偽り、その他不正の行為(27)



引き続き裁判所の判断です。






(2)D税理士の検察官に対する供述調書(乙4)には,


 控訴人から「納める税金の額を正規の金額より安くしてほしいという意味の依頼を受け,これを引受けてあげました。」


 「本当なら2600万円くらいの税金を払わなければいかんが,税金分,手数料などすべて含めて1800万円で手続をしてあげますよ。というように言いました。」


 「正規の税額が2600万円という計算をしておきながら,1800万円以内の納税しかせずに済まそうという話ですから,これがいわゆる脱税行為であることは明らかであり,・・・(控訴人にも)当然分かっているはずでした」との記載部分がある。


 しかし,D税理士の目的は,相談者から確実に税務代理を受任し,納税資金を預かるということにあり,その目的のためには,安心確実な節税が可能であり,D税理士がその専門と経験からそのノウハウを有することを強調することが合理的であり,


 初対面の税理士に不正な申告を依頼し,初対面の相談者に税理士が脱税を前提に説明をすることは不合理であることは前記説示のとおりである。


 しかも,上記供述部分は,D税理士の推測にすぎず,控訴人との間に,不正な方法による申告をすることについて黙示的な意思の合致があった根拠とすることはできないうえ,


 本来本件土地の取得費に要した費用に付随する費用として控除の対象となり得る約1134万円もの借入金利息(最高裁平成4年7月14日第三小法廷判決・民集46巻5号492頁参照)を考慮しないで概算した約2600万円を「正規の税額」にすり替えて陳述することで,


 依頼者である控訴人もD税理士の不正行為を知っていたはずだと推測して自己の罪責を少しでも軽くしたいとの意向が容易に読み取れる供述であって,


 信用性の乏しいものである(なお,他面では,D税理士自身も,上記2600万円の税額を概算した際の控除費目である取得及び譲渡の際の必要経費である手数料207万円,登記30万円,印紙10万円,譲渡手数料396万円,草刈費用60万円,印紙10万円の合計713万円を一応正当な必要経費であると理解したうえでの供述となり,


 これらを隠ぺい又は仮装の行為に係る経費と理解していたものではないということになる。)。