隠ぺい又は仮装(43)



引き続き裁判所の判断を検討します。








(二)技術派遣提供報奨について




 所論は、要するに、原判決は、技術派遣提供報奨(以下単に技術提供収入という。)についても利益配分金と同様の誤りをおかしているうえ、被告人が昭和四八年一〇月八日に現実に取得した一〇〇〇万円につき同年中の技術提供収入として計上しているけれども、これは同年中に発生した所得とすべきかどうかきわめて疑問である、というのである。



 よつて検討するに、関係証拠によると、



 技術提供収入は、M・P・Dとアラフラ真珠とがそれぞれ共同評価額の一〇〇分の五ずつを取得することとなつていたこと、


 アラフラ真珠が技術提供収入を取得するのはともかく、もともとM・P・Dが右収入を取得することは実体にそぐわないものであり、実際は被告人やM・P・Dの現地の役員であるスマントリーが個人的に利益の分配を受けるための方法として採用されたものであるので、M・P・D取得分については一応その一〇〇分の二を被告人が、一〇〇分の三をスマントリーが個人的に取得することになつていたのであるが、従来必ずしも右の割合どおりに配分されておらず、昭和四八年分については、同年一〇月八日、アラフラ真珠が預り金として取得していた金員のうちから被告人が技術提供収入として支払を受けるとともに後記一〇〇〇万円を受領しており、これらを同年中の所得として計上していること、昭和四九年分については、対スマントリーとの関係では被告人が取得することとなつている共同評価額の一〇〇分の二につき、実際は、インドネシア基金として一〇〇分の一、松沢ほか二名のM・P・D関係者に合計一〇〇分の〇・五、被告人に一〇〇分の〇・五とそれぞれ自動的に配分することになつていたので、各インボイスごとの評価結果報告書の日付の日に収入すべき金額が確定したものとして計上したこと、昭和五〇年分については、インドネシア基金として一〇〇分の一、被告人に一〇〇分の一とそれぞれ自動的に配分することになつていたので、前年同様各インボイスごとの評価結果報告書の日付の日に収入すべき金額が確定したものとして計上したこと、がそれぞれ認められる。


 このように、原判決は、共同評価額が決定した時点においてまだ配分割合が未確定であつた昭和四八年分については被告人の取得分が区分され現実に精算して支払を受けた時点でとらえているからまつたく問題はなく、また、昭和四九、五〇年分については、算出の根拠となる共同評価額が決定し、したがつて自動的に被告人の取得分が具体的な金額として算出される時点をそれぞれ本件技術提供収入の所得としての計上時期としているのであつて、先に認定した本件技術提供収入の性質からすると前記(一)において検討したところがそのままあてはまるのであり、本件技術提供収入の所得としての計上時期につき原判決には所論のような事実誤認はなく、論旨は理由がない。



 さらに、一〇〇〇万円の件についても、関係証拠によると、当初スマントリーと被告人の配分割合が不確定であり、アラフラ真珠において預り金として処理していたところ、被告人は自己の取得分とスマントリーの取得分を明確に区分する意図で昭和四八年一〇月八日スマントリーの預金口座を設けて同人の取得分を移し、残額である一〇〇〇万円を被告人の取得分として受領したものであることが認められるのであるから、これを昭和四八年中の所得として計上することはまことに正当であつて、論旨は理由がない。