偽り、その他不正の行為(22)



過少申告についての正当な理由(通則法65条4項)







【被控訴人】




〔1〕本件過少申告加算税賦課決定処分について


 控訴人は,平成2年分の所得税の確定申告において,事業所得の金額の計算上,収入を過少に申告するとともに必要経費を過大に計上することにより事業所得の金額を過少に申告しており,事業所得の金額が過少申告となったことについて通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められないから,同条1項の規定により過少申告加算税が賦課される。



〔2〕本件重加算税賦課決定処分について


 仮に,本件重加算税賦課決定処分について,通則法68条1項所定の加重事由である納税者による「税額の計算の基礎となる事実の全部又は一部について隠ぺい又は仮装の行為」が存在することが認められない場合においても,少なくとも,過少申告加算税額に相当する額を超えない部分は適法というべきである。






【控訴人】



 控訴人の平成2年分の所得税の申告が過少となったのは,上記のとおり,D税理士及びE税務署員による妨害のためであって,被控訴人の行政処理や指導が的確を欠いたのであり,納税者のみにその責めを帰することは酷であり,このような事情は通則法65条4項に規定する「正当な理由」その他真にやむを得ない事情がある場合に該当し,控訴人に対して過少申告加算税を課すことは許されない。



 控訴人は,検察官による苛酷な取調べが終了した直後の平成9年12月初旬,修正申告について税務署職員の調査を受け,同月12日,いわれるまま,同職員が下書きした書面を写すことにより,修正申告(以下「本件修正申告」という。)をしたが,当時,未だ心身の疲労から脱却されない諸症状に継続的に悩まされ,税務署職員による調査結果を十分理解できないまま,いわれるとおり修正申告をしたのであって,「不当若しくは酷になる場合」であり,通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるというべきである。