債権
者は、保証人(法人を除く。)に対し、主たる債務者がその利益を喪失したことを知った時から2箇
月以内に、その旨を通知しなければならない。
イ 債権者は、アの通知をしなかったときは、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時か
らその旨の通知をした時までに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生じていた
ものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。