隠ぺい又は仮装(27)

 

 

 被告の主張を検討します。

 

 

 

 

 

 

(請求原因に対する被告の答弁)

 

 

一、請求原因一、二の各事実は認める。

二、その余の事実については、原告が訴外小林光夫ほか二名から昭和三六年二月中に金六二〇万円を受領していることを認めるほかは争う。なお、請求原因三の(一)のような借入の事実があれば昭和三六年度に計上しても適法であるが、そのような事実は否認する。

 

 

 

(被告の主張)

 

 

一、原告は昭和三五年度の法人税の所得金額につき別表(一)、(二)記載の申告額の青色申告書を提出したが、被告が調査したところ、原告は本件山林の立木を

 

 

1 訴外中島道夫に対し昭和三六年二月二五日に売却した代金二四〇万円を、同月二七日に現金五〇万円と額面金七〇万円の小切手および額面金一二〇万円の約束手形にて受取り

 

2 訴外谷口権平に対し同月二五日に売却した代金一九〇万円を、同月二七日に現金九〇万円と額面金一〇〇万円の約束手形にて受取り

 

 

3 訴外小林光夫に対し同月二七日に売却した代金一九〇万円を、同日額面金九〇万円の小切手および額面金一〇〇万円の約束手形で受取り

 

 

 右各約束手形はいずれも同月二八日に中国銀行本店で割引を受けている事実が判明し、

 

 右売却代金合計金六二〇万円を同月中に受領しているのに拘わらず、これを売上として損益計算上収入金に計上せず、負債勘定である借入金として事実を仮装し経理、申告しているものと認められたので、法人税法第二五条第八項第三号の規定により原告に対する青色申告書提出の承認処分を取消し、別表(一)、(二)記載のとおり所得金額および法人税額の更正決定と重加算税賦課決定をなしたものである。

 

 

 

二、原告の売買予約の主張は代金がその予約の際に授受されていることから不当であるばかりか、取締役会の承認云々の主張も牽強附会のものに過ぎない。

 

 

三、原告の本件山林の立木取引代金についての経理は明らかに仮装のものであつて、その作為事実はそれ自体租税の徴収を不能または困難にさせる可能性を有し、青色申告制度の予定している真実性、信頼性を破壊する性質の行為であり、重加算税を賦課するに価する行為である。

 

 

 なお、法人税法第二五条第八項第三号の規定は、仮装の事実それ自体が当該帳簿書類全体についてその真実性を疑うに足りる不実の記載があるとしているのである。

 

 

四、一般に法人が当期の所得を次期の所得として繰り入れる経理を行う事実は、まま見受けられるが、その必要性はいかにあつても、これによつて期間計算の原則に基く法人税法の秩序をみだすことは許されるものではない。