遺産分割の錯誤(2)



 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)について








(1)ア P2は,平成▲年▲月▲日に死亡し,相続が開始した。



 P2の妻である原告P3並びに両名の間の子である長男・原告P1,二男・原告P4及び長女・原告P5の4名が,P2の共同相続人となった。



イ P2の相続に際し,P2の孫である原告P6は700万4788円の生命保険金等を,同じくP2の孫である原告P7,原告P8,原告P9,原告P10及び原告P11は各560万3823円の生命保険金等をそれぞれ取得した。(乙1)



(2)ア 被相続人の相続財産には,P12株式会社(以下「本件会社」という。)の株式155万4024株が含まれており,本件相続の開始前,原告P3は,本件会社の株式25万8500株を有していた。(甲1,3)



 本件相続の開始当時,本件会社の従業員数は729人であり,評価通達178にいう大会社(従業員数が100人以上の会社)に該当するものであった。(甲3)



イ 本件会社の株主のうち,P13株式会社(以下「P13」という。)及びP14株式会社(以下「P14」という。)については,本件会社が上記2社(以下「関連2社」という。)の発行済株式の総数の4分の1を超える株式を保有していたため,商法241条3項の規定により本件会社の株式につき議決権を有しないこととされる会社であった。



 このため,評価通達188の適用上,本件会社における各株主の持株割合の計算に当たっては,本件会社の株式のうち,P13の有する株式11万7000株及びP14の有する株式43万9000株(合計55万6000株)は,相互保有株式として発行済株式数から控除されるべきものであった。(甲3,乙10,11)



ウ 相続人らは,本件相続に係る遺産分割の協議に際し,相続税の負担等につき,P15税理士(以下「本件税理士」という。)に相談し,同税理士の助言を受けていた。(甲3)





(3)ア 相続人らは,平成15年5月,遺産分割の協議を行い,被相続人の相続財産である本件会社の株式155万4024株については,原告P3が71万8300株,原告P1及び原告P4が各35万株,原告P5が13万5724株を取得する旨を約し,



 同月17日,この約定を内容とする第1次遺産分割の合意をした。



 この株式の配分は,これにより配当還元方式の適用を受けられる旨の本件税理士の助言に基づき,配当還元方式の適用を受けられる配分の方法として相続人らの間で協議した結果,合意に至ったものであった。(甲1,3)




イ 上記アの株式の配分により,本件会社において,原告P3及び同族関係者のグループの持株割合は50%以上となったが,原告P3並びに同原告の直系血族,兄弟姉妹及び一親等の姻族の有する株式数の合計数の持株割合は25%に満たなかったため,同原告は,評価通達188の適用上,中心的な同族株主以外の同族株主に該当することとなった。(甲3)




ウ 上記アの株式の配分による場合,評価通達188等の適用上,本件会社における原告P3の持株割合は,



(a)本件会社の発行済株式数から,上記(2)イの関連2社の保有に係る株式数を控除して計算すると,5%以上(類似業種比準方式の適用対象)となるものの,


(b)これを控除しないで計算すると,5%未満(配当還元方式の適用対象)となるところ,相続人らは,その控除を要することの認識を欠いたまま,第1次遺産分割の合意に至った。(甲3,乙10,11)



(4)ア 原告らは,第1次遺産分割の合意の成立後,



 上記(3)アの株式の配分の内容を前提として,原告P3が取得する株式を配当還元方式により評価し,同年6月19日,別紙1「課税処分等の経緯」の申告欄記載のとおり,本件相続に係る相続税の各申告をした。(乙1)


 同月26日,本件相続に係る相続税の法定申告期限が経過した。