みんぽー要綱仮案(14)



復代理人を選任した任意代理人の責任(民法第105条関係)



 民法第105条を削除するものとする。




 自己契約及び双方代理等(民法第108条関係)



 民法第108条の規律を次のように改めるものとする。


(1) 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代

  理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為に

  ついては、この限りでない。


(2) (1)本文に定めるもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない

  者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。



代理権の濫用



 代理権の濫用について、次のような規律を設けるものとする。


 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方が当該目的を知り、又は知ることができたときは、当該行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。




 



判決例

 

〔最高裁判所民事判例集〕 最高裁判所第一小法廷(上告審)、平成 4年12月10日判決、裁判所時報1088号1頁

 

  1. 親権者が子を代理する権限を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が権限濫

  用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法93条ただし書の規定の類推適用により、その行

  為の効果は子には及ばない。 

 

  2. 親権者が子を代理してその所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、親権者に子を

  代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、代理権

  の濫用には当たらない。 

 

 


 


判決 理由

 

1 親権者は、原則として、子の財産上の地位に変動を及ぼす一切の法律行為につき子を代理する権限を有する(民法八二四条)ところ、親権者が右権限を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が右濫用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法九三条ただし書の規定を類推適用して、その行為の効果は子には及ばないと解するのが相当である(最高裁昭和三九年(オ)第一〇二五号同四二年四月二〇日第一小法廷判決・民集二一巻三号六九七頁参照)。

 

2 しかし、親権者が子を代理してする法律行為は、親権者と子との利益相反行為に当たらない限り、それをするか否かは子のために親権を行使する親権者が子をめぐる諸般の事情を考慮してする広範な裁量にゆだねられているものとみるべきである。

 

 そして、親権者が子を代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、利益相反行為に当たらないものであるから、

 

 それが子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、

 

 親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、

 

 親権者による代理権の濫用に当たると解することはできないものというべきである。

 

 

 したがって、親権者が子を代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為について、それが子自身に経済的利益をもたらすものでないことから直ちに第三者の利益のみを図るものとして親権者による代理権の濫用に当たると解するのは相当でない。

 

 

3 そうすると、前記一1の事実の存する本件において、右特段の事情の存在について検討することなく、同一5の事実のみから、節子が被上告人の親権者として本件各契約を締結した行為を代理権の濫用に当たるとした原審の判断には、民法八二四条の解釈適用を誤った違法があるものというべきであり、右違法が判決に影響することは明らかである。

 

四 以上の次第で、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、右の点について更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする