偽り、その他不正の行為(18)



争点〔2〕(控訴人による偽りその他不正の行為)について



(1)控訴人が重加算税を賦課されるべき方法により本件土地に係る譲渡所得税を免れたことを認めることができないことは,先に認定判断したとおりで,被控訴人において,譲渡所得税及び事業所得等に対する税について,その他に「偽りその他不正の行為」(通則法70条5項)により控訴人が税額を免れたと主張するものでない本件においては,その余の点について検討するまでもなく,控訴人が偽りその他の不正の行為により所得税について過少申告をしたと認めることはできず,控訴人に対する重加算税賦課決定につき,過少申告加算税の限度において是認することもできない。



(2)以上のとおり,本件においては,本件土地の譲渡所得の過少申告について重加算税を賦課すべき要件に欠ける他,譲渡所得及びその他の所得のいずれについても,平成2年の控訴人の所得税の確定申告書の提出期限である平成3年3月15日から5年を超えて,なお過少申告加算税を賦課することのできる事由が認められず,平成9年12月19日付けをもってされた本件各処分は,通則法70条4項の期間の制限を過ぎた後にされたものとして違法である。



4 まとめ



 以上によれば,争点〔3〕(過少申告についての正当な理由)について検討するまでもなく,本件各処分は違法であり,その取消しを求める控訴人の本訴請求はいずれも理由があり,正当として認容すべきである。



第4 結論

 よって,本件控訴は理由があるから,原判決を取消し,控訴人の請求をいずれも認容することとし,主文のとおり判決する。















 最高裁判所第二小法廷(上告審) 平成17年 1月17日判決、 税務訴訟資料255号順号9893では、原判決は破棄されました。









上告代理人都築弘ほかの上告受理申立て理由のうち国税通則法70条5項の解釈適用の誤りをいう点について



1 原審は,事実関係の下において,被上告人が平成2年分の所得税について偽りその他不正の行為により税額を免れたと認めることはできないから,国税通則法70条5項は適用されず,本件各賦課決定は同条4項所定の除斥期間経過後にされたものとして違法であると判断した。



2 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。



 国税通則法70条5項の文理及び立法趣旨にかんがみれば,同項は,納税者本人が偽りその他不正の行為を行った場合に限らず,納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用されるものというべきである。


 事実関係によれば,被上告人は,平成2年分の所得税について,申告を委任したA税理士の前記の脱税行為によりその税額の一部を免れたものということができる。


 そうすると,被上告人の同年分の所得税に係る重加算税賦課決定等については同項が適用されることになるから,本件各賦課決定はその除斥期間内にされたものというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由がある。