遺産分割の錯誤(1)

 


 本日からは東京地方裁判所(第一審) 、平成21年 2月27日判決、税務訴訟資料259号順号11151について検討します。






【事案の概要】


 被相続人Aの相続人4名および生命保険金等を取得した孫らからなる原告らが、妻が取得する同族会社の株式の価額につき配当還元方式による評価を前提として相続人らがした第1次遺産分割合意に基づき、相続税の各申告をした後、


 課税負担についての錯誤を理由として、配当還元方式の適用を受けられるように各相続人が取得する株式数を調整した上でした


 第2次遺産分割合意に基づいて更正請求等をしたところ、


 処分行政庁から本件各更正処分等を受けたため、その取消を求めた事案で、


 課税負担またはその前提事項の錯誤を理由とした当該遺産分割の無効主張が許されるのは、申告者が、更正請求期間内に、かつ、課税庁の調査時の指摘、修正申告の勧奨、更正処分等を受ける前に、自ら誤信に気付いて、更正の請求をし、更正請求期間内に、新たな遺産分割の合意による分割内容の変更をして、当初の遺産分割の経済的成果を完全に消失させており、


かつ、 


 その分割内容の変更がやむを得ない事情により誤信の内容を是正する一回的なものであると認められる場合のように、


 更正請求期間内にされた更正の請求においてその主張を認めても弊害が生ずるおそれがなく、


 申告納税制度の趣旨・構造および租税法上の信義則に反するとはいえないと認めるべき特段の事情がある場合に限られるとされた事例。 




 第1次遺産分割に基づく課税価格は,別表1「課税価格及び納付税額の計算明細表」順号〔11〕の合計欄のとおり38億6750万2000円であり,第2次遺産分割に基づく課税価格は,別表1の2「課税価格及び納付税額の計算明細表」順号〔11〕の合計欄のとおり20億0351万5000円であり,その差額は,P2の妻である原告P3が取得する同族会社の株式の評価の差異から生じている。