みんぽー要綱仮案(19)

 



消滅時効



1 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点



民法第166条第1項及び第167条第1項の債権に関する規律を次のように改めるものとする。


債権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。


(1) 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。


(2) 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。


(注)この改正に伴い、商法第522条を削除するものとする。




定期金債権等の消滅時効



(1) 定期金債権の消滅時効


民法第168条第1項前段の規律を次のように改めるものとする。


定期金の債権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。


ア 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができる

 ことを知った時から10年間行使しないとき。


イ アの各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。 



(2) 民法第168条第1項後段を削除するものとする。



(3) 民法第169条を削除するものとする。



職業別の短期消滅時効等の廃止



民法第170条から第174条までを削除するものとする。


 




 A銀行が上告人及び訴外Bらを連帯債務者として米軍票を貸与したが、上告人らは一部を支払ったのみであるところ、右債権の譲渡を受けた被上告人が上告人に対し、残元金の支払を求めた事案の上告審につき、割賦金弁済契約において、割賦金の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には、一回の不履行があっても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債務者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合に限り、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきであるとした事例。 


 最高裁判所第二小法廷(上告審)、昭和42年 6月23日判決、判例時報488号56頁




判決 理由


 論旨は、原判決には本件割賦金債務の弁済期の確定に関して民法一六六条の解釈を誤つた違法があるのみならず、


 かりに、本件割賦金弁済契約において、債権者の請求があつた時から残債務全額について消滅時効が進行すると解すべきものとしても、


 原審としては、第四回およびそれ以降の各割賦金についても消滅時効完成の有無につき判断すべきであり、


 少なくとも上告人に対して右時効完成の主張をするかどうかを釈明すべきであつたのに、これを怠つた点において、原審は民法一四五条に違反し、釈明権不行使、審理不尽の違法を犯したものであるという。



 しかし、本件のように、割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には、一回の不履行があつても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合にかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきである(昭和一四年(オ)第六二五号同一五年三月一三日大審院民事連合部判決・民集一九巻五四四頁参照)。



 そして、原審の確定したところによれば、右第四回割賦金一万八七四四円の弁済期は昭和二九年三月三一日であつたところ,


 被上告人がはじめて残債務額の請求をしたのは昭和三四年七月八日であつたというのであるから、その間五年以上を経過していることが明らかであり、


 しかも、本件割賦金債務は訴外益田宝明の商行為によつて生じた債務にあたるというのであるから、


 連帯債務者たる上告人についても商法が適用され、


 上告人自身の第四回割賦金債務も商事債務として右五年の経過とともに時効完成によつて消滅したものというべきである。


 しかるに、原審は、右第四回の割賦金債務が依然として存在するものと判断して、これにつき被上告人の請求を認容しているのであるから、


 この点において原判決は違法であつて破棄を免れず、


 論旨は理由がある。


 しかし、第五回すなわち昭和二九年九月三〇日支払分以降の各割賦金については、原審の確定した事実関係によつても、被上告人の右全額請求の時までいまだ五年を経過していないことが明らかであるから、原審がこれにつき消滅時効の完成を認めなかつたのは当然であつて、論旨は理由がない。



 したがつて、右第四回割賦金額およびこれに対する昭和二九年四月一日から支払ずみに至るまで年一割の割合による金員の支払を求める部分については、原判決を破棄し、第一審判決を取り消すべく、かつ、右部分については、叙上事実関係によつても、被上告人の請求の理由のないことが明らかであるから、右部分につき被上告人の請求を棄却し、その余の部分については、上告を棄却すべきものである。