隠ぺい又は仮装(51)




引続き裁判所の判断です。








原告主張の再抗弁事実の存否について判断する。




1 再抗弁第一、二項について


 原告による修正申告書の提出及び納税の事実については当事者間に争いがない。ところで、国税通則法六五条三項、六八条一項には、修正申告書の提出がその申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは重加算税を課さないと定められているけれども、右の場合を超えて、単に任意の修正申告及び納税義務の履行があれば重加算税を賦課しないとの取扱いが一般であるという事実を認めるに足りる証拠はない。また、本件が右の国税通則法六五条三項の場合にあたると認めるに足りる証拠もなく、かえつて証人坂下弘志、同牛嶋俊行、同古田二郎の各証言を総合すると、本件の修正申告書の提出は被告の調査により更正ののあるべきことを予知してなされたものであると認められる。結局再抗弁第一、二項の主張はいずれも理由がない。





2 再抗弁第三項について


 右再抗弁事実については、原告本人尋問の結果中にこれに沿う部分があるけれども、証人坂下弘志、同牛嶋俊行、同古田二郎の各証言に対比すると、右部分は措信し難く、他に同事実を認めるに足りる証拠はない。従つて、右再抗弁も理由がない。



3 再抗弁第四項について



 昭和四一年二月ころに至つて初めて原告に対する所得税の調査が行なわれたことは当事者間に争いがない。そこで、右調査が韓国人に対する課税方針の変更の結果なされたものであるという主張について検討するに、前記二、3で述べたごとく本件各係争年度において韓国人に対する申告徴税につき特別な取扱いが存したと認めるに足りる証拠はなく、従つて、右主張はその前提を欠き失当である。かえつて証人古田二郎の証言によれば、税務署側の調査能力等を勘案し事務効率上昭和四一年二月ころまで原告に対する調査が行なわれなかつたに過ぎないと認められるのであり、結局右再抗弁も理由がない。


四 以上二及び三に示した理由を総合すると、被告が原告に対し本件各係争年度の所得税の確定申告につき所得金額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい・仮装があつたとして国税通則法六八条一項に従つてなした本件各決定にはなんらの瑕疵も存しないというべきである。


五 以上の次第で、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却する。