遺産分割の錯誤(3)




 先日に続き事実関係を検討します。







イ 上記アの相続税の申告後,相続人らは,第1次遺産分割による株式の配分を前提とする本来の評価としては,評価通達188等の適用上,本件会社の発行済株式数から,上記(2)イの関連2社の保有に係る株式数を相互保有株式として控除して計算すべきであり,これによると原告P3の持株割合は5%以上となり,類似業種比準方式の適用による高額の評価を前提とした相続税の課税を受けるべきことを認識するに至った。(甲3,乙10,11)



(5)ア そこで,相続人らは,同年10月,改めて遺産分割の再協議を行い,


 原告P3の取得する本件会社の株式数を15万4024株減少させて56万4276株とし,その減少分を2分して,原告P1及び原告P4が取得する株式を各7万7012株ずつ増加させて各42万7012株とする旨を約し,


 同月28日,本件会社の株式の配分はこの約定を内容とし,それ以外は第1次遺産分割と同じ内容とする旨の第2次遺産分割の合意をした。


 この株式の配分は,関連2社の保有に係る株式数を控除して計算しても,原告P3の持株割合が5%未満となり,配当還元方式の適用が受けられるように,相続人らの間で再協議した結果,合意に至ったものであった。(甲2,3)




イ そして,原告らは,第2次遺産分割の分割内容を前提とした上で,原告P3が取得する株式を配当還元方式により評価し,同年11月6日付けで,次の(ア)ないし(エ)のとおり更正の請求又は修正申告をした。(甲2,乙3及び4の各1・2,同5)




(ア)原告P3は,株式の分割の錯誤(本件会社の株式の配分数の錯誤)及び相続税法20条の規定による相続税額の控除(以下「相次相続控除」という。)の適用漏れがあったとして,別紙1「課税処分等の経緯」の更正の請求欄記載のとおり,更正の請求をした。(乙3の1)



(イ)原告P5は,相次相続控除及び相続税法19条1項括弧書の規定による控除(以下「贈与税額控除」という。)の適用漏れがあったとして,別紙1「課税処分等の経緯」の更正の請求欄記載のとおり,更正の請求をした。(乙3の2)


(ウ)原告P10及び同P11は,贈与税額控除の適用漏れがあったとして,別紙1「課税処分等の経緯」の更正の請求欄記載のとおり,更正の請求をした。(乙4の1・2)


(エ)原告P1及び原告P4は,第2次遺産分割により本件会社の株式の取得数が増加したとして,別紙1「課税処分等の経緯」の修正申告欄記載のとおり,修正申告をした。(乙5)





(6)ア 処分行政庁は,本件会社の株式の評価は第1次遺産分割の内容に従い類似業種比準方式によるべきであるとして,いずれも平成16年11月9日付けで,別紙1「課税処分等の経緯」の「更正処分等」欄及び「更正すべき理由がない旨の通知」欄記載のとおり,原告らに対し,各更正処分(ただし,原告P10及び同P11については,贈与税額控除の適用漏れを理由とする減額更正処分)をし,原告P10及び原告P11を除く原告らに対し,過少申告加算税の各賦課決定処分をするとともに,原告P3及び原告P5による更正の請求に対し,更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。



イ なお,処分行政庁は,第2次遺産分割は,遺産の分割ではなく,新たな取引行為であり,これによる原告P1及び原告P4の株式の取得は原告P3からの贈与であるとして,原告P1及び原告P4に対し,同年12月15日付けで平成15年分の贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしたが,平成18年11月28日,国税不服審判所の裁決において,第1次遺産分割は要素の錯誤により無効であり,第2次遺産分割における原告P1及び原告P4の株式の取得は贈与ではなく遺産の分割によるものであるとして,上記贈与税の決定及び無申告加算税の賦課決定はいずれも取り消された。(甲4,5,7)




(7)原告らは,上記(6)アの各更正処分及び各賦課決定処分を不服として,処分行政庁に対し,平成17年1月7日,異議の申立てをし,処分行政庁は,別紙1「課税処分等の経緯」の異議決定欄記載のとおり,原告らに対し,同年4月6日付けで一部取消しを内容とする異議決定をした。原告らは,これを不服として,同年5月2日,国税不服審判所長に対し,審査請求をし,国税不服審判所長は,別紙1「課税処分等の経緯」の裁決欄記載のとおり,原告らに対し,平成18年11月28日付けで一部取消しを内容とする裁決をした(以下,上記異議決定及び裁決により一部取消し後の各更正処分及び各賦課決定処分をそれぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」という。)。(甲3)



(8)被告の主張する税額等の計算根拠は,別紙2「課税の根拠及び計算(類似業種比準方式)」記載のとおりであり(本件会社の株式の類似業種比準方式による評価額は,別表10-1ないし10-3「P12株式(原告P3所有分)の評価額の計算明細書」記載のとおりである。),原告P3の取得する本件会社の株式の評価額以外の点については、争いはない。